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2018/2/2 場 @ KGR(n)
2017年5月、クラブという遊び場とは縁のなさそうな神楽坂に新たなるライブハウス/クラブが生まれた。日中はライブなどの場所である神楽音(カグラネ)として、そして週末の夜はクラブ・ミュージックを中心としたクラブであるKGR(n)として運営し、キャパは80人程度と大きくないながらも神楽坂に新しい息吹をもたらすであろう遊び場だ。今回は「場」なるパーティーにおいて、DJ YAZI、IORI、Yoshitaka Shirakuraが出演するパーティーがあったのだが、各アーティストのバックボーンであるヒップ・ホップ/ハウス/ノイズ方面からテクノを解釈するというコンセプトが面白そうであったので、初めての場所という事もありパーティーへ参加する事にした。
KGR(n)はビルの地下一階にあり、重厚なドアの向こうには先ずバースペースが待っている。2〜30人程で一杯になる位の大きさだが洗練された都会的なバーで居心地は上々だ。ドリンクはクラフトビールもあったりと品揃えは良く、またアルコールは500円から提供されており、クラブとしては良心的な事もありお酒については評価出来るだろう。尚、このバースペースのみ喫煙可で、フロアは禁煙なのも高評価だ。

フロアに入るとかなり照度の低さや飾り気の無い内装もあって、アンダーグラウンドが強い。普段どうなのかは分からないが、派手な照明が無いためディープなテクノにぴったりな雰囲気だし、30人程入れば混み合うフロアはDJとの距離感の近さもあって一体感がある。勿論、出音も大きな音や低音の厚みもあり、ダンス・ミュージックを楽しむ点に於いても問題は全く無い。

25時頃にはYoshitaka ShirakuraがPCDJでのプレイをしていたが、ソナー音のような淡々と反復する電子音、奥深いダビーな残響、金属的な硬い響きが鳴っており、ノイズをバックボーンとした音楽性も成る程と思わせられる。一切の感情を排したようにマシーナリなグルーヴは氷点下の如くひんやりとしているが、不協和音らしきノイズな要素を盛り込みながらずぶずぶとディープ・テクノに引き込んで行く流れに、自然と体も揺れる。大きく振れる展開ではなく膨張する低音や太いキックの一定に刻まれるビート感が持続し、閉鎖的なフロアに合うような抑圧的な攻め方で、徹底して無機質な空気が痛快だ。ざらついたヒスノイズが霧のように浮遊し、繊細な残響も奥深く広がり、ノイズの要素が見事にテクノセットの中に反映されている。PCを用いたプレイの長所であるシームレスで全くずれのないミックスも途切れる事のない持続感を活かしており、全くぶれのない精密な展開はひんやりとした響きもあって、熱狂的ではなく各々が内なる世界(意識)へと黙々とダイブする効果を誘う。ある種の宗教的な修行かまたは瞑想か、音にのみ対峙し鼓動に体が突き動かされるプレイが格好良かった。

DJ YAZIの開始は、ノンビートの中でサイケデリックな電子音が揺らぐアブストラクトな音像が浮かぶ。アンビエントにも似ながらも混沌としており、徐々にスローモーなリズムも入りながら胎動のように動きを増してくるが、そこから一気に鋭く跳ねるリズムのダンストラックへと移行し加速する。ヒプノティックな電子音や薄っすらとした残響にドローンが散りばめられ、空間は隙間無く音で埋め尽くされる。ヒップ・ホップ影響下の変則的なビートからみぞおちに強く響く4つ打ちまで用いるが、どっしりと安定感のあるグルーヴで粘り強く引っ張り、底から盛り上がってくるような低音には厚みがありびりびりと骨の髄まで刺激する。空間の広がりを生む音響は正にディープ・テクノで、何処までも灰色で無機質な質感ながらも覚醒感を煽る音響は快楽的でさえある。ずんずんと圧のあるリズムに押されながら、繊細な電子音響やダブの響きによる味付けで、色彩が色褪せる中から精神を侵食する響きが発せられトリップ感満載だ。肉感溢れるグルーヴ感と意識へと作用する音響、その両者に振れながら深海を潜航する潜水艦のようにディープな闇へと潜り込む展開、そして終盤にはリズムが激しさを増す中でアシッド・ベースがトランシーに暴れ回り、快楽は絶頂へと達した点でプレイは終了。2時間たっぷりのプレイの中にテクノ/ヒップ・ホップ/音響系の要素が組み込まれ、繊細さと力強さが同居したプレイにがっつり踊る事が出来た。

そしてIORIも開始はノンビートかつディープな音響系のテクノで開始。壮大な空間の広がりを感じさせ、そして直ぐに鈍い電子音の反復とハウシーな4つ打ちが入ってくる。弾力のあるしなやかなグルーヴは重みがありながらも軽快に疾走し、リズムの隙間にサイケデリックな電子音を淡々と織り込んで、淡々とした反復性によってヒプノティックな感覚を強調する。規則正しいビート感は激しいと言うよりは反復や奇妙な電子音によるトリップ感が強調され、ふわっと広がる芳香のように空間に電子音が揺らぐような響き、ダークながらも心地良い陶酔感がある。そこには豊かな感情性よりも機械的でひんやりとした質感が通底し、劇的な展開を繰り広げる事よりも機能性に集約したような展開でひたすら直線的なミニマル・グルーヴで攻めていた。と楽しんでいたものの始発が始まる5時前にはパーティーから離れたが、十分に各DJが表現するテクノを体験出来て踊れたので清々しく帰路に就く事が出来た。小さいクラブではあるものの神楽坂にあるという特異性、その上でパーティーの内容も音楽的に優れており、今後のパーティー次第では期待出来る場所になるのではないかと思う次第である。
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