2019.05.25 Saturday
Amazonで詳しく見る(アナログ盤) Amazonで詳しく見る(MP3)
Edizioni Mondoというレーベルは公式でもライブラリーミュージックに触発されたと述べており、ハウス・ミュージックの特に有機的な側面やバレアリック性をアピールしながら、リスニング志向の強い音楽性も追求している。そのレーベルからリリースされる作品はどれも注目すべきではあるが、このイタリアのアーティストである
Mario PierroことRaiders Of The Lost ARPによる新作EPは特に目が離せない。ROTLAと言えば過去にはUnderground Resistance一派がリミックスを手掛けた時にも少なからず注目を集めていたが、それもコズミック感溢れるディスコな性質があったからこそURと共鳴する点もあったのだろう。近年はFar Out RecordingsやEdizioni Mondoからの作品を聞く限りではよりバンド風な演奏のあるオーガニックかつバレアリックな方向へと向かっており、最早ダンスでなくとよい聞き込める音楽性を重視しているように思う。その流れは本作でも同様で、タイトル曲の"Waves"はサウダージを匂わせる切ないシンセのメロディーやコードにギターカッティングやベースの生っぽい湿っぽさを合わせ、肩の力が抜けたミッドテンポで緩やかなビートを刻むバレアリック・ディスコは、そのオーガニックな響きも相まって非常に感情性溢れる曲調になっている。揺らぐ波の表面にオレンジ色の光が反射するようなキラキラとした、そんな真夏の夕暮れ時の海辺を換気させる爽やかながもメランコリーに満たされるバレアリック感に、感傷的にならずにはいられない。"Babashh"はInternational Feel、特にMark Barrottの作風を思わせるニュー・エイジ/アンビエント志向な曲で、スローなダウンテンポのビート感に大空をゆったりと広がっていくようなシンセのメロディーやアコースティックギターの朗らかな音色により、オーガニック感も打ち出して自然の中で息衝く。そして本作の目玉はそのMark Barrottがリミックスを行った"Waves (Sketches From An Island Healing Hands Remix)"で、キックレスにビートを削ぎ落としつつ彼らしいネイチャーサウンド宜しくなエキゾチックなパーカッションの響きや咽び泣くようなギターに青々しく爽快な声も加えて、トロピカル感爆発なイビサ・バレアリックへ生まれ変わり完全にBarrott色へと染まった見事なリミックスを披露している。またレーベル・オーナーであるL.U.C.A.(Francesco De Bellis)が手掛けた"Waves (L.u.c.a. Quirky Version)"は逆に原始的なアフロ・リズムが躍動するディスコ・サウンドで、大地と共鳴するような力強いグルーヴとファンキーなギターのうねりに揺さぶられながら、陽気なバレアリック感に包まれるこちらのリミックスも素晴らしい。全曲文句無しの出来でバレアリック好きなら当然必聴なEPだが、もうそろそろアルバムもリリースされる情報もあり、期待は高まるばかりだ。
Check Raiders Of The Lost ARP