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近年はモジュラーシンセを用いたローファイな作品やフィールド・レコーディングやドローンにまで手を広げ、よりパーソナル性を重視したAnthony Child名義での実験的な活動も目立っているが、やはりダンスフロアをこよなく愛する者にとってはインダストリアルやハードミニマルといった系譜にある暴力的なグルーヴを刻むSurgeon名義こそが期待しているものだろう。そのSurgeon名義にしても過去の単なるハードミニマルの焼き直しではなく、モジュラーシンセの制作が反映されたり、例えば本作では"チベットの死者の書"にインスパイされたなど明確なコンセプトを持ち出したりと(それが音としてどう現れているかは謎だが)、外科医を名乗るのも納得なインテリジェンス性を発揮している。そしてアナログ機材やモジュラーシンセを導入した前作『From Farthest Known Objects』(過去レビュー)から2年、Surgeon名義でのニューアルバムが完成した。前作ではハードテクノの作風にモジュラーシンセを導入しながらも、それに拘り過ぎたせいかダンスのグルーヴが活かしきれずに今思うと前衛に寄ってしまった感もあるが、本作ではモジュラーシンセを導入しながらも過去の暴力的なダンス・グルーヴも復活し愉快痛快なゴリゴリテクノを作り上げている。出だしの"Seven Peaceful Deities"こそパルスのような反復音とモジュラーシンセのギラついた響きによるビートレスな作風だが、この表現は嵐の前の静けさと同義だ。続く"The Primary Clear Light"からボディーブローを喰らわす跳ねるようなキックの押収とザクザクしたハイハットで暴力的なグルーヴを刻み、上モノはややトランシーでもありSurgeonにしては判り易い快楽性があるが、ここからはハイエナジーのテクノの応酬が続く。岩を砕くような鈍くも跳ねるリズムの"Courage To Face Up To"でもモジュラーシンセの特徴的なメロディーに引っ張られ、ただハードなだけではなくIDMやAIテクノの思わせる雰囲気があるのは、例えば彼のDJプレイでも4つ打ち以外がそのプレイを特徴付けるように多用なリズムや緻密な音響が故だろう。そして"earth-sinking-into-water"は非常に勢いのあるハードなテクノで、膨張する太いベースラインと共に擦り切れるようなノイジーな電子音響に覆われ、荒廃した世界の中を疾走する。中盤には勢いは抑えながらもつんのめったリズムの"Master Of All Visible Shapes"で一息入れて、捻れて狂ったような響きのシンセによって精神へと作用するサイケデリックな音で侵食しながらも、またそれ以降は弾力のある跳ねたリズムや鉈の切れ味の鈍い電子音が暴れるハードテクノがこれでもかと続き、基本的には良い意味でハードに振り切れたアルバムだ。昔のインダストリアル色濃厚なハードさとはまた異なり、シンセの中毒的な音による肉体だけではなく精神のトリップも誘発する現在形のハードテクノで、また他のアーティストとは一線を画す個性を獲得している。自身の顔がドアップになったジャケットが、正直ダサいのだけが傷。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
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