<< Domenique Dumont - Miniatures De Auto Rhythm (Antinote:ATN044) | main | 2019/2/9 NUTS @ Grassroots >>
Calm - By Your Side (Music Conception:MUCOCD-030)
Calm - By Your Side
Amazonで詳しく見る(日本盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
名は体を表すという諺があるが、Calmと名乗るそのアーティストが2018年にリリースした本作はその諺通りの音楽性を端的に示している。Calm=穏やかな、平穏なという意味を持つアーティスト名で活動する深川清隆は、元来からダウンテンポやディープ・ハウスにアンビエントといった要素を交差させながら、ダンスフロアに足を踏み入れながらも徹底して胸の奥を締め付けるような切なく叙情的な音楽を尊重していた。その意味でCalmの音楽活動は一本筋がずっと通っておりそのCalmという言葉通りの音楽を深掘りしていたが、本作はそれがより際立って強くアーティスト性を主張している。前作『From My Window』(過去レビュー)ではMoonage Electric & Acoustic Ensembleという他アーティストも招いたある種バンド的な制作だったが、本作では再度一人での制作に戻った事がよりパーソナル性を強めた事も落ち着きのある作風に影響しているだろうし、何と言ってもバレアリック・ミュージックが溢れる現在のシーンに自然と馴染む本作はCalmが元々持っていたバレアリック性を改めて提示もしている。アルバムの幕開けは"Space Is My Place"、美しいシンセのコードに合わせてCalm自身の清らかな歌や綺麗に舞うシンセのメロディーが穏やかにゆっくりとしかし雄大に展開し、後半から感傷的なギターやシンセコードへと切り替わって深い叙情を増すこの曲は、これから待ち受けるであろうドラマの始動に相応しい。そしてその曲名通りに夕焼けの中に星が現れてくるような"Afterglow And First Star"、しっとりとしたダウンテンポのリズムに輝かしいシンセが瞬きながら、湿っぽく感傷的なオルガンのソロが闇が深くなりつつある中に切なさを落とし込む。続く"Ending Of Summer, Beginning Of Autumn"はビートが入らないアンビエント色強めな曲だが、アナログシンセの引き締まって光沢感のある音が続く中に咽び泣くように切り込んでくるギターやほのぼのとしたシロフォンがしっとりした情緒を生み、深く心に潜り込んでいく内省的な雰囲気が強い。"Sky, Color, Passing"や"Shade Of Tree"のように活動初期のニュー・ジャズの系譜に連なる作風もあり、ざっくりとして生っぽいジャジーなビート感が大らかに揺蕩いながら、そこに無垢なシンセのレイヤーや素朴な歌が清らかな空気を持ち込こんで、落ち着いたムードながらも心の奥底から喜びが溢れ出すその世界観はバレアリックと共振している。そしてアルバムの最後を飾る"You Can See the Sunrise Again"も繊細でジャジーなリズムを刻んでおり、そこに一寸の曇りもないポジティブなシンセのメロディーやコードを重ねて、シンプルな作風ながらも心を開放するリラックスした雰囲気はアルバムを締め括るのに相応しい。全体として真夜中のクラブ/ダンスフロアよりも、静かに時が始まる早朝から長閑な昼を過ぎてオレンジ色に染まる夕暮れ時の時間帯という印象で、熱狂的な興奮よりも聞いていて心が穏やかに安堵するその音楽は、最早クラブ・ミュージックのリスナーだけで聞くのは勿体無いくらいだ。Calm流のバレアリック・ミュージックは、これまで以上にメロディアスでポップとして通用する。



Check Calm
| ETC4 | 22:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
スポンサーサイト
| - | 22:30 | - | - | |

コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://matyu.jugem.jp/trackback/4568
トラックバック