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Chris Coco - Indigo (Music Conception:MUCOCD031)
Chris Coco - Indigo
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バレアリック・ミュージックが世界的に盛り上がる現在のシーン、日本においてはその道を求道的に歩み続けるCalmがその先駆者である事は間違いないが、そのCalmが自信を持って彼が主宰するMusic Conceptionから送り出したのがChris Cocoによるニューアルバムだ。Cocoは80年代後半から活動を開始し、90年代初期に訪れたイビザのバレアリック・ミュージックに強い影響を受け開眼し、その中心的存在であるイビザのCafe Del MarやCafe MamboのレジデントDJを務めるなどこのシーンの重鎮の一人。そんなアーティストが最新作に名付けたタイトルは『Indigo』で、日本に何度か訪れる度に日本の藍色に魅了されたそうで、この色に対するイメージや意味を音楽へと転換させたと本人は述べている(参照)。そんなコンセプトから生まれた音楽は全編淀みの無いクリアな多幸感に満たされたチルアウト/バレアリックな響きで、開始となる"Event Horizon (In)"からしてビートレスな空間にほのぼのとした電子音のメロディーが静かに浮遊しながら淡いシンセのディレイが広がるこの曲は、Meditation Y.S.(Yoshihiro Sawasaki)の音に意味を込めずに底抜けにオプティミスティックなアンビエントを思い起こさせる。続く"Pou Des Lleo"もビートの無いぼんやりとしたアンビエントだが、ピアノやギターにベース等の有機的な音色を前面に打ち出しながら透明感あるエレクトロニクスも自然に溶け込んで、喧騒から離れた何処か落ち着いた時間が過ぎる田園地帯の牧歌的な雰囲気に心が安らぐ。そしてCalmと一緒に制作した"Indigo"は胸を締め付けるトランペットやピアノも用いられて確かにCalmらしいセンチメンタルな雰囲気が強く出ており、ざっくり生っぽいリズムも合わせてしみじみとした郷愁が溢れ出る音楽は、静寂の中に凛とした気品が感じられる。"You Are Exactly Where You Need To Be"も繊細で美しいピアノが静けさの中に点々と描かれ、抽象的でぼやけたシンセがキャンパスに滲みながら広がっていくようで、淡くも美しい色彩感覚がドリーミーな風景を喚起させる。"Onda"はまたしてもMeditation Y.S.路線のオプティミスティックな響きを活かしたダウンテンポ・アンビエント、天上へと誘われる夢心地な時間。最後は"Event Horizon (In)"と遂になった"Event Horizon (Out)"、豊かな色彩とクリアの響きの電子音と壮大なオーケストラの音が一つとなり豪華絢爛でありながら、音の隙間を活かす事で気品良さも残した壮大なバレアリック・サウンドは、またここからアルバムの開始へと繋がる事でアルバムの世界は何度でもループする。イビザと言うとどうしても夏の商業的で享楽的なパーティー・シーズンが有名なものの、其の地には豊かな自然が自由奔放に広がる場所もあるようで、このアルバムからはやはり後者のイメージが適しているだろうし、それは日本の藍色の深い感情や穏やかな安堵のイメージと被さる点もあったのだろう。ただひたすら心の安静を取り戻す清々しくもドリーミーなこのバレアリック・ミュージックは、流石イビザでの長い音楽経験に裏打ちされた真髄がある。



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