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2019/4/19 Deep Distance @ KGR'n
神楽坂というクラブとは一見無縁の場所に生まれたクラブ・KGR'n。2017年5月にオープンだから既に2年が経過しようとしており、外国のいわゆるタレントに頼らずとも国内のアンダーグラウンド勢らがレジデントパーティーを開催するなどして、神楽坂にパーティーを着実に根付かせている。そんなレジデントパーティーの一つがその名も「Deep Distance」で、Dessous Recordings等からのリリースも高い評価を得ているIori Wakasaと様々なフェスやへの出演やDJ Wadaとのcontattoを主宰するKo Umeharaの二人が主宰となり、正にそのパーティー名通りに深い場所まで到達させてくれるであろうと予想される。このパーティーは3回目の開催となるが、ようやく遊びに行くタイミングが見つかったので、満を持してパーティーへと足を運んできた。
当方は一年ぶりとなるKGR'n、先ずは地下にあるドアの向こうにはバースペースが待ち受けているが、洗練されたモダンな内装は前のままだがドリンクを買う際にEdyやスイカ等の電子マネーで支払いが出来るようになり、これなら余り手持ちが無くとも遊ぶのに困らないという点でこの取組は評価出来る。またアルコールも500円からあり、このご時世に価格を抑えながらの運営は好評価だ。

そしてフロアへと移動するとこちらは何の飾り気も無い内装と薄暗い照明のダンスフロアは、その簡素な作りと閉塞感も相まってアンダーグラウンド感を生み出している。分厚く出る低音、クリアな響き、小さいフロアながらも迫力のある音響で、どうやらパーティー前の早くからレジデントの二人がしっかりと音の調整をしていたようで良い鳴りをしている。Ko Umeharaの一回目のプレイの途中だったが、まだ序盤だからかごりごりと厳つくもややディープな音響のあるテクノでぬめっと深みに嵌めていく。爽快なパーカッションだったり鈍いアシッドが這いずり回ったりと、テクノを軸にしながらも曲によりそれぞれ個性を引き立てているが、一連の流れは無骨さで一貫しており暗き闇が支配するKGR'nのフロアに上手くはまっている。プレイの途中からだったので30分程だったが、Umeharaのプレイによって十分に気分は高められた。

続くはIori Wakasa、隙間が目立つ位にすっきりした曲の構成、そしてややハウシーなグルーヴへと変化してスムースな流れを作る。Radio Slaveのボイス・サンプルのループがクールな"Don't Stop No Sleep"や叙情的な上物が持続するテック・ハウスは、キックは図太く刻みながらも官能的で艶やかな雰囲気があり、自分がIoriのプレイから常に感じるものだ。しかしこの日はより攻撃的でハウスのグルーヴ感を保ちながらも勢いを増し、そしとKiNKによる極悪かつ不気味なアシッドがそこらじゅうを這いずり回る"Throwing Elbows"も飛び出すなど、飾り気の無い場所だからこそ激しいテクノが合うのだろうと判断したのか、Ioriにしては随分とダークで激しいテクノ寄りな選曲だ。シャッフル気味に弾ける激しいテクノ、重圧あるキックで押し通すテクノなど、怒涛の勢いでフロアを飲み込んでいく。特にPowderのブレイク・ビーツ風でざらついた音響の"New Tribe"は溜まった憤怒が爆発する如くのハイエナジーな瞬間で、ピークタイムらしい流れを作り出していた。そこで一旦山場を越えた後はややテンションを抑制して、ダビーでディープ目なハウスや色っぽいポイス・サンプルも用いて流れを均し、上げと下げの時間帯を上手く盛り込む。激しい時間帯から一転して深く闇の中に潜っていく展開は覚醒感を煽るが、そこから再度浮上して荒々しいテクノへと戻っていくなど、Ioriのいつものエモーショナル性強いハウスとは異なりながらも攻撃的なテクノは魅力的で、90分のプレイはあっという間に過ぎ去った。

Umeharaの2回目のプレイ、もう時間は丑三つ時。グルーヴは猛然と走っていて激しいテクノで猪突猛進する如くハイテンションだ。メロディーではなく機械的な反復音を重視したツール性の高い曲を用いて機能的に踊らせるプレイで、情緒やエモーショナル性よりは肉感的かつ野性的なエネルギーが迸る。とはいっても単純な4つ打ちだけで押し通すわけではなく、微細なアシッドのうねりやヒプノティックな電子音を織り混ぜて精神にも作用する覚醒的な響きを用いて、肉体面と精神面の両方から猛烈に刺激する。ハイテンションを保ちながらも単調にならないのはそういった味付けのおかげで、色味は褪せてモノクロな非常に直球テクノではあるが機能性を活かして煽っていく技が上手い。装飾の少ない簡素なフロアということも影響しているのだろう、激しく荒々しいテクノセットと対峙する事を余儀なくされるが、そのおかげか音だけに集中する事が可能となり荒れ狂うグルーヴに身を任せて踊るのが何とも快楽的だ。ひりつくような緊張感が続くテクノセットに対し、フロアにいる誰もが音だけに身を任せ黙々と体を動かし続ける様は、本当に音好きな人が集まってダンス・ミュージックを楽しんでいるように思われ嬉しくなってくる。そしてそんな盛り上がっているミニマル性の強いテクノの流れの中に、"Groove La Chord"が投下された時は意外性と共に壮大な叙情感に満たされた瞬間でもあるが、そんな名曲さえも普段よりハードに染まっていたのはやはり前後の流れが活きているのだ。そこから直ぐにハードかつひんやりとしたテクノへと戻ると更に荒々しさを増し、一向にテンションが落ちる気配はない。そのまま結局二時間以上も緊張感を切らす事なくフロアにいる客達を躍らせ続けて、朝方になりIoriの2回目のDJへと交代。

過去のパーティーは朝10時頃まで開催されていたと聞いていたが、となると朝の5時頃でもまだ折り返し地点といったところか、まだまだ二人によるプレイは"Deep Distance"を目指していくのだろうと感じられたが、筆者はここら辺で体力も続かず脱落。勿論始発まででの時間帯だけでも、二人の派手な選曲に頼らずに硬質で無骨なテクノを貫くDJプレイの魅力は存分に体験出来たし、何よりそんな音とクラブの雰囲気の相性は抜群で、そこに集まった硬派な客層が熱心に音楽を楽しむ様も素晴らしかった。神楽坂というクラブがまだ馴染まない場所だからこそ音楽の熱心な好き者だけが集まるのかもしれないが、クラブとしての魅力も十分なので是非とも神楽坂にクラブが根付いて欲しい。
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