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2019/5/10 Theo Parrish Japan Tour 2019 @ Contact
半年前には盟友Marcellus PittmanとのB2Bで来日したばかりだが、それから半年も経たずに来日となるデトロイトの至宝・Theo Parrish。あれはあれで話題性という点においては十分でそれぞれのプレイを対比する意味でも興味深い一夜であったが、しかしやはり醍醐味はソロで長い時間をかけて自身の世界を作り上げていくロングセットにあるのは間違いなく、今回はそんな要望に応える一夜だ。
今回はセカンドフロアにDJを用意する事もなく、メインフロアのみでDJがプレイするというある意味では贅沢でありつつまたある意味ではDJが少ない事が集客的な面でどうだろうかという心配もあったが、蓋を開けてみればやはりその人気は絶大で25時前にフロアに入った頃にはかなりの混み具合、既にパーティーの熱気は高まっていた。フロアは真っ暗でTheoへとDJが交代した正確な時刻は不明だったものの、やけに太く重いキックのブラックネス溢れるスモーキーなハウスを強烈なイコライジングによって空間を捻じ曲げるような処理をしていたから、おそらくその辺りからThepのDJだったのだろう。前のDJに引きずられたのもあったのだろう、最初からアッパーかつパワフルなプレイで暴力的な低音や籠もってくすんだ音響はやり過ぎにもかかわらず、大胆で躍動感溢れる勢いには抗えない。と思っていると"Get Your Own (Joey Negro Club Mix)"で生々しく陽気なディスコ・ファンクへがらっと転調させグルーヴを組み直し、もうこの時点でTheoらしいジャンルの壁を越えていく様が現れる。そこからの土着的なアフロ・ファンクやポップな雰囲気もある人懐っこいディスコに激情ソウルで煮えたぎるディスコと黒い音を軸に繋ぎつつ、Kaidi Tathamの流麗でしなやかなモダン・フュージョンである"Joyous"へと展開する流れは、古き時代を咀嚼しながらも現在のダンス・ミュージックへ馴染ませていく音楽性が感じられ、ブラック・ミュージックという共通項をもって時代を超越する。そして"My Love Is Free (Walter Gibbons Mix)"のネタを用いた何処かいなたく垢抜けない"Free Lovin' (Original Balihu Mix)"、いつしかテンションは抑えられて、その代わりににこやかでハッピーな空気に染められてフロアは嬉々としている。勢いではなくムードでパーティー感を演出し、そこに咽びなくような本格ジャズも織り混ぜてフロアを情熱的に染めていくが…としっとり気分に浸っていると、突如ダークかつサイケデリックなテクノを繋げてきて、気分を高揚へと振り戻す。こんなに振り幅の広い展開があるのにまだプレイ開始から一時間、序盤からTheoのぶっ飛んだ世界に魅了されずにはいられない。

そこからはハウスの4つ打ちが中心、軽快にダンスなグルーヴが刻まれるが歌モノのソウルフルなハウスから金属が錆び付いたようなロウ・ハウス、上品で耽美なディープ・ハウスなど一言でハウスといっても幅は広い。中には簡素で色味が消えたような冷えたツール系のハウスもあるが、しかしそれも含めてTheoがミックスをすればそれらの曲はどれも高い温度を持ったエネルギーが溢れる流れとなり、フロアは汗が湧き出る程に熱量を増していく。大地を揺らし跳ねるように刻まれるリズムは徐々に大胆になり、芯の太いグルーヴが現れながらも一部の音を削り落とすイコライジングも施して、曲自体を彫刻するように過激な音響で展開を作っていく。そしてハウス・クラシックである"Day By Day (Chez 'N' Trent Vocal Mix)"は魂を揺さぶるエモーショナルなハウスながらも、Theoがミックスをする事で肉厚な圧力も増しがつんとフロアをロックする曲へと変容。とハウス中心の流れから次第に歌モノや、ディスコ〜ジャズ・ファンクへと振れてライブフィーリング溢れけたたましいドラミングも暴れだし、強烈にフロアを掻き乱して熱狂の中へと連れて行く。

情熱的なラテンビートから明るく陽気なファンクやディスコと、生音を軸とした時間帯は曲毎に異なるグルーヴがあり、その変化に揺さぶられ所謂一般的なクラブ・ミュージックのスムースなビート感ではなくとも、粗削りな音の彫刻の効果もあって肉体への刺激は大きく自然と体も揺れる。それらの古典的な音楽はテクノやハウス以上に汗臭さや熱量が伝播していくが、Theoのプレイの魅力の一つにこういったディスコやファンクに荒削りな音響処理を施す事で衝動を加える音楽性が挙げられるだろう。その流れでファンキーなギターカッティングやストリングス使いが豪華でド派手なディスコの"Keep On Running (Zernell & Goodking Edit)"に突入しフロアは激しくポジティブな4つ打ちに飲み込まれ、怒涛のグルーヴへと突入しアッパータイムで駆け抜ける…かと思いきや、その最中に音を全て切って無音状態になる驚きの展開に、何かトラブルだろうかと不安になる。が、暫くしてざっくりエレクトロニックビートが強めのヒップ・ホップ調の曲で再開すると、しなやかなリズムが優雅なモダン・フュージョンで優雅に舞い、そこに続く"I Will Wait (Honeycomb Vocal Mix)"の耽美でアーバンな歌モノハウスとくれば、その流麗で優美な一連の流れに陶酔せずにはいられまい。

そしてカチッと硬いパーカッション炸裂するトライバルなハウスで勢い付き、エグい電子音のループが快楽的な艶のあるテック・ハウスも飛び出したり、ここから電子音中心の流れにいくのかと思わせたところで、Ahmad Jamalの"Yellow Fellow"の激しくも美しいピアノが闇夜に魅せられる情熱的かつファンキーなジャズへと転換。躍動するグルーヴを途切らせる事はなく、激しいリズムが暴れながらフロアを興奮へと包み込んでいく。生ドラム炸裂なジャズ寄りの曲を立て続けに投下し、変化球的らしい複雑なリズムによって激しくと揺さぶりをかけながらエモーショナル性の高いメロディーに耳は引き付けられる。そのままいつしか張り詰めた緊張は少しずつ和らぎ、光に照らし出されたフロアとしっとりムーディーな曲調によって束の間の微睡んだ朝を迎えていた。しかしまだまだ落ち着くには早過ぎると言わんばかりに、激しい金属音が脳内に響き渡るロウ・ハウスをぶっこんできて再度フロアは暗闇の中で狂騒へと戻っていく。ごりごりと厳ついマシンビートが疲労の溜まった肉体を叱咤するように刺激し、バランスの崩れた音響は粗削りながらも重低音となり押し迫り、今度はエレクトロニックな時間の到来だ。

そのように各時間帯で音楽性はどんどん移り変わり、強烈で激しいミックスも相まって一夜を通して熱い感情が込められたストーリーを作っていくプレイは、どの時間帯どの音楽であっても魅力的だ。特にこの日は普段よりもスムースな繋ぎだと感じる事が多く、その点でもジャンルの壁を超えた選曲ながらもハードな過激さとエレガンスが自然に入れ替わり、多様なグルーヴを紡ぎながらも上手くTheoの世界観として纏まっていた。当方は4時間程DJプレイを堪能してパーティーを離れたが、それでもまだまだ折り返し地点だったようで今のご時世にこんなロングセットを体験出来るパーティーはそうは無いので何とも素敵なパーティーだったと思う。

■Theo Parrish - Extended Boundaries(過去レビュー)
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