2019.08.14 Wednesday
ニュー・エイジやアンビエントの再燃・再発掘が作品のリリースとしては肌に感じるものの、実際にそれをクラブ/パーティーで聞く機会は未だ少ない。どうしてもクラブ側が盛り上げようとするとメインフロアもセカンドフロアもダンス中心に向かいがちな現状において、敢えてアンビエントやニュー・エイジ、いやそれだけでなくエクスペリメンタルやワールド・ミュージックとダンスに執着する事ない音楽を軸に、オーガニックからエレクトロニクスが交差し時代や国境を超越した世界を構築するパーティー『Euphony』が立ち上がった。元来ワールド・ミュージック性が強いInoue Kaoruが発起人となり、バレアリックやアンビエントに造詣の深いmaa、そしてサイケからアンビエントまで広範囲なshunhorの3人が紡ぐバレアリックのその先へ。時代にジャストにハマるパーティー『Euphony』が始動する。
オープニングを担当するのはInoue、ビートレスな状態に弦の響きが静謐な東洋の雰囲気の曲、民族的なパーカッションや笛の音色に癒される大地を感じさせる曲、そしてMark Barrottによる超自然的な瞑想アンビエントの"Deep Water"と序盤からダンス性を排除しながら、エレクトロニクスとオーガニックが境目を消しながら融和する。一点の闇も無いなピュアなバレアリック感、創造力を喚起させる豊かなサウンド、穏やかな包容力と初々しい生命力に満ちている。そして現行ニュー・エイジで台頭するBartosz Kruczynskiの"In The Garden"、木琴系の素朴な響きと美しい弦が広がり、そこから異国情緒溢れるワールド・ミュージックも展開しながらロマンチックな夕闇が迫ってくる。
この日は序盤は一時間毎にDJを交代となり、続くはmaa。Wilson Tannerによるオーボエらしき微睡んだ旋律にうっとりさせられる"Sun Room"で牧歌的に染めてよりバレアリックかつニュー・エイジな音楽性に向かい、再度Bartosz Kruczynskiのマリンバのミニマルなフレーズに引き込まれる現代音楽的な"If You Go Down In The Woods Today"から、鳥の囀りも用いたフィールド・レコーディングのアンビエント、シンセのミニマルな反復に原始的な雰囲気の胎動が刻まれるエキゾチックな曲、Mark Ishamによる透明感のある優しいアンビエントの"Raffles in Rio"等を用いて、持続性を伴うフラットな感覚で快適に聞かせる。そしてTornado Wallaceの壮大な宇宙遊泳へと誘うドラマティックな"Voices"と、穏やかになだらかにぐっとエモーショナル性も伴って盛り上がっていく。国や民族を越えて紡がれる音楽の旅はどこまでも安寧とした地平が広がり、様々な景色を見せるサウンド・スケープとなる。
shunhorがプレイする頃にはフロアも人で埋まってきて、静かに賑わいを見せる。重厚なドローンに包まれるアンビエントから開始しエレクトロニックでおどろおどろしいダークさがありながらも、そこから寺院の密教を思わせるベルの音が反復する宗教的なアンビエントや、魔術のような歌に幻惑するドープな曲など、中には明確にビートを刻みながらダンス性もあるサイケな世界へ引き込んでいく。俗っぽく快楽的な電子音響とエキゾチックな世界観が同居し、前二人ののDJに比べるとエネルギッシュでダンスフロアをも意識して、フロアを躍動させる。次第に呪術的な歌やスピリチュアルな空気を強め、魔術で操るように訝しく原始的なグルーヴの曲がフロアを支配し、終盤にはアシッド・テクノも飛び出して辺境のエキゾチックな雰囲気はありながらも随分と攻撃的に煽るプレイ。
そしてInoueの二回転目、既に多くの人で賑わう高揚したフロアの雰囲気に合わせてシンセのシーケンスが快楽的なJean Michel Jarreによる"Arpegiator"でぐぐっと上昇気流を作る。ニュー・エイジやアンビエントといった音楽を的確に伝える古典、そこから耳にした事は無いのに懐かしさが込み上げるエレポップ調のダンス・ビートで緩やかに踊らせつつも、今度はフィールド・レコーディングを取り入れたパーカッシブで壮大な景色が広がる自然世界へ没入した曲へと転調するなど、こういったエレクトロニックとオーガニックや都市と辺境を行き交うコスモポリタンな世界観が如何にもInoueらしい音楽なのだ。そこからMildlifeの牧歌的なアナログ感覚溢れるジャズ・ファンクの"The Magnificent Moon"でフロアをリラックスさせて和ませたりと、こういった普段のクラブ/パーティーでは出来ない選曲はInoueが私的に家で楽しむBGMにも思われる。
二回転目はDJは30分毎と徐々に感覚が短くなってmaaが登場。虫の鳴き声のサンプリングを交えながら、Waak Waak Djungiの辺境を匂わせるエスニックなニュー・エイジの"Djambaku"が土着的な大地を想起させ、そこにGigiの土臭い生命力が宿るダビー・アンビエントの"Abet Wubet"でフロアに平穏を取り戻しヒーリングな時間もありと、再度ニュー・エイジやアンビエントへと回帰する。曲によっては大地の胎動の如くリズムがうねる構成もあるが、ダンスへも向かうというよりはあくまでオーガニックな生命力の萌芽を感じさせるもので、穏やかに肉体を揺らす。オプテミスティックで開放的な響きはクラブという閉鎖空間の中に、太陽の光が降り注ぐような明るさを灯して、何とも牧歌的な時間が流れていく。
とパーティーは佳境に入り次第にビート感を強めて盛り上がっている時間帯だったものの、日曜の夜という事で当方はパーティーの途中で離脱。しかしパーティー序盤のまだ静謐さが残る空いたフロア、Zeroのクリアな音響の中でニュー・エイジやアンビエントにワールド・ミュージックを、大きな音量で全身で浴びられた快適性はこの『Euphony』だからこそだろう。普段は踊らせる事を目的とするDJが、しかし無理矢理に上げる事の無いジャンルを越境するリスニング志向の選曲は、アンビエントやニュー・エイジが今盛り上がる現代においてパーティーに足りなかった要素を埋める存在だ。汗だくになって熱狂的になるダンス・パーティーも当然楽しいものの、普段とはちょっと変わったオルタナティブな音楽をじっくりと堪能したい、そんな気分になったら是非『Euphony』へ。
この日は序盤は一時間毎にDJを交代となり、続くはmaa。Wilson Tannerによるオーボエらしき微睡んだ旋律にうっとりさせられる"Sun Room"で牧歌的に染めてよりバレアリックかつニュー・エイジな音楽性に向かい、再度Bartosz Kruczynskiのマリンバのミニマルなフレーズに引き込まれる現代音楽的な"If You Go Down In The Woods Today"から、鳥の囀りも用いたフィールド・レコーディングのアンビエント、シンセのミニマルな反復に原始的な雰囲気の胎動が刻まれるエキゾチックな曲、Mark Ishamによる透明感のある優しいアンビエントの"Raffles in Rio"等を用いて、持続性を伴うフラットな感覚で快適に聞かせる。そしてTornado Wallaceの壮大な宇宙遊泳へと誘うドラマティックな"Voices"と、穏やかになだらかにぐっとエモーショナル性も伴って盛り上がっていく。国や民族を越えて紡がれる音楽の旅はどこまでも安寧とした地平が広がり、様々な景色を見せるサウンド・スケープとなる。
shunhorがプレイする頃にはフロアも人で埋まってきて、静かに賑わいを見せる。重厚なドローンに包まれるアンビエントから開始しエレクトロニックでおどろおどろしいダークさがありながらも、そこから寺院の密教を思わせるベルの音が反復する宗教的なアンビエントや、魔術のような歌に幻惑するドープな曲など、中には明確にビートを刻みながらダンス性もあるサイケな世界へ引き込んでいく。俗っぽく快楽的な電子音響とエキゾチックな世界観が同居し、前二人ののDJに比べるとエネルギッシュでダンスフロアをも意識して、フロアを躍動させる。次第に呪術的な歌やスピリチュアルな空気を強め、魔術で操るように訝しく原始的なグルーヴの曲がフロアを支配し、終盤にはアシッド・テクノも飛び出して辺境のエキゾチックな雰囲気はありながらも随分と攻撃的に煽るプレイ。
そしてInoueの二回転目、既に多くの人で賑わう高揚したフロアの雰囲気に合わせてシンセのシーケンスが快楽的なJean Michel Jarreによる"Arpegiator"でぐぐっと上昇気流を作る。ニュー・エイジやアンビエントといった音楽を的確に伝える古典、そこから耳にした事は無いのに懐かしさが込み上げるエレポップ調のダンス・ビートで緩やかに踊らせつつも、今度はフィールド・レコーディングを取り入れたパーカッシブで壮大な景色が広がる自然世界へ没入した曲へと転調するなど、こういったエレクトロニックとオーガニックや都市と辺境を行き交うコスモポリタンな世界観が如何にもInoueらしい音楽なのだ。そこからMildlifeの牧歌的なアナログ感覚溢れるジャズ・ファンクの"The Magnificent Moon"でフロアをリラックスさせて和ませたりと、こういった普段のクラブ/パーティーでは出来ない選曲はInoueが私的に家で楽しむBGMにも思われる。
二回転目はDJは30分毎と徐々に感覚が短くなってmaaが登場。虫の鳴き声のサンプリングを交えながら、Waak Waak Djungiの辺境を匂わせるエスニックなニュー・エイジの"Djambaku"が土着的な大地を想起させ、そこにGigiの土臭い生命力が宿るダビー・アンビエントの"Abet Wubet"でフロアに平穏を取り戻しヒーリングな時間もありと、再度ニュー・エイジやアンビエントへと回帰する。曲によっては大地の胎動の如くリズムがうねる構成もあるが、ダンスへも向かうというよりはあくまでオーガニックな生命力の萌芽を感じさせるもので、穏やかに肉体を揺らす。オプテミスティックで開放的な響きはクラブという閉鎖空間の中に、太陽の光が降り注ぐような明るさを灯して、何とも牧歌的な時間が流れていく。
とパーティーは佳境に入り次第にビート感を強めて盛り上がっている時間帯だったものの、日曜の夜という事で当方はパーティーの途中で離脱。しかしパーティー序盤のまだ静謐さが残る空いたフロア、Zeroのクリアな音響の中でニュー・エイジやアンビエントにワールド・ミュージックを、大きな音量で全身で浴びられた快適性はこの『Euphony』だからこそだろう。普段は踊らせる事を目的とするDJが、しかし無理矢理に上げる事の無いジャンルを越境するリスニング志向の選曲は、アンビエントやニュー・エイジが今盛り上がる現代においてパーティーに足りなかった要素を埋める存在だ。汗だくになって熱狂的になるダンス・パーティーも当然楽しいものの、普段とはちょっと変わったオルタナティブな音楽をじっくりと堪能したい、そんな気分になったら是非『Euphony』へ。