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Prins Thomas - Ambitions (Smalltown Supersound:STS344CD)
Prins Thomas - Ambitions
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2017年にタイトル通りに5枚目となるアルバム『5』(過去レビュー)をリリースした後も、Bjorn TorskeやBugge Wesseltoftとも共同制作を行い2枚のアルバムをリリースと、多忙な活動を続けているノルウェー産ニュー・ディスコの立役者の一人であるPrins Thomas。2016年の『Principe Del Norte』(過去レビュー)ではKLFやThe Black Dogにインスパイアされたアンビエントに挑戦したかと思うと、その次の『5』ではクラウト・ロックどころかアシッドへも手を出して、ニュー・ディスコという枠組みを越えてそのアーティスト性は探求の旅へと出ているようだ。そしてこの最新作は公式アナウンスではJaki Liebezeitや細野晴臣にDaniel Lanois、Shinichi AtobeにRicardo Villalobosらにインスピレーションを受けて制作されたとの事で、それだけ聞くとアンビエントの雰囲気をクラウト・ロック調にミニマルで展開したのか?と少々謎な印象を受けなくもないが、蓋を開けてみればニュー・ディスコを軸にしながらも更にジャンルの折衷主義な音楽性でアーティストとして深化を果たしている。アルバムの冒頭3曲はコンパクトな作風で、鳥の囀りも用いつつ牧歌的な風景が広がる自然主義的なノンビートの"Foreplay"で始まり、生っぽいビート感と湿り気を帯びて切なさを誘うシンセとファンキーなベースにぐっと胸が締め付けられるダウンテンポの"XSB"と、緩んでリラックスした楽天的なムードが先行する。Thomasにとっては初のボーカル曲となる"Feel The Love"は、これぞニュー・ディスコなブイブイとした快楽的なシンセベースともたもたとしたリズムが効いていて、そして甘ったるくも霞のような歌と相まってブギーながらも実にドリーミーな多幸感に包まれる。中盤の2曲は10分超えの大作でここでこそ前述のアーティストに触発されたのも何となく感じられるというか、土着的で乾いた乱れ撃つパーカッションに奇怪でスペーシーな電子音が飛び交い、快楽性を伴いながら酩酊するクラウト・ロック風なバンド・サウンド的でもある"Ambitions"は、Villalobosの時空さえも捻じ曲げてしまうようなミニマルのサイケデリアがあり、アルバムに於けるハイライトだろう。一方"Fra Miami Til Chicago"はクラウト・ロックとアンビエントの邂逅で、幻夢のサイケデリックなギターのフレーズに濃霧のようなドローンを被せジャーマン・プログレがもう少しダンス化したらを具現化しており、ぼんやりとした夢の中を彷徨い続ける甘美なバレアリックな雰囲気に身も心も融けてしまう。ダンス・ミュージックとしての体は残っているが、ハイエナジーな興奮に溢れたダンスフロア向けの音楽ではなくもっと精神へと作用する中毒的なサイケデリアが強くなり、ダンス/リスニングの境界を埋めながらニュー・ディスコの更にその先へ、Thomasの音楽性は深化と拡張を続けている。



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| HOUSE14 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(1) | |
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Ambitions / Prins Thomas
またまた出ました、Prins Thomas の今回はソロ名義でのニューアルバム。 タイトルがいったんナンバー系に戻ったと思ったら、また変わりましたね。 それはさておき、前作「5」からは 1 年以上経っているのだけど、その間、コラボ作やら Mix やらがリリースされてい
| 音盤収集病患者の館 − 裏 MDRH | 2019/10/03 1:25 AM |