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2019/11/17 PRIMITIVE INC. 13th Anniversary MASTERS AT WORK in JAPAN - Our Time Is Comming - @ ageha
誇張でも何でもなく正にハウス・ミュージック界の最強の二人組コンビ、Louie VegaとKenny Dopeから成るMasters At Work。近年は別々にソロ活動が中心なものの、ラテンやアシッド・ジャズをハウスに取り込んだNuyorican Soulやよりクラブ・トラック的なKenlouといったプロジェクト、そして当然Masters At Workとしての功績はハウス・ミュージックという枠を越えてダンス・ミュージックとして大きな影響を残すレジェンドな存在。そんな二人がMAWとして揃う事は近年は稀であるのだが、ここ日本においては2016年以降PRIMITIVE INC.が主体となってMAWを軸に据えたパーティーを開催しており、当初はその余りのゴージャスさに単年開催かと思っていたものの蓋を開けてみれば本年まで4年連続開催とある種の恒例お祭り行事として定着するまでになった。本年度もメインフロアではMAWのみのロングセットを中心に、他のフロアでは近年再燃するジャパニーズ・ハウスから横田信一郎やジャンルをクロス・オーヴァーするKaoru Inoue、DJ NoriとMuroによるアナログセットを披露するCaptain Vinylらバラエティー豊かな人材が揃って、祝祭な一日を作り上げる。
序盤は普段は開放していないagehaの秘密の部屋であるRomper Roomへと行き、Kaoru Inoueのプレイを聞く。他のフロアが熱狂的に盛り上がるダンス・ミュージックを中心とした場所なのに対し、この場所は奥まった場所にひっそりと存在するラグジュアリーな雰囲気も備えており、パーティーの中ではやや異質な空間だ。Inoueは"(Where Is The) Sunshine"の哀愁滲むソウルフルなジャズから開始し、そこから弦の音色が美しいHorizontの瞑想感強いニューエイジの"Light Of Darkness"へと繋ぎ、他のフリアが基本ハウスで上げる状況に対しこの場所だけはやや浮世離れしたように独特の雰囲気を放つ。オーガニックで生暖かい響き、ダンスに依存しないコスモポリタンな音楽性で、ダンスパーティーの環に属しながらもそういった派手さとは無縁のむしろ静謐かつ侘び寂びな感覚さえある。熱狂的というよりは大人の余裕さえ感じられるラグジュアリーな場所に適合した音楽性で、ほっと一息チルアウトな空間で音に酔いしれる。中にはポップで和んだ曲もプレイし、体がゆらゆらと揺れながらも安らぎを感じる時間が過ぎていく。ジャズや民族音楽、フュージョンと色々とジャンルを渡り歩く流れは正にInoueの真骨頂で、艶やかにそして湿っぽく大人のムードは大人の円熟味が溢れている。そして最近よく彼がプレイするMildlifeのリラックスして豊潤な響きを放つフュージョンの"The Gloves Don't Bite"も当然飛び出して、周りのフロアが熱狂的で競争に包まれるダンス・ミュージックをプレイして煽る状況で、ここだけは自由な音楽性でパーソナリティー性の強さが特に発揮されている。Womack & Womackの艷やかなシンセが効いたファンクかつR&Bな"M.P.B."ではセクシーにフロアを染め、徐々にゴージャス感も織り交ぜながらもグルーヴは落ち着きを伴っており、やらた滅多に上げる事なくラウンジの空間性を作り上げている。終盤にはDaytonのブギーなシンセファンクな"The Sound of Music"も飛び出して、ぐっとカラフル性を増した高揚感を得て真夜中の興奮するパーティーの時間帯へと橋渡しを行っていた。

さて、18時過ぎにメインフロアへと移動するもまだLouie Vega単独のプレイ中。メインフロアのパワフルな音響を活かした押し迫る音圧、地響きのような低音、アッパーで骨太なグルーヴのハウス攻めで、いやがうえにも体が突き動かされる。勢いで押し通す感は強いが決してそれだけでなく情熱的なボーカルやざっくり生のラフなリズムだったりとソウルフル・ハウスな要素があり、勢いで飲み込むと同時に感情性豊かな響きも重視して、これぞハウス!と言わんばかりのプレイだ。メインフロアという事もあってズンズンと肉体を振動させるパワフルな音響は全身で浴びるという表現が相応しく、ソウルフルなハウスだけでなくごりこりとした骨太なリズムだけで引っ張っていくツールに特化した曲は特に体の芯まで響き、持続性も伴い一寸の隙もなく攻め上げる。微かに"What A Sensation"のアカペラも聞こえたりと、ただ単に曲を繋げるDJではなくアカペラやビート物も被せて激しく嵐のようなグルーヴが刻まれる中にテクニックも自然と混ぜている辺りは、流石プロフェッショナルなDJだ。

一旦屋外のWaterエリアへと移動し、楽しみの一つであったの横田信一郎ライブを聞く。やや寒くなりつつある外気の気温が火照った体を冷ますが、海辺の見えるウォーターフロントの開放感は心地好いエリアだ。横田のライブはPCとキーボードの打ち込み主体で、"Into Desert"(寺田創一の曲のはず?)で開始。シンプルなハウスの弾けるリズムにキーボードを重ねて、いきなり懐メロ的なメランコリーが爆発。そこから滑らかな流れで"Right Here! Right Now!"へと移行、ほぼ打ち込むで出来上がっているライブはスムースな流れでハウスのグルーヴを紡ぎ、横田がキーボードでメロディーやコードを重ねるスタイルで、良い意味で安定した作りの古典を楽しめる。そしてしんみりピアノと情熱的なパッドがドラマティックな"Time Traveling"からのブレイク・ビーツ気味ながらもサビでビートを抜く予想外展開な"Sun Shower"と怒濤のクラシック攻めで、懐かしい空気を纏ったシンプルなハウスは、過剰な調味料無しに素材の良さを味あわせてくれる料理のようなメロディーが素晴らしいハウスだ。そしてラップも導入したヒップ・ハウス的な曲もあったり、90年代のハウスもヒップ・ホップも混ざった時代感もある。そして必殺の民謡を織り混ぜた曲に、童謡の待ちぼうけを引用した和なハウスの"Machibouke"など、日本古来の成分を取り込んだネタものも面白い。そして可愛らしいシンセや声にブレイク・ビーツも導入した"Do It Again"と、横田のヒット曲も存分に用いて革新的ではないものの良い意味で期待通りの古典なハウス満載で、本人もノリノリ手を振りながら楽しんでいたライブは懐かしみと安堵に溢れていた。

最後は再度メインフロアへと戻り、Kenny DopeとLouie Vegaの揃ったMasters At WorkのDJへ。7台のCDJと2台のミキサーを用いたプレイは怒濤の勢いでビッグルームらしいアッパーな盛り上げ方だが、それだけでなくパーカッションを中心としたビートのみで攻める流れもあり、過剰な音が削ぎ落とされたパーカッシヴなリズムが爽快なグルーヴとなってフロアを長く揺らす展開も。そこからパーカッション乱れ打ちな"Brazillian Beat (Dope Mix)"等自身らのヒット曲も用いつつ、ラテンかつソウルフルなハスウを攻撃的かつ情熱的に紡いでいく。全くテンションを落とす事がないアッパーな流れは派手過ぎるか?と思いきや、ビート物のループやアカペラを被せたりと7台のCDは単なる見世物ではなく実際にライブのように活用し、お祭りの祝祭感にぴったりな盛り上げ方にも熟練者たる技を潜ませて、心熱くなりつつもハッピーな空気に包み込んでいく。Paul Johnsonの"Get Get Down"のピアノが効いたハウスも非常に骨太かつ粗暴なグルーヴとなって響き、再度"Beautiful People (Underground Network Mix)"の情熱的な歌と力強いビートを刻むソウルフル・ハウスへと回帰し、古典が故の安心感に満ちた揺るがないバワーが炸裂する。そこから印象的な歌がループする"Deep Inside"から生っぽいビート感に感情的な歌が激情を誘う"Thank You (MAW Mix)"とお約束にも近い展開には自然と笑みがこぼれ、これにはフロアが盛り上がるのも必至である。更にストリングスやブラスが優雅に舞い踊る"The Boss (Masters At Work 12" House Mix)"も投下と完璧なMAWプロダクションなやり過ぎお祭り選曲は、しかしこのパーティーだからこそ映えるのだ。そして予想を越えたのはまさかの"Strings Of Life"、あの印象的なフレーズを執拗にループさせて焦らしながらのオリジナルへと突入していく感動的な盛り上げ方に、その瞬間のフロアの爆発はこの日一番を記録した。そこから古典シカゴ・ハウスの"You Used To Hold Me"の妖艶に魅惑する曲へと切り替わり、そこにバレアリックなピアノが印象的な"What You Need (Club Mix)"が自然と入ってくる。ジャンルをクロスしながらも全く違和感なくいつの間に?と思う程に自然とミックスされる手腕はやはり彼等が上手いからで、そこからラストまでは張り詰めたテンションが解けて多彩でパーカシブなリズム感とラテンやジャズも盛り込んだ有機的なハウスを軸に、豊かな展開と音色によって心を陽気に躍らせる。最後の方にはフロアも明るくなる中でサルサなのかブラジリアンなのか、怒濤のパーカッション乱れ打ちにフルートがエモーショナルに彩るお祭りハウスで切なくなるなど、勢いよりも心温まる感情性の強い過去のクラシック中心で、こういったお約束な流れもハウス・ミュージックの様式美みたいなものでみんなで共感出来るパーティーとなるのだ。

MAWのクラシック満載で王道的な選曲、お祭り的な盛り上がりの中にもDJとしての細かいテクニックも潜ませて実にハウス・ミュージックの魅力がふんだんに感じられるプレイは、安心感と興奮が両立したものだった。その他にもフロア各所できっと各DJが個性豊かなハウスを含めたダンス・ミュージックで多くの客を楽しませていたのだろうが、今回はそんな中で子供連れの家族が目立っていたのが印象的だ。基本的には禁煙でキッズエリアも用意するなど、子供から大人まで老若男女問わず楽しめるパーティー作り。先細りする不安が拭えない日本のダンス・ミュージックの業界で、しかし今は親になったパーティーピープルが自身の子供を連れてきてダンスの魅力に触れさせる。それが10年後、20年後に子供が大人になった時にクラブへの足を運ぶ機会になるとすれば、こういった全ての年代に開かれたパーティーは非常に有意義なものになるに違いない。

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■Defected Presents House Masters - Masters At Work Volume Two(過去レビュー)
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■Shinichiro Yokota - I Know You Like It(過去レビュー)
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