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Barker - Utility (Ostgut Ton:OSTGUTCD46)
Barker - Utility
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世界でも有数のタレントが集まるBerghain/Panorama Bar、そんなテクノの聖地的な場所でレジデントを担うSam Barkerは、10年間ベルリンの音楽業界に身を置くアーティストだ。過去にはOstgut TonからはAndy Baumeckerと手を組みBarker & Baumeckerとしてダンスだけに偏らずアンビエントな雰囲気もあるバラエティーに富んだアルバムを2枚も出しており、アーティストとして確かな才能を持っている事は証明されていたが、何故かソロでの作品は少なく2019年リリースの本作が初のソロアルバムとなる。作品の少なさはもしかすると彼の性格に依るものだろうか、自身の発言において完璧主義としての意識が強い事を述べており、完全に納得する迄は自身の分身である作品としての音楽をリリースしたくないのだろう。そんな彼がようやくアルバムを出したという事は、当然本作への自信も相当なものに違いないが、ダンス・ミュージックに当然として存在するキックドラムを殆ど用いずにしかしダンスフロアへとも通じるこの実験的かつ挑戦的な音楽は、確かな魅力を持っている。冒頭の"Paradise Engineering"でも当然全くキックが入ってこない作風はアンビエントな様相もあるが、美しく伸びる幻想的なパッドとトランス感さえもある繊細な電子音のメロディーが深遠なる世界を繰り広げるこの曲には、物哀しいセンチメンタルなムードも充満し非常に感情的な響きだ。"Posmean"もやはりキックレスだが、しかしバウンスし脈打つベースラインとリズムのようにも用いた細かく躍動する切れのあるシンセが疾走感を生み出しており、例えキックが入らずとも高揚感のあるダンス・ミュージックとして成り立つ事を証明している。変則的なリズムを刻むようなシンセのメロディーはまるでIDMを想起させる"Experience Machines"、キックという明確なリズムが無くとも振れ幅の大きいシンセが大胆な動きによって躍動感を生み、一方で不明瞭な奥深い音響が幻惑の濃霧で満たす"Gradients Of Bliss"は夢のようなダブ・テクノで心地好い。アルバムの終盤になるとダウナーに落ち着いて、闇の中で星が煌めくような静謐な電子音の連なりが微睡みのアンビエンスを発する"Wireheading"、そして珍しく金属的で鈍い打撃音が入りながらもメランコリーな風合いの強いダウンテンポ調の"Die-Hards Of The Darwinian Order"によって静けさを取り戻しながらアルバムは幕を閉じる。見事にキックを一切使わずアンビエント/IDMの要素を持ち込みながら、しかしアフターアワーズではなく真夜中のダンスフロアへも意識を向けたノンビートのダンス・ミュージックは、今までにはなかなか見受けられなかった作風として非常に挑戦的だが、美しくもサイケデリックな電子音の響きは勿論リスニングとしても十分に機能する。重厚なキックや迫力のある音圧が無くともダンスを可能とするテクノ、クラブにおけるライブではこれがどう演じられるのかも興味深い。



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| TECHNO14 | 18:30 | comments(0) | - | |
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