Tokyo Experiment2024-03-17T22:15:56+09:00Being deep is a way of life...JUGEMManuel Darquart - The Del Sol EP (Wolf Music Recordings:WOLFEP071)https://matyu.jugem.jp/?eid=54712024-03-17T21:40:15+09:002024-03-17T12:40:15Z2024-03-17T12:40:15Z
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先日Manuel Darquartの旧作を紹介したので、引き続き2023年11月にリリースされた目下最新作である『The Del Sol EP』を紹介したい。先の紹介でもあったようにハウスからイタロ、そしてバレアリックへと言った音楽性が特徴であり、時にイタロ・...matyuHOUSE17
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先日Manuel Darquartの旧作を紹介したので、引き続き2023年11月にリリースされた目下最新作である『The Del Sol EP』を紹介したい。先の紹介でもあったようにハウスからイタロ、そしてバレアリックへと言った音楽性が特徴であり、時にイタロ・ハウスの永遠のクラシックである"Sueno Latino"をも思い起こさせるようなドリーミーで楽園的な音楽観が顕著にもなるのだが、古巣Wolf Musicへと帰還しての新作は正にそういった音楽性が強く打ち出された一枚。何と言ってもスペイン語で太陽を意味するタイトルからも分かるように、太陽の輝きが反射する爽やかな海の雰囲気を伴うイタロなドリーム・ハウス色全開で、Darquartに対してはこれを待ち望んでいたのだ。"Jerry's Song"はカラッと乾いたパーカッションにディスコティックなビート感を合わせてのどかでゆったりとした流れだが、光沢感を放つような優美なピアノコードやふわっとしたエレガントなシンセを合わせ、対して底部では重みのあるベースラインによって安定感を生み、至福に満たされたディスコ寄りなハウスのこの曲も魅力十分。しかしやはりタイトル曲の"Del Sol"だろう、どっしりしたビートとダビーなパーカッション、そして幻想的なシンセサイザーの音色を前面に打ち出してロマンティックな夢を見せるような雰囲気で、これぞ90年代のイタロ・ハウスを今に継承する作風。甘ったるく色っぽい女性のポエトリーも挿入され、色彩豊かなシンセの響きとゴージャスなピアノコードが展開する中盤以降は完全に"Sueno Latino"の現代版といっても過言ではないだろう。それをメロウなディープ・ハウスを得意とするSpace Ghostがリミックスした"Del Sol (Space Ghost Remix)"はピアノのフレーズ等は抑えつつ幻想的なシンセ使いを前面に打ち出し、リズムも跳ねるような勢いを得てダンスフロア向けのディープ・ハウスへと仕立てて、Space Ghostらしさを加えたリミックスも秀逸だ。またDarquartによる"The Vibe"、こちらはマイナーコードのシンセと落ち着いたパーカッションの効いた朧気な雰囲気のディープ・ハウスで、ジャジーさもある事からLarry Heardの憂いに満ちたディープ・ハウス路線といったところか。こういった説明だけ聞くと誰かの物真似的に受け取られてしまう危惧もあるが、イタロ・ハウスやディープ・ハウスのクラシカルな部分を継承しながら純度を高めた音楽性と言えばよいのかもしれないし、何より曲そのものがどれも素晴らしく作曲家としての才能を感じさせる。
Check Manuel Darquart]]>Manuel Darquart - In The Post EP (Planet Trip:PT011)https://matyu.jugem.jp/?eid=54702024-03-16T13:04:38+09:002024-03-16T04:04:38Z2024-03-16T04:04:38Z
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ハウスからイタロ、そしてバレアリックへと陽気で多幸感溢れる音楽性を武器とするManuel Darquart。2017年のデビュー以降、ゆったりとした活動ではあるもののCoastal HazeやWolf Musicといった実力派レーベルからの作品のリリースもあり知名度...matyuHOUSE17
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ハウスからイタロ、そしてバレアリックへと陽気で多幸感溢れる音楽性を武器とするManuel Darquart。2017年のデビュー以降、ゆったりとした活動ではあるもののCoastal HazeやWolf Musicといった実力派レーベルからの作品のリリースもあり知名度を徐々に高めているように感じる。元々はロンドンとオークランドを拠点とする二人組だったようだが、現在はLouis Anderson-Rich一人のプロジェクトとなっている。本作はシドニーのニューエイジ・ブギー系レーベルであるPlanet Tripから2022年末にリリースされたEPで、ここではバレアリック感は伴いつつダウンテンポやブギー寄りで、ダンスとしての性質が無いわけではないがより聞かせる事を主体とした内容となっている。特にレコードではA面となる3曲はそれが顕著で、例えば"Shoreline"ではアタック感の強いダウンテンポ気味なリズムにブイブイと強烈なシンセ・ファンクを合わせてつつ、綺麗目でメロウなシンセのメロディーで豊かなドリーミーながらも多幸感に包まれるのどかなエレクトリック・ファンクを聞かせている。"Late Drives"もエレクトロニックで光沢を放つようなシンセベースや安っぽいリズムマシンが80年代的な感覚だが、イタロ・ハウス的な華やかで爽快なピアノ使いによってバレアリックへと向かう辺りはManuel Darquartらしい。"Porno Balearica"も前述2曲と路線は変わらないが、更にレイドバックし透明で爽快感溢れるサウンドを前面に打ち出し、ダビーなパーカッション使いで開放感も打ち出して、真夏の明るい太陽が照らす海岸沿いの多幸感溢れるバレアリック・ダウンテンポといった世界観にうっとりさせられる。B面にはプロトハウスにも近い爽快なダンスが2曲収録されており、颯爽としたビート感にカラッとしたカウベルの響きが爽やかさを生み出す"In the Post"では、透明感溢れるシンセに時折色っぽい男性の声やキラキラとした響きも織り交ぜながらイタロ・ハウス的な楽天的なムードを生み出している。全体的なイメージとしてはやはり燦々と明るい太陽光が降り注ぐビーチ、特にゆったりとした時間が過ぎるリゾート地の海といった印象で、青い空と海が想起される。
Tracklistは続きで。]]>Felipe Gordon - Errare Humanum Est (Wide Awake Records:WA-01)https://matyu.jugem.jp/?eid=54682024-03-11T22:03:55+09:002024-03-11T13:03:55Z2024-03-11T13:03:55Z
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2014年頃から作品のリリースはしているもののEP中心で、アルバムは数多くはなかったコロンビアのFelipe Gordon。それでも近年はShall Not FadeやQuintessentialsにRazor-N-Tape Reserveなど著名なレーベルか...matyuHOUSE17
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2014年頃から作品のリリースはしているもののEP中心で、アルバムは数多くはなかったコロンビアのFelipe Gordon。それでも近年はShall Not FadeやQuintessentialsにRazor-N-Tape Reserveなど著名なレーベルからのリリースも増え、注目度も増していたのかと思う。そして2023年、彼自身が新たにWide Awake Recordsを立ち上げてリリースしたアルバムが本作『Errare Humanum Est』で、今まで彼の音楽性を全く知らなかった筆者も一聴してインパクトある音にやられて、購入を決めた次第である。過去のリリース元からも分かるようにブラック・ミュージックを下地にハウスやローファイなヒップ・ホップ、時にジャジーだったりダウンテンポだったりをサンプリング主体に組み立てた音楽が彼の持ち味のようだが、本作は一旦はそんな音楽を一つのアルバムに押し込んで集大成的に披露したような作品だろう。先ずは圧を感じさせつつもざらついたビート感が生々しいローファイ・ヒップ・ホップの"Errare Humanum Est"、管楽器のミニマルなフレーズが徐々に魂を持ったように展開し始めて、初っ端から燻り続けるような微熱を帯びたメロウネスにやられてしまう。そのまま流れに乗った先はジャジー・ハウスな"Departing"で、耽美な繊細なピアノの鍵盤ワークに対しぶんぶんと豊かなベースラインがファンキーで、優雅な表情でも力強さを発揮している。煌めくような美しい電子音が滴り落ちるような開始から、強烈なドラムブレイクが入ってきてビートが躍動する"New Beginning"も印象的で、そこから更に鈍いアシッド寄りのベースも加えてどぎついファンクネスで肉体を鼓舞する。再度、素朴なピアノや管楽器の音色がムーディーで、ゆったりと優雅な佇まいをローファイなヒップ・ホップ"Para Jose"で落としつつも、そこからタイトル通りに優雅な鍵盤ワークの下で禍々しいアシッド・ハウスを繰り広げる"Take It, Acid Comes"へと行く流れは、アルバムの中に色々なスタイルが混在し忙しなく感じつつもエネルギッシュにも思われ、何だか心がウキウキとさせられる楽しさに溢れている。他にも甘ったるい男性ボーカルが映える優美かつ骨太なディープ・ハウスの"Treat You Gently"、Kerri Chandlerを思い起こさせるテック系でズンドコ硬めなビート感が肉体を震わすハウスな"What We Gonna Do?"など、ダンスフロアでも映える曲もある。文字だけで受け止めると一見纏まりの無いアルバムのように思われるかもしれないが、ここには彼が今まで取り組んできた音楽がダンスとリスニングという狭間を埋めるように構成され、実に豊かな響きとなってFelipe Gordonというアーティスト性を成り立たせている。彼自身が本当に好きな音楽を、気の赴くままに制作したような、そんなアルバムなのだろう。
Check Felipe Gordon]]>Brigitte Barbu - Muzak Pour Ascenseurs En Panne (Circus Company:CCCD112)https://matyu.jugem.jp/?eid=54672024-03-09T17:24:07+09:002024-03-09T08:24:07Z2024-03-09T08:24:07Z
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フランスのダンス・ミュージックにおいて幾人か存在するレジェンド的な存在の中でも、特に魔力によって魅了させるようにフレンチ・ハウスの奇才として君臨し続けるJulien AugerことPepe Bradock。DJ活動は決して多...matyuTECHNO16
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フランスのダンス・ミュージックにおいて幾人か存在するレジェンド的な存在の中でも、特に魔力によって魅了させるようにフレンチ・ハウスの奇才として君臨し続けるJulien AugerことPepe Bradock。DJ活動は決して多くはなく、大量のEPをリリースしているもののそれらも配信には乗らずにレコードでの販売を貫き、また長い活動においてもアルバムは2枚しか存在しない等、制作者としての非常に強い拘りが彼を特別な存在へと仕立て上げているようにも感じる。そんなアーティストが新たに取り組んだプロジェクトがBrigitte Barbuで、2020年には彼にしては珍しくもアルバム『Muzak Pour Ascenseurs En Panne』をリリースしている。そもそもBradock名義でも普通ではない奇天烈な雰囲気を持った変異体ディープ・ハウスを展開していたように個性的な音楽性だったのだが、この新たな名義のアルバムではダンスという拘りさえも捨て去り電子ノイズとサウンド・コラージュを用いた実験的要素の強い音楽を披露しており、アルバムという大きなフォーマットの中で自由に実験を試みたような内容となっている。便宜上アルバムは11曲には分かれているものの区分けにあまり意味はなく、全体を通して40分にも渡るコラージュ主体の壮大な電子音響として楽しむべきだろうか。幕開けからノイズのような音響が吹き荒れる"Dae-Boj DeMoya"で始まりつつも、振動する電子音と穏やかな生音らしき音が刺激的に入り混じり、予想される展開に収束する事なく自由きままにセッションしているかのような無定形な流れ。そこからインタルードとして古いラジオ局から流れてくるようなシンセオーケストラが豪華に響く"Trou Vert 1"を挟み、ギターであろうか情熱的な演奏をバックに訝しい電子音がうねる"Beau Zoo"は躍動する事もなく終始アブストラクトな状態を貫くドローン・アンビエント的でもあり、重苦しい世界観。でまたもやインタールードの"Trou Vert 2"、ボディーミュージック的な重厚なリズムマシンのキックに覚醒的なシンセのリフが反復し、何か緊張感を煽るようだ。"Sainte Amante"ではモジュラーシンセのような刺激的なシンセのうねりに雑踏の声を集めたような呪術的なボイスサンプル、奇妙な弦の音も入り混じりながら精神をトリップへと導くように摩訶不思議で形容のし難いサウンド。"Ray Z"はビートは無いながらもヒップ・ホップ的な感覚の感じられるチョップしたような電子音や、モジュラーシンセの躍動的なうねりによって体感的にはビート感が聞こえてくるようで、最後は穏やかなで美しい電子音も静かに持続してドローン・アンビエント調の"Mistori"によって叙情的な余韻と共に締め括られる。彼らしい一曲だけで魅了させるディープ・ハウスは皆無で、だからこそより大きなアルバムという形でコラージュを用いた一大絵巻の如く壮大な世界を創造した本作は、寧ろいつものBradock名義よりも野心的でありかつ刺激的でもある。欲を言わせて貰うなら、Bradock名義でもディープ・ハウスに特化したアルバムをリリースしてくれたらとも思うが。
Check Pepe Bradock]]>Jamma-Dee - Perceptions (Nothing But Net:NBN011)https://matyu.jugem.jp/?eid=54662024-03-07T22:03:00+09:002024-03-07T13:03:00Z2024-03-07T13:03:00Z
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2023年も多くの素晴らしい音源がリリースされたおかげで、例に漏れずレビューが間に合わずに年間ベストとして記載出来なかった作品は幾つかあった。それらの一つが本作『Perceptions』で、ロサンゼルスを拠点とするプロデューサーのDyami O'Br...matyuETC(MUSIC)6
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2023年も多くの素晴らしい音源がリリースされたおかげで、例に漏れずレビューが間に合わずに年間ベストとして記載出来なかった作品は幾つかあった。それらの一つが本作『Perceptions』で、ロサンゼルスを拠点とするプロデューサーのDyami O'BrienことJamma-Deeによる初のアルバムだ。アーティストの事は全く知らずにこのアルバムを聞いた時に、何だか同郷のモダン・ファンク代表格のDam-Funkを思い起こしてしまったのだが、後から調べてみるとDam-FunkがレジデントDJを務める「Funkmosphere」にも関わるようになり、LAのアーティストと交流を深めたとの情報があったので、Dam-Funkからの影響は間違いなくあったのだろう。音源としては2016年から数年に渡りArcaneから3枚のEPをリリースしただけであったものの、2023年9月に遂にリリースされた本作は実は10年前のスタジオでの実験的な録音を近年になってから手を加えて完成したものだそうで、何だか懐かしい空気感があるのもそのためだろうか。アルバムの音楽性は何と定義したよいのだろうか、ヒップ・ホップかR&Bか、ファンクかブギーか、いやハウスのビート感も聞こえてくるし、それらも引っ括めてDam-Funkの流れからのモダン・ダンクと包括的に呼ぶと伝わり易いかもしれない。幕開けとなる"Up And Down"はねっとりとしながらも力強いロービートの上をメロウな鍵盤コードが続いていくが、ピッチを変えたような奇妙なボーカルサンプルもねじ込まれ、初っ端からメロウながらも熱きファンクネスが炸裂している。"Jamma's Jam"ではMndsgn & Swarvyをフィーチャーしているが、ざっくりとしたヒップ・ホップのビートに艶めかしいベースラインや優美なエレピが加わる事でメロウさを発し、途中からのエモさ爆発なシンセソロやヴィブラフォンも印象的で、これぞモダン・ファンク。Koreatown Oddityを迎えた"Spellbound"は90年代的なアタック感の強いR&B調のビートにノリの良いラップも加わるが、それでも陽気でメロウな雰囲気を保ちじっくりと耳を傾けたくなる魅力がある。ガチャガチャとしたビート感が強くダンサンブルなヒップ・ハウス的な"It Takes A Freak"のように勢いがあり弾けるようなダンストラックもあり、カタカタとしたTR系のパーカッションが効いていてまるでLarry Heardのような叙情的で慎ましいハウスの"Tic-Toc"もあり、甘ったるい歌も色っぽくあるR&B色強めな"Every Morning"もポップで耳に残りやすい。特に印象に残ったのは颯爽とした軽いビート感ながらも耽美なピアノコードとメロウな多重コーラスを活かしてファンキー&スウィートなディープ・ハウス化した"Silly"で、耳に残るフレーズ使いが特に映えている。しかし色々な曲調やビートの差はあれど、アルバム全体の開放的で楽観としたムードはやはり西海岸の音楽性によく感じられるもので、場所柄の影響なのだろうか。彼が気に入っているアーティストとのコラボレーションを紹介するアルバムとした前提で制作されており、その為半数位の曲でゲストを迎えておりそういった事もあって様々なジャンルが一つのアルバムに混在しているのだが、不思議と散漫とした感覚はなくやはり本作はメロウなモダン・ファンクなのだ。
Check Jamma-Dee]]>Guy Maxwell - Outside My Window (Growing Bin Records:GBR037)https://matyu.jugem.jp/?eid=54652024-03-05T21:47:54+09:002024-03-05T12:47:54Z2024-03-05T12:47:54Z
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印象としてはここ数年のニュー・エイジ/アンビエントのリバイバルの中で大躍進を果たしたように感じられるBasso率いるGrowing Bin Recordsだが、レーベルは何か特定のジャンルに縛られる事はなく、今までにも...matyuETC(MUSIC)6
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印象としてはここ数年のニュー・エイジ/アンビエントのリバイバルの中で大躍進を果たしたように感じられるBasso率いるGrowing Bin Recordsだが、レーベルは何か特定のジャンルに縛られる事はなく、今までにもジャズやファンクにハウスにディスコ、その他の音楽も含めてただ良質な音を世に送り出す事が前提だ。そこには新しい音楽もあれば古い音楽もあり、発売当時は評価されず残念ながら売れなかったような過去の作品に対しても、Bassoは何処からか見つけ出してGrowing Binというある種のブランド付けをしながら、世の中への普及にも務めている。そんな中の一枚が2021年にGrowing Binが復刻した本作『Outside My Window』で、元々はジャズアーティストであるGuy Maxwellが1980年に唯一リリースしたアルバムだ。Maxwellにとって音源はこれ以外はなくアーティスト性を語るだけの情報は無いのだが、流石に古い作品だけあり生演奏を主体にメロウな歌を重視しつつジャズやファンクにAORといった響きが聞こえてきて、現代的な解釈であればバレアリックな方面からも楽しめる充実した内容となっている。先ずオリジナルから差し替えられたジャケットを見れば分かるように、夜の穏やかな海の上に浮かぶ満月といった情景からして何かメロウなりロマンティックなりな雰囲気は予想が付くのではないだろうか。そして冒頭の"Watch Out Sally"、耽美な鍵盤使いに湿り気を帯びたようなベースラインやメロウなギターカッティング、そこに厚みを持たせて豊かを演出した多重コーラスも加わり、ラテンの雰囲気も伴ったスムース・ジャズとでも呼べばよいか。繊細でメランコリー爆発なアコースティックギターのフレーズから始まる"You Never Sang This Song"は、そこから魂を絞り出すような歌や土の香り漂うドラムも加わわって熱くなるも、シンセサイザーの幽玄な響きもムードたっぷりに演出する。対して朗らかなアコースティックギターのコードや穏やかで優しいピアノがリードする"Funny Weather"は、甘い歌やコーラスも際立ちフォーキーでもありポップでもあり、シンプルな構成がメロディーや歌の魅力をより濃いものとしている。"Summer Song"ではギターもベースも何処か陽気でゆったりとして、それに合わせて歌も肩の力が抜けメロウで甘く、途中には幸せを鳴らすような至福のトランペットも高らかに響いて平和なムードのAOR、またはスムース・ジャズだ。こういった作品がGrowing Binから復刻されるのを意外と感じる事もあるかもしれないが、このレーベルにとってはジャンルとは単に誰かにとって都合の良い区分けでしかなく、知られてはいないがしかし素晴らしい音楽を伝えたいというBassoの考えがあればこそ、復刻されるのも自然な事なのだろう。
Check Guy Maxwell]]>Spirit of Sundaze Ensemble - I (Sose Recordings:SOSER002)https://matyu.jugem.jp/?eid=54642024-03-04T21:51:33+09:002024-03-04T12:51:33Z2024-03-04T12:51:33Z
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真夜中ではなく日曜の午後というパーティーとしてロンドンで人気を博したSecretsundazeは、パーティー名でもありレーベルでもあり、そして音楽のプロジェクトでもある。James PriestleyとGiles Smithから成るこのプロジェクトはテクノとハウス...matyuHOUSE17
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真夜中ではなく日曜の午後というパーティーとしてロンドンで人気を博したSecretsundazeは、パーティー名でもありレーベルでもあり、そして音楽のプロジェクトでもある。James PriestleyとGiles Smithから成るこのプロジェクトはテクノとハウスの溝を埋め、ガラージやバレアリックにジャズやファンクといった音楽も咀嚼しながら、ロンドンでカッティング・エッジな場を生み出していたそうだ。しかし昨年、Smithはより制作方面に力を入れたいという事でSecretsundazeを離れ、現在それはPriestleyが一人で意思を継承したとのニュースを聞く事があった。結果として、その流れはこのPriestleyによるSpirit of Sundaze Ensembleというプロジェクトに繋がる事になったのだが、本作を聞くと生演奏を以前よりも強調してバンド的な音楽性を打ち出したハウスやディスコを目的としているのかと感じる(だからEnsembleなのだろうか?)。実際に制作にはSound Signatureでも活躍するドラマーのMyele Manzanza、Zeitgeist Freedom Energy ExchangeのメンバーであるLewis Moody、Basement Jaxx等でも演奏するパーカッショニストのOli Savill、日本からは鍵盤奏者のHinako Omori、その他にも複数のメンバーが名を連ねており、かつてDJとして展開していた音楽を自らの演奏によって再現しようとする意思が感じられる。そんな事もあり収録された4曲全てはカバーなのだが、どれも元から名曲である事を差し引いても魅力的な曲として生まれ変わっている。Joyce Simsによる"Come Into My Life"はメロウな鍵盤や泣きのギターに対し、原曲よりもダンサンブルでゆったりとしたブレイク・ビーツを導入してよりクラブ・ミュージックらしさも引き出して、バレアリックなディスコへと仕上げている。"Mine To Give (Extended Mix)"はPhotekによるエレクトロニック性の強いソウルフルなハウスなのだが、ここではどっしりしたディスコ的なビート感を強調し、生演奏のギターやベースといったライブ感のある演奏も打ち出して、より人間味溢れるしっとり情熱的な曲調へと見事に作り変えている。"Earth Is the Place"はNathan Hainesによる西ロンのブロークン・ビーツのシーンで生まれた名曲だが、しなやかなビート感や優美な雰囲気は踏襲しながらもよりパーカッシヴで爽快感があり、ボーカルに迎えられたCheriseが原曲に負けじと華やかで優しく包み込むような歌を披露し、原曲を尊重しながらもSecretsundazeによる再生的なカバーを披露してりる。そしてWbeezaによる"Coast Spotting"は原曲からがらりと変わり、ピアノやベースにドラム等の恐らく生演奏主体の叙情的で美しいジャズ・スタイルとなり、混沌としたセッションを繰り広げるような時間帯も交えながらスピリチュアルなジャズを聞かせている。Secretsundaze改めSpirit of Sundaze Ensembleは以前の魂を継承しつつアンサンブルという主体のプロジェクトへと変化したが、現時点ではこの変化は成功しているように思われ、この流れでアルバムが制作されたら面白い事になるだろう。
Check James Priestley]]>Bellofatto & Gentile - Night Swim (Horisontal Mambo:MAMBO 011)https://matyu.jugem.jp/?eid=54632024-03-02T13:52:59+09:002024-03-02T04:52:59Z2024-03-02T04:52:59Z
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Prins Thomasが主宰するFull PuppやInternasjonal等は、Thomasが普段展開するニュー・ディスコが軸となっているが、2016年に傘下に設立されたHorisontal Mamboは感傷的なダウンテンポやバレアリックといった...matyuHOUSE17
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Prins Thomasが主宰するFull PuppやInternasjonal等は、Thomasが普段展開するニュー・ディスコが軸となっているが、2016年に傘下に設立されたHorisontal Mamboは感傷的なダウンテンポやバレアリックといった方向性があり、ここ数年リスニング志向の強い筆者はサブレーベルであるHorisontal Mamboの方により魅力を感じている。2023年9月にリリースされたレーベルの目下最新作である『Night Swim』はBellofatto & Gentileなる聞き慣れぬユニットの初の作品だが、サンフランシスコのライター兼DJのDan Gentileと、そして昨年C-Thru名義で素晴らしいバレアリック・ブレイク・ビーツなアルバムである『The Otherworld』(過去レビュー)をリリースしたテキサス州オースティンのJesse Edwardsから成るユニットだ。当初はイタリアのドリーム・ハウスのメロディーとテクスチャーを模索していたようだが、最終的にはモジュラーシンセサイザー、ブレイクビーツ、レフトフィールドなサンプルを含む音楽性へと進化し、この「夜の水泳」なる何とも官能的でロマンティックなタイトルのアルバムが完成したのだ。レーベルの音楽性からおおよそ予想は出来るだろうがアルバム全編に渡ってスローモーなダウンテンポのビートとバレアリックなムードが支配しており、そして静けさが広がる真夜中のメランコリーな官能とドリーミーさから夢幻の風景が浮かび上がるようなリスニング志向の作品で、結論から言うと文句無しのバレアリック・アルバムだ。引いては寄せる波のフィールド・レコーディングの合間から夜の帳を感じさせるロマンティックなシンセが浮かび上がる"Interplanetary Soccer"でアルバムは幕を開け、ゆったりと躍動するブレイク・ビーツに浮遊感を伴いながら体も揺らすようで、幻想的なシンセが叙情的な旋律を奏でながら夜の深い時間帯へと向かって行くようだ。"Dream Cycles"はゆったりとした4つ打ちの中を夢の中でふらつき彷徨うような朧気なシンセを配し、アシッド性のあるシンセを効果音的に加えながらもあくまでしっとりとした静かな夜のイメージを壊さずに、神秘的な夢現な状態が持続する。ドタドタとして躍動的なスローモーなブレイク・ビーツが特徴の"Watching UFOs in the Park"は明るく多幸感に溢れているが、昼間の音ではなく幸せな夢に浸っているイメージだ。ノンビート状態に対し静謐なシンセによって月夜を眺めるサウンドスケープを展開する"The Moon At Halftime"もあれば、アルバムの中では一番ダンス性の強い弾けるブレイク・ビーツと眩い光を発するような豊かなシンセによって至福へと上り詰める"Liquid Roses"もあり、バラエティーにも富んでアルバムは最終局面へ向かう。最後は雪がこんこん降り積もる厳寒に、家の中で暖炉と向き合い暖を取るようなほっこりとしたアンビエント調の"Winter Reprise"で、叙情的な余韻と共にしっとりと音は消えていく。Horisontal Mamboへの信頼があるからこそ幾分かは評価は甘くなるのかもしれないが、それでもHレーベルの音楽性に沿いつつエモーショナルでロマンティックなバレアリックな世界観は見事で、疲れた心身を癒やすためのチルアウトとしても機能する。
Check Pacific Coliseum]]>Principles Of Geometry - Penta EP (Tigersushi:TSR100)https://matyu.jugem.jp/?eid=54602024-02-22T23:15:46+09:002024-02-22T14:15:46Z2024-02-22T14:15:46Z
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いつリリースされるのか、または新作はもう永遠にリリースされないのか、幻想として存在するようなBoards Of Canada(以下BOC)に恋い焦がれ新作を待ち侘びているそんな貴方に、今必要なのはこのEPだろう。Joak...matyuTECHNO16
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いつリリースされるのか、または新作はもう永遠にリリースされないのか、幻想として存在するようなBoards Of Canada(以下BOC)に恋い焦がれ新作を待ち侘びているそんな貴方に、今必要なのはこのEPだろう。Joakim主宰、2002年頃にフランスにて設立されたTigersushiの通算カタログ100作目を飾ったのは、レーベルの初期から現在に至るまでカタログに存在し続けレーベルの中心的存在となっているPrinciples Of Geometryだ。Guillaume GrossoとJeremy Duvalから成るユニットで、Tigersushiからアルバム5枚とEP多数をリリースしており、エレクトロからディスコにIDMやダウンテンポにハウスなど作品毎に様々に変容するスタイルだが、今まで全く知らなかったアーティストなので何が本質なのかはまだ測りかねている。しかしこの最新EPを試聴した時に、まるでBOCの残香漂う音を感じ即座に購入を決めたのだった。1曲目の"Glower"から既にその影響は顕著に現れており、濃霧のようでミステリアスなシンセの響きから開始し、チョップしたようなヒップ・ホップ的なビートに奇妙なボイスサンプル風な効果音も入り混じりどんよりとしたムードは、正にBOCのサイケデリックな世界観と近似する。しかし単に物真似に終始する事なく、途中からビヨビヨとした狂ったようなアシッド・サウンドが暴れ出し、スローなレイヴサウンドへと変容するのが面白い。一方で跳ねるようなブレイク・ビーツと無邪気に遊び回るような明るいシンセが躍動する"Radiants"も確かに此処ではない何処か的なサイケデリック性はあるものの、トリッピーなアシッドも加わって力強いビートを叩き出し、ダンス性の強い陽気なテクノ/エレクトロを聞かせている。"Oregon"はもう出だしから完全にBOC流のヒップ・ホップかIDMかのビート感、そして遠い記憶の彼方に置き忘れたノスタルジーを誘うドリーミーなシンセの広がりがあり、もし知らずにBOCの新曲だと聞かされたら信じてしまうかもしれない。そしてアシッドバキバキ、ローリングするドタドタとしたビートが慌ただしいローファイなレイヴ調の"Today"を通過して、最後はふんわりとした心地好いブレイク・ビーツと透明感のあるパッドの中からトリッピーなシンセが羽ばたき、浮揚感を得て大空へと舞い上がるようなアンビエント性もある"Kidsangls"でBOCの世界を踏襲してEPは完結する。確かに偉大なるアーティストの音そのまんま、いやアシッドも巧みに用いてよりダンスへと向かっている面もあるが、やはりBOCの影響が余りにも顕著過ぎて物真似と揶揄する人もいるかもしれないが、これはPrinciples Of Geometryが色々なジャンルに取り組む流れの中での偉大なるレジェンドへの経緯を示した作品だと受け止めている。だから、もしかしたらこんな作風は本作だけかもしれないが、その点でも非常に魅力的な作品となっているのだ。
Check Principles Of Geometry]]>Jpye - Blue My Mind (Claremont 56:C56LP025)https://matyu.jugem.jp/?eid=54592024-02-20T21:52:55+09:002024-02-20T12:52:55Z2024-02-20T12:52:55Z
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現行バレアリックを代表するレーベルの一つであるClaremont 56からの作品という事であれば全幅の信頼を寄せるのは間違いではなく、2021年にデビューしたJpyeの初のアルバム『Samba With You』(過去レビュー)もそんなレーベルに期待して購入し...matyuETC(MUSIC)6
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現行バレアリックを代表するレーベルの一つであるClaremont 56からの作品という事であれば全幅の信頼を寄せるのは間違いではなく、2021年にデビューしたJpyeの初のアルバム『Samba With You』(過去レビュー)もそんなレーベルに期待して購入したようなものだ。太陽の光をいっぱいに浴びたように陽気で、ジャズやディスコにレゲエやダウンテンポといった音楽性を消化しつつメロウかつポップなバレアリック・サウンドに仕上げたアルバムは、デビュー作ながらも既に豊かな円熟味さえ感じさせていた。Jpyeはフランスのマルチ・インストゥルメンタリストであるJean-Philippe Altieによるプロジェクトで、それ以前にも様々な名義・バンドで活動していたようなので、だからこそデビュー作にして素晴らしいバレアリック・アルバムだったのも何も不思議ではなかったのだが。あれから2年後の2023年6月、早くも2枚目のアルバムである『Blue My Mind』がリリースされている。前作同様にボーカリストであるElle HolgateことE11e、かつてのバンドメンバーでもあったLeonidasとRenato Toniniらが本作でも制作に参加しており、そういった事もあってか前作をそのまま踏襲した路線で続編とも受け取れるバレアリック・アルバムとなっている。冒頭の"Freedom Ain't Free"ではe11eをフィーチャーし、ヴィブラフォンやギターの感傷的な響きを活かしつつカラッと乾いたパーカッションによってラテンな空気を誘う曲を基に、e11eの気怠くも甘く切ない歌を重ねていきなりメロウなモードに魅了される。"You Freak Out"ではDa Rocによるしんみりとしたピアノとコズミックなピアノを軸に、うねりのあるベースとざっくりと生っぽいビートのジャズ・ファンクを丁寧に聞かせて、アルバムの序盤は随分と叙情的だ。しかし妖艶に誘う歌が色っぽいディスコ・ダブ的な"Shiver"辺りから陽気さを増し、奇抜なボコーダによる歌とファンキーなギターカッティングに対し奇妙なシンセを合わせたジャジーでエレクトロなファンクの"Xcuse My French"や、垢抜けないディスコビートに対しビヨビヨとしたトリッピーなシンセが映えるブギーな"Va La-Bas"など、ゆったりと大らかではありつつ青空の下で太陽光に照らされたようなポップな陽気さに包まれ、この緩くも開放的な雰囲気はリゾート地のそれのよう。豊かな残響が揺らめきアフタービートが心地好いレゲエ調の"Tutto OK"に官能的に惑わされつつ、ハウスのビート感にスラップベースが力強く響きダンサンブルに体を揺らす"Take Off"もあり、ラストは耽美なピアノが美しくダブ音響が空間性を広げるバレアリックなディスコ・ダブの"Fingers Crossed"で夢の中でうつらうつらと終わりを迎えるようだ。様々なジャンルを咀嚼しながらバレアリックという世界、スタイルで包みこんだClaremont 56らしいアルバム、何だか夏の燦々とした太陽の下が似合う音楽だなあ。