Animal Collective - Centipede Hz (Domino USA:DNO310)
Animal Collective - Centipede Hz
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前作"Merriweather Post Pavilion"(過去レビュー)が世界的ヒットとなり不動の評価を得たアメリカのロックバンド、Animal Collective。そこから3年、新作では前作に参加していなかったメンバーも復帰しての4人体制となり完全体での制作となったが、結論から言うと前作にあった現実離れした神々しいサイケデリアは失われている。サンプリングやエレクトロニクスを多用してロックバンドとしての演奏を意識させないように人工的な夢風景を描き出した前作から、新作では同じようにエレクトロニクスも使いながらも夢の世界へと誘うリヴァーブの効果は失われ、それ以上にがちゃがちゃとしたノイジーな音をこれでもかと詰め込んだ雑然としたロックバンド的な作品となってしまった。あの極上の甘くて輝かしいまでの白光を放っていたメロディーは影を潜め、メロディーの多幸感が失われた分を補うように無闇に電気的な肉体性を強調した上げたトラックが並んでいるのだが、その溢れるエネルギー自体が何処か空回りしている印象だ。もっともっとエレクトロニクスの艶のある音で涅槃の境地に辿り着く多幸感を体験させて欲しかったが、どうやらAnimal Collectiveはライブを尊重する意味で現実的なロックバンドらしい道に戻ってしまったのだろう。キラートラックも特に無いので聞き所がなく、前作からの落差が大きくて残念無念。

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| ETC(MUSIC)3 | 09:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2012/9/28 TEDER PRESENTS R&S LABEL SHOWCASE @ Womb
2010年頃から再始動を果たしたベルギーの老舗テクノレーベルであるR&S Recordsは、閉鎖前は硬派なUKテクノやデトロイト・テクノに始まりドラムン・ベースやビッグ・ビートの波にも乗りつつ、近年の再始動後には今トレンドとなっているダブ・ステップも熱心に取り組んでいる。今回は目出度くR&Sのレーベルショーケースが開催される事になったのだが、そこに出演するのがテクノやダブ・ステップの新世代であるSpace Dimension Controller、Lone、The Chainだ。果たして彼らがどんな音を聴かせるのか、期待を胸にパーティーへと足を運んできた。
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| EVENT REPORT4 | 17:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Luciano - Vagabundos 2012 (Cadenza Records:CADCD10)
Luciano - Vagabundos 2012
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近年は当初思っていたよりもアーティスティックと呼ぶべきか芸術的に崇高さも兼ね備えた音楽性を表現し、自身が主宰するCadenza Recordsも含め良くも悪くも上手く売る術を理解しているLuciano。とまあ少々皮肉を込めた言い方をするのは近年の作品の完成度が高いのは言うまでもないのだけど、初期の頃のもっと単純なワクワク感と言うものが薄れてきているからで、まあそれは活動が長くなれば仕方ない事でもあるのだが。そんな中で4年ぶりとなるこのMIXCDは先行でデジタル版がリリースされていたものの、CD版ではタイトルは同じでも内容は全く異なる選曲で纏められている。選曲を見れば分かる通りで本作はPCを使って各曲をパーツとしてミックスしながら再構築を行うデジタルミックスとなっており、曲の大半が近年リリースされたテックハウスやミニマルなものの、Lucianoらしい陽気なパーカッション使いや異国情緒漂う怪しさに相反する軽やかなエレガンスを伴う空気は流石と言うしかないだろう。特に文句の付けようもない程にバランス良く様々なエッセンスを取り込みしっとりしたグルーヴで品の良い音を聴かせてはくれるのだが、しかしPCを使ったにしても余りにも機械的と言うかかっちりと固めて制作し過ぎなのはミックスに必要なライブ感が欠けてやしないだろうか。展開も押し並べて平坦でクラブでのピークタイムのように突き抜ける瞬間も無く、良く言えばスムースに聞き流して何時の間にか終わってしまう印象なのだ。勿論彼が素晴らしいトラックを作ってきた事は事実だし、DJに於いても彼らしいチリアン発の個性はあると思うが、それでも少々Lucianoと言う名前だけが一人歩きしてしまっている感も否めないのである。真価は生でミックスを体験し評価するしかないのであろう。

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| HOUSE8 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Smallpeople - Salty Days (Smallville Records:SMALLVILLE CD 05)
Smallpeople - Salty Days
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ヨーロッパのLarry Heardと呼ぶのは言い過ぎだろうか、Julius SteinhoffとJust von Ahlefeld(aka Dionne)によるSmallpeopleの初のアルバムは極めて穏やかな世界が広がるディープ・ハウスが詰め込まれている。ちなみにこの二人はLawrenceと共にドイツにてSmallville Recordsと言うレコードショップ兼レーベルを運営していて、その方向性はデトロイトやシカゴら辺のディープ・ハウスへと向いておりUSアンダーグラウンド・ハウスの復権に貢献している。Smallpeopleとしての活動は2009年からで自らのSmallville以外にもUSのUnderground Qualityからもハウストラックをリリースしていたが、その流れもこのアルバムを聴けば確かに納得のUSハウスに密接にリンクした内容だ。音自体には目新たしさと言ったものは無いものの一切の灰汁を取り除いた透明感と優しく包み込む情緒に溢れた90年台のハウス風であり、ダンスミュージックとしての4つ打ちのフォーマットを正しく守りつつも非情に音楽的 - 豊かなメロディーやスムースなコード展開と言う意味で - な作品であるからして、ハウスに馴染みのない人にとっても入門編として適切だ。勿論それはただ聴きやすいだけの商業的なハウスとは異なり、90年台のミドルスクールを思い起こさせるシカゴ・ハウスの乾いたリズムトラックの音色や薄く幻想的に伸びるパッドなどアナログ感を打ち出した素朴な人間臭さもあり、彼らが本当にハウス黄金時代の復権に誠実に取り組んでいるのが伝わってくるだろう。Larry HeardがDJ業から引退してしまったが、しかしSmallpeopleのこのアルバムを聴き次世代が育っている事を確認出来てほっと安心した。



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| HOUSE8 | 12:00 | comments(0) | - | |
Keihin - This Heat (Almadella:AMDL004)
Keihin - This Heat

日本では早くからテクノとダブステップを結び付け、自らはAlmadellaと言うパーティーを主宰する元自衛隊員と言う肩書きを持つKeihin。日本各地の生粋のアンダーグラウンドパーティーを渡り歩く叩き上げのDJであり、彼にとって3枚目となるこのMIXCDに於いても普通のテクノだけには収まらない混沌とした闇が広がるプレイは正に地下で格闘してきた経験を爆発させた内容となっている。Keihinと言えば強靭な肉体感を強調した暴力的なプレイや鉄鋼を打ち付けるようなインダストリアルでハードなテクノと言う印象があるが、しかしそれだけではないのも事実だ。このMIXCDの出だしはブラックでスピリチュアルな芳香が滲み出るフリー・ジャズから始まるが、この時点で既に世界が壊れ行く荒廃した景色が闇の中へと広がっている。そして徐々に奥に広がる闇の中から鈍重なキックが這いずり出してくれば、そこからは一切の甘さを排除し現実からは隔絶されたダークでミステリアスなダブステップ×テクノ空間が幕を開ける。しかし中盤までは直球で押すのではなく、上下左右に揺さぶるように変則的なリズムのキックでバウンスしながら力を内に溜め込み抑制をかけつつ、スモーキーなエフェクトに覆い目眩を引き起こすトリッピーな音で焦らす展開が続く。そして30分程焦らしてからの後半戦に入ればそこからは完全にフロアのピークタイムを感じさせる勢いのあるトラックがスピンされ、金属的な弾けるパーカッションや分厚い電子のベース音などがボディーブローを連発する暴力的なセットへと突入する。無情ともとれる殺伐感と無慈悲な緊迫感に満ちたインダストリアルでダブステップなプレイの前には抗うすべもなく、ただただ圧倒的なサイケデリックの闇で踊り狂うしかないだろう。日本にもこんなにヤバイプレイをするDJが居る、そんじょそこらの外タレなんか目じゃない。

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| TECHNO9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2012/9/22 stiff ~ 8HOURS~ @ Batica
昨日は恵比寿Baticaで”stiff ~ 8HOURS~”と言うパーティーがあったのですが、ゲストにはKoyasとFuture TerrorからHarukaにAlmadellaよりKeihinと言うアンダーグラウンドを地で行くアーティストが呼ばれていたので期待を胸に遊びに行って来ました。Baticaは恵比寿駅から代官山方面へ大通りを進んで5分程の左側にある店なのですが、一階は外から中身が丸見えになっていてスタンドバーみたいなラウンジになっています。一階でお酒を買い二階へ上がりドアを開けてみると…最初は目が慣れないせいか真っ暗で何も見えない程に暗い。ようやく慣れてくると小さなフロアも視界に入ってきて、多くて50人程しか入れないであろうそのスペースは派手な内装も仕掛けも無い踊るためのダンスフロアとなっていました。
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| EVENT REPORT3 | 17:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kaoru Inoue - A Missing Myth (Seeds And Ground:SAGCD027)
Kaoru Inoue - A Missing Myth
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"Dancer"(踊る者)、"Sacred Days"(神聖なる日々)と続いてきた井上薫のアルバムリリースだが、2年ぶりとなるこの新作では"A Missing Myth"((未来の)失われた神話)とまた謎めいたタイトルが付けられている。アルバム名からも分かる通り常に肉体性と精神性を結び付けながらコンセプトを持った音楽を生み出している井上氏ではあるが、本作では人類がこの先の向かう所を意識して制作したそうだ(詳しくはライナーノーツを読んで欲しい)。如何にもワールドミュージックも起源に持つ氏の思想や音楽観を現代的なエレクトロニックビートと融合させた音楽性はここで完成を果たしているようで、前作以上に大地と共に生きる民族的な音楽の要素を盛り込みつつフロアでの狂騒を喚起させる事に成功している。未来の神話の幕開けはオーロラの様な美しいシンセが重なり合うように空間を覆い尽くすビートレスな"Sphere"で始まり、そしてガムランがミニマルに繰り返されるトライバルな"Malam"で突如異国の世界へと誘われるとそこからは祝祭空間の広がる真夜中のパーティーへと突入する。木管楽器の優しい心地良い響きが開放的なエレクトロニックハウス"Nova"、ハンドクラップやシタールの妖艶な音色が肉体を刺激し野性的な雄叫びがトランスを誘発する"Ramafar"で前半のピークを迎え、もうグルーヴは止まらない。その後も怒涛のパーカッションが大地の響きとなって押し寄せる"Etenraku"、ガムランのミニマルから生まれる恍惚感を疾走感のあるテックハウスと掛け合わせた"Ground Rhythm(The Backwoods Remix)"、オリジナルよりもテック感を打ち出してクールな空間を演出した"Tokyo Diver(Jebski Remix)"などが続き、真夜中のクラブにまるで地球と言う大地が剥き出しに出現するような太古の土着感と現代的な電子音が絡み合いながら神話を描き出す。また全ての曲は氏によってミックスされてシームレスに繋がれており、ストーリー性を途切れさせる事なく展開する流れが一夜の祝祭を疑似体験させるのだ。コスモポリタンな音楽性を発揮しつつクラブとの繋がりも密接に保った井上氏のミュージック・ジャーニー、こんな音楽は世界的にもそう多くはないだろう。

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| HOUSE8 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(1) | |
Makoto - Another Generation EP (Apollo:AMB1207)
Makoto - Another Generation EP
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かつてベルギーから世界に向けて良質なテクノを送り出していたR & S Recordsは一旦閉鎖を迎えるものの、2010年頃から運営を再始動させ新たなる才能の発掘に勤しんでいる。そしてその傘下にあるApolloはかつてはアンビエント色強めなレーベルであったものの、再始動後はアンビエントに限らないテクノ以外の幅広い音楽性に取り組んでいるようだ。そしてそのApolloからの新作はなんと日本からドラムン・ベースを手掛けるMakotoの作品なのだが、ここで聴ける音はジャンル的には既にドラムン・ベースの枠を飛び越える物となっている。タイトル曲である"Another Genertaion"からして前のめりに切り込んでくる細かいビートメーカーっぷりを発揮しつつ、その一方ではレーベルの特徴であるアンビエントを意識した極彩色の輝きを見せるシンセ使いやスペーシーな効果音を混ぜ、浮揚感を伴いつつしなやかなグルーヴに飲まれていく。”Summer Nights”なんかに至ってはジャズを高速回転させたようなブロークンビーツを披露していて、そこに昔のデトロイト・テクノ的な透明感のあるパッドを乗せたりと、フュージョンと言うかフューチャー・ソウルと言うかビートは尖っていても豊かなソウルを感じさせる作風が魅力的だ。そしてプリミティブなシンセ音のアルペジオが無限の上昇気流を生み出す"Skyline"は心底ロマンティックで、洗練された耽美派フュージョンと言っても過言ではない。最初にApolloからのリリースが合っているのかと疑問に思ったのは杞憂だったのか、寧ろメロウでソウルな旋律を活かした楽曲はApolloとの意外なる融合を果たしていて、Makoto流のコズミック・ソウルをより浮き彫りにしている。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Brendon Moeller - Works (Electric Deluxe:edlx025)
Brendon Moeller - Works
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Brendon Moeller、NYを拠点に活動するこのアーティストはFrancois K.に発掘されBeat PharmacyやEchologistと言った名義を使い分けながら、Wave Music傘下のDeep Space MediaやEchocordにMule Electronicなどの世界各地の大御所レーベルからダブのマナーに沿ったハウスをリリースしている。しかし一体何があったのかこの新作はハードテクノを得意とするSpeedy J主宰のElectric Deluxeからのリリースとなり困惑をもさせる事は事実であったが、蓋を開けてみればレーベルの暗くクールなテクノとの相性は良かったのか見事な生まれ変わりを果たしていた。今までにあった過剰なダブの音響や生臭く湿ったアーシーな空気感は一層され、いや僅かには湿り気は残っているもののそこにレゲエの土着感や緩みは全く無く、機械的なテクノと言う言葉が妥当な音になっていた。エッセンスとしてのダブな音響は軽く残されてはいるものの開放感を作り出す残響音による陶酔感はそこになく、地の深くを掘り進むような重心の低い執拗なミニマルが強調されたトラックで、音全体の密度を高めてタイトに引き締まった重量感で攻めてくる。音自体のハードさを強調する訳ではないが壁となって押し寄せてくる音圧があり、心地よく広がる残響音は無くとも十分に大きなうねりを体感させるグルーヴがあり、闇に包まれたダンスフロアを意識した曲構成は今のテクノシーンへと上手く歩み寄った上での結果だろう。全てがフロア仕様のダンストラックではあるがバラエティーにも富んでおり、アルバムを通して聞いても単調に陥る事なく最後まで体を揺らしながら聴けるはずだ。

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| TECHNO9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
白瀑 ブルーハワイ
白瀑 ブルーハワイ
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夏もとっくに過ぎたと言うのに今更ブルーハワイとはこれ如何に。いえいえ、ブルーハワイと言ってもかき氷に掛けるアレではなくてジュースでもなければ、これは実は秋田県の白瀑と言う酒蔵が造っている日本酒なのです。なんでもガリガリ君を食べてインスパイアを受けて日本酒にも青色を付けられないかと言う事から始まり、クチナシの花から抽出した天然色素を日本酒に混ぜたらこんな綺麗に透き通った青色になったそうです。何も知らなければアメリカの人工着色料で色付けされたようなジャンクなドリンクを思い浮かべてしまいますが、実際は美山錦を55%で精米した純米吟醸ベースの生酒なのでご安心を。早速グラスに注いでみるとバナナ香らしき夏にぴったりな爽やかなトロピカルな香りが広がり、青くてクールな色合いと相まって涼し気な気分になりました。口に含んでみると最初にまろやかな甘味と軽い旨味が広がりますが、酸味がその後を引き締め優しい甘みがすっと消えて行きます。旨味や甘みがしっかりと感じられるものの重さはなく、早くきれいに後を残さず切れる飲み口ですね。アルコール度数は14.8度と少々軽目なのも蒸し暑い夏には飲み易くなっていて、その見た目以上に堅実で美味しい日本酒だと思います。蒸し暑さも吹き飛ばすような清涼な青さが広がるブルーハワイを飲んで、気分も体もクールダウンとなりました。
| FOOD,TRAVEL,HOT SPRING,ETC2 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |