2017.06.29 Thursday
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Steve Bug主宰、Poker Flat Recordings傘下のDessous Recordingsから、何と日本から期待のIori Wakasaの新作が到着。ここ暫くその名を見かける事が無かったものの、遂にシーンへとカムバック。2010年にデビューをしてからは都内各所クラブでプレイし経験を養いつつ、作品毎にやや黒目のディープ・ハウスから繊細な美しさを放つテック・ハウスなどの楽曲性を披露し、DJとしてもアーティストとしても期待を背負っていた。一時は子育てなどにより音楽活動を休んでいたものの、ようやく音楽活動を再開し目出度い事にDessousからの再始動となる。音楽的にはテクノと言うよりはハウス・グルーヴが強いからこそ、Poker Flatではなく幽玄なディープ・ハウス寄りのDessousからとなるのは相応しく、そして音数を絞ったミニマルな構成にブラックネスとソウルを織り込んだハウスは本作でより進化している。A面に収録された"Be There"は大きな展開は用いられておらず、終始滑らかな4つ打ちキックのハウスが続く。しかし軽快に響くパーカッション、幻惑的なシンセのリフのミニマルな構成の中に朧気なボーカル・サンプルも用意し、音の抜き差しによってぐいぐいと伸びていくような機能性の高い作りになっており、秘かに情熱を燻すような渋いディープ・ハウスだ。裏面に移ろう。太いキックで骨太さもありながらシャッフルするようなハイハットでリズミカルなビートを刻む"Give Me"も吐息のようなボーカル・サンプルを用いる事で艶っぽさや黒さを添加しているが、A面よりも内向的で奥へ奥へと深みに落ちていきつつ途端に呟き声が溢れ出す事で困惑的な酩酊感がある。最後の"Feel It Dizzy"もやはりじわじわと持続するディープ・ハウスだが、ここでは金属的なパーカッションがインダストリアル感もある響きで用いられ、様々な鳴りをしながら埋め尽くす事で展開を作る。本作のどれもアーティスト性を主張するように作風が纏まっているが、無駄を削ぎ落とした機能性高いミニマル寄りのハウス感や控えめながらも甘美なエモーションを込めており、フロアで聞いても酔いしれるように恍惚に浸れるに違いない。カムバック作品としていきなりの充実した内容は、今後の活動に更なる期待が掛けられるだろう。
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