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それがテクノであれハウスであれ、情緒の深遠にいるようなムーディーでジャジーな音楽性を特に発揮するハンブルクのレコードショップ兼レーベルであるSmallville Records。Smallpeopleはその運営に関わる数人の内、Julius SteinhoffとDionneことJust von Ahlefeldから成るユニットで、そもそもどちらもソロで同レーベルより例えばデトロイトのエモーショナル性やシカゴ・ハウスのシンプルな作風と共鳴する作品をリリースしており、その両者が手を組めば派手ではなくともじんわりと心に染み込んでいくディープ・ハウスになるのは当然で、これこそSmallvilleの音そのものである事に異論は無いだろう。決して盛んではない活動のため2012年の1stアルバムである『Salty Days』
(過去レビュー)から7年ぶりとなった本作は、しかしその長い時間が経過しても作風は大きく変化する事せずSmallpeopleらしさを貫いている。淡々とした乾いた4つ打ちのキックと退色した灰色の世界観の中から情緒的なピアノのコードが浮かび上がり、ダンスのグルーヴではあるが丁寧に聞かせるディープ・ハウスである"Magic Interference"でアルバムは始まり、すっきりとした間を残して硬めの跳ねるキックでシカゴ・ハウス風なグルーヴにうっとりするエモーショナルなシンセの上モノに心惹かれる"Hearts At Whole"、シャッフル調ながらもスムースなビート感で躍動し透明感のあるシンセで上品に彩る"All States Of Dawn"と、冒頭の3曲からして如何に無駄な音を削り落としながら洗練されたグルーヴと端正なメロディーやコードを用いて丁寧な作りをしているかは感じ取れる筈だ。アルバムの中ではやや癖がある"Beyond"はラテン風なパーカッションやベースラインが目立つが、それと共に催眠術のような幻惑的な上モノが酩酊感を生み、ダンスフロアでも上げ過ぎる事なくふらふらと揺らしてくれるであろうディープ・ハウスだ。そして力強いハウスのリズムを刻んでデトロイト・テクノ的な望郷の念が馳せる幽玄なパッドを配した"Sonic Winds"は、途中から希望に満ちた鍵盤のコードも加わって滑らかなグルーヴに乗って何処までもエモーショナル性が伸びていく。そして最後の落ち着きのある滑らかなリズムと静けささえも感じさせる静謐なシンセで包み込む"Afterglow"は、繊細さもあるダビーな音響によって深く潜っていくようだ。全体を見ても突出した真夜中を盛り上げるキラートラックらしき曲は一つもなく、ひたすら淡々と過剰になる事なくすっきりした音の構成で丁寧に聞かせるディープ・ハウスに忠実で、その洗練されたムーディーな世界観も決してスノッブではなく一歩引いた控えめな上品さこそ彼等の特徴だろう。
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