Marvin & Guy - Solar Warriors (Life And Death:LAD042)
Marvin & Guy - Solar Warriors
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2012年にリリースされた『Let's Get Lost Vol. 14』に収録されていた国産アーバン・ディスコの名作「Tonw」のリエディットは、その年のパーティーでは頻繁に耳にするなど世界的にヒットしたのも懐かしく、また現在に繋がる和モノのブームの流れの中にあった。それを手掛けていたのがイタリアのデュオであるMarvin & Guy、中身はMarcello GiordaniとAlessandro Parlatoreで、前述のヒット作以降もコンスタントにEPをリリースし、それ程の爆発的ヒットはなくてもギラギラしてスペーシーなニュー・ディスコによって人気を博している。2019年初頭にリリースされた新作も作風は既に完成している事から良くも悪くも金太郎飴的なニュー・ディスコで、だからこそ安心して聞く事の出来る内容になっている。Alloをボーカルに起用した"Notte"は特にギラついた曲で、初っ端から毒々しいシンセの伸びと麻薬的なシンセベースが効いていて、そこにスペーシーな呟きも加わりピアノの快楽的なシンセのフレーズも被せられ、徐々にビルドアップしていくニュー・ディスコなスタイルは恍惚へと導く。"Idra"ではPerelをボーカルに迎えているが、こちらはカラッとした爽快なパーカッションと潰れたようなドラムのビート感、そしてダークでブイブイとしたベースラインがよりディスコティックな雰囲気を作っており、そこに美しも妖艶に伸びるパッドやセクシーながらもどこか退廃的なスピーチが派手な世界観の中に何か影を落とすような狂おしくもドラマティックな曲。それらに比べると"Stige (9AM Mix)"はやや地味な作風だが、軽く疾走するビート感に浮遊感のある煌めくシンセを用いて、スペーシーな世界へと誘うムーディーなディスコだ。8ビット風のコミカルな宇宙旅行のジャケットも、収録された3曲の世界観に見事にマッチしている。



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| HOUSE14 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
James Booth - Bath Time (Funnuvojere Records:FV001)
James Booth - Bath Time
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Panorama Barでもレジデントを担当するMassimiliano Pagliaraが2019年1月にFunnuvojere Recordsを始動させた。Pagliara自身がバレアリックな多幸感のある音楽を制作している事からも分かる通りレーベルも方向性としては同様で、栄えあるレーベル第1作に抜擢されたのは100% SilkやGrowing Bin Recordsからやはりローファイで素朴な響きのバレアリックなディスコやテクノを手掛けるJames Boothだ。彼の音楽もダンス・ミュージックの前提はありながらも肩の力が抜けて、どちらかといえば暗い密閉空間のフロアよりは陽が射す開放感ある野外向けのバレアリック性があり、その意味ではレーベル初の作品になったも納得だ。本作では以前よりもダンス方面へのビート感を増しており、例えば"DXXX"では80年代ディスコ風なシンセ・ベースの快楽的なラインやドタドタとしたドラムのビート感があり、安っぽく垢抜けない音質を逆手に取ってローファイながらも新鮮なバレアリック感あるディスコを聞かせる。"Bath Time"は澄んだ美しいパッドのドローンと簡素なリズムが引っ張っていくアンビエント風だが、途中から輝かしいシンセやからっと乾いたパーカッションも加わると弾ける躍動感を獲得して高揚とした至福に包まれ、例えばパーティーの真夜中の時間帯を抜けた先にある朝方のフロアで鳴っていそうなテクノ/ハウスだ。そしてピアノらしきエレガントなコードと刺激的なハンドクラップやリズムがディスコティックな雰囲気を生む"Roller Chrome"、ドタドタとしたリズムマシンの肉感溢れるビートが逞しくもニュー・エイジ風な瞑想を誘うシンセと控え目な中毒的アシッドが快楽を誘発する"Such Is Life"と、どれも基本的には闇のヴェールを振り払うようなポジティブなダンス・ミュージックで、長閑で穏やかなリゾート感さえあるバレアリック性が清々しい。アーティスト、レーベル共に今後の動向に注目したい。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Trux - Eleven (Office Recordings:OFFICE 15)
Trux - Eleven
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BaazことBatian Volkerが主宰するベルリンのOffice Recordingsは、繊細かつ深遠なる音響に陰鬱な感情を込めたようなハウスとアンビエントのブレンドを行い、Baaz列びにChristopher RauやIron Curtisらがカタログに並ぶ通り享楽からは離れた慎ましいディープ・ハウスを手掛けている。そんなレーベルのミステリー、それが2016年に同レーベルからデビューしたTruxで、リスニングを主体としたメランコリーに染まるアンビエント寄りの作風で注目を集めて今ではOfficeの主軸アーティストと呼んでも差し支えない存在感を示しているが、本作で通算4枚目となった今でもその正体は不明なままである事が余計に興味を駆り立てる。音楽の方もアーティストと同様にミステリアスな空気を纏っており、ノイズにも似たようなドローンに覆われた中から叙情的なメロディーが薄っすらと浮かび上がる"Another World"からしてアブストラクトな音像があり、流体の如く抽象的な動きを見せて視界をぼかし続ける。続く"Behaviour"は小刻みで早いビートを刻んでいるがダンスのそれではなく、そこに陰鬱でダークなアナログシンセ的な温かいメロディーや奇怪な効果音を盛り込んで、不気味な高揚感を誘う。再びスローモーな"Earth Floor"では深い残響音を用いてそこにリバーブをかけたおどろおどろしい呟きも被せてどんよりしたアンビエントを展開し、"Sleeper"ではヒスノイズ混じりのドローンに柔らかく淡々とした4つ打ちも加わってサイケデリックなディープ・ハウスを聞かせる。またつんのめって踊れないリズムを刻み不協和音のようなコードを展開する"Give It Up"にはグリッチ風なエレクトロニカの要素もあり、全体としてはアンビエント性が強くとも時折牙を剥くように刺激的な瞬間がはっと目を覚まさせる。終始ローファイなぼやけた音像に濃霧の中で道を見失い迷ったしまったような錯覚を受けるディープなアンビエント作だが、仄かに温かみのある情緒も感じられすっと耳に馴染む心地好さもあり、微睡みに落ちていく。



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| TECHNO14 | 22:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Laurent Garnier & Chambray - Feelin’ Good (REKIDS:REKIDS141)
Laurent Garnier & Chambray - Feelin’ Good
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リリース前から話題になっていた本年度アンセム級の作品、Radio Slave主宰のRekidsからはフランスにおけるダンス・ミュージックの生き字引であるLaurent Garnierとベルリンの新鋭であるChambrayの共作が届いた。近年ストレートな直球4つ打ちだけでなくブレイク・ビーツを用いた90年代前後のレイヴを思い起こさせる曲がやや再燃している印象は受けていたが、特にRadio Slaveによるリミックスがその決定打になるべきオールドースクールを意識したレイヴ・アンセム的な曲調で、2019年において燦然と輝く曲になるだろう。"Feelin' Good"はいきなり汗臭く肉感溢れるシャウトで幕を開け、そこから野蛮でドンドコとしたリズムやハンドクラップを用いた時点でかなりオールドスクール感が溢れているが、そこに膨張したベースサウンドや金属的なパーカッションも加わりダーティーなエレクトロ感とテクノの混合がある。そしていかにもレイヴ的な輝かしいピアノコードの派手な展開とブレイクに向けて連打されるスネアロールと、ある意味では古典的とも言える様式美に倣ったこの曲は、盛り上がらずにはいられない要素がこれでもかと詰まっている。過去の曲を聞いた限りでは恐らくChambrayの影響が強く出た曲調だとは思うが、DJとしては超一級のGarnierが決して作曲家としてはそうではなくともDJによる影響を制作方面へと落とし込み、完璧なまでのDJ向けのピークタイム仕様になったのは流石だ。また2つのリミックスを提供したRadio Slaveも素晴らしい仕事をしており、"Radio Slave Remix"の方は原曲よりも派手さを抑えたソリッドなビート感を打ち出し、ピアノの豪華な響きは消し去り荒削りなパーカッションやダークなシンセのみでじわじわと深い闇の中を疾走するツール性に磨きを掛けたリミックス。そしてもう一つが更なるアンセムと成りうる"Radio Slave Revenge Remix"で、こちらはピアノ・コードはそのまま用いつつもリズムは地面を撃ち抜く極太キックとジャングル風なブレイク・ビーツでゴリゴリ激しく大地を揺らし、基本的にはこのパワフルなリズムと輝かしいピアノの展開だけで突き抜ける単純な構成ながらも、このど派手で野蛮な雰囲気は正にレイヴ・クラシックだろう。原曲とリミックスそれぞれパーティーにおいてピークタイムを飾るに相応しいハイエナジーな興奮があり、早くクラブで体験したいと思わずにはいられない。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Tkumah Sadeek - I Will Be There / Till I See The Light (Future Vision World:FVW-008)
Tkumah Sadeek - I Will Be There Till I See The Light
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シカゴのディープ・ハウスの巨匠であるRon Trentが近年運営をしているFuture Vision Worldが2018年末にリリースしたEPは、Trentの作品にも過去に度々ボーカリストとして参加しているTkumah Sadeekによるもの。Trentの作品以外では名前が見られずどういったアーティストなのかは分からないが、本作でもTrentの全面プロデュースによってそのトラック自体は完全にTrentの新作と呼んでも差し支えないジャジーなディープ・ハウスになっており、ファンならば文句無しの出来だ。薄っすら耽美なシンセやジャジーなリズムから始まる"Till I See The Light"はその時点でもうTrent節が炸裂しているが、徐々に乾いたパーカッションが弾け優美なピアノが踊り情熱的なSadeekの歌によって微熱を帯びて盛り上がってくる。そしてラテンやジャジーな感覚にエレガントという表現が相応しい雰囲気を纏い、そして中盤かはらコズミックなシンセソロも入ってきてタイトルが示すように眩い光を望むようなポジティブな空気に包まれる音楽は、完全にTrent流のシカゴ・ディープ・ハウスに染まっている。そして注目なのは2014年に系列のFuture Vision Recordsよりリリースされていた曲をJoe Claussellがリミックスした"I Will Be There (Joaquin "Joe" Claussell's Cosmic Arts Version)"で、元々はアフロなパーカッションが効きながらも幻想的でアンビエントな浮遊感のあった甘いディープ・ハウスを一体Joeがどのように塗り替えたのか。このリミックスでは元の印象を大きく変える事はないが原曲以上に爽やかなラテン・パーカッションが空へと響き渡り、コズミックなSEもさらっと盛り込みつつフラットなビート感を活かして爽快に疾走るソウルフル・ハウスへと変化している。大胆な鍵盤ソロも持ち込んでぐっとエモーショナル性も増し、弾けるパーカッションが快活にリズムを刻み、近年は実験的な音楽性に偏りがちなJoeにしては随分と以前の作風を思い起こさせる宇宙感やスピリチュアル性もあるソウルフル・ハウスに一安心。古臭い意味だけでなく時代を越えていくという意味でクラシックと呼ばれるハウスにも含まれる、実にJoeらしいリミックスだ。



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| HOUSE14 | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Rudy's Midnight Machine - La Cadenza (Faze Action:FAR038)
Rudys Midnight Machine - La Cadenza
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片隅に見える熱帯植物があるだけの単純な構図からバレアリックやチルな空気も漂ってくるジャケット、その感覚は恐らく間違っていない。手掛けているのはUKにおいてニュー・ディスコの隆盛に貢献してきたFaze Actionの一人であるRobin Leeで、Rudy's Midnight Machine名義としてはこれで4作目と活動的なプロジェクトではないものの、ジャケットからも想像出来るトロピカルかつアーバンな要素があるバレアリック・ディスコは総じて質が高い。本作は特にフュージョンやブギーの音楽性によるレトロ感も漂っており、キラキラしたシンセと情緒を醸すエレピから始まる"Camera Dans La Nuit"はのっけからフュージョン感爆発で、落ち着いたディスコ・ビートに合わせ豪華だったり優雅な複数のシンセが彩り、実に感情的に展開するドラマ性の強いディスコだ。"Une Vie Elegante"なんかはすっきりしながらも切れのあるリズム感、シンセやパーカッションもさらっと弾けるように聞かせながらファンクな躍動感を打ち出し、しっとりしたエレピで優美に染める作風はLevel 42辺りを思い起こさせるジャズ・ファンクだ。タイトル曲の"La Cadenza"は序盤はビートレスな状態をコズミックなシンセのアルペジオで引っ張っていき、そこからリズムが入るとスローモーでしみじみとしたディスコへと入っていくが、湿っぽく有機的なギターカッティングやベースがライブ感も持ち合わせている。"Secret Garden"は特にメランコリーに満たされた曲で、薄いパッドを配しながらもビートレスな構成で、爪弾の切ないギターや悲哀に満ちた繊細なピアノのメロディーで静かに聴かせるこの曲はサウダージだ。どれも味わいとしては素朴で懐かしみの強いディスコがベースになっているが、モダンなバレアリックにも共鳴する世界観やクリアな音響もあり、現在形のディスコとして素晴らしい。



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| HOUSE14 | 09:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Conforce - Autonomous (Delsin:124DSR)
Conforce - Autonomous
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2017年10月頃のリリースから既に2年経過してしまったものの、Boris BunnikことConforceの5枚目となるアルバムは電子音響テクノを好むリスナーにとっては注目すべき内容なので、今更ながら紹介したい。Conforceのデビューアルバムこそデトロイト・テクノの多大なる影響が現れたエモーショナルかつインテリジェンスなテクノだったが、それ以降BunnikはSevernayaやSilent HarbourにVersalifeを含む多くの名義を用いてアンビエントやディープ・テクノにエレクトロやダブの要素まで多岐に渡る音楽性を披露し、溢れんばかりの才能を開花させていた。このConforce名義も作品を重ねる毎に徐々に直接的なデトロイト・テクノの影響を薄めながら、ダブのディープな音響やIDMのインテリジェンス性を強めて、フロアに即しながらもエクスペリメンタルな感覚のあるテクノへと傾倒してきている。そして本作、その路線は大きく変わらないが深海の様な深遠なる暗さと複雑奇怪なリズムを獲得しているが、言うなればDrexciyanやAutechreの音楽性も咀嚼したモダン・テクノと呼んでも差し支えないだろう。冒頭の"Tidal Gateway"からして霞んでダビーなノイズ風の音響に変則リズムが絡み、金属的なパーカッションや電子音が飛び交う荒廃したダークなテクノは、闇が支配するディープな深海を潜っているようだ。つんのめったタムのリズムで始まる"Fauna Of Estuaries"は、隙間のある空間内に反射するベルのような音と微細ながらもインダストリアルな音響を張り巡らせ、グルーヴは走りながらも終始凍てついた世界観が続く。そしてパルス風の連続しながら膨張するような電子音がループし、切れ味のある鋭いハイハットの連打や薄く張り巡らされたドローンに覆われる"Inland Current"は、緊張感の中で今にも大きく躍動しそうな感覚もあり、アンビエント的でありながらも闇が支配する激昂するフロアで浴びたくなる。勿論"Harnessed Life In Programmed Form"や"Meuse-Plain"に見られる4つ打ちのかちっとしたリズムを軸に、深いダブの音響やトリッピーな電子音を用いて重厚感を打ち出したダンストラックも無いわけではないが、"Autonomously Surpassed"の90年代のインテリジェンス・テクノに触発された繊細で変則的なリズムとSFの未来的な響きを聞かせるテクノこそ、Conforceの多彩なアーティスト性がより反映されているように思う。直球4つ打ちのテクノは少なく一見フロア向けではないエクスペリメンタルな印象もあるが、しかし真っ暗闇のフロアで肉体を震撼させるであろう痺れるディープな音響テクノは、Bunnikの多様な音楽性が一つになり今完成形を見せている。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hnny - 2014.12.31 (Omena:OM027)
Hnny - 2014.12.31
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2014年設立の新世代で頭角を現すスウェーデンはストックホルムのOmenaは、ディープ・ハウスからダウンテンポにニュー・ディスコやトライバルと多様な要素をクロスオーヴァーし、これからを期待させる多種多様なアーティストを擁している。同郷のJohan CederbergことHnnyはそのレーベルの主力アーティストの一人であり、レーベルの特にダンスの枠を越えた方面の音楽性を担っている。Hnny自身は過去にLocal TalkやLet's Play HouseにStudio Barnhus等からモダンなエレクトロニック・ハウスやディスコ・サンプリングなハウスといったダンスフロアを意識した曲をリリースしているが、その一方でOmenaからはリスニングへと傾倒したダウンテンポやアンビエントな作風で多彩なアーティスト性を発揮しており、本作はOmenaからということもありその後者の音楽性を披露している。タイトルは自らのキャリアのターニングポイントとなった日だそうで、また各曲名は世界各地の地名を現しており、これらは彼にとっての旅の表現なのだろうか。飛行場内の雑踏のフィールド・レコーディング風で空港を表現したような23秒のインタールード的な"Arlanda"で始まり、オルゴール風の可愛らしいメロディーと生っぽいジャジー・リズムによりエレクトロニカ風の"Dolores Park"、落ち着いたハウス・ビートと共に素朴な鍵盤音に優しく癒やされる"Frankfurt"と、しっとりと繊細なメランコリーが通底している。"Dublin"ではビートレスな構成に愛くるしいメロディーの鍵盤ワークでアンビエント性を披露し、"Rue De Bagnolet"でヒスノイズ混じりのアンビエント×エレクトロニカを、そして最後の"Hemma"ではドリーミーなダウンテンポによって旅の終着点となる家(Hemmaはスウェーデン語でHome)へと帰着したのだろうか。各曲は短く全体で15分と随分コンパクトな作品だが、逆にそのおかげで全体を通して一つの流れとなるような正に感覚があり、Hnnyらしい繊細でメランコリーなサウンド・スケープを体験出来るだろう。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Idjut Boys - By The Way.. You Idjut (OCTAVE-LAB:OTLCD5550)
Idjut Boys - By The Way.. You Idjut
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ディスコ・ダブの先駆者であり今も尚開拓を続けるDan Tyler & Conrad McDonnellによるIdjut Boysは、ディスコ・ミュージック等への深い愛情と造詣を元に、そこにハウスやサイケ・ロックにダブといった音楽の要素を持ち込み、更にダブ処理を加えた音楽によって新しいダンス・ミュージックを生み出したのが90年代前半の話。当然オリジナル作品のみならずディスコのリエディット作品やDJに対する評価も高いのは言うまでもないが、そんな彼等だからこそこのSalsoul Records音源縛りのMIXCDを制作したのも自然の流れと言うべきだろうか。1974年に設立されたニューヨークのSalsoulは文字通りサルサとソウルをかけ合わせたようなファンクやディスコを手掛け数々の名作を生み出し、その後はかのLarry LevanらのDJが積極的にプレイした事により、現在でもハウス系のパーティーではよくプレイされる定番レーベルの一つとなる程に強い影響力を持つ。そんなレーベルの音源の幾つかをIdjut Boysがエディットし、そして膨大な名作が存在するレーベルから音源を選び、更にリアルタイムでいじりながらミックスをするのだから興味が湧かないわけもないだろう。ライナーノーツに依れば「数多くのお気に入りの曲を敢えて入れなかった」と述べているが、"Let No Man Put Asunder"や"Ten Percent"に"My Love Is Free"といった人気曲は確かに用いられていない。であれば地味な作品なのかという疑問もあるが、やはりそこはIdjut Boysのセンスのなせる業で、幕開けから"You're Just The Right Size"と"Ooh I Love It (Love Break)"をマッシュアップしダブ処理を加えて、紫煙が揺らめくサイケデリックな演出を行いつつ、そこに奇妙な電子音が鳴りつつゴージャスなオーケストラやベースがファンキーにうねる熱量高いディスコの"Into The Milky Way"を繋ぎ、序盤からディスコのソウルフルな感情性や煌めくサウンドが発揮されている。"High"にしても強烈なダブ処理による快楽性にずっしりとした重い低音が力強いグルーヴを生み、また"(You've Got) That Something"ではエモーショナルなコーラスワークと凛としたピアノの響きに魅了されるソウルフルなディスコを聞かせ、"Be Mine Tonight"では光を放つようなシンセを前面に出したシンセ・ファンクで都会的な綺羅びやかさを体験させるなど、一言でディスコと言っても様々な表現があるのだ。ディスコの魅力を損なう事なくIdjut Boysが手を加える事でオリジナル以上の強いグルーヴを得て、そしてゴージャスな派手派手しい響きや美しいオーケストラ、汗が吹き出る熱いギターやベースのファンキーな鳴り、乱れ打つパーカッションやけたたましいドラミングといった要素を含むディスコが、感情性豊かに陽気でハッピーな世界観を作り出している。知名度のある名曲を集めただけのMIXCDとは一線を画しながらも、しかし例えばディスコに知識の無い人にとっても心躍らせるであろうディスコとディスコ・ダブの魅力がふんだんに詰まったDJプレイで、ディスコ好きな人にとっては勿論そうでない入門者にとってもお薦めな一枚だ。

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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2019/9/13 Slo Mo Before Midnight @ Debris
大型のクラブは減る一方で、都内各所に点在するように小さなクラブ/バーが生まれ、過去とは異なる形態で発展する都内のクラブシーン。2018年8月に代官山にオープンしたDebrisもそのように小型なバー兼イベントスペースというスタイルで、真夜中から朝までではなく夕方から終電までの時間帯で営業をしている。今回初訪問で訪れたパーティーはDJ Yogurtによる『Slo Mo Before Midnight』で、BPM110以下であれば何でもプレイするのはOKというパーティーで、ゲストにはBlack ForestのDJ Kuriを迎えて一体普段とは異なるどんな音楽性を披露するのかという興味もあり、初めての場所という事も合わせて期待に胸が高鳴る。
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| EVENT REPORT7 | 20:36 | comments(0) | trackbacks(0) | |