2020.04.29 Wednesday
Rhythm Section InternationalやLocal Talkなど一部のレーベルにおいてジャズをハウスのフォーマットに落とし込んだクロスオーヴァーな音楽性が盛り上がっているように感じられる近年、同様の流れはスウェーデンのOmenaにおいても顕著だ。前述の音楽性のみならずダウンテンポやニューディスコまでと幅は実に広く多様なアーティストがカタログに名を連ねるが、同レーベルの初めての作品はJohan CederbergことHnnyで、このアーティストもレーベルの多様性を示す存在だ。2019年には色々なジャンルが同居した『2014.12.31』(過去レビュー)をリリースしメランコリーな世界観でリスナーを魅了したが、それから間を空けずにリリースされたのが本作で、何でも2013年に制作されていたお蔵入り音源だそうだ。レコードだとA面には7曲収録されており、ゆったりとしながらもサンプリングを用いたビート感とネオソウルな雰囲気のあるしっとりメロウな"Hej"に始まり、フルートやストリングスに生音強いリズムを用いて優美なジャズを聞かせる歌モノの"So Good"、そして気怠い甘さが白昼夢に浸らせるインタールード的な短いダウンテンポの"Lyn"と、序盤から前作以上にメランコリー一色で小洒落たカフェのBGM的な落ち着いた音楽性だ。"Meandyou"はヒップ・ホップ色の強いリズムを用いながらも気怠い歌と繊細なエレピやキーボードで優しく包み込むダウンテンポで、そしてスペーシーな電子音響やストリングスを合わせて浮遊感のあるドリーミーなダウンテンポに仕立てた"ILY"と、どの曲も温かい温度感としっとりした湿度感があり、サンプリング重視な音楽性ながらも非常に人間の血が通ったような風合いだ。そしてB面は1曲だけながらも11分にも及ぶ"You Be Good, See You Tomorrow"が収録されており、こちらはか弱くも優美なピアノが繊細な装飾を行い静かなジャズ・ドラムと相まって、全く変化の無いループ構成ながらもレイドバックした雰囲気がたまらない。全体的に短い曲が多い事もあってか断片的でラフスケッチな印象もあるEPだが、このオーガニックで人肌を感じるメランコリーは昼下がりの午後3時の眠気が強くなる時間帯にもぴったりだ。
Check Hnny