麺屋 味方
麺屋 味方1

飲兵衛にとっての味方の街、それが新橋。しかし新たなる味方が2018年4月にオープン、それが麺屋 味方である。元々新橋にはNS系のラーメン二郎新橋店があったのだが、その元店長が独立して開店させたのが味方であり、かたやラーメン二郎新橋店は人手不足を理由に同じ時期に閉店…。そういった経緯を考えるとラーメン二郎新橋店の系譜にあるのがこの味方と言えなくもないが、わざわざ独立したのだから改めてやりたいラーメンがあったのかとも思う。先ずは店の基本を確かめるべく、今回はラーメン(750円)にトッピングはヤサイニンニクアブラで注文。

やる夫1

そんな風に考えていた時期が俺にもありました
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Relaxer - Coconut Grove (Avenue 66:AVE66-07)
Relaxer - Coconut Grove
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そのレーベル名が示す通り奇妙なアシッド・サウンドを試験するAcid Testの尖った個性は言うまでもないが、そのサブレーベルであるAvenue 66にもLowtecやTruxにJoey Anderson、そして最近ではJohn FruscianteのエレクトロニックなプロジェクトであるTrickfingerもカタログに名を連ねてきており、レフトフィールドな音楽性は親レーベルに全く引けを取っていない。そのような事もあり少なからずレーベルの作品には注目していたので、2019年10月にリリースされたRelaxerによる本アルバムにも手を出してみた次第である。この名義では2016年頃からリリースがあったので新人かと思いきや、NYで活動をするDaniel Martin-McCormickは過去にはハードコア・ノイズ・バンドのBlack Eyesに所属し、またはItal名義ではPlanet Muや100% Silkからもリリース歴のあるベテランのようだ。バンドを解散しエレクトロニックな路線に転換してからも完全にダンスフロア向けというよりはバンドらしい刺激的でパンキッシュな性質も残ってはいたものの、本作ではそんな残像をも掻き消すかのようにアナログやローファイといった要素が目立つディープなテクノへと染まりきり、Relaxerとしても新たなフェーズに入った事を告げている。歪な金属音がギクシャクとしたリズムを刻むような始まり方の"Serpent In The Garden"は、次第に4つ打ちへと移行し酩酊を誘うトランシーな上モノによって快楽の螺旋階段を上り詰めるようで、いきなりトリップ感のある出だしに魅了される。しかしダンスに振り切れる事はなく、続く"Fluorescence"はドローン的な重厚感あるシンセと快楽的なメロディーが液体の如くゆっくりと溶け合うアンビエント基調で、内なる深層へと潜っていくような瞑想を演出する。"Cold Green"はこのレーベルらしいアシッド×ローファイなハウスで、緩やかにうねる不安なアシッドが魔術のように精神へと作用し、終盤に向けて徐々に不気味さを増しながらずぶずぶと底無し沼へと誘う。"Born From The Beyond"のようにリズミカルで早いテンポの曲にしても、霞んだボーカルサンプルと不気味にうねる分厚いシンセがミステリアスな雰囲気を作り出していて、どの曲も開放的というよりは内省的で陽の当たらない深い地下世界のようだ。それ以降も、どんよりと暗雲立ち込める暗さながらも神秘的で美しいシンセが充満するディープなアンビエントの"Steeplechase"、粗雑なキックやドラムが突き刺さるような刺激的なグルーヴとなりエレクトロ感を生む"Breaking The Waves"と、リスニングとダンスを往来しながらも真夜中の夢の中を彷徨うディープな世界観で統一されており、Relaxerというアーティストの音楽性が新たに確立されているように思われる。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Sleep D - Rebel Force (Incienso:INC007)
Sleep D - Rebel Force

ここ数年ダンス・ミュージックの業界で勢いを伸ばしているオーストラリア、特にメルボルンは新たな才能が続々と生まれている。レーベル自体も活況で2013年にレーベルとして開始したButter Sessionsは、元々は音楽の交流の場として同名のブログが開設されていたのだが、それがミックスショーとなりパーティーとなり、そしてレーベルとなってからは積極的にオーストラリアからの新鋭を後押ししている。メルボルンという地元の活性化を担うそんなレーベルの主催者がCorey KikosとMaryos Syawishから成るSleep Dで、2012年にデビューした頃はまだ高校生だったと言うのだから、正に新進気鋭のアーティストだろう。そんなSleep Dによる初のアルバムだが、レーベル自体に多様なアーティストが名を連ねテクノやハウス、エレクトロやミニマルにアンビエントとゴチャ混ぜ感がある事もあり、本作も同様に一色に染まりきらずに多種な音楽性が快楽的なレイヴ感で纏め上げられている。出だしの"Red Rock (IV Mix)"は快楽的でレクトロニックなベースライン、神秘的な上モノを用いたスローなトランス風で、暗闇の深海を潜航するようなディープな曲でアルバムはじんわりと開始する。続く"Central"はダブ・ステップ風なリズムと不気味に蠢くアシッドのベースサウンドが強烈でびしばしと鞭で打たれるような刺激的な曲だが、中盤に入るとそこにアンビエンスな上モノが幻想的な装飾をする面白い作風だ。そしてヒップハウス風な弾けるリズムが印象的な"Danza Mart"は、しかしビキビキと麻薬的なアシッド・ベースやトリッピーな電子音に頭をくらくらさせられ、ダンスフロアの狂騒が脳裏に浮かんでくる。更にテンポをぐっと落としてダウンテンポながらもゴリゴリなハードウェアのローファイ感を打ち出した"Twin Turbo"、底辺を這いずり回るビキビキなアシッドのシーケンスと奇妙な電子音のエフェクトが入り交じるディープなトランス風の"Fade Away"と、勢いが抑制されたスローモーな曲もアルバムの中でずぶずぶとした粘性による魅力を打ち出しており、多彩な音楽性がそれぞれの曲の個性を更に強くしている。"Morning Sequence"では何とKuniyuki Takahashiをフィーチャーしているが、オーガニックな太鼓の響きやメロウな鍵盤の旋律を用いたディープ・ハウスな性質はKuniyukiの影響がかなり反映されており、アルバムの中ではやや異色ながらもSleep Dにとっては新機軸と言えるだろう。非常に雑食性のあるアルバムでとっ散らかった雰囲気もなくはないが、そこは全体としてローファイなレイヴ・サウンドとして捉えると、こういった何でもありな音楽として成り立っているように思われる。



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| TECHNO14 | 14:30 | comments(0) | - | |
Folamour - Ordinary Drugs (FHUO Records:FHUOLP001)
Folamour - Ordinary Drugs
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先日、リヨンに設立されたMoonrise Hill Materialの音源を紹介したので、レーベルの設立者の一人であるBruno BoumendilことFolamourを紹介する。作曲家としては2015年にデビューしたフランスの新世代を代表する一人であり、ベースやギターにドラムやパーカッションといった楽器の経験も積んだマルチプレイヤーが生み出す音楽は、クラシックなハウスを軸にしながらジャズやファンクにソウルやディスコといった要素も咀嚼した幅の広さなり深さがあり、大御所ハウス・レーベルのClassicからダウンテンポやアンビエントまで展開するFauxpas Musikに近年評価の高いクロスオーバーな音楽性を披露するChurchなど多様なレーベルからのリリースがある事からも、豊かな音楽性を持っているアーティストである事を感じ取れる筈だ。この目下最新アルバム(とは言いながらも2019年2月のリリースだが)も言うまでもなくハウスをフォーマットにしつつそこの様々な要素を融合させ、アルバムという形の中で豊かな表現力を発揮した作品は実に素晴らしい。雨音や雑踏の歩く音など環境音を用いて日常の生活感を表したような"Intro"でストーリーを開始させるような幕開けに続き、ヒスノイズ混じりでアブストラクトながらも美しいシンセパッドがアンビエントを匂わせつつWayne Snowによる囁きのような甘い歌もあって情緒的に展開する"Underwater Memories"まではゆったりとした流れだが、3曲目の"I Don't Sleep At Night But I Wake Up At 6AM"でドタドタと生音強めでジャジーなグルーヴと艶めかしいトランペットやピアノが妖艶に彩っていくビートダウン風なハウスでようやくダンスモードへと入っていく。"Don't Make Me Leave You Again, Girl"も同じ様にざっくり生々しいドラムのリズムと管楽器やベースの湿っぽく温かい有機的な響きを前面に出して、ややディスコ寄りの作風は単なるDJツールより血が通っているようにライブ感が活きている。しかしただダンスさせる事を目的としたアルバムでないのは明白で、例えばElbiの色っぽく誘うような歌をフィーチャーしてジャズやソウルへと寄り添った"After Winter Must Come Spring"や、流麗なストリングスに合わせてインプロビゼーション的に躍動するジャズ・ドラムが生き生きとリズムを刻む"Parfums D'Aurore"など、アッパーな勢いや圧力に頼らずに魅力的なメロウネスやリズムによってしっかりと聞かせる音楽が前提なのだ。アルバムの最後は"Theme For Marie Marvingt"、眩しい位にゴージャスなシンセ使いはシンセ・ファンクか、しなやかで複雑なジャズのリズムに有機的なディスコの感覚もあり、Folamourらしいジャンルを横断した曲で幕を閉じるのは印象的だ。イントロから始まり多様なジャンルを盛り込み、前述の終わり方まで含めてアルバムはFolamourの音楽のルーツを感じさせる旅のようで、ソウルフルな新世代のハウス名作だ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Saint Paul - Escape From Dimension EP (Moonrise Hill Material:MHM011)
Saint Paul - Escape From Dimension EP
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2015年にフランスはリヨンに設立されたMoonrise Hill Materialは、今や人気アーティストとなったFolamourを始めとして複数のアーティストによって立ち上げられたハウス系新興レーベルだが、その運営の一人がSaint Paulだ。Paul自身は2017年に同レーベルからアーティストデビューし、ここ3年程精力的に作品をリリースしフランスの新興勢力として名を挙げているが、本作は2019年の中頃にリリースされたEPだ。レーベルインフォではファンクやジャズ、ソウルにヒップホップ、そしてハウスミュージックを混合して、Paulの多様な音楽に影響を受けた結果が反映されているとの事だが、実際に5曲それぞれに異なるジャンルの要素が込められており、それらが小手先にならずに自分にしっかりと馴染ませた感がある点は評価すべきだろう。"I Really Wanna Get To You"はファンキーに弾けるベースとディスコ・サンプリング的な上モノを用いつつ、優美でソウルフルな歌も加わって光が溢れ出すような煌めくディスコ・ハウスで陽気な雰囲気に盛り上がらずにはいられない。"Funky Cruisin'"は透明感のある薄いシンセコードに流麗な笛の旋律が被さり情緒豊かに展開するが、下部では生音強めでジャジーなリズムがしなやかに走り、EPの中では特にエレガンスな一曲。"Body & Soul"も同様に緩やかに揺れるジャジー・グルーヴを刻みつつ、熱き感情を吐露する歌と耽美で繊細なエレピやストリングスが湿っぽく装飾し、ソウル×ジャズ×ハウスで色っぽささえもある。そして海鳥の鳴き声や波の引いては寄せる音から始まる"Pecheur de la Lagune"はそこから澄んだ上モノの爽快な音や軽快で心地好い4つ打ちによる90年代風というか古典的なハウスを聞かせ、最後はぐっとテンポを落としてヒップ・ホップなねっとりしたリズムを刻み、華麗なエレピや笛のサンプリングによって甘ささえも感じさせるメロウな"Smooth Wit Da Ruffness"で閉幕。これだけの説明だと何だかとっ散らかった印象を受けてしまうかもしれないが、実際に聞いてみると何ら違和感はなく味わいのあるメロウな世界観で自然と統一されており、リスニングに耐えうる楽曲性は今後アルバムという形で聞いてみたくなる。



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| HOUSE14 | 21:00 | comments(0) | - | |
E. Live - Boogie For Life (Star Creature:SC1223)
E. Live - Boogie For Life

2019年のGiovanni DamicoやLiquid Pegasusによる色彩豊かな感覚に満たされるシンセ・ファンク〜ブギーなアルバムが素晴らしく、レーベルの音楽性に魅了させられたのがシカゴのStar Creatureだ。2016年頃に設立されたまだ新興レーベルのようだが、ブギーやディスコにファンクやR&Bといった音楽を纏め上げモダンに聞かせる過去から未来への視点を持っており、キラキラとした都会的な感覚が特徴だ。そんなレーベルの新作がEli HurwitzことE. Liveによるミニアルバムで、レーベルを代表するアーティストの一人だけあって前述のレーベルの音楽性を象徴していると言っても過言ではない程に、本作のライブ感溢れるシンセバリバリでファンキー&ブギーな作風はポップさ弾けて爽快な風が吹き込み楽天的な太陽の光が射すようだ。アルバムジャケットのポップな色使い、そして都会のビル群とビンテージシンセを題材した内容からしてもう完全にシンセ・ファンクが想像され、聞く前から何処となく心がウキウキしてこないだろうか。タイトル曲からして素晴らしく、シャキシャキとしたドラムに合わせて透明感のあるスペーシーなシンセとキレのあるギターカッティングがファンキーなビートを叩き出す"Boogie For Life"、懐メロのような心に染みる複数の音色のシンセが代わる代わる登場し、これでもかとメロウに展開するブギーな幕開け。からっと乾いたパーカッションが空に向かって響く涼し気な"Sunny Side Up"は、流麗なピアノコードや生音強めにうねるベースから始まり、中盤では光沢感のあるシンセがキラキラと眩しいように響いて、ライブ感溢れるジャズ・ファンクと呼べかよいか。ずんずんとノリの良い4つ打ちのドラムがディスコ風な"Rolling Steady"は、ここでもエレクトロニックな響きの複数のシンセがお互いを刺激するように盛り上げているが、ポップでスペーシーな感覚に満ちたシンセの響きは憂いと共に儚くもある。"Brazao"はブラジル音楽を意識したようでチャカポコとしたパーカッションのリズムが前面に出ており、そこに艶めかしいベースやギターカッティングを被せて腰にくるファンキーさを出しつつ、そしてやはり分厚く煌びやかシンセのうねるメロディーが郷愁を誘う。扱っているジャンルとしては古典的というか新しさは無いのだろうが、しかしそんな音楽に全く古さを感じさせない澄んで綺麗な音の聞かせ方やこれ以上ない位にエモーショナル性の強い旋律やコードの表現など、古い音楽を咀嚼した上でモダンに昇華している点が素晴らしい。僅か6曲のミニアルバムだが、しかしそこには近未来のモダンブギーが詰まっている。



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| HOUSE14 | 07:30 | comments(0) | - | |
改良湯
改良湯1

都内では連日のように古くからある銭湯が廃業しており、銭湯文化も先細り感が否めないものの、しかし中にはリニューアルをする事によって新たな魅力を携えて、新たな客層を獲得する事も最近は珍しくない。今回紹介する改良湯もその一つで、渋谷駅と恵比寿駅の両者の中間にあり決して交通の便が良いわけではないが、創業100年を超える老舗が2018年12月に新装開店する事により、今では20〜30代の客も来るようになったようだ。銭湯の一般的なイメージは煙突だったり破風屋根だったりするが、改良湯はご覧の通り住宅街の中に建っているビルの中に存在する。ビルの側面には鯨の大きな壁画が描かれており一見銭湯らしくないものの、こういったアートもこれからの銭湯の形になっていくのではないだろうか。
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| FOOD,TRAVEL,HOT SPRING,ETC4 | 18:30 | comments(0) | - | |
Edward - Underwater Jams (DFA:DFA2618)
Edward - Underwater Jams
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古くはWhiteの主力アーティストとして、その後はGieglingでもレーベルを代表する繊細な音響美を追求するディープ・ハウスの音楽性で注目を集め続けるEdwardが、2019年には意外にもニューヨークのパンキッシュなダンスレーベルであるDFAからEPをリリースしている。正直言ってしまうとDFAの音楽性との関連性は殆ど感じられず、実際にこのEPにおいても繊細な音響を大切にしたEdward節というか、2017年のEP『Giigoog』(過去レビュー)の路線を踏襲してポリリズム感のある土着ミニマル・ハウスで緻密な構成を組み上げ、ダンストラックとしての機能性を得ながらも非常にアーティスティックな作風を披露している。どちらもパーカッショニストのGeronimo Dehlerをフィーチャーする事でいつもより即興的なライブ感が活きているが、"The Lagoon"は揺蕩うような緩いグルーヴが流れる上にカラッと乾いたパーカッションが大地の芳香を漂わせており、そこにモジュラーシンセや奇妙な電子音を配しながら自由気ままに旅するかのように展開する。定形の無い電子音の使い方はジャーマン・プログレかニューエイジかのようにエクスペリメンタルな要素を含んで、勢いではなく雰囲気によってトリップ感を生み出していて、得も言われぬ酩酊感が11分にも渡って持続する。15分にも及ぶ"Mental Dive"は勢いのあるダンストラックになっており、同様にアフリカンで土着的なパーカッションがライブ感溢れるグルーヴを刻みつつ不気味なうめき声がより怪しさを増長し、中盤には怒涛のアフロ・トライバルなパーカッション乱れ打ちな時間帯もあって、終始生々しく胎動するリズムに引っ張られるこの曲は深い密林奥地の儀式のようだ。どちらも不規則なパーカッションが非常に印象的な響きとなって曲と特徴付けており、Edwardの曲の中では異色作ではあるものの、個性が尖りながらもフロアに直結した作風でDJ仕様として抜群であろう。



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| HOUSE14 | 18:30 | comments(0) | - | |
John Beltran - The EP's & Singles Vol.1 (Blue Arts Music:BAMCD007)
John Beltran - The EPs & Singles Vol.1
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所謂ベテラン達が新作をなかなかリリースしない事もあり業界的にはかつての求心力を失いつつあるテクノの聖地とまで呼ばれたデトロイトだが、だからといってデトロイト・テクノの魅力が失われたわけでもなく、例えばここ日本は福岡のレーベルであるBlue Arts Musicはその音楽の復権を後押しするように、積極的にデトロイトに関連する音楽のリリースをしている。2019年の上半期にはデトロイト第二世代の中でも特に美しいアンビエント性を武器とするJohn Beltranのアルバム『Hallo Androiden』(過去レビュー)をリリースし、そのアーティストにとっても第二の春を迎える如く素晴らしい音楽を知らしめたが、2019年末もレーベルの勢い止まずBeltranのコンピレーション・アルバムをリリースしている。00年代初期から2019年のEP、またはコンピレーション・アルバムからの曲を集めたタイトル通りの内容で、その間にはややオーガニックな路線へ向かったり迷走していた感も無かったわけではないが、ここでは比較的フロアに根ざしたビートを刻むテクノ寄りの曲を纏めており、その意味では初期の幻想的なアンビエントとしなやかなリズムを刻むテクノが一体となった彼の十八番とも呼べる作風が発揮されている。冒頭の"Israel"は2016年作、全盛期の作風が戻ってきた頃の曲で、ざくざくとやや生っぽいリズムは刻むもののダンスフロアに根ざしており、そこにぼやけた水彩画の色彩のような幻想的なパッドを重ねて、アンビエンスな感覚もある叙情的というかエモーショナル性で包み込んでいくドラマティックな曲だ。続く"Norita"も同じように滲んだようなシンセや美しいストリングスを用いているが、チャカポコした抜けの良いパーカッションが爽快なビートを叩き出し、一時期Beltranが傾倒していたラテンな感覚もある。Indioでリリースされた"Winter Long"は爽快なラテン・パーカッションとブレイク・ビーツ風のリズムが力強く躍動するダンス・トラックだが、そこに物哀しいメロディーが加わってくると途端に情緒的なアンビエント性も出てくるなど、このダンスとリスニングのバランス感覚は流石だろう。"Safardic"も跳ねるような4つ打ちを終始刻みつつ夢のような幻想的な上モノで覆い尽くして甘い世界観のテクノながらも、中盤のブレイクを挟んでからはデトロイト・テクノお約束のシンセストリングスの感情的な旋律が浮かび上がり、これでもかと切ない心情を刺激するエモーショナル過ぎる一曲だ。流石にEP等から選りすぐりの曲が纏められているだけあり、捨て曲は皆無でこれ以上ない位にBeltranの素朴でセンチメンタルなテクノ×アンビエントを体験出来るアルバムとなっており、まだBeltranを見知らぬ人にとっても是非ともとお薦め出来るアルバムだ。

Check John Beltran
| TECHNO14 | 21:30 | comments(0) | - | |
Unknown Mobile - Daucile Moon (Pacific Rhythm:PR008)
Unknown Mobile - Daucile Moon
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2019年もアンビエントやバレアリックの名作に恵まれた一年ではあったが、そんな中でも新世代として頭角を現し一際輝いていた作品が、カナダはモントリオールのミュージシャンであるLevi BruceことUnknown Mobileの2ndアルバムである本作。2015年頃からYoung AdultsやASL Singles Clubといったレーベルから、フィールド・レコーディングに電子とアコースティックを同居させた長閑な田園風景が浮かび上がるチルアウト的なアンビエント作をリリースしていたが、本作ではより平穏な世界観を目指すべく同じジャンルでは人気を博すCFCFによるギターも導入し、より一層チルアウトとしての癒やしの効果が高まっている。なんでも4年前に足の指を骨折して療養中にサーバに残っていたMIDIサンプルを収集し、それらをコンピュータに取り組んで制作していったアナログとハイブリッドの作品との事で、それもあってか何だか懐かしく素朴な響きもアンビエント性との親和性が良いのだろうか。柔らかく深い残響の太鼓が古代の秘境めいた森林を換気させる"Medicine Man"、笛らしき音色などの有機的な響きもあって生命の営みを感じさせるトライバルなアンビエントで始まり、蠢くような不気味なシンセのシーケンスに光沢感のある上モノを被せて神妙な瞑想へと誘う"Ravers Sojourn"とここら辺から既に深遠なチルアウト感覚は漂っているが、やはり本作のキモは"A Windles March Ouest"のような曲だろう。プリミティブなシンセの反復に合わせて生っぽいベースがじっくりと展開しつつ、そこにCFCFによる線が細くも叙情的なギターや鳥の囀り等が入ってくるスピリチュアルな世界観は、モダンなニューエイジとして鮮烈だ。"Simone Can't Swim"のようにベルが鳴りつつ細かな電子的な効果音を盛り込み、そして終始どんよりとした不鮮明なアンビエンスに覆われる曲も、内なる心を見つめさせる瞑想効果が高く鎮静作用がある。しかしやはりアルバムでは"Oenology"や"Copper Bird Bath'"などCFCFの爽快感と切なさを誘う繊細なギターを起用した曲が特に印象的で、波や鳥の囀りの音などのフィールド・レコーディングやぼんやりとして温かみのあるシンセのパッドの伸びも用いて、例えば黄昏時のオレンジ色に染まったビーチを眺めるようなサウンド・スケープが切なく迫りくる。アンビエントやニューエイジにバレアリックといった要素が一つなり、体の隅々まで清純な水が染み渡るような癒やしの音楽は、この上なく叙情的で忙しない現在の生活から心を解放する。2019年のベスト作品に挙げたくもあった素晴らしいアルバムだ。



Check Unknown Mobile
| TECHNO14 | 16:00 | comments(0) | - | |