2020.09.29 Tuesday
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デトロイトやシカゴの影響も匂わせ、スモーキーで訝しいディスコティックにモダンなミニマル性も込めて良質なディープ・ハウスを量産していたPhilpot。その主宰者であるMichel Baumann、またの名をSoulphiction/Jackmateとも名乗るDJ/アーティストも、PampaやSonar KollektivのみならずPerlonやPlayhouseからもリリース歴がある事からも分かる通り、やはりブラック・ミュージックを下地にした艶かしくファンキーな響きを打ち出しているが、DJツールとしての洗練された機能性も持ち合わせた音楽性が特徴だ。そんな彼も常にフロア適応型のEPはリリースしていたものの、アルバムは2008年の『Do You Overstand?!』(過去レビュー)から音沙汰無しの状態が続いていた。しかし2019年の暮れ、なんと11年ぶりとなるアルバムがLocal Talkからリリースされた事には驚いたが、様々なブラック・ミュージックを咀嚼したクロスオーバーな音楽性を持つレーベルだからこそ、Soulphictionの音楽性と共鳴するのも自然の流れだったのだろう。さて、アナログでは3枚に分かれていた作品を配信で纏めたアルバムなのでボリュームもたっぷりなので、音楽性も今まで以上に豊かに色々な要素を含んでいる。出だしの"U'll Like It"からして過去のKDJの作風まんまな煙たくサイケデリックなビートダウン・ハウスで、そのインスパイア具合には苦笑しつつもファンキーなサンプリング使いには、有無を言わせない説得力がある。対して金属のロウな響きがスリージーで冷淡でミニマルな"Luv Yaselves"はセオパリ影響下と思われ、微かに官能性はありつつも淡々としたヒプノティックな曲は機能的だ。しかし"Jus Listen"では柔軟なリズム感のブロークン・ビーツ風で、清涼なコーラスと耽美な鍵盤使いにうっとり陶酔し、フロアの闇から光の射す方へ向かっていくようだ。そしてタイトル曲の"24/7 Love Affair"、こちらはズンズンと重く太いキックを活かしたディスコ・ハウスだが、暗闇の中にひっそりと耽美なエレピサンプル等を配して、深い黒さから官能が浮かび上がる。また"The Mood"もディスコな作風だが、ざらついて荒々しいドラムのリズムとうねるチョッパーベースが生臭くファンキーで、そこに人間臭いソウルネスを感じずにはいられない。ブラック・ミュージックの流れでざっくり生っぽいリズムがヒップ・ホップでメロウに染みる"Goodnite Ema"もあれば、シカゴ・ハウスにも似たスカスカで安っぽいリズムが逆にファンキーな味わいを生む"Raw Track"もあるが、異色なのは"French Kiss"の派生とも呼べる"Beehive (HiPhife Mix)"で、アルバムの中で最もテクノのヒプノティックな快楽性がありフロアを高揚へと包み込む事は間違いないだろう。単なるハウス・ミュージックではない、その殻を打ち破りつつもSoulphiction流のブラック・ミュージックを体現したバラエティーにも富んでおり、80分越えのボリュームながらも飽きずに楽しませてくれるファンキーでエモーショナルなアルバム。尚、最近では毛並みの異なるJackmate名義も復活させており、そちらではよりユニークな音楽性を発揮している。
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