2020.11.29 Sunday
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最初そのタイトルを見た時には期待せずにはいられなかった『Detroit Love』。Carl Craigによってデトロイトのシーンを世界に紹介すべくをコンセプトしたパーティーから、その音楽性をMIXCDへと投影させたシリーズという触れ込みだったが、実際にその音楽性がデトロイトの雰囲気を伴っているかについては非常に懐疑的なシリーズ。新作は最早デトロイトにも特に関連の無いスイスからMirko Lokoがミックスを担当しているが、過去にはPlanet EからリリースもありCraigとの交流が深いアーティストを起用しているだろう。本作もデトロイトな雰囲気を発していない事は選曲から明白なものの、その『Detroit Love』というタイトルさえ気にしなければ内容自体は寧ろこのシリーズの中でも群を抜いて素晴らしく、テクノ〜ハウス〜ミニマルが融け込んだスムースなミックスは特にフロア映えしている。Fred Pの幻想的なアンビエントである"Vision In Osaka"によって壮大さを演出する幕開けから、自身のディープで官能的なエレクトロニック・ハウスの"It's Like (Detroit Love Mix)"、そしてずぶずぶとした土着ミニマルの"Time Million (Villalobos Vocal Mix)"へと滑らかに展開していくオープニングからして文句無しの流れ。"Monte (Carl Craig Edit)"等にしても序盤はかなりミニマル性の強いグルーヴでじんわりと嵌めていくが、Lokoお気に入りのTakuya Yamashitaの曲をリミックスして艶っぽいピアノがしっとりした情緒を生む"Aos Si (Mirko Loko's HOS Remix)"やヒプノティックなシンセが妖艶なテック・ハウスの"My Own Transition"辺りから音にぐっと色味を持ち出して、じわじわと盛り上がりつつも勢いや振れ幅を強めていく。トライバルなパーカッションが爽快な"Dump Days"、弾けるオールド・スクールなファンキー・ハウスの"Faces Of Life"、デトロイト的な叙情性を持つドラマティックな"The Jazzer (Russ Gabriel Remix)"等中盤以降はパーティーのピークタイムへと入っていくような盛り上げ方。そこから更にゴリゴリで厳ついテクノの"Pressure (Laurent Garnier Mix)"、垢抜けなくもロウな響きが荒々しいハウスの"The Loft"や"Music Cinema"から中毒性たっぷりなどぎついアシッド・ハウスの"It's The Message"を通過して、最後までじわじわと続く緊張感と激しい高揚感を両立させている。音楽的にデトロイトの要素は当然希薄で『Detroit Love』というタイトルが相応しいのかどうかはおいておいても、新旧時代を紡ぎながら幅広くも4つ打ちを軸にしてフロアの感覚を反映させたミックスで、特にシリーズの中でもモダンなダンス・ミュージックとして優れている。
Check Mirko Loko
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