Alton Miller - Infinite Experience (Local Talk:LT 96)
Alton Miller - Infinite Experience
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デトロイトの伝説的クラブであるMusic Instituteの創始者の一人…という経歴だけでも強い存在感を放つデトロイトのディープ・ハウス方面の大ベテラン、Alton Miller。ジャジーでソウルフルかつエモーショナルな、新鮮さよりは古典的なディープ・ハウスを追求する伝道師的な存在は、時代の流行に関係なく自身の揺るぎない音楽性によって聞く者を魅了する。暫くアルバムは出ていないもののEPに限って言えばここ数年量産体制を継続しており、Sound SignatureやNeroliにMoods & GroovesやSistrum Recordings、その他多くの実力派レーベルに作品を提供しており、前述のようにクラシカルな作風がぶれないからこそ色々なレーベルから信頼を寄せられているのだろう。さて、勢いに乗ってリリースされた新作はスウェーディッシュ・ハウスを引率するLocal Talkからとなるが、レーベルがジャジーなりクロスオーバーなりの音楽性に理解があり、その意味ではMillerの音楽性との親和性は抜群である事は説明不要だろう。クラブ・トラックである事は前提としても単に打ち込んだ機能性に特化しました…という作風ではなく、鍵盤弾きであろう豊かなメロディーラインやオーガニックな響きを前面に打ち出したソウルフルな作風がMillerの特徴で、"Afro Grey"でも弾けるパーカッションが爽快なリズムを刻み豊かなパッドの伸びに合わせて、光沢感あるフュージョン風なシンセが優雅に舞い踊るテッキーながらも温かみのあるディープ・ハウスは、エレクトロニックとオーガニックの実にバランス感の良い曲だ。"By The Way She Moves"はテンポを抑えて緩やかでざっくりとしたリズムが生っぽくもあるハウスで、勢いを抑えた分だけテッキーなシンセのリフと切ない鍵盤のメロディーがより湿っぽく感情的に迫ってきて、ジャジーなMiller節をより堪能出来るだろう。また配信限定で"One Way Back"も収録されているが、これはスキップするような軽快なアフロ・パーカッションが跳ねる躍動感溢れるハウスで、古典的なオルガンのコード展開に煌めくようなシンセソロが彩りを施して、優美にピアノの鍵盤も加わってくれば実に華麗なクロスオーバー系のダンストラックとなる。曲調としては過去から続く切なくエモーショナルなハウスを得意とするMillerの音楽そのもので、目新しさは皆無なもののこういった音楽こそが流行にかかわらず聞かれるべきものだ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Akis - Remixed (Into The Light Records:ITL005.5)
Akis - Remixed
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近年、世界各地に眠るニューエイジやアンビエントの秘境音楽の発掘が著しいが、特にギリシャに焦点を当てて発掘を行っているのがInto The Light Recordsだ。2017年にはギリシャのコンポーザーであるAkis Daoutisの埋もれた曲をコンパイルした『Space, Time and Beyond (Selected Works 1986-2016)』(過去レビュー)をリリースしちょっとした話題を集めていたが、そこに収録された曲を現在のアーティストがリミックスを行ったのが本作。PejzazやEarth Trax名義も含めてニューエイジやダンス方面で活躍中のBartosz Kruczynski、オルタナティブなダンスを手掛けるBenoit BやTolouse Low Trax、Miltiades名義でも活動するロウテクノのK100 Signalとやや癖があるというか個性的なアーティストがリミックスを提供しているが、どれも今風なサウンドになっておりリミックスの妙技を楽しめる。原曲はカラフルなシンセ・ポップの感覚もあったのが"Into The Light (Tolouse Low Trax Remix)"ではかなり抑揚は抑えられ淡々としたマシンビートとカラコロとしたパーカッションが引っ張っていき、ベースにしろ上モノにしろ全てが整然と変わらないループを繰り返すリズム重視なリミックスで、その執拗な反復が催眠的でもありずぶずぶハマっていく。比較的バレアリック寄りな作風が爽快で心地好かった"Ecological Awareness"、これは2アーティストがリミックスしているが、"Ecological Awareness (Benoit B Remix)"は原曲の雰囲気を受け継ぎつつ音や構成をクリアにする事で綺麗なアンビエント/バレアリック性が増し、非常に素直なリミックスと言えよう。一方"Ecological Awareness (K100 Signal Remix)"は原曲の明るさから一転、重苦しくミステリアスな雰囲気が漂うディープな瞑想系アンビエントへと生まれ変わり、ズブズブとしたロウなリズムと重苦しい電子のドローンが持続して、何処までも深く潜っていくよう精神世界へと誘われる。圧巻のリミックスは"Christmas (Bartosz Kruczynski Remix)"で、元々夢のようなニューエイジ曲だったのがこのリミックスでは更にそれ推し進め、静謐なドローンと美しい電子音やピアノを繊細に組み合わせて実に幻想的に仕上げており、中盤からは覚醒的なアシッド・サウンドも出現してドラマティックなのにトリッピーなアンビエント空間を創出するのだ。全体的にリスニング寄りの曲なのでダンス中心のクラブで使うのは難しいかもしれないが、ニューエイジやアンビエントが再燃する今という時代にぴったりなリミックスである。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
2020/1/17 GUIDANCE 15th × SLEEPING BAG @ Vent
1月のこの時期は毎年恒例のGuidanceのアニバーサリー・パーティーで、15周年となる今年はファッションとダンス・ミュージックに携わるSleeping Bagとの合同企画。そんな祝祭の日にゲストとして予定されていたのは近年多大な注目を集めるようになったパレスチナからのSama'だったのだが、直近になりキャンセルが発表され期待が削がれた人も決して少なくはないだろう。しかし元々Guidanceは日本のDJ/アーティストを積極的に後押ししてきたパーティーであり、今回も過去Guidanceに参加してきたDJ/アーティストを招いてある意味ではこれがGuidanceらしくなった。DJとして参加する予定だったAltzは久しぶりのソロライブへと変更し、ヒップ・ホップ〜ハウスとフリーフォームなDJをするKensei、Ventに初登場となるDJ Yogurt、Sleeping Bagの面々がメインフロアを担当する。
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| EVENT REPORT7 | 17:30 | comments(0) | - | |
Pilar Zeta - Moments of Reality (Ultramajic:LVX036)
Pilar Zeta - Moments of Realit
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2018年10月頃に突如リリースされた本作、Pilar Zetaなるアーティストの初の作品にしていきなりアルバムなのだが、これが現在のニューエイジやアンビエントのムーブメントと共振しながらシンセ・ポップやエクスペリメンタルな成分もあるレトロフューチャーな内容で、デビューにして非常に魅力的な音楽性を発揮している。アルゼンチン生まれのポートランド在住のZeta、聞き慣れないこのアーティストはかつてはファッションデザイナーであり、また芸術家でありも今までに数多くのCDやレコードのアートワークを手掛けたりもしていたのだが、デトロイトのJimmy Edgarと共にUltramajicを主宰し勿論Edgarの作品のデザインも行っていた。そして公私共にパートナーであるEdgarと引っ越した先のポートランドの家で自身の美学を音楽へ投影する事を考え、90年代のアナログシンセサイザーを駆使してEdgarと音楽制作を行うようになったそうだ(結果として本作はEdgarも共同プロデューサーとして名を連ねている)。インスピレーションの元には日本のニューエイジやアンビエント(例えば細野晴臣)、またはArt of Noise等が挙がっており、確かに懐かしさもあるシンセサウンドを前面に打ち出した音楽性でレトロフューチャーなという世界観が相応しくある。ゲーム音楽かロマンス映画の一場面のようなピコピコしたシンセから始まる"Better Learning"、ネオンライトが輝いているようなデジタルで美しいシンセの響き、切なく感情性豊かな旋律は豊かな色彩感覚を帯び、これ以上無い位にドラマティックに展開する。クラブのダンストラック的な構成は皆無で、"Corporate Feng Shui"にしてもリズムは入りつつも幾何学的なシンセの羅列や不規則なキックの入り方で、ややスピリチュアルで胡散臭いシンセの響きが良い意味でニューエイジらしい。弾けるシンセのチョッパーベースから始まる"Mysterious World"はシンセ・ファンク/シンセ・ポップな趣きが強く、この辺りはEdgarが制作に加わっている影響の強さが現れているが、空間演出に付随するサウンド・デザイン的な感覚は芸術家のZetaによるものだろう。そしてラスト2曲の"Universe Waam"や"Clouds To Remember"は、ニューエイジやアンビエントの性質が特に強く、重力場のようなどんよりしたシンセベースに対して浮遊感があり動きの多いメロディーが躍動する前者、幻想的なシンセのリフレインが催眠的に心地好く続き白昼夢に浸るかのような後者と、どちらもドラマティックでありその甘い世界に没頭してしまう。Edgarとの共同制作だけあって豊潤な、しかし人工的でカラフルなシンセの響きを前面に打ち出して、そして感情性を隠す事なく叙情感たっぷりな旋律によって表現したアルバム、デビュー作ながらも非常に魅力的な一枚である。



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| ETC4 | 12:00 | comments(0) | - | |
Juliano - Chanme (Mojuba:Mojuba 029)
Juliano - Chanme

ベルリンのディープ・ハウスの深部を突き進むMojuba Records、シカゴやデトロイトからの音楽性までも咀嚼し深いダビーな音響にこだわった作風は芸術的ですらあり、また無駄を削ぎ落とした機能性にも磨きを掛けてDJからの視点も含む音楽性だ。本作は2019年3月頃にリリースされたEPで、担当しているのはフランスのDJであるというJulien BesanconことJuliano。自身で主宰するThat Place(なんとHouse MannequinのEPもカタログに入っている!)から既に2枚のEPをリリースしているが、それ以外の情報は乏しくアーティストについての音楽性は掴めずじまい。この新作に限って言えばシカゴ・ハウスの系譜にあたるアシッド・ハウス寄りの作風で、シカゴ・ハウスのBernard Badieの作品もリリースするMojubaの方向性に則っていると言えるだろう。"Chanme"は剥き出し感あるハイハットと太いキックが淡々と無機質に4つ打ちを刻み、そこに奇妙なサウンド・エフェクトを折り込みつつ乾いたハイハットの連打と捻れたようなアシッド・ベースが入ってきて狂った展開になる粘り強いアシッド・ハウスで、スピード感を抑える事でより不気味な響きとタフなグルーヴ感が活きたDJツールになっている。一方"Percussion Discovery"は軽快でシャッフルするリズムと浮遊感と透明感のある上モノがクラシカルなデトロイト・テクノ風であり、安っぽく粗雑さも残したリズムの音質が逆に懐かしく響いてすっと耳に馴染み、そして途中から入ってくる叙情的なパッドも加われば正にデトロイトな叙情性は、Mojubaというレーベル性を端的に表現している。まだまだ作品数が少ないJulianoについて決定的な評価を下すには時期早々ではあるが、Mojubaを追っているファンであれば本作もチェックして損はしないだろう。



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| TECHNO14 | 20:00 | comments(0) | - | |