2024.03.17 Sunday
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先日Manuel Darquartの旧作を紹介したので、引き続き2023年11月にリリースされた目下最新作である『The Del Sol EP』を紹介したい。先の紹介でもあったようにハウスからイタロ、そしてバレアリックへと言った音楽性が特徴であり、時にイタロ・ハウスの永遠のクラシックである"Sueno Latino"をも思い起こさせるようなドリーミーで楽園的な音楽観が顕著にもなるのだが、古巣Wolf Musicへと帰還しての新作は正にそういった音楽性が強く打ち出された一枚。何と言ってもスペイン語で太陽を意味するタイトルからも分かるように、太陽の輝きが反射する爽やかな海の雰囲気を伴うイタロなドリーム・ハウス色全開で、Darquartに対してはこれを待ち望んでいたのだ。"Jerry's Song"はカラッと乾いたパーカッションにディスコティックなビート感を合わせてのどかでゆったりとした流れだが、光沢感を放つような優美なピアノコードやふわっとしたエレガントなシンセを合わせ、対して底部では重みのあるベースラインによって安定感を生み、至福に満たされたディスコ寄りなハウスのこの曲も魅力十分。しかしやはりタイトル曲の"Del Sol"だろう、どっしりしたビートとダビーなパーカッション、そして幻想的なシンセサイザーの音色を前面に打ち出してロマンティックな夢を見せるような雰囲気で、これぞ90年代のイタロ・ハウスを今に継承する作風。甘ったるく色っぽい女性のポエトリーも挿入され、色彩豊かなシンセの響きとゴージャスなピアノコードが展開する中盤以降は完全に"Sueno Latino"の現代版といっても過言ではないだろう。それをメロウなディープ・ハウスを得意とするSpace Ghostがリミックスした"Del Sol (Space Ghost Remix)"はピアノのフレーズ等は抑えつつ幻想的なシンセ使いを前面に打ち出し、リズムも跳ねるような勢いを得てダンスフロア向けのディープ・ハウスへと仕立てて、Space Ghostらしさを加えたリミックスも秀逸だ。またDarquartによる"The Vibe"、こちらはマイナーコードのシンセと落ち着いたパーカッションの効いた朧気な雰囲気のディープ・ハウスで、ジャジーさもある事からLarry Heardの憂いに満ちたディープ・ハウス路線といったところか。こういった説明だけ聞くと誰かの物真似的に受け取られてしまう危惧もあるが、イタロ・ハウスやディープ・ハウスのクラシカルな部分を継承しながら純度を高めた音楽性と言えばよいのかもしれないし、何より曲そのものがどれも素晴らしく作曲家としての才能を感じさせる。
Check Manuel Darquart