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Silvestre - Silvestre Is Boss EP (Secretsundaze:SECRET026)
Silvestre - Silvestre Is Boss EP
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およそ2年間の間リリースの無かったSecretsundazeが2019年の中頃に再始動し、複数のEPをリリースしているが、その内の一枚がリスボン生まれでロンドンを拠点に活動するSilvestreによるものだ。本作の前には東京のレーベルであるDiskotopiaから『Girar』(過去レビュー)をリリースしており、テクノ/ハウスの中に雑食性の強い幅広い要素を取り入れた音楽性を披露して、国境やジャンルの境目を乗り越えるユニークな音楽性が魅力的だ。だからこそ少なからずディープ・ハウスをコンセプトにしたSecretsundazeからリリースされたのは意外な感もあるが、実は同レーベルは2015年頃からテクノやブレイクビーツに目を向けた新たなラインであるSZEも立ち上げており、その両者の溝を埋める意味では本作はなる程と思えなくもない。EPはイントロと題された2分程の"Jumping Intro"で始まるが、気怠く緩いブレイク・ビーツとダーティーなベースライン、そして訝しい呟きを用いて不良っぽく悪びれた感がこれから盛り上がる予兆を匂わせる。続く"Lights"も揺れるブレイク・ビーツを用いているがややリズムは軽くなる事で浮遊感を会得しつつ、やや情緒的でありながらも不明瞭な旋律の上モノを用いる事でアブストラクトな雰囲気を作り、そして"Fuego"では更に太いキックやスネアが弾ける如くパワフルなリズムを刻んで、そこに効果音的にトリッピーな電子音を散りばめながらけばけばしくもエネルギッシュなレイヴ風に仕立て上げいる。小刻みながらも金属的な鳴りのリズムが退廃的に響く"Paying The Rent"は、チョップ風のアシッド・ベースと唸りのようなボイスサンプルも用いて、ハードな質感ではないものの暗く不気味な雰囲気が闇のダンスフロアに適しているだろう。またニューエイジ・ハウス方面で名を馳せるD.K.がリミックスした"Fuego (D.K. Remix)"は、完全にD.K.のその音楽性に染まっており、原曲のブレイク・ビーツから4つ打ちへと姿を変えながらも宗教的というかスピリチュアルな佇まいが、パワフルなダンストラックでありながら深い瞑想を誘う。激しい直球ダンストラックというわけではないが、本作ではどれもブレイクビーツによる揺れるリズムを活かしつつレイヴの悪っぽい雰囲気がダンスフロアのドラッギーな感覚を思い起こさせ、Silvestreが何でも咀嚼する懐の深さを持ちつつそれらを享楽的なダンスへと仕立てる才能を持っている事を証明しているのだ。



Check Silvestre
| TECHNO14 | 19:00 | comments(0) | - | |
Relaxer - Coconut Grove (Avenue 66:AVE66-07)
Relaxer - Coconut Grove
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そのレーベル名が示す通り奇妙なアシッド・サウンドを試験するAcid Testの尖った個性は言うまでもないが、そのサブレーベルであるAvenue 66にもLowtecやTruxにJoey Anderson、そして最近ではJohn FruscianteのエレクトロニックなプロジェクトであるTrickfingerもカタログに名を連ねてきており、レフトフィールドな音楽性は親レーベルに全く引けを取っていない。そのような事もあり少なからずレーベルの作品には注目していたので、2019年10月にリリースされたRelaxerによる本アルバムにも手を出してみた次第である。この名義では2016年頃からリリースがあったので新人かと思いきや、NYで活動をするDaniel Martin-McCormickは過去にはハードコア・ノイズ・バンドのBlack Eyesに所属し、またはItal名義ではPlanet Muや100% Silkからもリリース歴のあるベテランのようだ。バンドを解散しエレクトロニックな路線に転換してからも完全にダンスフロア向けというよりはバンドらしい刺激的でパンキッシュな性質も残ってはいたものの、本作ではそんな残像をも掻き消すかのようにアナログやローファイといった要素が目立つディープなテクノへと染まりきり、Relaxerとしても新たなフェーズに入った事を告げている。歪な金属音がギクシャクとしたリズムを刻むような始まり方の"Serpent In The Garden"は、次第に4つ打ちへと移行し酩酊を誘うトランシーな上モノによって快楽の螺旋階段を上り詰めるようで、いきなりトリップ感のある出だしに魅了される。しかしダンスに振り切れる事はなく、続く"Fluorescence"はドローン的な重厚感あるシンセと快楽的なメロディーが液体の如くゆっくりと溶け合うアンビエント基調で、内なる深層へと潜っていくような瞑想を演出する。"Cold Green"はこのレーベルらしいアシッド×ローファイなハウスで、緩やかにうねる不安なアシッドが魔術のように精神へと作用し、終盤に向けて徐々に不気味さを増しながらずぶずぶと底無し沼へと誘う。"Born From The Beyond"のようにリズミカルで早いテンポの曲にしても、霞んだボーカルサンプルと不気味にうねる分厚いシンセがミステリアスな雰囲気を作り出していて、どの曲も開放的というよりは内省的で陽の当たらない深い地下世界のようだ。それ以降も、どんよりと暗雲立ち込める暗さながらも神秘的で美しいシンセが充満するディープなアンビエントの"Steeplechase"、粗雑なキックやドラムが突き刺さるような刺激的なグルーヴとなりエレクトロ感を生む"Breaking The Waves"と、リスニングとダンスを往来しながらも真夜中の夢の中を彷徨うディープな世界観で統一されており、Relaxerというアーティストの音楽性が新たに確立されているように思われる。



Check Relaxer
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Sleep D - Rebel Force (Incienso:INC007)
Sleep D - Rebel Force

ここ数年ダンス・ミュージックの業界で勢いを伸ばしているオーストラリア、特にメルボルンは新たな才能が続々と生まれている。レーベル自体も活況で2013年にレーベルとして開始したButter Sessionsは、元々は音楽の交流の場として同名のブログが開設されていたのだが、それがミックスショーとなりパーティーとなり、そしてレーベルとなってからは積極的にオーストラリアからの新鋭を後押ししている。メルボルンという地元の活性化を担うそんなレーベルの主催者がCorey KikosとMaryos Syawishから成るSleep Dで、2012年にデビューした頃はまだ高校生だったと言うのだから、正に新進気鋭のアーティストだろう。そんなSleep Dによる初のアルバムだが、レーベル自体に多様なアーティストが名を連ねテクノやハウス、エレクトロやミニマルにアンビエントとゴチャ混ぜ感がある事もあり、本作も同様に一色に染まりきらずに多種な音楽性が快楽的なレイヴ感で纏め上げられている。出だしの"Red Rock (IV Mix)"は快楽的でレクトロニックなベースライン、神秘的な上モノを用いたスローなトランス風で、暗闇の深海を潜航するようなディープな曲でアルバムはじんわりと開始する。続く"Central"はダブ・ステップ風なリズムと不気味に蠢くアシッドのベースサウンドが強烈でびしばしと鞭で打たれるような刺激的な曲だが、中盤に入るとそこにアンビエンスな上モノが幻想的な装飾をする面白い作風だ。そしてヒップハウス風な弾けるリズムが印象的な"Danza Mart"は、しかしビキビキと麻薬的なアシッド・ベースやトリッピーな電子音に頭をくらくらさせられ、ダンスフロアの狂騒が脳裏に浮かんでくる。更にテンポをぐっと落としてダウンテンポながらもゴリゴリなハードウェアのローファイ感を打ち出した"Twin Turbo"、底辺を這いずり回るビキビキなアシッドのシーケンスと奇妙な電子音のエフェクトが入り交じるディープなトランス風の"Fade Away"と、勢いが抑制されたスローモーな曲もアルバムの中でずぶずぶとした粘性による魅力を打ち出しており、多彩な音楽性がそれぞれの曲の個性を更に強くしている。"Morning Sequence"では何とKuniyuki Takahashiをフィーチャーしているが、オーガニックな太鼓の響きやメロウな鍵盤の旋律を用いたディープ・ハウスな性質はKuniyukiの影響がかなり反映されており、アルバムの中ではやや異色ながらもSleep Dにとっては新機軸と言えるだろう。非常に雑食性のあるアルバムでとっ散らかった雰囲気もなくはないが、そこは全体としてローファイなレイヴ・サウンドとして捉えると、こういった何でもありな音楽として成り立っているように思われる。



Check Sleep D
| TECHNO14 | 14:30 | comments(0) | - | |
John Beltran - The EP's & Singles Vol.1 (Blue Arts Music:BAMCD007)
John Beltran - The EPs & Singles Vol.1
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所謂ベテラン達が新作をなかなかリリースしない事もあり業界的にはかつての求心力を失いつつあるテクノの聖地とまで呼ばれたデトロイトだが、だからといってデトロイト・テクノの魅力が失われたわけでもなく、例えばここ日本は福岡のレーベルであるBlue Arts Musicはその音楽の復権を後押しするように、積極的にデトロイトに関連する音楽のリリースをしている。2019年の上半期にはデトロイト第二世代の中でも特に美しいアンビエント性を武器とするJohn Beltranのアルバム『Hallo Androiden』(過去レビュー)をリリースし、そのアーティストにとっても第二の春を迎える如く素晴らしい音楽を知らしめたが、2019年末もレーベルの勢い止まずBeltranのコンピレーション・アルバムをリリースしている。00年代初期から2019年のEP、またはコンピレーション・アルバムからの曲を集めたタイトル通りの内容で、その間にはややオーガニックな路線へ向かったり迷走していた感も無かったわけではないが、ここでは比較的フロアに根ざしたビートを刻むテクノ寄りの曲を纏めており、その意味では初期の幻想的なアンビエントとしなやかなリズムを刻むテクノが一体となった彼の十八番とも呼べる作風が発揮されている。冒頭の"Israel"は2016年作、全盛期の作風が戻ってきた頃の曲で、ざくざくとやや生っぽいリズムは刻むもののダンスフロアに根ざしており、そこにぼやけた水彩画の色彩のような幻想的なパッドを重ねて、アンビエンスな感覚もある叙情的というかエモーショナル性で包み込んでいくドラマティックな曲だ。続く"Norita"も同じように滲んだようなシンセや美しいストリングスを用いているが、チャカポコした抜けの良いパーカッションが爽快なビートを叩き出し、一時期Beltranが傾倒していたラテンな感覚もある。Indioでリリースされた"Winter Long"は爽快なラテン・パーカッションとブレイク・ビーツ風のリズムが力強く躍動するダンス・トラックだが、そこに物哀しいメロディーが加わってくると途端に情緒的なアンビエント性も出てくるなど、このダンスとリスニングのバランス感覚は流石だろう。"Safardic"も跳ねるような4つ打ちを終始刻みつつ夢のような幻想的な上モノで覆い尽くして甘い世界観のテクノながらも、中盤のブレイクを挟んでからはデトロイト・テクノお約束のシンセストリングスの感情的な旋律が浮かび上がり、これでもかと切ない心情を刺激するエモーショナル過ぎる一曲だ。流石にEP等から選りすぐりの曲が纏められているだけあり、捨て曲は皆無でこれ以上ない位にBeltranの素朴でセンチメンタルなテクノ×アンビエントを体験出来るアルバムとなっており、まだBeltranを見知らぬ人にとっても是非ともとお薦め出来るアルバムだ。

Check John Beltran
| TECHNO14 | 21:30 | comments(0) | - | |
Unknown Mobile - Daucile Moon (Pacific Rhythm:PR008)
Unknown Mobile - Daucile Moon
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2019年もアンビエントやバレアリックの名作に恵まれた一年ではあったが、そんな中でも新世代として頭角を現し一際輝いていた作品が、カナダはモントリオールのミュージシャンであるLevi BruceことUnknown Mobileの2ndアルバムである本作。2015年頃からYoung AdultsやASL Singles Clubといったレーベルから、フィールド・レコーディングに電子とアコースティックを同居させた長閑な田園風景が浮かび上がるチルアウト的なアンビエント作をリリースしていたが、本作ではより平穏な世界観を目指すべく同じジャンルでは人気を博すCFCFによるギターも導入し、より一層チルアウトとしての癒やしの効果が高まっている。なんでも4年前に足の指を骨折して療養中にサーバに残っていたMIDIサンプルを収集し、それらをコンピュータに取り組んで制作していったアナログとハイブリッドの作品との事で、それもあってか何だか懐かしく素朴な響きもアンビエント性との親和性が良いのだろうか。柔らかく深い残響の太鼓が古代の秘境めいた森林を換気させる"Medicine Man"、笛らしき音色などの有機的な響きもあって生命の営みを感じさせるトライバルなアンビエントで始まり、蠢くような不気味なシンセのシーケンスに光沢感のある上モノを被せて神妙な瞑想へと誘う"Ravers Sojourn"とここら辺から既に深遠なチルアウト感覚は漂っているが、やはり本作のキモは"A Windles March Ouest"のような曲だろう。プリミティブなシンセの反復に合わせて生っぽいベースがじっくりと展開しつつ、そこにCFCFによる線が細くも叙情的なギターや鳥の囀り等が入ってくるスピリチュアルな世界観は、モダンなニューエイジとして鮮烈だ。"Simone Can't Swim"のようにベルが鳴りつつ細かな電子的な効果音を盛り込み、そして終始どんよりとした不鮮明なアンビエンスに覆われる曲も、内なる心を見つめさせる瞑想効果が高く鎮静作用がある。しかしやはりアルバムでは"Oenology"や"Copper Bird Bath'"などCFCFの爽快感と切なさを誘う繊細なギターを起用した曲が特に印象的で、波や鳥の囀りの音などのフィールド・レコーディングやぼんやりとして温かみのあるシンセのパッドの伸びも用いて、例えば黄昏時のオレンジ色に染まったビーチを眺めるようなサウンド・スケープが切なく迫りくる。アンビエントやニューエイジにバレアリックといった要素が一つなり、体の隅々まで清純な水が染み渡るような癒やしの音楽は、この上なく叙情的で忙しない現在の生活から心を解放する。2019年のベスト作品に挙げたくもあった素晴らしいアルバムだ。



Check Unknown Mobile
| TECHNO14 | 16:00 | comments(0) | - | |
Iury Lech - Otra Rumorosa Superficie (Utopia Records:UTO 001)
Iury Lech - Otra Rumorosa Superficie
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2017年には2ndアルバムである『Musica Para El Fin De Los Cantos』(過去レビュー)がCockTail d'Amore Musicから再発され、更にはそこから現行ダンスミュージックの気鋭がリミックスしたEPへと派生し、アンビエントやニューエイジが再燃する現在において注目を集める事となったIury Lech。スペイン生まれのLechは作曲家ではあるが、また作家や映画監督もこなすマルチアーティストで、1970年代後半から映像や音楽に関わるようになり長いキャリアを持っているが、特にスペインのニューエイジ方面では現在では多大な存在感を放つSuso Saizと肩を並べるアーティストのようだ。とは言っても恐らく知っている人は知っている…というような存在だったとは思うのだが、昨今のニューエイジ再興の流れの一環的に2ndアルバムが再発された事は日の目を見る機会となり、そして今度はデビューアルバムである本作がUtopia Recordsの再発シリーズであるUtopia Originalsからリイシューとなった事でLechへの再評価は間違いものとなった。元々は2つの短編映画「Final Sin Pausas」と「Bocetos Para Un Sueno」の為に書き下ろされたという本作は、それもあってかシネマティックで静謐な世界観がアンビエント/ニューエイジとの親和性は抜群で、終始浮世離れしたようなフラットな安楽が持続する。アルバムはぼんやりというかどんよりというか抽象的なシンセのドローンが睡眠を誘う物静かな"Bocetos Para Un Sueno"で始まり、宗教的な感覚もある荘厳なピアノが美しく反響する"Adagio Seme Janza"や、逆に柔らかなノイズ混じりのエレクトロニクスが持続するドローン・アンビエントの"Hipodromos De Acero"など、基本的にはビートレスで鎮静作用さえ感じさせる穏やかな音楽だ。10分超えの大作である"Emblemas"は物哀しく滴り落ちるようなピアノのメロディーにどんよりと揺らぐ電子音を合わせて、派手に展開する事もなくただひたすら切ない感情を誘うように、成程情景が浮かび上がるシネマティックかつロマンティシズムに溢れた作風だ。多くの曲では繊細で悲哀に満ちたピアノが主導し、そこにエレクトロニクスが静謐さを保ちながら味付けをする構成で、感情の昂ぶりは一切ないどころか精神の安定をもたらす癒やし的な響きに包み込まれていく。ニューエイジの文脈で語るには生真面目というか俗っぽさは無く、快楽的なアンビエントに振り切れるわけでもなく、やはり元々は映画音楽であった事から内面を掘り下げていくような感覚が強いが、それが深い穏やかな瞑想へと誘う効果へと繋がっている。



Check Iury Lech
| TECHNO14 | 21:30 | comments(0) | - | |
Stephen Brown - Sweet Nothing EP (a.r.t.less:a.r.t.less 2178)
Stephen Brown  - Sweet Nothing EP
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活動初期はDjax-Up-Beatsから多くの作品をリリースし、2000年以降になるとTransmatやSubject Detroitといったデトロイトの重要レーベルからもリリースを行い、一躍注目を集めたスコットランドはエジンバラのStephen Brown。おおよそ予想が付く通りにデトロイト系フォロワーな存在であり、実際にそれ以降もIndigo Aeraやa.r.t.lessにもよく顔を出すなど、本家デトロイトが以前程の輝きを失う現状でそれを補うかのような存在感だ。a.r.t.lessはベルリンのディープ・ハウスのMojuba傘下のレーベルで、ベルリンとデトロイトから影響を受けたテクノを追求するコンセプトがあり、その意味ではBrownが同レーベルから何度もEPを発表するのも自然な流れだろう。"The Venue"について言えば硬く引き締まったキックによるビート感、金属的な響きは冷え切っているが、途中からすっと浮かんでくる透明感のある叙情的なパッドによって一気にデトロイト・テクノらしい雰囲気に持っていく曲で、コズミックなメロディーも用いて宇宙を駆け巡るファンキーなハイテック・ソウルを聞かせる。浮遊感のあるコズミックなシンセのリフレインで始まり繊細な電子音が煌めく"Sweet Nothing"は、キックを用いない事で無重力の宇宙遊泳を楽しむかのようなスペーシーなテクノで、ダンストラックではないもののデトロイト・テクノの未来志向やSF感を凝縮したような曲だ。また、ハイハットが軽い疾走感を作りつつもキックレスな作風の"Cedar Wood"は、エモーショナルなシンセを用いながらもぼやけたようなダビーな効果によってアンビエント性を織り交ぜつつ、更にしなやかに伸びていくパッドが望郷の念のような切ない感情を誘い、初期のCarl Craigの静謐な世界観を思い起こさせる。そして乾いたパーカッションの軽快な響きや折り重なるようなダビーなシンセによってじわじわと8分間を引っ張り続ける"Canet 2"も、キックが無くアンビエント寄りな作風だが、美しくエモーショナルなシンセ使いを十分に堪能出来る幻想的な一曲。厳密な意味でダンストラックは冒頭の"The Venue"だけで、他はベッドルーム向けのイマジネーションを刺激するアンビエントといった趣きだが、どれもこれも昔からのデトロイトオタクが所望する曲ばかりで、これだよこれっ!と言いたくなるEPだ。



Check Stephen Brown
| TECHNO14 | 12:30 | comments(0) | - | |
DJ Guy - Unthank 012 (Unthank:UNTHANK012)
DJ Guy - Unthank 012
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UKはエジンバラのミステリーな存在であるFirecracker、そしてその傘下にあるUnthankはより幅が広く奇妙なエレクトロニック・ミュージックを手掛けるユニークなレーベルだが、そこからリリースされたDJ GuyのEPはそんなレーベルの面白さを象徴するようで興味深い。DJ GuyことGuy Evansについて大した知識は持っていないのだが、近年だとHVLらもカタログに名を連ねるOrganic Analogue Recordsから94〜99年に制作されたインテリジェンス・テクノや初期シカゴ・ハウスにデトロイト・テクノとも共鳴する曲群をコンパイルしたアルバムをリリースしていたり、また自身のBandcampでは90年代にリリースされた膨大なアーカイブを公開していたりと、近年まで全くリリースは無かったものの活動自体は25年以上に及ぶ大ベテランのようだ。本作も新作というわけでなく既にBandcampでは発表されていた膨大な作品群の中から選りすぐりの6曲を纏めたEPのようで、しかし例によってジャンルはばらばらながらもしかし比較的ダンスフロアに直結した曲が集められており、特に90年代のレトロフーチャーな感覚やオールド・スクールな懐かしさが好きな人にとっては、これは堪らない一枚だろう。"Basf Ferro Extra 1994 Side A Trk1"は特にユーフォリアが表現された曲で、優雅なストリングスが先導しながらも奇妙な効果音やロウなエレクトロ・ビートが古き良き時代を思い起こさせ、インテリジェンス・テクノに近いか。より未来志向でスペーシーな感覚がある"Metal Xr 993 Side B Trk2"は正に90年代AIテクノの一環で、ハンドクラップを多用したしなやかなブレイク・ビーツと幻想的なパッドが覆っていく叙情的な作風は、欧州からデトロイトへの回答か。対して"Bx90 1993 Side A Trk4"も粗雑な音質がオールド・スクールな雰囲気だが、こちらは暴力的で歪んだリズムがビッシバッシとビートを荒々しい刻み、叙情性を排除してひたすらツール的なテクノだ。そんな流れをより極めた"New Quad Stuff 1994 Side A Trk1"はPlastikmanの如くTRやTBなどのリズムマシンを執拗に用いた激しく衝動的、つまりはテクノの初期胎動が表現されたようなツールだ。"Asii100 1994 Side A Trk1"はPlastikmanではなくFuse名義のうねるアシッド・ベースも用いて、深い瞑想を誘発するメランコリーアシッドで、酔ったような酩酊感が心地好い。とまあここまで書いていてどの曲もオリジナリティーがあると言うよりは模倣的な感じがしなくもないが、そもそも90年代前半に作られていたという事が事実であれば当然模倣ではなく、先駆者の一人であったのかも?とも思う。今更…ではなく、今聞いても全く色褪せないレトロ・テクノだ。



Check DJ Guy
| TECHNO14 | 15:00 | comments(0) | - | |
James Holden - A Cambodian Spring OST (Border Community:49BC)
James Holden - A Cambodian Spring OST
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鬼才James Holden、トランスやプログレッシヴ・ハウスから始まりいつしか幻惑的なサイケデリック・テクノやアンビエント、実験的なエレクトロニカ風やアバンギャルドなロックまで、多様な音楽性を発揮しながらもそれぞれのジャンルにおいても尖った才能を見せ付ける強烈な存在が、2019年初頭には『A Cambodian Spring』という映画のサウンドトラックまでもリリースした。映画はグローバリズムに飲み込まれるカンボジア、ボウンカク湖を開発する政府に反対する民衆の姿を捉えたドキュメンタリーであるが、この映画の監督が2013年作の『The Inheritors』(過去レビュー)に収録されている"Self-Playing Schmaltz"の使用を求めた事から、最終的には映画全編の音楽をHoldenが手掛けるようになったそうだ。本作は『The Inheritors』制作にも用いられた古いアナログシンセのProphet 600を全面的に利用して制作されたそうで、また映画の内容もあってか不安気でどんより陰鬱としたムードのサウンドトラックはHoldenの分裂症気味で退廃したイメージに沿っており、ダンス・ミュージックではないものの実に彼らしいサイケデリックな音楽になっている。徐々に話が始まるように静けさが広がるオープニングの"Srey Pov's Theme"は、ぼんやりと暗いドローンとパルスのようなか弱くも神経質なシンセによるアンビエント調な曲。(製作中に壊れてしまった)ハモンドオルガンとシンセによって重厚感と閉塞感を打ち出した"Monk's Theme Part I"、それに続く"Downturn Medley"も同様にオルガンが下部で静かにうねりながらどんよりとした闇を生んでいる。一方で非常にHoldenらしいトランス感溢れるサイケデリアを発揮しているのが"Solidarity Theme (Villagers)"や"Solidarity Theme (Release)"で、快楽的なシンセサウンドのアルペジオが少しずづ高揚感を獲得する躍動的な曲で、特に後者は神々しく展開して圧倒的な眩い光に飲み込まれるようだ。3部構成となる"Disintegration Drone"シリーズは前述の朽ち果てたハモンドオルガンとProphet 600が神経をすり減らすようなどぎついドローンを鳴らし、展開らしい展開もなく只々機械が呻き声を上げるような構成は狂ったようにも思われるが、こういった破滅的な音響もHoldenが世界観が現れている。一曲一曲は短くまたダンス・ミュージックでもなく、聞く前はファンにすれば物足りなさを感じるかもしれないが、しかし実際に聞けば何処を切り取っても完全にHoldenの恍惚と狂気が交錯するサイケデリックなテクノである。徐々に壊れていくような中にも美しさが存在する強烈なアンビエント風サウンドトラック、十分にHoldenのオリジナルなアルバムになっている。



Check James Holden
| TECHNO14 | 11:00 | comments(0) | - | |
Heavenly Music Corporation - In A Garden Of Eden (Silent:SR9335)
Heavenly Music Corporation - In A Garden Of Eden
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先日、壮大なアンビエント絵巻のWaveform Transmissionのアルバム(過去レビュー)を紹介したので、同じAstral Industriesというレーベル繋がりでこのHeavenly Music Corporationのアルバムを紹介しようと思う。Heavenly Music CorporationことKim Casconeは映画やTVの音楽も制作する電子音楽家で、この名義では90年代中頃に4枚のアンビエント・アルバムを残している(それ以降はKim Cascone名義での活動を継続している)。2017年には同レーベルより1995年作の『Lunar Phase』(過去レビュー)をリイシューしており、無重力の宇宙空間を表現したようなアンビエントによって再度注目を集める事となったが、レーベルも気を良くしたのか2018年には1993年にリリースされた本作のリイシューを行っている(リイシュー盤はamazonに情報が無いのでオリジナルの方を紹介する)。インドはゴアのチルアウトルームであるSpace Age Loungeの為に制作されたという本作は、『Lunar Phase』における宇宙空間の重力の無い解放感に対して、牧歌的でフィールド・レコーディングを多用した自然派志向というか、正に癒やしの効果もあるようなチルアウト/ニュー・エイジといった赴きだ。"Cloud Structure Silence"はいきなりコケコッコーと鶏の
鳴き声から始まり、ぼやけた電子音の揺らぎに合わせ虫の音から牛の鳴き声などのフィールド・レコーディングによる生命の営みを導入し、神秘の森や牧草地帯へと入っていくような秘密めいたアンビエントを展開する。ひたすら強風に襲われるようなノイズのドローンが満ちる"The Quiet Mind"は、重厚感あるシンセのドローンも相まって非常にどんよりとしながらも内なる世界へ落ちていく瞑想の音楽だ。水の滴る音を用いた"Ambient To Be Here"は正にアンビエントというムードで、オーロラが揺らめく如く幻想的なシンセがうねりながらもホーミー風な声がスピリチュアル性を付与し、アルバムの中でも特に心が穏やかになる安静な響きをしている。"Dawn Chorus"は鳥の囀りを多用しているが、シンセの波紋が広がるようなリフレインが壮大なコズミックの風景を見せ、特にトリップ感の強い曲だ。"Beautiful Dream"は珍しく4つ打ちのリズムが入ったダンス寄りの曲だが、女性のうっとりするポエトリーや煌めきのあるシンセのうねりもあってニュー・エイジ色が強く、そして迎える14分にも及ぶタイトル曲の"In A Garden Of Eden"でもやはり様々なフィールド・レコーディングや人の声を空間をイメージする如く張り巡らせ、エキゾチックなメロディーもなぞりながら謎めいた亜空間の中を彷徨うように、長い長い瞑想による深みへと連れて行く。動物たちや水の音からの環境音が多く流石に今となって安直というか如何にも90年代のアンビエントにも思うが、全く精神を荒げる事のない鎮静作用の強いサウンド・スケープはチルアウトとしては非常に適切で、ぼんやりとただ無になって聞けるのが素晴らしい。尚、再発の方はアナログのみのリリースのようである。



Check Heavenly Music Corporation
| TECHNO14 | 13:30 | comments(0) | - | |