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Chmmr - Try New Things (Full Pupp:FPLP014)
Chmmr - Try New Things
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ニュー・ディスコ大使のPrins Thomas主宰によるFull Pupp、ノルウェーを中心としたアーティストの作品を大量に送り出してきた正にノルウェーを代表するニュー・ディスコなレーベルだが、この新作はそんな中でやや異色にも思われる音楽性を展開している。手掛けているのはノルウェーのEven BrendenことChmmrで、2010年頃からリリースを開始し途中からはFull Puppへと移籍し、2017年には初のアルバムとなる『Auto』において陽気なニュー・ディスコを軸にしながらも熱帯の豊かな色彩溢れるバレアリックやイタロのムードを持ち込んで、ダンスとリスニングを自然と横断する心地好いアルバムを完成させていた。それから2年を経たこの2ndアルバムはより空気は緩み最早ダンスフロアを全く意識させる事なく、アンビエントやフュージョンへと足を踏み入れて至上の楽園のような長閑な風景を見せる。アルバムの始まりは可愛らしいエレピと優美なシンセのコードだけによる子守唄のような"Ultrafine"、ビートは無くアンビエントな雰囲気もあり微睡みに誘う。続く崩れたダウンテンポがゆったりとリズムを刻む"1 More Day 2 Play"は、光沢感あるシンセが躍動し耽美なピアノが夜の帳を下ろしてダンスなパーティーの雰囲気も無いわけではないが、真夜中というよりは夕方の早いまだ和んだ時間帯。コンガや他のパーカッションも用いた"Adult Land #6"は微かにジャズやファンクの影響も滲ませて、情緒的なパッドやきらびやかなシンセに彩られる白昼夢状態のダウンテンポを展開し、"NFO Love Song"ではカチッとしたマシンファンクなリズムを刻む中で艷やかなシンセと朧気なエレピが意識も溶けてしまう程の甘い夢に誘う。トーク・ボックスを用いてロボット・ファンクな感も出しつつしかしぼんやりと緩んだシンセが持続する"We Live In Melas Chasma, Baby"は昨今のニュー・エイジにも共鳴し、シンプルなピアノと電子音の繊細なコードだけで簡素な響きながらもしんみりと心に染みるコンテンポラリー・ジャズな"1 4 cc"はChick Coreaへと捧げたと本人は述べている。耽美な鍵盤使いやフュージョン風な優美な響き、アンビエントの瞑想的な平穏にはダンスフロアの狂騒や興奮は一切無く、長閑な昼下がりの3時にうたた寝をするように甘美な時間帯を演出する。もはやニュー・ディスコの影さえも残さない意外や意外なアルバムだが、近年のバレアリックやニュー・エイジにアンビエントの再興が続く中で、このアルバムは見事に時代に適合した傑作だ。



Check Chmmr
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Black Jazz Consortium - Evolutions EP (Perpetual Sound:PS001)
Black Jazz Consortium - Evolutions EP
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US勢の中では飛ぶ鳥を落とす勢いのテック・ハウス系DJのFred P.。FP-OnerやFP197といった変名活動も含めて多量な作品をリリースしながらも、幻想空間のディープ・ハウスや情緒的なアンビエンス、またはオーガニックなジャズ要素と幅広い才能を発揮し、そのどれもが一級品の質を保つ才人。今までSoul People Musicを運営してきたがその活動を停止させ、新たに始動させるのがPerpetual Sound。そのレーベル第一弾として自らの変名であるBlack Jazz Consortiumによる4年ぶりのEPを抜擢したが、ここら辺のレーベルやアーティスト名の違いは一体何なのか、明らかにはなっていない。しかし作品自体はいつも通りのエモーショナルなテック・ハウス路線だが、"Essential Paradise (Fred P Reshape)"ではややFP-Oner名義にも似たオーガニックな響きがあり、ざっくりとジャジーなビート感とウッドベースの湿った低音、そこに手弾き感の強いフュージョン風なシンセのメロディーを重ね、心地好い浮遊感と共に宇宙空間を駆け抜ける。"Mystery Of Fantasy (Reprise)"は2分半のインタールード的な曲で、華麗なシンセストリングスを前面に打ち出しつつビートレスな構成がシネマティックな風景を浮かび上がらせる。それをMr.Gがリミックスした"Mystery Of Fantasy (G's Fantasy Mix)"はシカゴ・テクノを思わせる硬いリズムが打ち付けるダンスな曲へと生まれ変わり、ダークな呟きとゴリゴリしたリズムを軸にミニマルな構成で引っ張っていくフロアでの機能性重視な作風だ。最後の"120 Black Key Experiment (Continuation Interlude)"もインタールード的な意味合いが強く、様々なスポークンワードを用いて近未来の宇宙空間を思わせるSFアンビエントだが、こういったスペーシーな世界観もFred P.お得意の演出だ。新たに立ち上げたレーベルのコンセプトがどういったものかを知る由も無いが、曲自体はFred P.らしい流麗でエモーショナルなテック・ハウスやアンビエント性があり、期待通りといった印象だ。



Check Fred P.
| TECHNO14 | 13:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Tomi Chair / Tominori Hosoya - Tropical Imagination (Scissor and Thread:SAT039)
Tomi Chair Tominori Hosoya - Tropical Imagination
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Francis Harris主宰のブルックリンのScissor and Threadの新作は、ここ数年作曲家としてワールドワイドで知名度を獲得しているTominori Hosoyaによるもの。今作では別名義となるTomi Chairの作品も収録したスプリット盤で、リスナー側からはこの名義の違いを正確に把握する事は出来ないものの、ここでは『Tropical Imagination』というタイトルが示唆するように熱帯の鮮やかな色彩に満ちた豊かな世界観を彼らしいエモーショナルかつ美しいサウンドで表現している。透明感と爽快感を伴うパッドから優雅なピアノが沸き立つ開始の"Tropical Imagination"は、そこからフラットな4つ打ちと水飛沫のようなパーカッションも加わって、ひたすら流麗な電子音が複数絡み合う中を縫うようにピアノが展開し、これとHosoyaと呼ぶべきエレガントなディープ・ハウスだ。このEPで注目すべきは特にピュアなアンビエント性が打ち出されている事で、"Tropical Imagination (Dream Version)"はビートを抜いてピアノや電子音を浮かび上がらせる事で、途端に微睡みのアンビエント性を獲得した正に夢に溺れるバージョンで、一際美しい世界観が創造されている。"Heat Exhaustion"は完全にアンビエントへと振り切れており、蒸気のようなドローンが満ちながらその中に点々とした電子音を散りばめて静謐な雰囲気を作り出し、最終的には静かに霧散する。本EPで唯一となるTominori Hosoya名義の"We Are Here"もアンビエントだが、鳥の囀りなどのフィールド・レコーディングに厳かなパッドを合わせ、そして爽快に抜けるダビーなパーカッションが大きな空間性を演出し、ゆったりとビートが胎動しながらスケール感の大きさに包まれる。またレーベルオーナーであるHarrisも"Heat Exhaustion (Francis Harris Reform)"を提供しているが、ビートレスだった原曲にゆったりとしながらもパーカッシヴでダウンテンポなリズムを加え、濃霧によって視界も揺らめくような幻惑するレフトフィールドなハウスへと生まれ変わらせている。かなりアンビエントへと向かった本作は意外ながらもしかし情緒的なメロディーやムードを尊重するHosoyaの音楽性があるからこそ、このアンビエントも自然と馴染んでおり忙しない現実から一時でも離れる白昼夢へと浸らせれくれる。



Check Tominori Hosoya
| TECHNO14 | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
YS - Perfumed Garden (Music Mine:MMCD20029,30)
YS - Perfumed Garden (2019 Remaster)
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ここ数年活動が活発になっていたとは言えども、ジャパニーズ・アンビエントの再燃が無ければ恐らく本作のリイシューも無かったのは間違いない。近年は温泉好きシンセバンドとしてNaturally Gushing Electric Orchestraとして活動するサワサキヨシヒロは、1992年頃から音楽活動を開始し、Techno The GongやMeditation Y.S.等複数の名義を用いてプログレッシヴ・ロックに影響を受けたテクノ/アンビエントを展開し、そして1994年には本作をリリースするとNME誌からは「ジャンルを超えたファンキー・チル・アウト」として評価され、その頃盛り上がりつつあった日本に於ける空前のテクノブームの立役者の一人となる。つまりそんなテクノが著しく熱かった時代にリリースされた本作は、しかしそんな熱気とは対照的にダンスの狂騒とは無縁な緩く底抜けにオプティミスティックな世界観と音に何の意味も込めずにただひたすら快適性のみを追求したような響きによって、唯一無二のアンビエントを確立させていた。本作で魅了されるのは何を差し置いても"Neocrystal (On The Beach Mix)"で、繊細な光の粒子のような音のシーケンスと浮遊感をもたらす美しい鳴り、そして控え目に用いられたTB-303のアシッドは凶暴性よりもひたすら快楽へと向かい、意味も意識も込められていない純粋無垢なアンビエントは10分にも渡って覚める事のない白昼夢へと誘う。実は何気にフル・アンビエントなのはこの曲位で、他の曲はフローティングするテクノやブレイク・ビーツ寄りスタイルが多く、しかしそれでも音の響きはやはり無垢で多幸感が全開だ。"Magic Dome"なんかは当時Dave AngelがMIXCDの中で用いたりもして話題になり、軽くリズムが入りダンス寄りな作風ではあるが下辺ではアシッドが明るくうねりつつ優雅なストリングスが絢爛に彩るハッピーな世界観は、この後のユーモアに溢れ陽気な音楽を展開していく実にサワサキらしさがある。今回のリイシューに際して特筆すべきはボーナスディスクの方で、Meditation Y.S.名義でApolloからリリースしたEPやコンピレーション収録曲が纏められており、今となっては入手困難な曲が一同に聞ける事だろう。特にApolloからの14分にも及ぶ"Slumber"は"Neocrystal"級のフル・アンビエントで、眠気を誘うダウンテンポのビートにほんわかとした音の粒子が浮遊しながら、TB-303のアシッド・ベースにダブ処理を行いながら多層的な音響により意識も融解するサイケデリックなトリップ感を得て、極楽浄土への片道切符な名曲だ。アンビエントとしてはボーナスディスクの方がより純度は高く、"Aqua Gray"なんかもリズムは跳ねたブロークン・ビーツ調ながらもか細く繊細なシンセが複数のラインで陽気な旋律を奏でつつ、下部では太いアシッド・ベースがファンキーにうねる毒々しくもハッピーなアンビエントで、この何も考えていないような楽天的な世界観がやはりサワサキ節だ。そして"Neocrystal"の別バージョンで初披露となる"Selftimer"は、基本的に上モノはそのままでリズムに変化を加えて重厚感が増したダブ・バージョン的な曲で、当然天国を目指すトリップ感は最高級。CD盤では2枚で10曲の内、9曲は10分越えの大作とアンビエントしてはこの長尺な構成だからこそ夢から醒めない持続性が活きており、25年前の作品ながらも全く今でも通用する素晴らしいアンビエント・アルバムだ。ジャパニーズ・アンビエントが再度注目を集める今だからこそ、知らなかった人達にも是非とも聞いて欲しい一枚。



Check Yoshihiro Sawasaki
| TECHNO14 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Thomas Fehlmann - 1929 - Das Jahr Babylon (Kompakt:KOMPAKT CD153)
Thomas Fehlmann - 1929 - Das Jahr Babylon
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2018年には8年ぶりのアルバムとなる『Los Lagos』(過去レビュー)やTerrence Dixonとの共作アルバムもリリースし、また久しぶりの来日ライブも行うなど、 老いてなお盛んに精力的な活動を行うベルリンのThomas Fehlmann。ジャーマン・ニューウェーヴの変異体であるPalais Schaumburgの元メンバーという肩書きから始まり、ベルリンとデトロイトの橋渡しも行いつつThe Orbの片割れとして長く活動も続けるなど、ドイツに於けるダブやアンビエントさえも包括するテクノ音響職人としての才能はトップクラス。そんな精力的な活動の中で2018年3枚目となるアルバムをリリースしていたのだが、本作は1929年のベルリンをテーマにしたドキュメンタリーの為のサウンドトラックだ。1929年は世界恐慌もありドイツ経済が壊滅的な状況になる中で、アドルフ・ヒトラーが政権を握り、その後第二次世界大戦前へと続いていく暗黒の時代、そんな時代を切り取ったドキュメンタリーという事もあり、音楽自体も普段の作風に比べると幾分かどんよりとしており決してクラブでの刺激的な高揚感とはかけ離れている。特にモノクロ映像も用いたドキュメンタリーに意識したのだろうか、音の響きからは色彩感覚が失われダークかつモノトーンな雰囲気が強く表現されている。曲名には各チャプター名とその時のムードを表したであろうタイトルが付けられており、それもあってどの曲もヒスノイズ混じりのダブやドローンの音響を用いたアンビエント性の強い作風はより抽象性を高めて、中にはリズムの入る曲があっても全体的に映像の邪魔をしない高揚感を抑えた曲調になっている。勿論だからといって本作からFehlmannらしさが失われているかと言えばそうではなく、古ぼけたように霞んだ音響にもぬめりのあるダブ音響を披露しミニマルな構成やシャッフル・ビートも織り交ぜて、Fehlmannらしく繊細かつ精密な音響職人らしいこだわりのある音が活きている。シーン毎に曲が並べられているため普通のアルバムに比べると何となく断片的な流れに受け止められるが、映像と合わせて聞いてみると、不安な時代感がより強く伝わってくる音楽性だ。Fehlmannらしい美しい音響がありながら、退廃美的に感じられるダーク・アンビエント。





Check Thomas Fehlmann
| TECHNO14 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vince Watson - DnA EP1 (Everysoul:ESOL014)
Vince Watson - DnA EP1
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過去には「俺はデトロイト・テクノじゃねぇ!」と憤慨していたUK屈指のデトロイト・フォロワーであるVince Watson。確かにデトロイト・テクノではないのは確かなものの、その一方でデトロイトへの愛は人一倍の為そこからの影響も非常に大きいのはあからさまな程で、デトロイト・テクノを引き合いに出されるのも仕方のない事である。2017年にはかのRhythim Is RhythimことDerrick Mayの屈指の名曲をリミックスした『Icon / Kao-Tic Harmony (Vince Watson Reconstructions)』(過去レビュー)もリリースする等、結局はその情熱的なテクノソウルの環から抜け出せない事はもはや運命的でさえもあり、その先に最終的に辿り着いたのが本作。この『DnA』シリーズは前述のリミックスを作成した事に触発され、より直接的なルーツであるデトロイト・テクノを意識して制作を行ったそうで、そのルーツを投影すると同時にそれ自体へと捧げられた音楽であると本人は述べている。とは言いながらも本作に於いてもVinceはVince、"First Wave"を聞いても今までの作風から大きな変化は強く受ける事もなく、多層的に共鳴するエモーショナルなシンセの旋律とキレのある疾走するグルーヴを基調にしたテクノはメロディーやコード展開を重視しながらぐっと熱量を増していく。"Let Dreamer's Dream (Daydream)"はインタールード的な短い曲で後に予定されるアルバムを想定して制作されたのだろうか、黒光りするシンセストリングスと電子音のループがビートレスな状態の中にアンビエント的な静謐さを生み出している。特にデトロイトらしさが表現されているのは"Second Wave"か、遠く離れた郷里への思いが馳せるような切なさを誘う薄っすらと伸びるパットの上にコズミックな電子音がリフを重ね、すっきりとしたTR系のハイハットやキックによる軽快なグルーヴが走り、希望を求めて未来への道を指し示す生々しく感情的なこの曲は正にデトロイト・テクノだ。"Affinity"はややグルーヴは落ち着いた代わりにしっかりと大地を掴む安定感があり、脈動する太いベースラインと対照的に美しく叙情的なパッドや繊細なピアノ風な響きが闇の中にドラマティックな風景を描くようで、ゆったりとした曲調だからこそより深遠さが強調される。どの曲も心の奥底から熱き感情を湧き起こすエモーショナル性の強いテクノ/ハウスである事は当然で、音だけではこの『DnA』が今までの作品とどう異なるのかは分かりづらいのも事実だが、デトロイトの世界観を意識した事でより情熱的なテクノソウルが権化している。



Check Vince Watson
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
LSD - Second Process (LSD:LSD 001)
LSD - Second Process
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何ともいかがわしいユニット名はクラブシーンに蔓延る危うさを匂わせるが、実はLuke Slater(Planetary Assault Systems)とSteve BicknellにDavid Sumner(Function)というハードテクノやミニマルにおける重鎮が手を組んだスペシャルプロジェクトで、3人の名前の頭文字がユニット名となっている。Planetary Assault Systems名義では骨太でファンキーかつハードなテクノを展開してきたSlater、UKにおけるミニマル・テクノの先駆者であるBicknell、そしてFunction名義でディープな音響も活かしたテクノで魅了するSumnerと、それぞれがテクノというジャンルにおいて自分のポジションを確立したアーティストである。そんな彼等によって2016年にベルリンのBerghainにおけるライブからユニットは姿を現し、そして2017年にはOstgut Tonから初の作品である『Process』をリリースしていた。その後もヨーロッパの大きなフェスやクラブでライブを披露し経験を積んだ上でリリースされた本作は、アナログでは2枚組となる十分なボリュームでこれでもかとフロアでの機能性に特化したミニマルかつハードなテクノが繰り出されている。基本的には良い意味では作風は統一されているので金太郎飴的な印象にはなるのだが、ヒプノティックな上モノのループと肉体を鞭打つ刺激的なキックによる疾走感に金属的な鳴りの音響を被せた"Process 4"だけ聞いても、このユニットのダンスとしてのグルーヴ感や麻薬のようなサイケデリックな覚醒感を重視した音楽性を追求しているのは明白だろう。"Process 5"ではより鈍く唸るような低音の強いキックやベースラインのファンキーな空気はBicknellの個性を感じさせるし、"Process 6"のFunctionらしいヒプノティックなループやSlaterらしい骨太なリズムパートを打ち出して勢い良く疾走するハードテクノは全盛期のJeff Millsを思わせる程だ。"Process 7"の電子音ループは正にMillsらしいというかスペーシーな浮遊感があり、その下では地面をえぐるような怒涛のキックが大地を揺らして、その対比の面白さと共に爽快な高揚感に包まれる。得てして音楽におけるこういった特別なプロジェクトは、各々の大きな知名度とは対照的に各々の個性が上手く活かされず凡作となる事も少なくはないが、このプロジェクトに限って言えば期待を裏切る事は全くなく、それどころか甘ったるさ皆無のハードなテクノが痛快でさえある。近年はハードな音楽を聞く機会が減った筆者にとっても、この刺激的なテクノが眠ったテクノソウルの目を覚まさせる。



Check Luke Slater, Steve Bicknell & Function
| TECHNO14 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Hallo Androiden (Blue Arts Music:BAMCD005)
John Beltran - Hallo Androiden
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20年以上にも及ぶ音楽活動において、今間違いなく第二の春を迎えているJohn Beltran。デトロイト第二世代の中でも特にアンビエント性が強く美しいハーモニーによる情緒的なテクノに長けたこのアーティストも、しかし2010年前後の作品は今思うとどこか吹っ切れずに迷いが感じられ、活動初期に於けるデトロイト・テクノ×アンビエントな音楽性に魅了されたファンにとっては物足りなさが残っていただろう。がここ2〜3年の復調は目を見張るものがあり、大らかなアンビエントを展開するシリーズの「The Season Series EP」や今年3月に発売されたPlacid Angles名義の22年ぶりのアルバム『First Blue Sky』(過去レビュー)等でも初期作風である叙情性豊かなアンビエンスや躍動するブレイク・ビーツやジャングルまでの多彩なリズム感が復活し、ファンにとっては待ち望んでいたBeltranらしさを感じていた者は多いだろう。そしてこのBeltran名義の新作だ、何と日本のインデペンデント・レーベルである福岡のBlue Arts Musicから世界に先駆けてリリースとなったが、その内容もこれこそBeltranと呼ぶべき夢のような素晴らしきアンビエントな世界が広がっている。前述の『First Blue Sky』はどちらかと言えばブレイク・ビーツを多用しダンス性を強調していたが、本作はメロディーやハーモニーの甘美なまでの美しさを強調しており、その分だけ陶然と酔いしれる魅力が溢れている。オープニングの"Alle Kinder"は牧歌的なシンセのリフレインと幻想的な呟きを反復させ、詰まったリズムのキックでじっくりとこれから待ち受けるドラマの幕開けを展開するようにじわじわと盛り上げ、アルバムの雰囲気をリスナーに知らせる。続く"A Different Dream"はキックレスの完全なアンビエントだが、躍動するシンセのシーケンスと壮大なパッドによる叙情性爆発な世界観はTangerine Dreamのコズミックな電子音響を思わせるところもあり、リズム無しでも脈動する感動を呼び覚ます。軽快に連打されるリズムが爽快な"Himmelszelt"はシンセの旋律も軽い躍動感を伴い揺れ動き、やや陽気なラテンフレーバーもあるダンス・トラックだ。ヒスノイズらしきチリチリとした音響の奥からぼんやりとしたドローンや素朴なアルペジオが浮かび上がる"One Of Those Mornings"はビートレスな夢幻のアンビエントで、続く"It's Because Of Her"も同様にビートレスで天上から光が降り注ぐようなシンセと荘厳なストリングスの掛け合いは祝祭感があり、この世とは思えない美しさは桃源郷か。勿論"Perfect In Every Way"のように複雑なブレイク・ビーツで踊らせるダンス性の強い曲にも魅力があり、豊潤なシンセの響きがあり底抜けにオプティミスティックな雰囲気としなやかに刻まれるリズムで、心身を快活にさせてくれる。完全にBeltranの初期の作風が復活した本作に対し否定的な意見など出て来る筈もなく、この夢に溺れてしまう麗しい甘美なアンビエント・テクノの前には称賛以外の言葉は見つからない。ただひたすら、この世界は美しい。



Check John Beltran
| TECHNO14 | 08:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Placid Angles - First Blue Sky (Magicwire:MAGIC017)
Placid Angles - First Blue Sky
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初期デトロイト・テクノに於ける重要なレーベルであるRetroactiveのカタログに名を連ね、その後1997年に『The Cry』という叙情的なアンビエント・ブレイクビーツの名作アルバムを残したまま、その名義では活動を停止し続けてある意味伝説化したPlacid Angles。それこそデトロイト・テクノの中でも屈指のアンビエント性を誇るJohn Beltranの別名義で、彼らしい優雅で美しいメロディーに躍動感溢れるブレイク・ビーツを絡めた作風は、どこか哀傷的な気持ちさえ呼び起こす素晴らしいものだった。だがしかし2000年以降になるとBeltranはやたらラテンなりオーガニック性の強い音楽、またはポストロックやエレクトロニカ方面に手を出したりとやや行き先を見失っていたと思う。ところがこの2〜3年の活動では初期のブレイク・ビーツを含めたダンスのグルーヴをはっきりと打ち出し、多くのファンが望んでいる初期作風が見事に戻ってきている事を感じた者は多いだろう。そして2019年、John Beltran名義の素晴らしいアンビエント・アルバム『Hallo Androiden』とほぼ同時期にこのPlacid Angles名義では22年ぶりとなるアルバムがリリースされた。先ず断言しておくと期待を越えて素晴らしいアルバムであり、冒頭の"First Blue Sky"からして喜びが溢れ出して体が飛び跳ねるような力強いジャングル風なビートが走っており、そこに清涼で爽快なパッドと希望に満ちたシンセのメロディーが大胆な動きを見せ、スケール感の大きい叙情性と共に躍動感が突き抜けている。続く"Angel"は悲哀が心を浸すアンビエントなムードで始まりつつも、次第に鋭利なリズムが加わって骨太な4つ打ちを刻みながら、メランコリーに染めていく感傷的なテクノだ。"A Moment Away From You"は近年よく見受けられる作風で、キック抜きでスネアやハイハットによる荒々しいリズムが溜め感を作りつつ、動きの多いIDM系の美しいシンセも躍動感を作る事に付与する曲で、キック抜きでも十分にグルーヴを生み出している。また"Vent"も過去の作風でも印象的だった幻想的な女性ボーカルを用いており、そこにしなやかなドラムン・ベースのリズムが荒れ狂うようにリズムを叩き出し、桃源郷へと上り詰める如く美しいシンセによって上昇気流に乗る激しくも叙情的な一曲。ジャジーな感覚もあるざらついたブロークン・ビーツ寄りな"Bad Minds"は、シンセのドラマティックなコード展開と希望溢れるポジティブなリフによって、うきうきと跳ねながら喜びが溢れ出しているようだ。そして最後の"Soft Summer (Revisited)"、これは1996年のBeltran名義の作品のリメイクなのだが慎ましく静謐な弦楽器の美しさが際立つアンビエント寄りなテクノで、リズムは入っているものの実に穏やかで優しいビート感にうっとり夢心地となる。ファンとしてはもう文句無しの期待通りでリズミカルかつデトロイト的な叙情性爆発のアンビエント/テクノの応酬で、今Beltranが再度アーティストとして春を迎えている事が感じられる。8月には来日予定もあり、今から期待せずにはいられない。



Check John Beltran
| TECHNO14 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Yourhighness - Stratofortress (CockTail d'Amore Music:CDA021)
Yourhighness - Stratofortress

テクノやハウスだけではなくディスコやアンビエントにまで手を広げながら異形な作風を展開するCockTail d'Amore Musicは、アンダーグラウンド性を伴いながらもこれからを期待させるアーティストを送り出してきている。過去にはBorn Free RecordsやRett I Flettaといった同様にアンダーグラウンドなレーベルから、破壊的で鈍い響きのアシッディーかつロウなテクノ/ハウスをリリースしているYourhighnessが、2018年2月頃にCockTail d'Amoreからリリースしたのが本作。オリジナルは"Stratofortress"の1曲のみだが、リミキサーにBorn Free主宰のSamo DJとエクスペリメンタルなモダン・テクノを作るRroseに、今や世界規模での評価を獲得した日本からのGonnoが名を連ねているのだから、内容に不足は無いだろう。"Stratofortress"はYourhighnessの過去の作風を踏襲したアーティストに期待する内容そのもので、鈍く野暮ったいキックがどっしり4つ打ちを叩き出しつつ鈍いアシッド・ベースがマシンガンの様に連打しながら現れ、そして金属的な鳴りのパーカッションも加わわって低温な空気感で退廃して狂った世界観を展開するテクノ・トラック。じわじわと微細な変化を付ける事で途切れない陶酔感を引き出し、ツール性に特化したロウ・アシッド・テクノは完全にフロアの狂騒の中にある。対して"Samo DJ Remix"は崩れたリズムがブレイク・ビーツとなり非常にグルーヴィーに揺れ爽快なハンドクラップも相まって実に躍動感に溢れているが、朧げで酩酊感のある呟きや金属が捻れるような奇怪な電子音が不気味さを醸し、こちらもトリッピーなテクノとして良い感じにぶっ飛んでいる。"Rrose Remix"は落ち着いた感もゆったりしたドラムのビートから始まりドローンにも近い電子音を被せて、所謂ディープな響きによって深く闇の中を潜航する音響テクノだが、次第にリズムも走り始めて1曲の中でじわじわと盛り上がっていく構成が演出されている。そして最後の"Gonno Remix"、やはりというか特に個性的なリミックスはスローモーながらも金属的な厳ついリズムがずんずんと沈み込み、歪んだアシッド・ベースが止めどなく牙を剥くロウ・アシッド・テクノはどこかインダストリアルな荒廃した雰囲気があり、一寸の光も見させずに闇で支配する狂気なりミックスだ。どの曲もアーティストの個性が表現されながら、全体的にマッドな作風で良い感じにフロアを狂わせてくれるであろう。



Check Yourhighness
| TECHNO14 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |