2024.03.07 Thursday
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2023年も多くの素晴らしい音源がリリースされたおかげで、例に漏れずレビューが間に合わずに年間ベストとして記載出来なかった作品は幾つかあった。それらの一つが本作『Perceptions』で、ロサンゼルスを拠点とするプロデューサーのDyami O'BrienことJamma-Deeによる初のアルバムだ。アーティストの事は全く知らずにこのアルバムを聞いた時に、何だか同郷のモダン・ファンク代表格のDam-Funkを思い起こしてしまったのだが、後から調べてみるとDam-FunkがレジデントDJを務める「Funkmosphere」にも関わるようになり、LAのアーティストと交流を深めたとの情報があったので、Dam-Funkからの影響は間違いなくあったのだろう。音源としては2016年から数年に渡りArcaneから3枚のEPをリリースしただけであったものの、2023年9月に遂にリリースされた本作は実は10年前のスタジオでの実験的な録音を近年になってから手を加えて完成したものだそうで、何だか懐かしい空気感があるのもそのためだろうか。アルバムの音楽性は何と定義したよいのだろうか、ヒップ・ホップかR&Bか、ファンクかブギーか、いやハウスのビート感も聞こえてくるし、それらも引っ括めてDam-Funkの流れからのモダン・ダンクと包括的に呼ぶと伝わり易いかもしれない。幕開けとなる"Up And Down"はねっとりとしながらも力強いロービートの上をメロウな鍵盤コードが続いていくが、ピッチを変えたような奇妙なボーカルサンプルもねじ込まれ、初っ端からメロウながらも熱きファンクネスが炸裂している。"Jamma's Jam"ではMndsgn & Swarvyをフィーチャーしているが、ざっくりとしたヒップ・ホップのビートに艶めかしいベースラインや優美なエレピが加わる事でメロウさを発し、途中からのエモさ爆発なシンセソロやヴィブラフォンも印象的で、これぞモダン・ファンク。Koreatown Oddityを迎えた"Spellbound"は90年代的なアタック感の強いR&B調のビートにノリの良いラップも加わるが、それでも陽気でメロウな雰囲気を保ちじっくりと耳を傾けたくなる魅力がある。ガチャガチャとしたビート感が強くダンサンブルなヒップ・ハウス的な"It Takes A Freak"のように勢いがあり弾けるようなダンストラックもあり、カタカタとしたTR系のパーカッションが効いていてまるでLarry Heardのような叙情的で慎ましいハウスの"Tic-Toc"もあり、甘ったるい歌も色っぽくあるR&B色強めな"Every Morning"もポップで耳に残りやすい。特に印象に残ったのは颯爽とした軽いビート感ながらも耽美なピアノコードとメロウな多重コーラスを活かしてファンキー&スウィートなディープ・ハウス化した"Silly"で、耳に残るフレーズ使いが特に映えている。しかし色々な曲調やビートの差はあれど、アルバム全体の開放的で楽観としたムードはやはり西海岸の音楽性によく感じられるもので、場所柄の影響なのだろうか。彼が気に入っているアーティストとのコラボレーションを紹介するアルバムとした前提で制作されており、その為半数位の曲でゲストを迎えておりそういった事もあって様々なジャンルが一つのアルバムに混在しているのだが、不思議と散漫とした感覚はなくやはり本作はメロウなモダン・ファンクなのだ。
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