Stump Valley - The Wilderness Sessions presents Stump Valley : Recorded At Summer Forest Camp (Uzuri Recordings:UZURI 021)
Stump Valley - Recorded At Summer Forest Camp
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UK出身のLeratoがロンドンにて主宰するUzuri Recordingsは、デトロイト・テクノやシカゴ・ハウスに影響を受けながらよりディープでエモーショナルな作風を得意とし、早くからウクライナ勢やアイルランドのハウスもリリースする等その音楽センスは確かなモノがある。新作は2014年にRush Hourからデビューを果たしたばかりのStump Valleyによるもので、Uzuriが新たに手掛ける「The Wilderness Sessions 」と言うシリーズの第1弾作品となる。Stump Valleyについては全く詳細は分からないものの、過去の作品はアナログマシン的な粗いビートを刻むロウ・ハウスのような無骨な音楽性で既に強い個性を発していたが、この新シリーズではジャズやアンビエントの要素を取り込んで過去のStump Valleyとは異なるディープ・ハウスを展開している。"Searching (MTRPLS British Hustle Mix)"はジャズのスウィングするグルーヴ感を打ち出しながら、眠気を誘うような気怠いシンセが煙の様に満たされる中から色気のある女性ボーカルによって湿り気を保つが、このねっとり黒い感覚はビートダウン的ジャズ・ハウスとでも呼ぶべきか。アンビエント性が特に強いのは"Caruso"で、穏やかで優しい4つ打ちが刻まれる中で微睡んだ温かいパッドが優雅に舞い、音像がぼかされたピアノが滴り落ちるようにドラマティックなメロディーをなぞるこの曲は、淡い叙情をふんだんに含むサウンドトラックのようなアンビエント・ハウスだ。B面には限りなくビートを緩めながらもシカゴ・ハウスのようなクラップがアクセントとなり、温かみのあるシンセを情緒的に用いて夕暮れ時の時間を演出するディープ・ハウスの"Quazar"、一転してスウィングして躍動するジャズのリズムとベースが主張し、そこにインプロビゼーションのように自由に耽美なピアノのコードを加えていく"Down The Dirt Road"と、こちらもジャズやアンビエントの要素が自然と盛り込まれている。「The Wilderness Sessions」なるシリーズの初の作品にしてその個性と質の高さは十分なものであり、ニューカマーであるStump Valleyの動向と合わせて注目に値する作品だ。



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HVL - Lucky Star Of High Minded (Rough House Rosie:RHR 007)
HVL - Lucky Star Of High Minded
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サイレント映画の女優であるクララ・ボウをロゴマークに使用しているRough House Rosieは、ケルン発のディープ・ハウスのレーベルだ。瞑想的なアンビエントとハウスのグルーヴを兼ね備えた厳かなるディープ・ハウスの質の高さと共に、配信は行わずにアナログのみのリリースやカラーヴァイナル仕様といったその頑ななるアンダーグラウンド性も相まって、カルト的な人気を博すレーベルの一つではないだろうか。そんなレーベルの看板アーティストがグルジア出身のGigi JikiaことHVLで、レーベル初の作品を担当していたその人だ。HVLにとっては本作はRHRからのソロ2作目となる盤であるが、ここにおいてもHVLのアトモスフェリックな深い音響と神秘的な叙情性は尚強みを増している。空間の奥でゴチャゴチャと鳴る音響から始まる意外な展開から、次第に浮かび上がってくる霧のようなパッドと規則正しく刻まれる温かいキック、そして丸みのあるシンセが怪しいメロディーをなぞる"Your Heart Speaks For You"は、正にRHRらしい慎ましくもアブストラクトな音響を含むディープ・ハウスだ。タイトル曲の"Lucky Star Of High Minded"は深い森の中にいるようなサウンドエフェクトから始まりどこか霊的でもあるが、リズムは軽快に跳ねて揺れるグルーヴを打ち出し、メロディーはフィルターで変化を付けられていてファンキーな感覚もある。裏面へと続けば更にダブ音響を活かして深い空間を演出を創出し混沌としたサイケデリックな空気も持ち込んだ"She Can Land On A Dime"、4つ打ちから不規則なビートへと変化し大きなうねりを見せる大胆なビートダウン・ハウスである"Wild Combination"が収録されており、そのどちらにも深さと広さを伴うアンビエンスが含まれている。レーベルとアーティストのどちらもが新興勢力の内の一つという状態だが、しかしその音楽性は最早見過ごす事が出来ない程の個性を発しており、太鼓判を押してお勧めしたい。



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Double Knots - Double Vision EP (International Feel Recordings:IFEEL036D)
Double Knots - Double Vision EP
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ウルグアイ発、現在は拠点をイビサへと移して運営を続けバレアリックな音楽性を突き進むInternational Feelは、ここ数年素晴らしいアーティストによる良き作品をリリースし続け、名実共にトップレーベルとしての強い存在感を放っている。そんなレーベルからまだ耳にした事のない未知なるアーティストであるDouble Knotsが、突如としてデビューを果たす事になった。が実はこのユニットはUKのハウス・アーティストであるToby Tobiasとロンドンで活躍するDaniel Modeによるプロジェクトだそうだが、International Feelから送り出されるだけあって彼等の過去の作品とは全くの別物だ。ドリーミーで滑らかなシンセのフレーズと幻惑的なアシッドサウンドを用いたベースが絡むミッドテンポの"Remote Control Memory"は、中盤から清々しい開放感のギターサウンドも挿入される事で一気にバレアリック感が増し、重力から解放され広大な宇宙を遊泳するような正にInternational Feelらしい作品だ。一方前述の曲をToby Tobiasがリミックスしたのが"Double Vision (Toby Tobias Remix)"で、しっかりと地に足の着いたビートを刻み懐かしさを引き出すようなディスコティックな感覚もありつつ透明感のあるピュアなシンセからは、モダンで洗練された質感もあり郷愁をたっぷりと含むニューディスコ路線に近いか。しかし本盤での最も魅力的な世界観はB面に収録された"Vital Connection"で体感する事だろう。摩訶不思議な鳴りをするシンセのオープニングからビートレスな状態が続き、次第に琴線を震わすシンセのメロディーと空を切り裂くように突き抜けるギターが絡み合い伸びて行く展開で、じっくりと粘り強く引っ張りながらも桃源郷を垣間見せるような美しいサウンドスケープを描き出す。ここは極楽浄土かまたは涅槃か、この世とは思えない程に快楽的で夢に溺れてしまう世界観は、正にイビサのバレアリックな空気なのだろうか。デビュー作にしていきなり底抜けな多幸感に満ち足りた音楽性を披露したDouble Knots、今後の展開に期待せずにはいられない。



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| HOUSE10 | 21:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Berkson & What Feat. JoJo De Freq - Make It True (Play It Say It:PLAY005)
Berkson & What Feat. JoJo De Freq - Make It True

古くはPoker Flat Recordingsなどからクールなテック・ハウスをリリースしていたロンドンで活躍するDan Berkson & James What。暫くはリリースが途絶えていたものの2014年には息を吹き返したように作品を続けてリリースしたが、本作はその中の一枚でリミキサーにMr. FingersことLarry HeardとUKハウスの大ベテランであるLuke Solomonがリミキサーとして参加している。本作ではJoJo De Freqをボーカルとしてフィーチャーしている影響もあってか、今までの作品に比べるとやや正統派ディープ・ハウスへと傾倒しているように思われる。カラッと乾いたキックの4つ打ちはシカゴ・ハウス風ながらも、そこに控えめに流麗なコード展開のパッドが被さり色っぽいボーカルが入ってくれば、それはモダンでエモーショナルなディープ・ハウスへと染まる。そしてその上にいつの間にか挿入される動きの多いアシッドのベース・ラインは、決して世界観を壊す事なく情緒性にスパイスを加えるような味付けで、非常にクールながらも穏やかな温かさを生んでいる。UKハウスの中でもアクの強い個性を持つLuke Solomonが手掛けた"Make It True (Luke Solomon 4 Turnings Remix)"は、リズムにメリハリを付けて弾む感覚を含ませながら全体が筋肉質になったようなファンキーなハウスに仕立て上げ、如何にもLukeらしい変異体アシッド・ハウスを披露。そしてやはり完全にLarry Heardの個性へと塗り替えられた"Make It True (Mr. Fingers Psychedelic Jungle Mix)"は、オリジナルから無駄を削ぎ落とし間を活かした構成へ作り替えられ、耽美なエレピやタイトル通りにサイケデリックなメロディーを加えて、厳かな佇まいながらも静かに情緒が薫るようなディープ・ハウスへと生まれ変わっている。オリジナルとリミックス、それぞれにアーティストの異なる個性が光る内容で、パーティーの音楽性に合わせて対応出来るような一枚ではないだろうか。



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Apollonia - Tour A Tour (Apollonia:APOCD02)
Apollonia - Tour A Tour
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2012年にShonkyとDan Ghenacia、そしてDyed Soundoromの3人のフレンチDJ/プロデューサーによって設立されたレーベル・Apolloniaは、USのディープ・ハウスとヨーロピアン・ハウスの間を取り持ちながらエモーショナルかつミニマルなハウス・ミュージックを送り出し、破竹の勢いで評価を高めている。そしてレーベル名であるApolloniaは3人によるプロジェクト名でもあり、結成から2年を経た2014年には初のアルバムである本作を完成させている。それぞれがDJとしても活動している彼等らしく「アルバムはDJパフォーマンスに対するアプローチを作品化した」と述べており、確かにミックスされているわけではないが曲間は殆どなく、またアルバムの流れも大きな起伏はなく全てがスムースな流れでまるでDJミックスを聴いているかのように錯覚する構成だ。アルバムの幕開けはパトカーのサイレンが鳴る"Intro"から始まりこれからのざわめきを予兆しているが、続く"June"では膨らみのあるキックやパーカッションが心地良く刻まれる中、甘く囁くような歌と色気さえも発する陶酔感の強いシンプルなリフが続き、いきなり夜の高揚したフロアへと誘い込むようだ。"Mouche tse tse"はより軽快に跳ねるようなリズムと爽快なパーカッションが特徴で、大きな展開はない分だけDJミックス向きな機能面が強調されたハウスだ。そんな展開を抑えたミニマルな流れを保ちつつも中盤に於ける"Piano"は、正にピアノの耽美なコード展開が耳を惹き付ける非常にエモーショナルな曲だが、続く"Chez Michel"や"Mercato"では再度DJとしてのツール性を高めたパーカッシヴでミニマルな構成のハウスへと戻っていく。その後も基本的には滑らかな4つ打ちのスタイルを貫きながら、そこにファンキーなボイス・サンプルや流麗なパッドにヒプノティックなシンセを絡めながら、終始途切れる事のない安定したグルーヴを継続させる。最後に配置された"Haight Street"ではアルバムの冒頭に戻ったかのようにパトカーのサイレンを用いながら、ブレイク・ビーツ気味の耽美なハウスで幕を閉じるが、しかしこの最初に戻るような流れはまるで終わる事のないDJMIXそのものではないだろうか。それはアルバムタイトルである「Tour a Tour」=「交代する」、つまり3人のDJが継続した流れを生み出すDJスタイルを表現しており、確かにこのアルバムは彼等のDJとしての経験が実直に反映されているのだ。



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Bjorn Torske - Nedi Myra (Smalltown Supersound:STS239CD)
Bjorn Torske - Nedi Myra
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北欧ノルウェーから世界へと羽ばたいたコズミック・ディスコ - それはニュー・ディスコへと繋がる - を知らしめたのは、LindstromやPrins Thomas、そしてTodd Terjeによる功績が大きいだろう。しかしそんな彼等に特に影響を与えた存在として同郷のBjorn Torskeの存在を忘れてはならない。前者に比べれば一般的な知名度は低いだろうが、変名も用いて90年代から活動していた彼の音楽は後進にも確実に影響を与え、現在のニュー・ディスコ隆盛への流れを作った事は否定出来ない。そんなTorskeにもまだコズミック・ディスコへと至る前の時代もあったのが、それが1998年にFerox Recordsからリリースした本作であり(その後2002年にはTelle Recordsからもリリースされている)、この度念願叶ってリマスタリング済みでリイシューされている。98年のFerox RecordsといえばまだIan O'BrienやRuss Gabrielが中心的存在であった時代だと思うが、本作でもそのようにコズミック・ディスコというよりはデトロイト・テクノやハウスの影響が強く現れており、現在のように典型的なダンス・ミュージックから外れたディスコはまだ萌芽していない。アルバムは奇妙な音は用いているもののまだフィルター・ハウスの枠組みに収まった"Expresso"で始まり、そして続く"Station To Station"は前述のIan O'Brienスタイル…と言うよりも完全にURの"〜 2 〜"シリーズを意識したハイテック系のフュージョン・ハウスで、この底抜けにポジティブな世界観はまだ変態性はないもののコズミック・ディスコと共振するものはあるだろうか。"Eight Years"ではブロークン・ビーツの要素を取り入れながらディスコのようであってディスコでない優美な煌きを発し、"Smoke Detector Song"ではコズミック・ディスコの不思議なSEを加えながらもトリップ・ホップのような湿り気もあり、そして"Beautiful Thing"ではディープ・ハウスとジャズが鉢合わせしたような幻想的ながらも繊細なグルーヴ感がある。曲毎に様々なスタイルを用いており当時の音楽を色々咀嚼したのだろうか、それは実験的でもあるのだろうが、やはり近年の作品と比較すればかなりまともなダンス・ミュージックとして聴ける。デビュー・アルバムだからまだ当然青臭く最近の円熟味のある奇抜なコズミック・ディスコ程の個性はまだ発露していないものの、しかしだからこそテクノ/ハウス好きな人にとっては本作のような正にジャケットが表すエヴァーグリーンの新鮮な涼風が吹く本作に魅了されるのではと思う。デトロイト・テクノ好きな人にとっては、それこそ間違いない。



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Ken Gill - Love Moon (Alleviated Records:ML-2230)
Ken Gill - Love Moon
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シカゴ・ハウスの巨匠であるLarry Heardが80年代から運営を続けるAlleviated Recordsは基本は彼自身の作品をリリースするホームのような存在だが、今回Larryのお眼鏡にかなった新人の作品がリリースされた。その人こそシカゴ育ちのKen Gillで、どうやらこのリリースが初の作品のようだ。しかしよくよく調べてみると90年代にはLarryや同じくシカゴのベテランであるBernard Badieとも共同で作品を手掛けていたとの情報もあり、詳細はいまいち掴めていない。そんなミステリアスな素性を抱えながらも作品自体は正にLarry直系のAlleviatedスタイルであり、この情緒的でしっとりしたディープ・ハウスが好みの人にとっては当然の如くマストバイな内容だ。表題曲である"Love Moon"にはクレジットにLarryとBernardも名を連ねており、これはもしやの過去の未発表曲ではないだろうか。ぼんやりとした浮遊感のあるパッドが仄かに情緒的なメロディーを奏で、揺蕩うようなゆったりとしたリズムトラックと黒くマッドなベースラインが下地を支え、そして囁きかけるような艶のあるボーカルが色気を生む構成は、もはやLarryの作品と勘違いする程だ。一方でエグいアシッドのベースがうねる"Just a Test"はこちらもLarryの初期作品を思わせるアシッド・ハウスで、味気ない乾いたリズム・マシンのキックやパーカッションの辿々しいグルーヴと相まって古き良き時代が蘇る。またディスコティックな上モノとポコポコとした躍動感のあるリズムで陽気な曲調の"Idol Mind"と、流麗なストリングスを導入しながらもふざけたようなボイス・サンプルがファンキーな感覚を生む"Jack Wit Honey"も面白い作風で、どれも現在の時代の匂いを全く感じさせずに旧来のシカゴ・ハウスの伝統を受け継いだ懐かしい雰囲気が漂っている。やはり過去に制作された未発表曲のような気はするが、どちらにせよAlleviated Recordsからの作品らしい正統派ディープ・ハウスとして質は保証されている。



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DJ Emma Presents Nitelist Music 4 Acid City 2 (Nitelist Music:NM21032)
DJ Emma Presents Nitelist Music 4 Acid City 2
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DJ EMMAによる過去のシカゴ・ハウスから派生したアシッド・ハウスの魅力を、現在の時代に即したものとして生まれ変わらせた「Acid City」。2013年に「Acid City」(過去レビュー)の第一弾をリリースしてから1年半、遂にその第二段がリリースされた。その間にもDJ EMMAは隔月開催のレギュラーパーティーとして「Acid City」を開催し、ハウスやテクノと共に新旧のアシッド・ハウスを織り交ぜながらその魅力の再認識させる布教活動を行い、また世の中ではTB-303やTR-808/909を生まれ変わらせたAIRAも発売されるなど、アシッド・ハウスという音楽に対して追い風が吹いているのは間違いない。そんな勢いに乗ってリリースされた本作には、過去に参戦したMalawi Rocks、Kuniyuki、Gonno、Nudeら、そして新たに参加したのはKen Ishii、 DJ Nori、Disq Clash(Chester Beatty + DJ Shufflemaster + DJ Yama)、Hiroshi Watanabe、Q'Hey、Chidaなど、前作以上によりバラエティーに富んだアーティストが収録されている。DJ Noriによる"80's Drug"はMaurice Fultonとの共作で昨年にRunning Backからリリースされていたものだが、シカゴ・ハウスの凶悪的な音とは異なる冷ややかなブリープ・ベースが特徴のアシッド・ハウスで、歪なアシッド・サウンドながらもユーモアさえ感じられる明るい曲調だ。Kuniyukiによる"Acid Air"は「Acid City」のパーティーにライブ参加した時のインスピレーションを元に制作されたそうだが、Kuniyukiらしい有機的なパーカッションによる生命力が溢れるグルーヴの中に新たに導入したTR-8/TB-3のドラッギーなアシッド音がじわりと染み入るディープなアシッド・ハウスで、古典的な音の要素を活かしながら原始的な祭事の狂騒を喚起させる。最もアンセムらしい出来栄えの曲は間違いなくHiroshi Watanabeによる"Infinity Sign"だろうか、じんわりとベースラインが反復する序盤から徐々にTR系のシャッフルするリズムが浮かび上がり、その中を掻い潜るプリミティブなアシッド・サウンドはワイルドピッチ・スタイルを踏襲している。そして滴り落ちるように情感を添えるピアノのソロ展開と美しいパッドによる開放感は、アシッド・ハウスという音楽を根底に持ちつつもHiroshi Watanabeという個性によって新たな魅力を発するのだ。その他にもプログレッシヴ・ハウス寄りなアシッド系からバレアリックな多幸感のある緩いアシッド、エレクトロ寄りのギラついたアシッドにアッパーで硬めのアシッド・ハウスまで、アーティスト毎の特色を打ち出しながらアシッド・ハウスの魅力を存分に体感させる内容だ。古き良き時代の音楽をただ拝借するだけでなく、それを時代に合わせてアップデートするこのプロジェクトは、アシッド・ハウスを知らない世代に対してもきっと訴えかけるような新たなる魅力を放つだろう。





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Soul Of Hex - Lip Reading EP (Cvmr:CVMR010)
Soul Of Hex - Lip Reading EP

Soul Of Hex、先ず誰も耳にした事のない新人アーティスト…しかし初のリリースである本作にシカゴ・ハウスの孤高の存在であるMr. FingersことLarry Heardのリミックスが収録されているとなれば、どうしたって注視せざるを得ない。後からSoul Of Hexについて調べてみれば、実はQuintessentialsやFaces Recordsから煙たくドス黒いビートダウン・ハウスをリリースしていたメキシコからの4004 & Sebastien Vorhausの変名である事を知ったが、となれば既にLarryは彼等の音源をサポートしている事から今回のリミックスへと繋がったのも合点がいく。オリジナル曲である"Lip Reading"は今までの作品よりも穏やかでLarryを意識したようなディープ・ハウスだ。温かいパッドのメロディー、しっとりとしながらも豊かなJunoのベース・ライン、隙間を活かしながらもカラッとしたキックやパーカッションの4つ打ちと作風自体は非常にシンプルだが丁寧かつ洗練された作り込みで、Larryが得意とする叙情を打ち出している。US西海岸のVin Solによる"Vin Sol Remix"は寧ろ4004 & Sebastien Vorhausを意識したのか、厚みのあるキックを用いた低重心のグルーヴに微睡むような温かいパッドを用いて煙たさも表現したビートダウン系に仕上がっている。同様にUKの新鋭Ny*Akによる"Ny*Ak Remix"もぐっとテンポを落としたビートダウン系ではあるのだが、ヒップ・ホップを意識したようなリズム感と絡み付く粘り強い音質が濃密な黒さを匂わせている。そしてやはり特筆すべきはLarryによる"Mr Fingers Jazzy Dub Mix"であるのは間違いなく、仄かに情緒を匂わす軽いエレピのメロディーと透明感のあるパッド、そしてカラッとした爽やかなパーカッションによる絡みは何処までも開放的で、穏やかな感情が広がるディープ・ハウスだ。どう聴いてもLarryによるオリジナル音源にしか聞こえない程にLarryの個性が光る作風は、昔から現在に至るまでに変わる事のない普遍性を伴っている。



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| HOUSE10 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
The It - The It EP (Alleviated Records:ML-2229)
The It - The It EP

孤高の存在…という言葉を簡単に使うわけにはいかないが、しかし深遠の淵にいるような深い情緒を抱かせる音楽を常に制作しているLarry Heardならばこそ、その表現は相応しい。人肌の温もりを感じさせる親しみ深さがありながら、しかし俗世的な世界からは遠くに位置するその俯瞰した視点は、正に孤高と呼ぶべきだろう。そんな彼も近年は耳を悪くしDJ活動も控えめになり新作のリリースも途絶えていたが、ここに20数年ぶりとなるThe It名義の新作が届いた。The ItはLarryに加え、Marshall JeffersonとのJungle Wonz名義で活動していたボーカリストのHarry Dennisとの共同名義で、過去にはアルバムもリリースするなど蜜月の関係であったようだ。随分と久しぶりとなるこの新作を聴いてもその相性の良さは言うまでもなく…実際にはLarryによるトラックが余りにもLarryらしい為に、いつも通り期待通りなディープ・ハウスに仕上がっている。出だしはブイブイとしながらもしっとりしたベースラインから始まり、薄っすらと情緒が乗った透明感のあるパッドが伸びていく"Somebody Somewhere"は、Harryによる渋いポエトリーと相まって感情を強く刺激する事はせずに、ただただ穏やかな波が広がるように静かに情緒で満たしていく。"Crying"はそのタイトル通りに物悲しさを誘うどんよりとしたキーボードのメロディーがリードし、少々暗さもありつつ囁くように問い掛ける歌によって癒やされる。裏面に収録された"Utopian Dream"はやや硬めのキックが厳つさを含みささやかに悪っぽさを漂わすアシッド・ベースによって、初期シカゴ・ハウスのまだ垢抜けなかった時代のオールド・スクール性が強い。そして比較的からっとしたパーカッションの響きが強調された"Beauty In A Picture"は、慎み深い音楽性の中にも静かに野生のトライバル感を込めているようなハウスだ。長らくLarryの音楽に触れている人にとっては新鮮味を感じる事はないような、だからこそ安心して聴けるクラシカルなディープ・ハウスを正しく継続しており、この変わらない事ことがLarryをLarryたらしめているのだろう。



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| HOUSE10 | 22:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |