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Keita Sano - Keita Sano (Rett I Fletta:RIF 010 CD)
Keita Sano - Keita Sano
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2016年は大躍進を果たしたKeita Sano、瀧見憲司に見初められClue-L Recordsからアルバム『The Sun Child』(過去レビュー)をリリースするやいなや、今度はPrins Thomas主宰のRett I Flettaから更にアルバムである本作をリリースと、他にも同年に7枚のEPをリリースしている事を考えると異常な程のハイペースな量産体制に驚かずにはいられない。その活発な制作活動と共にテクノからニュー・ディスコにロウ・ハウスやブレイク・ビーツと的を絞らせない振り幅の大きな音楽性が彼の特性で、型破りにも思えるエネルギッシュな活動がOppa-laで彼のライブを見たPrins Thomasを刺激し、その結果として本アルバムのリリースに至ったのは実力主義が認められた証拠だ。そんな本作を本人は「テクノ、ハウス、ディスコを解釈したアルバム」と述べているが、正にその通りで当初からのごった煮なサウンドを彼らしいやんちゃなムードで染めており、Crue-LからリリースしたアルバムよりもSanoの初期の個性がより際立っている。ロウな4つ打ちとスネアがロールする光が溢れてくるディスコティックな"Full Of Love"から始まり、金属がひしゃげるような音が特徴のロウ・ハウスの"Leave The Floor"ではアシッド・ベースがうねり奇妙なトリップ感を生み出している。毒々しいトランス作用のあるアシッドから始まる"Honey"では、途中から祝祭感のある電子音やディスコなベースも走り出し、じわじわと多幸感を増していくアシッド・フィルター・ディスコでフロアでの作用も抜群に違いない。"Vood"は一風変わった曲で序盤はビートレスな中で鈍い金属音が持続し、途端に重厚なキックが入ると冷気を帯びたテクノへと変化するツール性の高い内容で、しかしこのトリッキーさもSanoの音楽性そのものだ。アルバムの中で最もパーカッシヴな"Sucker Pt. 2"は何か原始的な胎動も伝わってくるが、射し込んでくるキラキラした光のようなシンセがディスコ色に染める爽快な曲だ。僅か7曲のアルバムとは言えここにはSanoの音楽性が存分に展開されており、荒々しくもその初期衝動的なエネルギーや骨太さが、愉快痛快で気持良い位だ。



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| TECHNO12 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vince Watson - VW20 : Introspection (Everysoul:)
Vince Watson - VW20 Introspection
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デトロイト・テクノへの尊敬や畏敬の念を包み隠す事なく、恐らく業界内でも最大級の愛を指し示しているのがVince Watsonなのは、彼のFacebook等を閲覧している人は理解するだろう。当の本人はデトロイト・テクノから多大なる影響を受けながらも自分が作る音楽はデトロイト・テクノではないと強く主張しているが、もしかするとそれも尊敬する対象への存在感の大きさ故に、デトロイト・テクノと名乗る事をおこがましいと考えてもいるのかもしれない。しかし彼の音楽は決してそれに劣るものではなく、美しいシンセの旋律やエモーショナルと呼ばれる世界観、そして本家よりも洗練された綺麗な響きもあり、その良質なダンス・トラックは実際に多くのDJにプレイされ高い評価を獲得している。本作はそんな彼によるベスト盤的な作品で、活動20周年を記念して1996〜2016年までにリリースされた作品を纏めている。世界各地のレーベルからリリースする彼の作品を集めるにはそれなりの労力や資金が必要だったが、目出度くこうして纏められた事は本当に喜ばしい。そして単なるコンピレーションではなくリマスターが行われたり、曲によっては完全に2016年に適すように再構築されているそうで、古い曲も現在に合わせて進化を遂げているそうだ。どれもこれも名曲なので全部の解説をするのは避けさせて頂くが、Planet-Eからリリースされた"Renaissance"、これは彼の作品の中でも最も美しくエモーショナルなテクノだろう。闇の中で滴り落ちる官能的なピアノや黒光りするようなストリングスを用いて、深遠へと導くディープなテクノで意識も融解してしまう。13分にも及ぶ大作の"A Very Different World"は美しいパッドは用いながらもアシッド気味なシンセベースがうねる快楽的なテクノで、一方では"Every Soul Needs A Guide"のように空の下の開放的な場所にも合う爽やかなジャジー・テックハウスもあるが、雰囲気は異なれど心を揺さぶる情熱的な響きにおいてはVince節の統一感がある。勿論Ibadanからリリースされた名作"Mystical Rhythm"も忘れてはならない曲で、Ibadanらしい黒光りする空気を伴うディープ・ハウスは既にこの頃から確立されており、最近Yorubaからリリースされた漆黒のディープ・ハウスへの道はここから始まっていたのだ。そして本作にはファンの為に本作用に構築されたビートレス・バージョンも収録されており、そちらでは曲そのものの美しさをより強く感じ取る事が出来るはずだ。もしエモーショナルなテクノ、もし情緒的なハウスを求めている人は、是非とも本作を手に取って欲しい。



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| TECHNO12 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Jino / Ohno / Mitchell / Mills - Kobe Session (Axis Records:AX070)
Jino / Ohno / Mitchell / Mills - Kobe Session
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もはやテクノという世界を飛び出て例えば映画音楽、例えば交響楽団との共演、例えばライブセッションなど…その活動の幅は単なるクラブDJに収まりきるものではなく、創造力を実現させるアーティストとして孤高の地位を確立したJeff Mills。そして次なる挑戦は「Axis Audiophile Series」の第一弾となる本作で、180gのヴァイナルに32bit/48kHzの音源を収録した高品質のマスタリングを実施しているそうだ。音質への拘りも興味深いが、しかし本作の面白みはDVD『Exhibitionist 2』で実現したドラマーとの即興演奏を発展させたセッションであり、ここでは2015年9月19日にTodaysArt.JPにおける本人を含め4人の演奏者が行ったライブ・レコーディングが聞けるのだ。Jeff自身はTR-909 &パーカッションを、日野賢二がベース、Buffalo Daughterの大野由美子がMoogシンセ/ボーカル、デトロイトの盟友であるGerald Mitchellがキーボードを担当しており、「Techno Meets Jazz And Fusion」とでも呼ぶべき過去のジャズアーティストがもしテクノに挑戦したらというような創造力させ働かせる。優美なエレピの滴りから穏やかに始まる"Eventide"は、その後TR-909にキックやハイハット、そして生のベースがリズムを刻みだすと途端にライブ生が強くなり、マシンのみによるプレイとは異なる自由で活き活きとしたうねりが生まれてくる。TR-909によるリズムにしても平坦ではなく小刻みに強弱の変化が加えられ、美しさを彩るGeraldによるエレピ使いに大野による輝きを含んだMoogが自由に舞い踊るソロによって開放感がぐっと増し、15分にも及ぶインプロビゼーションは壮大なコズミック・ジャーニーを喚起させる。"Happy Gamma Ray"は何だか物悲しいベースソロで幕を開け、TR-909によるクラップやハイハットが尖ったビートが疾走りだし、そしてジャズ色の強いメロウなエレピのコード展開とスラップ奏法も使用したファンク色の強いベースによって、感傷的なムードに染めていく。中盤ではJeffによるものだろうか軽快なパーカッションの響きも加わる事でライブ感を増し、豊かな音色の刺激的なムーグのソロプレイもドラマティックな盛り上がりを生むのに一役買っている。Jeff一人では成し得なかった人間の手によるテクノ・セッション、彼のプロジェクトの中でも最もエモーショナルで最も自由度の高い音楽性で、過去の音楽からの影響を現在のテクノへと投影した挑戦はその面白みだけでなく音楽として優れている。宇宙の中を旅し続けるJeffの歩みはまだまだ止まらない。



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| TECHNO12 | 20:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Everything At Once (Delsin:dsr-d4-cd)
John Beltran - Everything At Once
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デトロイト・テクノ随一のアンビエント・マスターであるJohn Beltran。ロマンティックで甘美なテクノから有機的で柔らかいラテンやフュージョンまで、時代によって多少は音楽性に変化を加えつつも、どの作品に対してもアンビエントな感覚を必ずと言ってよい程に込めて夢に溺れさせるような世界を展開する。近年その活動は再度活発になりオランダのデトロイト・フォロワーであるDelsin Recordsと手を組み、新作やベスト盤にコンピレーションまで多数の作品を送り出している。そして2015年には映画音楽に影響を受けた『Espais』(過去レビュー)をリリースし、ビートレスな作風はフロア対応型のテクノからは距離を置きつつも荘厳で耽美な響きは正にBeltranであるものを主張していた。新作も雰囲気的にはその路線を引継ぎつつも、IDMやポストロックにダウンテンポの要素を用いて幾分かはダンス側に振り戻っている。アルバムの始まりこそ抽象的なアンビエントの面影を残すビートレスな"Under This Sky"ではあるが、続く"Faux"では弦楽器を爪弾きするような音色とアトモスフェリックな電子音が絡み合いながら、そこに複雑で生々しいビートが入り込んでくると何だか90年代のインテリジェンス・テクノを思い起こさせる。タイトル曲の"Everything At Once"はすっきり爽快な4つ打ちに何処までも開放的な音響があり、しかし牧歌的で柔らかい有機と電子の狭間のような音の質はフォークトロニカ的だ。ピュアな電子音のメロディーと繊細なブレイク・ビーツによる"Mother"も往年のUK系インテリジェンス・テクノの現代版と言うべきか、そしてBeltranらしい叙情性が加わっている。完全電子化する前のKraftwerkのカバーである"Tanzmusik"も、だからこそオリジナルのBeltranの淡い叙情性と自然と適合しており、元の曲の雰囲気を引き継いだ透明感に満ちた水彩画のような綺麗なリスニングになっている。アルバム後半には感情の昂ぶりが最高潮に達する"Dream Lover!"が待ち受けており、しなやかで弾力のあるリズムが弾け希望を高らかに告げるピアノが染みるアンビエント・ジャズとでも言うべきか、この生命力が満ちた自然との調和を思わせる音楽性はBeltranだからこそだろう。リスニング系からダンスまで適切に盛り込まれたアルバムだが、どれも光の粒子が飛び交うような煌めきや白昼夢に溺れるような快適性があり、デトロイトきってのアンビエント使いは伊達ではない。但し欲を言えばもう少しテクノ寄りなり、ダンスを意識した作風へと回帰してくれたら、そう活動初期の青々しくも刺激的な音楽性もたまには聴いてみたいとも思う。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
The Orb - COW / Chill Out, World! (Kompakt:Kompakt CD 134)
The Orb - COW / Chill Out, World!
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コンセプトは単純にアンビエント・アルバムを作る事、それに従って制作された本作は、アンビエント・ユニットとして名高いThe Orbにとってユニット史上最も"チルアウト"と宣伝されているが、その謳い文句も決して嘘ではないだろう。前作から僅か1年でチルアウトを打ち出したアルバムに携わっているのは、中心人物であるAlex Paterson、そしてThe Orbの第二の中心人物であるThomas Fehlmann、そしてユニットの初期に参加していたKilling JokeのYouthと、つまりはアルバム毎に制作メンバーが変わるユニットの中でも鉄板メンバーが揃っているのだから、当然悪い訳がない。路線としては限りなく幻想的で美しい音響を打ち出した『Orbvs Terrarvm』(過去レビュー)に近いだろうが、そちらがアンビエントなのに対し本作はやはり自然主義に根付いたチルアウトとしての要素が勝っている。何しろThe Orbと言えばヒップ・ホップやダブからの影響を受けた土着的なリズム感に定評があるが、本作ではそういった躍動的なビート感は希薄で、霞がかった繊細なヴェールのような電子音やオーガニックな楽器の音色に鳥の囀りや水の流れる音などのフィールド・レコーディングを軸として、緑が溢れる田園地帯を揺蕩うような牧歌的なイメージが通底している。音響的には奥深いダブの要素は当然あるもののリズム感で踊らせる展開は回避し、あくまで電子音と有機的なサンプルによって自然回帰的なほのぼのと穏やかな音響空間を構築し、Alexお得意のユーモアを盛り込んだサンプリングが無い訳ではないが、本作のキーはやはりThe Orbのインテリジェンス溢れる方面を担うFehlmannの繊細で耽美な音の使い方が肝だ。基本は豊かな色付けで装飾を行う電子音が前面に出ており、それがオーガニックなサンプリングと融和する事でチルアウトとしての効果が高まっている。例えば時間軸が遅くなったような南国のリゾート感溢れる"Sex (Panoramic Sex Heal)"では爪弾きのような弦楽器の音とドリーミーな電子音が入り混じり、当然そこに虫の鳴き声のサンプルも落とし込む事で余計にナチュラル・トリップを生み出しているし、"The 10 Sultans Of Rudyard (Moo-Moo Mix)"では人の呟きや虫の音のサンプリングを用いた定番的なチルアウトに合わせてRoger Enoによる静謐なピアノの調べを導入し、何か神聖な雰囲気も加わり壮大さを増している。その美しい音響には最早意識さえも融け込んでしまうような、つまりはチルアウトとしては最適な音楽であるのだが、タイトルからして『牛/チルアウトの世界』なのだから聞かずとも想像は付くだろう。



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| TECHNO12 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Octave One - Love By Machine (430 West:4WCD700)
Octave One - Love By Machine
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デトロイト・テクノに於ける随一のライブユニット・Octave One、またの名をRandom Noise Generationとも名乗るBurden兄弟が、前作から1年という短期間でニューアルバムを完成させた。今ではテクノ方面を担っていたRandom Noise Generationは休眠状態のため、Octave Oneがテクノもハウスも実践するユニットとしてBurden兄弟の制作の場になっているが、この新作も当然の如くというか昔からのマシン・ソウルな音楽性に一切の変化はなく、愚直なまでの音楽活動は最早デトロイト・テクノの王道的でもある。但し前作には歌物があったものの本作は全てインストとなっており、その分だけより強固さも増しているようには感じられる。力強く刻む4つ打ちと爽快なパーカッションに混じりエグいシンセがファンキーに炸裂する"Locator"からして、音楽的には全く新鮮さはないものの、その骨太な鳴りや図太いグルーヴにこれぞOctave Oneという個性が十分だ。"Just Don't Speak (Midnight Sun ReDub)"も同様にハードなグルーヴが通底しているが、情緒的なピアノのコードやシンセストリングスが感情を熱くするメロディーを奏でて、熱狂的なハウスの要素を含んでいる。またベースの動きや光沢感のあるシンセからエレクトロやイタロの匂いも感じ取れる"Bad Love II"、ミステリアスな笛の音を用いてダークなテクノを表現した"Sounds Of Jericho"、リズム重視でツール的な要素の強い"Pain Pressure"などもあるが、そのどれらも決して派手に装飾する事はなくシンプルに絞り込まれた作風だからこそ、フロアで映える4つ打ちダンス・トラックとしての強度を得ているのだ。但し前作から1年と言う短い期間の影響なのか、作風が確立されているが故に似通っている印象は避けられず、折角なのだからもっと時間を掛けて何かチャレンジもあればとも思ってしまう。しかし、変わらない事こそがOctave Oneの強みと考えれば、それは最早彼等の生き様なのだろう。



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| TECHNO12 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Scuba - Fabric 90 (Fabric Records:fabric 179)
Scuba - Fabric 90
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2016年8月に薬物により2名の若者が亡くなった事で一旦は閉鎖へと追い込まれたUKは名門クラブのFabricで、最後にプレイしたのがダブ・ステップで先陣を切るPaul RoseことScubaだったそうだ。本作はその出来事に前に制作されていたのでその出来事と特に関連付けられてはいなかったが、奇しくもクラブの閉鎖後に同レーベルより初めてリリースされた作品がScubaが手掛けた本作だったのは、何か運命的なモノを感じずにはいられない。Scubaと言えばテクノの現在の聖地であるベルリンはBerghainにダブ・ステップやベース・ミュージックによって攻勢をかけ、テクノとダブ・ステップの溝を埋めつつ、また本人もベルリン系のテクノへの傾倒を示す事で評価を獲得していた。しかし5年前にリリースされたアルバムは意識的にダブ・ステップから距離を置いて大衆的な作品をリリースし、当方はそこで一旦Scubaへの興味を失いかけていたのだが…。しかし、そこはやはりFabricシリーズに起用されただけあり、ダブ・ステップのビートとテクノのひんやりした質感によってかつてのアンダーグラウンドな雰囲気を十分に纏い、息もつかせぬ展開を駆け抜けるミックスを披露している。驚いた事に本作ではCDとしては19トラックに分けられているものの、実際には42にも及ぶ大量の曲が使用されており、常に複数の曲が入り組むように編み込まれる事でビートの多様性と緩急自在な展開を作り出している。そして単に勢いで飲み込んでいくだけの作品ではなく、例えば出だしではビートのある曲にPatrick Cowleyによる不安気なアンビエントの"Uhura"を被せて深遠な音響空間を作っていたり、ビートもかっちりした4つ打ちからボディーブローのように鳩尾に刺さる鋭利なダブ・ステップに端正なミニマル、または痺れるような覚醒感ある電子音や奥深い空間演出を成すダビーな音響など、様々な要素を散りばめながらそれらがばらばらになる事なく一つの世界観として纏めあげている。確かに余りにも膨大な曲を用いてはいるのだがそれらはベルリン的な冷たさや闇のムードによって結び付けられており、ここでは意識的でなければテクノとダブ・ステップの垣根を感じる事は無いほどだ。そして作品の最も盛り上がる中盤も素晴らしいが、ラスト10分位のテンションが落ちてきてビートが変容しつつズブズブと深みにはまり、暗闇の中からメランコリーな情緒も現れてくる流れは、暗さの中にもドラマティックな盛り上がりを感じる事だろう。予想を良い意味で裏切る妙技が炸裂したミックス、Scubaの深化がここに表現されている。



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| TECHNO12 | 21:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Carl Craig | Sonja Moonear - Cocoon In The Mix (Cocoon Recordings:CORMIX053)
Carl Craig Sonja Moonear - Cocoon In The Mix
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真夏の夜の饗宴を繰り広げるイビサはAmnesiaで開催されるCocoonのパーティーは毎年の恒例行事となっているが、そのパーティーの公式MIXとなっている『Cocoon In The Mix』の最新作(と言ってもリリースは昨夏ですが)は、デトロイト・テクノの至宝であるCarl Craigとスイスの女性DJでありミニマル系で評価を得ているSonja Moonearが手掛けている。このシリーズのコンセプトは二人のDJのミックスを収録するだけなので、音楽的な繋がりから言えば共通項は見えてこないので、それぞれ全く別のプレイとして本作は楽しむべきなのだろう。それでも本作を聞けば例えば当方のようにAmnesiaのパーティーを体験した事のない人にとっても、その雰囲気だけでも何となく掴める事は可能なのかもしれない。それは特にC2のプレイの方が顕著と感じ、序盤から"What Is House Muzik (Ricardo Villalobos What Is Remix)"や"7 Directions (Dennis Ferrer Drum Mix)"などミニマルかつドラッギーな大ネタを繰り出して、大箱らしい派手な盛り上がりを作っていく。制作するトラックに比べるとプレイの方は余りデトロイトらしさは感じさせないのがC2の特徴だが、それでも疾走しうねるビート感や覚醒的な上モノを用いたヨーロッパ寄りのテクノやテック・ハウスなどは一般的には馴染みやすい音ではあり、またFloorplanやOxiaなどクラシックも当然の如く用いて真夜中の興奮を演出し、終盤ではデトロイト系の"Episode"や"Speechless (C2 Remix)"を投下して感動のエンディングへとスムースに盛り上がっていく。ミックス自体に何か特別な個性を感じるような内容ではないものの、Amnesiaの興奮に包まれた景色が浮かんでくるような、これぞ大箱らしいプレイだろう。対してMoonearの方がDJとしての力量を感じさせるプレイが体験出来る内容で、色っぽい呟きによりハウスを宣言するような"New Age House"に始まり"Music, Music (The I Humped Mix)"によって滑らかに加速し、常にグルーヴをキープする。大袈裟に展開を作る事はせずに淡々とした抑制されたビートを刻み、Cocoonらしいドラッギーなテック・ハウスも織り交ぜながら中盤でのエモーショナルな"Creepin"や"Translated Translations Translated"等のハウスでドラマティックな流れも生み、ミニマルな展開の中にも淡い叙情性を盛り込む。中盤以降は更に深い空間を感じさせるディープ・テックな闇に進んで、ラストに向かって80年代シンセ・ポップらしさを含む"M9"からアンビエントな音響処理の強いダビーな"98%"で微睡みつつ、最後にはVillalobosによるその名も"Amnesia"でじわじわと感覚が鈍っていくようなドープ・ミニマルで深みに嵌まりながらいつしかパーティーは終わりを迎える。半ば強引なまでに盛り上げるC2、対してフロアの感覚を掴むように嵌めていくMoonear、DJとしては当然後者に軍配が上がるだろう。



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| TECHNO12 | 16:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Daniel Avery - DJ-Kicks (Studio !K7:K7342CD)
Daniel Avery - DJ-Kicks
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MIXCDシリーズとしては名実共にトップに君臨するDJ-Kicksシリーズは、テクノやハウスだけに限らず多種多様なジャンルに於ける実力者を起用しているが、決してコマーシャルな訳ではないが比較的名の知られているDJが多かったように思う。新作はUKテクノシーンの新星であるDaniel Averyが担当しているが、確かにここ数年めきめきと頭角を現してはいるものの、決して幅広く知られているかと言うとそうでもなくアンダーグラウンドな雰囲気を今も尚纏っている。そんなDJを起用したDJ-Kicksの選択は間違っていなかった…本作を聴けば誰しもそう思わずにはいられない、これが今のテクノだと言わんばかりの時代性とアンダーグラウンドなパーティーの感覚がここには閉じ込められている。ダンス・ミュージックの中のテクノの、更により深いアンダーグラウンドな音楽に慣れていなければ、本作で聴ける展開が少なく氷点下のような冷たい電子音の持続は、単調に感じるかもしれない。明確な旋律のないスモーキーなドローンが満ちる"Soundscape I"で幕を開けると、続く"Sensation (Rrose Remix)"では殺伐で荒涼とした風景が浮かぶ電子音が酩酊を誘う4つ打ちで胎動を開始し、暴力的なキックと無機質な金属の打撃音で猪突猛進する"Vertigo"で深く真っ暗な地下のトンネルを疾走するような感覚に陥っていく。展開を極力抑えられたダークなテクノはミニマルと呼ぶべきなのだろうが、例えばリズムにうねりがあるグルーヴのミニマルではなく、抑揚を排し深い音響によって持続間を生むAveryのプレイは、非常に機械的であり温度は極度に冷えている。しかしだからといって盛り上がりが全くない事はなく、中盤のアタック感の強いキックと覚醒的な電子音が反復する"Stortorget"からゴリゴリと掘削するようなキックに感覚を麻痺させるドローンが乗った"Capitulo 5"辺りの流れは、ハード・グルーヴが目を出して肉体的な刺激も十分だ。そこからはドローンや細かな電子音が散りばめられたハードな音響テクノを中心に、ずぶずぶと地底に沈んでいくようなダークかつサイケデリックな流れが続き、次第に感覚や意識が薄れていくようだ。最後は始まりと同様にAveryによるモノトーンなアンビエントである"Space Echo"が待っており、それまでの荒々しさが嘘の如く霞となって消えて終わりを迎える。比較的どの曲も長くプレイされるせいで派手なミックスも無ければ、曲自体もモノトーンで荒廃した世界観が長時間続く平坦な流れだが、しかしそれこそが我を失う酩酊した感覚を生むのであり、ハマる人にとっては最上級の恍惚感を与えるに違いない。



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| TECHNO12 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Doms & Deykers - Evidence From A Good Source (3024:3024-028CD)
Doms & Deykers - Evidence From A Good Source
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音楽だけに限った話ではないだろうが、コラボレーションが単なる物珍しさのみで評価され、互いの個性を相乗効果として活かす事が出来ずに作品として期待以上の面白さを引き出せない事は、決して珍しくない。その意味では本作は互いの音楽性がバランス良く盛り込まれつつ相性の良さが違和感の無いダンス・ミュージックとして成り立ち、モダンとレトロを上手く用いたテクノとして期待にしっかりと応えてくれている。手掛けたのはSteffie DomsことSteffiとMartijn DeykersことMartynで、Ostgut Tonからも作品をリリースする前者は自身ではデトロイト・テクノの影響を色濃く残すDollyを主宰し、また後者はデトロイト・テクノとダブ・ステップの架け橋的な音楽性により新世代として台頭したアーティストで、過去のオールド・スクールな音楽に敬意を持ちながらも現在のシーンに適合した二人の相性の良さは言うまでもない。本作はかいつまんで言ってしまえば、デトロイト・テクノ×ディープ・ハウス×ダブ・ステップ×レイヴな内容で何か目新しさは無いかもしれないが、それらの琴線を震わす叙情性と粗野で荒くれた変則的なリズム感が見事なまでに一体化し、彼等の持ち味となっている点で評価すべきだろう。一曲目の"Eyes Up"からして叩き付けるようなロールするスネアやハイハットが炸裂するが、その一方ではTB系の特徴的なベースラインや幻想的なパッドが延びるシカゴのディープ・ハウス由来の要素もあり、激しく曲調ながらも感情をじっくりと温める。タイトル曲の"Evidence From A Good Source"は鞭で叩くようなビートが強烈なエレクトロを思わせるが、官能的なシンセのメロディーの影響でダークになり過ぎる事はなく、やはりエモーショナルな響きが印象的だ。それは先行EPとなった"It's You I See"でも顕著で、特にストレートなダンストラックであるこの曲は何だか懐かしみを感じるのは、デトロイト・テクノらしいメロディー使いや弾けるようなグルーヴに古き良き時代感が込められているからだが、決して懐古的になるだけではなくダブ・ステップを持ち込んだ事で今という時代性もある。アルバムの中で一番疾走感がありデトロイト・テクノを追随する"Faye's Slide"から、そしてTBらしきベースラインやTRらしいパーカッションが特徴のシカゴ・テクノ寄りな"Some People Think Television"などクラシカルなスタイルもあれば、そのタイトルが表すように美しいパッドに覆われながらもグライムやダブ・ステップの深くえぐるようなリズムを強調した"Grime For Dolly"もある。どの曲も荒々しいリズムと悪っぽい粗野な音がレイヴ時代を思わせると同時に、デトロイト・テクノの影響下にある延びるパッドが流麗な響きも聞かせ、メロディアスかつグルーヴィーなテクノになっているのだ。本場のデトロイト・テクノが停滞している今、このような作品に期待を寄せるのも納得な一枚だ。



Check "Steffi" & "Martyn"
| TECHNO12 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |