ROTLA - Trasmissioni (Edizioni Mondo:MND010)
ROTLA - Trasmissioni
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Running Back傘下で架空のライブラリー・レーベルとして運営されるEdizioni Mondoから、2019年のベストアルバム級の作品が登場。手掛けたのはローマのMario PierroことROTLAで、元々Raiders Of The Lost ARP名義ではコズミックなシンセ使いとブギーなマシン・グルーヴでイタロ・ディスコの系譜に並ぶ音楽を制作し、デトロイトのアーティストとも共鳴するエモーショナルな性質が魅力であった。近年はEdizioni Mondoから作品をリリースしており、以前にも増して有機的な響きを強めてリスニング性の強いバレアリックな方向へと向かっていたが、その決定打となったのが2018年の後半にリリースされた『Waves』(過去レビュー)。ギターやベースの生楽器も大幅に導入し豊かな情熱が広がるその音楽は最早サウダージとも呼べるバレアリック・ディスコで、ROTLAにとってのこれまでにない最高の曲になった。そしてその路線が発展して完成したのが本作なのだが、先ずジャケットの裏面を見ると制作に使われた機材が記載されており、ミニムーグやJuno 60にTR-808といったヴィンテージなアナログ機材、そしてギターやベースにローズ・ピアノといった生楽器も並んでいるが、そんな楽器を用いた手作り感に溢れた音楽を思い浮かべるだけで胸の高鳴りを抑える事が出来なくなってしまう。アルバムは夜空を星が飛び交うようなシンセのアルペジオとしみじみとしたギターが咆哮するビートレスな"Progressi Della Scienza"で始まり、幕開けに相応しい希望と高揚に満ちたバレアリック感が伝わってくる。続く"Telemusic"では生っぽさを意識したロウなディスコのビートに合わせて、清涼で淡い色彩感のあるパッドが伸びつつフュージョン的なコズミックなシンセが華麗に躍動するブギー系。と思いきや"Esterno Neve"では快楽的なシンセのミニマルなフレーズがテクノ的で、そこにか細いギターや繊細な電子音を被せて、ジャーマン・プログレにも似た不気味な高揚感を放つ。途中リッチなシンセサイザーがSF感を煽る短いインタールードの"Delta Sound"を経由し、透明感あるシンセが鳴る中を穏やかなで爽やかなピアノが引率する微睡んだディスコ・スタイルの"Nightlife"から、最後には颯爽としたリズムを刻みながらコズミックなシンセやギターが一つとなってじわじわとオプティミズムの頂上へと上り詰める"Timing"が感動的なエンディングを演出する。全ての演奏を一人でこなしたDIY性がライブ感にも繋がっており、所謂クラブミュージックにありがちな(全てがとは言わないが)無機質な音とは対極的な、温かく生き生きとした臨場感さえ感じられる音からは多幸感が溢れ出している。ディスコやジャーマン・プログレにアンビエントやイタロといった要素を含む過去から現在までのROTLAの音楽を網羅する折衷主義な内容で、そしてそれらはバレアリックというスタイルに包括されており、ここに一先ずアーティストの完成形が感じられる文句無しのアルバムとなった。尚、配信では前述の『Waves』EPから含め3曲が追加で収録されている。



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| HOUSE14 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Mark Barrott - Sketches From A Distant Ocean (International Feel Recordings:IFEEL070)
Mark Barrott - Sketches From A Distant Ocean
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現在のバレアリック・シーンを先導するアイコン的レーベルであるInternational Feelの主宰者として、そして自らもクラブシーンとの繋がりを保ちつつ自然豊かな響きを持つバレアリック・ミュージックを手掛け、このジャンルを象徴する存在のMark Barrott。しかし2017年の「The Pathways Of Our Lives」を最後に暫くリリースが無かったのは、忙しない活動のせいだったのかどうやらそれ以降音楽を制作する意欲が無くなってしまったいたそうだ。そこで故郷であるウルグアイへと帰郷し束の間の休息をとっていたのだが、植物園を散歩している時に音楽が自己表現である事に気付き、音楽制作へと戻ったと言う。そこから出来上がったのが本作、島シリーズの続編と捉えるべき遠い海の風景だ。遠くまで広がる海洋の上という事もあり、以前の南国感は残しつつも緑が生い茂る土の香りではなく、青々とした爽快感や開放感に優れたバレアリック性が何となくではあるが感じられる。"Galileo"では以前にも制作に参加したギタリストのJordan Humberをフィーチャーしているが、この曲は穏やかな波が何処までも続く遠洋をクルージングするような緩い正にバレアリック系で、朗らかで陽気な南国ムードのギターと流麗なストリングスが緩く長閑な空気を生み、明るいシンセやカラッとしたパーカッションが爽やかに響いて、大人の余裕に満ちたリゾート感に包まれる。一転"Low Lying Fruit"では民族的な打楽器やフルート、そしてエキゾチックな弦楽器が海ではなく土着的なリズムを刻んでいるが、それでも太陽光が砂浜から照り返す海辺の近くのような陽気なトロピカル感があり、有機的な響きに生命を感じさせる音楽性が自然を愛するBarrottらしい。"The Rowing Song"では豊かな色彩感のあるシンセに残響豊かなギターが広がっていき、トリップ・ホップ的な崩れたリズムでついつい足取りも軽くなり、広大な海洋で全身に太陽光を浴びるような快適性。最後はやや内面志向的なアンビエント性がある"Xarraco"、情緒的なシンセストリングスとマイナー調のコード展開、そこに祈りのような切ない歌も合わせて物哀しさが込み上げるビートレスな曲で、陽気な曲にしろこういった曲にしろ人間の豊かな感情をそのまま音像化したような作風が彼にとっての自己表現なのだろう。久しぶりの新作でも自然との共生を果たすオーガニックな世界観は変わらず、しかし現在のバレアリックを代表する存在感は衰えるどころかより一層大きくなり、Distant Oceanが新たなシリーズとなるであろう事に喜びを隠せない。



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Nami Shimada - Re-Mix Wax 〜Nami (Non) Nonstop〜 (Jetset:JS12S125)
Nami Shimada- Re-Mix Wax 〜Nami (Non) Nonstop〜
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2019年もジャンル問わず日本産音楽がちょっとしたリバイバルというか、日本の外にある世界から脚光を浴び続けた一年であったように思われるが、その中でハウス・ミュージック方面から注目を集めたのは島田奈美。彼女の話をすると一にも二にも"Sun Shower"をガラージの伝説的DJであるLarry Levanが1991年にリミックスしたという奇跡的な出来事が真っ先に挙がり、今も尚ディスコやハウスのパーティーでその名曲をDJがプレイする事は珍しくない。そのきっかけを作った人こそ今再度注目を集めるジャパニーズ・ハウスの始祖的なSoichi Teradaで、当時から彼女のポップスをハウスに解釈したリミックスが日本のハウスを先駆けていたわけで、それを体験出来るのが本作。元々1989年にリリースされていた島田の曲のTetadaによるハウス・リワークである『Mix Wax - Nami Non Stop』を、2019年にTeradaが再度リエディット&リマスターし直して再発したのである(CD盤には1989年のオリジナルバージョンも収録している)。当たり前と言えば当たり前だがどれもハウス・ミュージックとしてダンス化された曲、そしてそれらがノンストップ・ミックスとなる事で、いかにもクラブ的な感覚で生まれ変わっているのは新鮮だ。ゴージャスで賑やかな幕開けとマーチ的なグルーヴ感でノリノリになった"I'm Angry!"は、軽快な4つ打ちにスクラッチ的な効果音も混ぜたりとパーティー感を強めつつ原曲の愛らしいポップス感も共存させ、島田のアーティスト性を損なう事なく自然とハウス化している。そこからガラッと真夜中の暗さもある"Sun Shower"へ転換すると、快楽的なシンセベースが前面に出ながらどっしりとした安定感のあるハウス・グルーヴを刻み、すっきりと無駄を省いた上でレトロ・フューチャーなロボットボイスや哀愁のあるシンセの旋律を印象的に聞かせ、これがどれだけ時代を経ようとも揺るぎないクラシックとしての存在感を漂わせる。ラップ的な掛け声の入った"Here I Go Again"は90年代のハウスとヒップ・ホップが同列な時もあったヒップ・ハウス的なノリが聞ける瞬間もあるものの、まあ島田の歌が入るとどうしても耳馴染みの良いポップス性も出てくるが、妖艶なシンセのリフやアタック感の強いキックを強調した跳ねたハウスのリズムが爽快な"Tokyo Refresh"、ゴージャスなシンセブラスが弾ける眩さに包まれながらキュートな島田の声に胸キュンする"Dream Child"と、跳ねるような定間隔で刻まれるのハウスのリズムがやはりキモだ。最後の"Where Is Love?"だけはビートレスな構成で、切なく伸びるパッドとしっとりしたシンセのシーケンスを軸に島田の悲哀に満ちた歌を強調したバラード調だが、こういった曲でもTeradaのシンプルながらも感情を刺激するシンセワークが効いている。今回新たにリエディットされたという事だが筆者はアナログの方しか聞いていないため、過去のバージョンとの違いを比べる事が出来ず作風の違いも気になる所だが、取り敢えず2019年バージョンだけ聞いてもハウスとポップスが両立した魅力は十分に堪能出来るだろう。ハウス化される前のオリジナルを聞いてみたいという方には、島田自身が選曲したベスト盤である『Songs Selected By Naoko Shimada』(過去レビュー)も聞いてみて欲しい。

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S3A - Pages (Dirt Crew Recordings:DIRT118)
S3A - Pages
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2012年頃にデビューをしていたのでそれから7年、本当に待望のという表現が相応しいSampling As An Artを名乗るS3Aによる初のアルバムが到着。その名の通りサンプリングを武器にしたハウスの中に、ディスコやファンク、ヒップ・ホップやソウルといった要素も込めて、華々しい曲から湿っぽいビートダウン風までそのどれもフロア志向でダンサンブルな曲を大量にリリースしており、Local TalkやQuintessentialsにEureka!といった著名なレーベルのカタログに名を連ねる実績からも分かる通り人気者かつ実力者である。このアルバムでは今までの音楽性を一纏めにした集大成と呼べる今まで咀嚼してきた音楽性が各曲に混在しており、アルバムというフォーマットだからこそ表現力を存分に発揮したであろうバラエティーに富んでいる。冒頭の"Fever"は生々しく温度感のあるベースラインが効果的なファンク色強いハウスで、Zazというバンドのメンバー(Nicolas Taite、Pierre Vadon、Raphael Vallade)が作曲やプロダクションに関わっている影響もあるのだろうか、今まで以上にライブ感溢れる音響が聞こえる。"Friends"も同じプロダクションなので、やはりうねりのある生ベースや流麗な鍵盤ワーク、切れのある鋭いリズム感が活きたジャズ・ファンクで、ハウスの境界を越えていく。また"Greed"も同様なのだが、そもそもこれはオリジナルはLaurent Garnierによる鋭利なエレクトロだったが、ここではしなやかで繊細なジャズ・ドラムと甘美なエレピや艶めかしいベースが生き生きと躍動するジャズ・トラックになっており、アルバムにフロアを目的とだけせずに深みと豊かな音楽性を加えている。勿論"Lockwood"ではサンプリングを用いてフィルター処理も行い派手な展開を繰り広げるディスコ・ハウスや、ディスコのストリングスをサンプリングしたであろう優雅さとズンドコと骨太ファンキーなリズムのループ重視な"Clarence J. Boddicker"など、いかにもS3Aらしい興奮させられる憎感溢れるダンストラックも存在する。そしてヒップ・ホップ性が込められたざっくりリズムと切ないエモーショナル性の旋律でハイテンションなアルバムに一旦休息を入れる"Interlude for Marc"、そして最後のヒップ・ホップとスモーキーなビートダウンが一つになったような黒い芳香立ち上がる"Eaux Troubles"では妖艶ながらも情緒的なストリングスが美しく伸びてアルバムの旅を感動を添える。十八番のサンプリングを存分に発揮しつつ、古典からモダンまで、そしてジャンルも横断しながらパーティー感覚に溢れた音楽性で、何処を切り取ってもS3Aと呼べる要素で満たされた期待に応えたアルバムだ。



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Shinichiro Yokota - I Know You Like It (Far East Recording:FER-06916)
Shinichiro Yokota - I Know You Like It
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「こういう音が、いいんだろォ…?」こんなCD帯のあおりに笑わずにはいられない横田信一郎のニューアルバム。今となってはジャパニーズ・ハウスの創世記のレジェンドとなったSoichi Terada(寺田創一)と活動を共にしながら、しかしネームバリューでいえば寺田の大きな存在に隠れがちではあったものの、寺田と共に長く活動をしていただけありそのハウス・ミュージックのシンプルさが生み出す素晴らしさは寺田に負けず劣らずだ。90年初頭からリリースをしているだけありNYハウスに影響を受けてリズムマシンによるシンプルなビートとベース、そして綺羅びやかなピアノや流麗なシンセによるキーボード主体のサウンド、そして和的なポップ感覚を載せたハウス・ミュージックは、シンプルが故に時代が経とうとも色褪せない強度と普遍性がありだからこそ今再度注目を集めているのだろう。そしてこの新作である、冒頭のあおり文句まんまにファンが期待するクラシカルなハウス・サウンドは良い意味で変わらない。新曲である"I Know You Like It"から直球ハウス、ソウルフルな歌と凛としたピアノのコード、贅肉を落としながらも跳ねるハウスのビート感であっさりした響きだが、ポップさ弾けるメロディーや美しいシンセの伸びがぐっと心を熱くする。"Tokyo 018 (Watashi Wa Tokyo Suki)"はなんと寺田との15年ぶりの共同制作だそうだが、可愛らしいシンセの音色やエフェクトを掛けたボーカル等からは確かに寺田の影響も感じられ、そしてシンプルなビート感と鍵盤を用いた流麗な展開のシンセコードには二人の音楽的な相性の良さが現れている。ややブレイク・ビーツでズンドコと重厚感のあるリズムを強調した"Time Travelling"も内向的な鍵盤と哀愁奏でる歌がしんみり切なさを誘い、"Gypsy Woman (She's Homeless)"を思い起こさせるキャッチーなピアノ使いが印象的でざらついて安っぽいビートは跳ね感がある"Take Yours"は途中からふざけたようなアシッド・サウンドも加わりユーモラスで、どれもシンプルではあるが丁寧に個性が込められている。YMOカバーの"Simoon"含むラスト3曲は実は90年前半の曲ではあるが、それがら新曲と並んでいても全く違和感なく聞こえるのは、やはり横田の音楽性が当時から大きくは変わってないない事を示している。90年代のハウス・ミュージック黄金時代が蘇る横田の音楽、決して新しいとか革新性があるとかではないが、「これでいいんだよォ!」と太鼓判を押したいアルバムだ。



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Jura Soundsystem - Monster Skies (Temples Of Jura Records:TEMPLE 002)
Jura Soundsystem - Monster Skies
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ディープ・ハウスのレーベルとして人気アーティストも多くカタログに名を連ねるTsuba Records、その主宰者であるKevin Griffithsがレフトフィールドなディスコ・クラシックの再発を目的としたIsle Of Jura Recordsを近年立ち上げているが、そこから更に発展して現在のディスコを展開するために派生したのがTemples Of Jura Recordsだ。そのレーベルからリリースされた本作はJura Soundsystemなるアーティストによるものだが、実はGriffiths自身によるユニットで、普段はファンキーなディープ・ハウスを制作する彼も当然この名義ではレーベル性を意識したディスコ寄りな作風で、そこにはブギーやバレアリックにトロピカルといった要素も混在している。"Carafe Denim"はプロト・ハウス的な垢抜けなさもある音によるトロピカルな豊かさがある曲で、しかし少ない音のすっきりした構成を活かして何処までも地平が広がっていくような開放感に溢れている。ドタドタと辿々しいリズム感の"Mamma Capes"は生音の強いディスコ風だが、咆哮するギターの爽快感とカラフルなシンセ音や効果音を被せて長閑なバレアリック性を演出している。"Monster Skies"はアンビエントやレフト・フィールドを打ち出した曲で、深い森の中を想起させる鳥の囀りらしきフィールド・レコーディングに原始的な打楽器の音色と民族的な歌を被せて、未開のジャングルへと迷い込んだようだ。一転"Boogie Tune"はタイトルそのままにシンセ・ブギーで、ぶいぶい呻く電子的なベース・サウンドと軽やかなパーカッションも効いた腰に来るリズム感で体を揺らし、"Parrot Rhythmic Space Jam"も同様にブギーかつエキゾチックな雰囲気だがこちらは透明感のあるシンセがふんわりと浮遊してドリーミーな微睡みに包み込む。曲毎に色々な要素を持っており広範囲な音楽ではあるが、全体的にどこか懐かしさを感じるレトロなマシン・ディスコをベースにした統一感があり、レーベル/アーティストの方向性を明確に示している。勿論現行バレアリック好きにもぴったりな内容だ。



Check Kevin Griffiths
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S&W - A Weekend Far Out (Dub Disco:DuDi005)
S&W - A Weekend Far Out

2016年末にDub Discoからデビューを果たしたものの、その後2年間作品のリリースがなく、2019年の初頭にようやく初のアルバムを完成させたS&W。ベルリンを拠点に活動するデュオのS&Wは自らの音楽をイタロ・ディスコと述べているが、熱帯の観葉植物の先に広がる海景色を投影したジャケットから感じられるのはトロピカルやバレアリックといった言葉だ。確かにデビューEPは比較的快楽的なシンセベースのラインと豊潤なシンセの高揚感を生かして4つ打ちが快活なイタロ・ディスコだったが、それから音沙汰もなく2年も経てば多少なりとも音楽の変化があってもおかしくはないが、このアルバムではディスコの要素は残しつつも肩の力は抜けてレイドバックしたバレアリック/ダウンテンポの要素が前面に出て、部屋に清涼な空気を持ち込むBGMとして優れている。引いては寄せる波の音の中から浮かび上がる、静けさを強調する長閑なフェンダー・ローズのコードから始まる"Arrival At The Shore"で既に大らかなアンビエント性を発揮し、続く"Ocean View Drive"ではポップな光沢感のあるシンセとまったりとしたディスコなビートによる夢心地なシンセ・ポップを披露し、"Cloud Place"では軽く弾けるシンセドラムのリズムに柔らかいヴィブラフォンや薄っすら情緒的なパッドを被せて実に清々しくも甘いドリーミー加減だ。"New Age Fantasy"はそのタイトルが示す通り序盤はビートレスでスラップベースとぼんやりとしたシンセが有機的で微睡んだニュー・エイジ風だが、途中からさらっとリズムも加わり捻られたようなシンセの響きが奇妙ながらもポップさに包んで、短いながらも牧歌的な癒やしとなる。比較的前作の路線に近い"Monte Pellegrino Part Part I & II"は9分にも及ぶニュー・ディスコ調だが、切れのあるファンキーなベースに乾いて爽快なパーカッション、そして透明感と伸びのあるパッドと丸みのある柔らかいマリンバらしきが生み出すトロピカルなリゾート感は、清涼な空気が溢れ出しつつドラマティックでアルバムの中で最も陶酔させられる曲だ。そして"After The Tempest"、正に嵐が過ぎ去った後の青空が何処までも広がり静けさが続くドリーミーなダウンテンポと、アルバム全体を通して曲名からもバレアリックな雰囲気が実直に伝わってくる。2年間という沈黙の間に熟成したかの如く清涼なバレアリック性を獲得し、真夜中のクラブとは対照的に日中の屋外は太陽の光の下で聞きたくなる開放感のあるアルバムを完成させたS&W、これは注目すべき存在が現れたものだ。



Check S&W
| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Marvin & Guy - Solar Warriors (Life And Death:LAD042)
Marvin & Guy - Solar Warriors
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2012年にリリースされた『Let's Get Lost Vol. 14』に収録されていた国産アーバン・ディスコの名作「Tonw」のリエディットは、その年のパーティーでは頻繁に耳にするなど世界的にヒットしたのも懐かしく、また現在に繋がる和モノのブームの流れの中にあった。それを手掛けていたのがイタリアのデュオであるMarvin & Guy、中身はMarcello GiordaniとAlessandro Parlatoreで、前述のヒット作以降もコンスタントにEPをリリースし、それ程の爆発的ヒットはなくてもギラギラしてスペーシーなニュー・ディスコによって人気を博している。2019年初頭にリリースされた新作も作風は既に完成している事から良くも悪くも金太郎飴的なニュー・ディスコで、だからこそ安心して聞く事の出来る内容になっている。Alloをボーカルに起用した"Notte"は特にギラついた曲で、初っ端から毒々しいシンセの伸びと麻薬的なシンセベースが効いていて、そこにスペーシーな呟きも加わりピアノの快楽的なシンセのフレーズも被せられ、徐々にビルドアップしていくニュー・ディスコなスタイルは恍惚へと導く。"Idra"ではPerelをボーカルに迎えているが、こちらはカラッとした爽快なパーカッションと潰れたようなドラムのビート感、そしてダークでブイブイとしたベースラインがよりディスコティックな雰囲気を作っており、そこに美しも妖艶に伸びるパッドやセクシーながらもどこか退廃的なスピーチが派手な世界観の中に何か影を落とすような狂おしくもドラマティックな曲。それらに比べると"Stige (9AM Mix)"はやや地味な作風だが、軽く疾走するビート感に浮遊感のある煌めくシンセを用いて、スペーシーな世界へと誘うムーディーなディスコだ。8ビット風のコミカルな宇宙旅行のジャケットも、収録された3曲の世界観に見事にマッチしている。



Check Marvin & Guy
| HOUSE14 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Tkumah Sadeek - I Will Be There / Till I See The Light (Future Vision World:FVW-008)
Tkumah Sadeek - I Will Be There Till I See The Light
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シカゴのディープ・ハウスの巨匠であるRon Trentが近年運営をしているFuture Vision Worldが2018年末にリリースしたEPは、Trentの作品にも過去に度々ボーカリストとして参加しているTkumah Sadeekによるもの。Trentの作品以外では名前が見られずどういったアーティストなのかは分からないが、本作でもTrentの全面プロデュースによってそのトラック自体は完全にTrentの新作と呼んでも差し支えないジャジーなディープ・ハウスになっており、ファンならば文句無しの出来だ。薄っすら耽美なシンセやジャジーなリズムから始まる"Till I See The Light"はその時点でもうTrent節が炸裂しているが、徐々に乾いたパーカッションが弾け優美なピアノが踊り情熱的なSadeekの歌によって微熱を帯びて盛り上がってくる。そしてラテンやジャジーな感覚にエレガントという表現が相応しい雰囲気を纏い、そして中盤かはらコズミックなシンセソロも入ってきてタイトルが示すように眩い光を望むようなポジティブな空気に包まれる音楽は、完全にTrent流のシカゴ・ディープ・ハウスに染まっている。そして注目なのは2014年に系列のFuture Vision Recordsよりリリースされていた曲をJoe Claussellがリミックスした"I Will Be There (Joaquin "Joe" Claussell's Cosmic Arts Version)"で、元々はアフロなパーカッションが効きながらも幻想的でアンビエントな浮遊感のあった甘いディープ・ハウスを一体Joeがどのように塗り替えたのか。このリミックスでは元の印象を大きく変える事はないが原曲以上に爽やかなラテン・パーカッションが空へと響き渡り、コズミックなSEもさらっと盛り込みつつフラットなビート感を活かして爽快に疾走るソウルフル・ハウスへと変化している。大胆な鍵盤ソロも持ち込んでぐっとエモーショナル性も増し、弾けるパーカッションが快活にリズムを刻み、近年は実験的な音楽性に偏りがちなJoeにしては随分と以前の作風を思い起こさせる宇宙感やスピリチュアル性もあるソウルフル・ハウスに一安心。古臭い意味だけでなく時代を越えていくという意味でクラシックと呼ばれるハウスにも含まれる、実にJoeらしいリミックスだ。



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| HOUSE14 | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Rudy's Midnight Machine - La Cadenza (Faze Action:FAR038)
Rudys Midnight Machine - La Cadenza
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片隅に見える熱帯植物があるだけの単純な構図からバレアリックやチルな空気も漂ってくるジャケット、その感覚は恐らく間違っていない。手掛けているのはUKにおいてニュー・ディスコの隆盛に貢献してきたFaze Actionの一人であるRobin Leeで、Rudy's Midnight Machine名義としてはこれで4作目と活動的なプロジェクトではないものの、ジャケットからも想像出来るトロピカルかつアーバンな要素があるバレアリック・ディスコは総じて質が高い。本作は特にフュージョンやブギーの音楽性によるレトロ感も漂っており、キラキラしたシンセと情緒を醸すエレピから始まる"Camera Dans La Nuit"はのっけからフュージョン感爆発で、落ち着いたディスコ・ビートに合わせ豪華だったり優雅な複数のシンセが彩り、実に感情的に展開するドラマ性の強いディスコだ。"Une Vie Elegante"なんかはすっきりしながらも切れのあるリズム感、シンセやパーカッションもさらっと弾けるように聞かせながらファンクな躍動感を打ち出し、しっとりしたエレピで優美に染める作風はLevel 42辺りを思い起こさせるジャズ・ファンクだ。タイトル曲の"La Cadenza"は序盤はビートレスな状態をコズミックなシンセのアルペジオで引っ張っていき、そこからリズムが入るとスローモーでしみじみとしたディスコへと入っていくが、湿っぽく有機的なギターカッティングやベースがライブ感も持ち合わせている。"Secret Garden"は特にメランコリーに満たされた曲で、薄いパッドを配しながらもビートレスな構成で、爪弾の切ないギターや悲哀に満ちた繊細なピアノのメロディーで静かに聴かせるこの曲はサウダージだ。どれも味わいとしては素朴で懐かしみの強いディスコがベースになっているが、モダンなバレアリックにも共鳴する世界観やクリアな音響もあり、現在形のディスコとして素晴らしい。



Check Rudy's Midnight Machine
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