Antoine Kogut - Remixes (Versatile Records:VER125)
Antoine Kogut - Remixes
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フレンチ・ハウスと言ったら兎にも角にもVersatile Records、ストレンジな電子トラックから耽美なディープ・ハウスに、ダンスからリスニングとバランス感覚に優れた老舗レーベルは、ダンス・ミュージックという忙しない業界に於ける流行り廃りとは距離を置いて迷い無き道を突き進む。本作はフランス人アーティストであるAntoine Kogutが2018年にリリースしたアルバム『Sphere Of Existence』からのシングルカットで、レーベル主宰のGilb'RとI:CubeによるChateau Flight、そしてI:Cube単独、3人組のDJクルー&ライブバンドであるFlegon、そしてAntinoteからレフトフィールドなダンスをリリースしたRaphael Top Secretの4組がリミックスを提供している。アルバム自体はゆったり肩の力が抜けた切ないバレアリックなモードだったものの、このリミックスではそういった雰囲気を引き継ぎながらもクラブ感覚を増したダンス性も加わり、曲によっては興奮に包まれる真夜中のバレアリック・ダンスになっている。"Sphere Of Existence (Chateau Flight Remix)"は甘く囁くような歌を活かした90年代のイタロ系バレアリック・ハウス調で、メランコリーを誘うサックスの響きから覚醒的なアシッドのシーケンスへの転調を伴い、耽美な鍵盤のコード展開と疾走するビート感の流れも含んで、実に大らかで心地好く展開する。I:Cube単独のリミックスとなる"Sphere Of Existence (I:Cube Unexpected Dub)"では、そのダブミックスという通りに派手なメロディーは抑えられてその代わりにタム等のパーカッションを活かしたビート重視の作風となり、やや内向的で陰鬱さもあるディープ・ハウス仕様。"L'oeillet Noir (Flegon Remix)"はバンドらしく生っぽさを打ち出したざっくり質感で、ドラムやオルガンに鍵盤といった楽器を生演奏しているのだろうか、しみじみと情緒深く聞かせるスローモーなディスコ・スタイル。そして"Current Density (Raphael Top Secret Remix)"は繊細なフェンダー・ローズが優美さを奏でつつ、ヒップ・ハウス的な軽く跳ねるリズムで浮遊感を伴って、色っぽさや官能といった芳香もする大人びたハウスになっている。どのリミックスにも各アーティストの音楽性が繁栄されているが、流石Versatileらしく基本はダンスな作風ながらもメロディーやハーモニーも尊重した音楽的な豊かさが活きており、メランコリーな気分に浸れる事だろう。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Giovanni Damico - The Boogie Tracks LP (Star Creature:SC1215)
Giovanni Damico - The Boogie Tracks LP
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トロピカル、レトロ・フューチャー、シンセ・ファンクといった言葉が思い浮かぶポップなジャケットが印象的な本作、内容もほぼそのまんまにイタロ・ディスコやシンセ・ファンクを含んだブギーなアルバムで、正に期待通り。手掛けているのはイタリアのGiovanni Damicoというアーティストで、経歴を調べてみると過去にはRondenion率いるRagrange Recordsからのリリース歴もあったりと、ファンキーな音楽性もあるのは納得だ。しかし過去の作品以上に本作はポップなシンセ・ファンクが打ち出されており、ネオンライトの眩しい光に照らし出されるようなシンセの使い方が快楽的でさえある。キッチュなシンセのアルペジオから始まる"Spazio E Tempo"は伸びやかなシンセの旋律やアタック感の強いキックを用いた緩んだイタロ・ディスコで、甘ったるい歌やうねるシンセもあって俗物的な感覚がありながらも、ポップな色彩感覚に彩られている。"Boogie Erogeno"はタイトルにブギーという言葉も含まれている通りブギーなグルーヴ感があり、朗らかな笛の旋律とうねるシンセの弾けた感もあって、フュージョン風な爽やかな一曲。"Puma Beat"もブイブイとうねるシンセが特徴的で、そこに鋭く切り込んでくるドラムや懐かしさもあるシンセのシーケンスも交えて、古き良き時代のライブ感溢れるディスコを思い起こさせる。躍動的なマシンドラムのビート感が快活な"Rise Up"では流麗なシンセのコード展開に合わせて、甘ったるく気怠い歌とボーコーダーを通したロボット・ボイスが交互に現れ、メロウながらもダンス性の強い曲で魅力的だ。対して最後の"Stream Of Souls"はアタック感の強いキックを用いながらも淡々とリズムを刻み、アンニュイで微睡みを匂わせるシンセのフレーズを掛け合わせて、大きく展開を繰り広げる事なくミニマル性の強い流れによって平穏へと向かって終焉を迎える。基本的にはどの曲も鮮やかで派手なシンセ使い、安っぽくも刺激的なドラムマシンのリズム、そしてポップで楽天的な響きや旋律で統一されたアルバムで、シンセ・ファンクやシンセ・ポップといったジャンルを好む人にとっては文句無しの内容だ。



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| HOUSE14 | 10:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Joey Negro - Distorted Dreams EP (Z Records:ZEDD12262)
Joey Negro - Distorted Dreams EP

購入してから放置しておいたらいつの間にか発売から1年経過していた本EP、ソウルやファンク、そして特にクラシカルなディスコの求道者であるJoey Negroによるものだが、これがすこぶる良いので紹介したい。2017年にリリースされたアルバムの『Produced With Love』に収録された曲を他アーティストがリミックスしたEPなのだが、Negroの音楽性が比較的熱心なディスコ信者らしいクラシカルなスタイルなのに対し、ここではCrackazatとLay-FarにFoukと現在形のハウスを提唱するアーティスト、そしてシカゴ・ハウスの巨匠であるRon Trentがリミックスを手掛けて、これぞモダン・ハウスと言わんばかりの内容でアップデートを掛けている。Trentによる"Distorting Space Time (Ron Trent Remix)"はここではレイドバックして肩の力が抜けたグルーヴとダビーな残響を活かした開放感のある生っぽいディスコ×ダブ・ハウスで、生演奏によるギターやベースの湿っぽさやオルガンやシンセのうっとり甘いメロディーに軽く陶酔させられ、大人の余裕さえ感じさせる包容力に満ちた作風だ。対して"Latican Boogie (Crackazat Remix)"は序盤からすっきりと、そして太いキックが地を固めつつ、美しいシンセのリフやピアノのコード展開をフィルターで変化させながら盛り上げていくポジティブなハウスで、若々しいエネルギーが溢れ出すピアノ・アンセム的な爆発力を伴い高揚感の中を突き抜ける。"In Search Of The Dream (Lay-Far Remix)"もフューチャー・ジャズやディスコにファンクなどの要素が混在するLay−Farらしい音楽性が発揮されたリミックスで、ざっくりとした生っぽい響きのブロークン・ビーツにエレクトロニックで豊かなシンセやベースサウンドによって色彩豊かな感覚に包み込んで、喜びや希望が溢れるブギー・ハウスは現在形のモダン・ディスコでもある。そしてJunktionとDaniel LesemanのユニットであるFoukの"Distorting Space Time (Fouk Remix)"、こちらはライブ感あるパーカッションとざっくり生っぽい荒さのあるブギーなビートを活かして、浮遊感のあるTrentのリミックスよりもどっしり重心を落としややツール性を強調したディスコ・ファンクな趣きか。参加アーティストの豪華さに惹かれながら、更に期待を越えてくる位の各アーティストの音楽性が自然と表現されたリミックスで、これはもう文句無しだろう。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Bonobo - Fabric Presents Bonobo (Fabric:fabric201)
Bonobo - Fabric Presents Bonobo
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ロンドンの名門クラブ・Fabricがパーティーの雰囲気を再現すべく17年間に渡りリリースし続けてきた4つ打ちを軸とした『Fabric』とブレイク・ビーツを打ち出した『Fabric Live』のミックスシリーズは、しかしネット上に溢れるストリーミングの無料ミックスの台頭を前に、遂にそのリリースは終焉を迎えた。最早販売されるミックスに未来は無いのか…否、確固たるコンセプトやマネージメント力のあるレーベルをバックに制作されたミックスだからこそ、ある一定の品質が保たれ信頼を寄せる事が可能となる事だってある筈だ。一度はミックスのリリースを止めたFabricもクラブ/パーティーの現在形を表現するべく、再度その歩みを始動させて手掛けるのが『Fabric Presents』シリーズで、タイトルからして殆ど変わってないのはご愛嬌か。第一弾に抜擢されたのはトリップ・ホップやジャズにアンビエントやエレクトロニカと様々に音楽を横断するNinja Tuneの人気アーティストであるSimon GreenことBonoboで、その知名度や実力からしてシリーズ立ち上げに迎えられたのも納得だろう。さて、当方はBonoboのDJプレイを体験した事はないが、ここでのプレイは4つ打ちのテクノ/ハウスを主軸に用いて高揚感のあるパーティーの雰囲気で、そこにスパイスとしてジャズやアンビエントも盛り込むなど、思っていたよりもダンス性の強い内容ながらもBonoboの音楽性も表現されている。初っ端自身の未発表曲である"Flicker"はセンチメンタルモードなエレクトロニカ風で、そこからまたも自身のどっしり4つ打ちながらもエキゾチックな"Boston Common"、そしてブラジリアンなサンバのりながらも優雅な"Jacquot (Waters Of Praslin)"、森林の訝しいエキゾチック感溢れるハウスの"Hidden Tropics"と、音楽性は様々ながらも確実に序盤から踊らせにくる選曲だ。また"Nia"や"Maia"などヒプノティックなシンセを前面に出した覚醒的でメランコリックなディープ・ハウスで盛り上がりつつ、中盤は"TKOTN"や"By Your Side"など変化球的に崩した情緒的な雰囲気に包まれるブロークン・ビーツのリズムで揺らしつつ、同じブロークン・ビーツでも何処か刺々しく不穏でもある"Roach"や"Perpetrator"で攻撃的に攻める瞬間もあり山あり谷ありで大きく揺さぶる。そこからドラマティックにじわじわと盛り上がるテクノの"Mirapolis (Laurent Garnier Remix)"を通過し、終盤はフューチャー・ジャズやブロークン・ビーツのしなやかなリズムとメランコリーで空気で落ち着きを取り戻し、最後は微睡みに落ちていく有機的なアンビエントの"Collage Of Dreams"によって平穏を取り戻す。色々なリズムと温かく豊かな感情性でBonoboらしい幅広いクロスオーヴァーな音楽性ではあるが、しかし滑らかなグルーヴ感によって持続的なダンスな感覚に纏められており、これがDJミックスではあるがおおよそBonoboらしい音楽性が表現されている。この新シリーズにどういった意味が込められているのかまだ分からないものの、幸先が良いスタートを切っている。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(1) | |
Parviz - Zerzura (Omena:OM025)
Parviz - Zerzura
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HNNYやSeb WildbloodにBooks(Hugo Mari)らをリリースし、新興勢力のハウスにおいて存在感を示して台頭してきているスウェーデンはストックホルムのOmena。バレアリックやクロスオーヴァーといった現在形の音を取り込みモダンという表現が相応しいレーベルだが、そこからの最新作はペルシャ系フランス人のAlain-Parviz Soltaniによるもの。Parvizは2017年にFHUO Recordsからデビューしたばかりで、この作品でまだ3作目とまだまだ実力は未知数なアーティストだが、過去にリリースした作品を聞く限りでは生っぽく艷やかなジャジー要素の強いハウスが魅力的だ。本作でもその流れは基本的に変わらずどころか、その路線を完全に手中にしたようで、タイトル曲の"Zerzura"からしてざっくり生っぽいジャジー・グルーヴに官能的で切ないサックスや耽美なエレピを重ねて、甘美なロマンチシズムに浸らせる。サハラ砂漠に存在したという言い伝え上のゼルズーラという幻のオアシスをモチーフにしているそうで、確かに途方も無い広大な砂漠の中で緑が茂るオアシスの楽園的な雰囲気というか、リラックスした空気の中から情熱的な感情が溢れてくる。"Odalisque Au Fauteuil Noir"も感傷的なフェンダー・ローズと抜けの良いコンガのパーカッションによってじんわりと温まり、そこから太いキックも入ってくればディープ・ハウスとラテンが邂逅した情熱的なダンス・ミュージックになり、サックスやオーケストラにピアノも加わってくると壮大さを増して熱帯夜の祭りのようだ。特にジャズ要素が強いのは"Ozymandias & The Shrine Of Abu Simbel"で、開始のジャズ・ドラムと艶めかしいサックスの絡みに魅了されつつ、そこから切れのあるジャジーなリズムは走り出し優しく添えるピアノがしっとり装飾したり、または動きのあるベースが躍動感を打ち出したりと、実にライブ感溢れる構成と生々しい響きでぐいぐいと引き込んでいく。"Lunar Baedeker, Odious Oasis"はアダルトなスムース・ジャズか、甘美な夜を彩る艷やかなトランペットやしとやかなエレピが絡み合い、そして肩の力が抜けた柔らかなリズムが浮遊感さえ思われる軽やかなグルーヴを生む。どの曲も鍵盤系のピアノと木管楽器のサックス等をメインに用いて官能性や情緒性を強調したジャジーなディープ・ハウスで、やや似通った印象が強すぎるきらいがないわけでもないが、それでも一聴して耳を惹き付ける魅力は十分。今後の活躍が楽しみなアーティストだ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Emilie Nana - I Rise - The Francois K Remixes (Compost Records:CPT 527-1)
Emilie Nana - I Rise - The Francois K Remixes
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DJだけではなくアーティストとしても比類なきプロダクション能力を持ったFrancois KevorkianことFranocois K.も、近年は基本的にはDJ業へと専念しており、彼自身の素晴らしい音楽を聞ける機会が減っているのは本当に残念に思うばかり。とそんな所にFranocois K.による久しぶりのリミックス作品が届けられたが、こちらはカメルーン出身でフランスで活動するEmilie Nanaの『I Rise』のリミックス作品。Nanaは主にCompost Recordsで活動するアーティストで、ハウスを軸にしながらブロークン・ビーツやヒップ・ホップ、アフロやダウンテンポといった音楽性を含む幅広さがあり、その意味ではCompostらしいクロスオーヴァーな音楽性を継承している。『I Rise』の原曲も未来感あるエレクトロニックな響きに崩したリズム感のブロークン・ビーツを用いて、クールかつスペーシーな作風が魅力的なものではあるが、そこにFranocois K.の手が加われば完璧なまでのハウス・ミュージックに生まれ変わる。"Francois K Journey Vocal"は歌を残したリミックスで原曲のイメージを変えるというよりは更にスペーシーな世界観を強調した内容で、硬いキックや軽やかなパーカッションを用いた安定感のあるハウス・ミュージックの4つ打ちと透明感のある電子音のリフで引っ張っていくが、無駄な音が無くすっきりした間がより大きな空間性を生んでおり、この音の間を活かした構成がFranocois K.のダブ的空間処理に繋がっている。激しくもなければ緩くもない丁度良いグルーヴ感が走りながら、浮遊感のある音響処理によってまるで宇宙空間を遊泳するような世界観で、10分越えの大作ながらも全く冗長に感じずに何処まで行っても洗練されたエレクトリック・サウンドに魅了される。"Francois K Dub"はその名の通りボーカル無しのインストバージョンだが、そのおかげでパーカッションの心地好い響きや繊細な電子音のメロディーがもっと感じられるようになり、スペーシーなディープ・ハウスとしてミックス向きな印象だ。"Francois K Bonus Beats"はもう完全にツール特化型のリミックスで、ドラムやパーカッションを前面に打ち出したリズムトラックなのだが、骨太なキックのグルーヴ感や爽快なアフロ・パーカッションが弾けており、ダビーな音響空間がとても奥深い。以前に比べ制作面においてはペースは落ちているものの、やはり制作に於ける能力も超一流で流石のFranocois K.と言わざるを得ない。



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| HOUSE14 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Dimitri From Paris & DJ Rocca - Works (Toy Tonics:TOYT 094)
Dimitri From Paris & DJ Rocca - Works
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2012年始動とまだそれ程歴史が長いわけではないが、既にカタログナンバー100に迫ろうとする程の勢いで量産体制を続けるドイツのToy Tonics。ディスコやイタロ、ファンクやバレアリックといった音楽性を包括し多くの次世代タレントによるフロア即戦力なダンス・ミュージックを送り出す人気レーベルの一つだが、こちらはその親レーベルであるGommaなどから素晴らしい相性を披露するパリジャン屈指のディスコDJなDimitri From ParisとイタリアのDJ Roccaのコンピが、過去にリリースした名作群を纏めたその名も正に『Works』。Gomma自体は既に活動を停止してしまったようだが、そこからリリースされていた古い作品は今になって新鮮に聞こえるからと敢えてサブレーベルであるToy Tonicsからそんな名作を纏めてリリースする事にしたそうで、事実ここに収録された曲はどれもキラートラックである事に異論はない。何と言っても目玉は2012年作の"Glad To Know You (Ray Mang's Flying Dub)"で、Chaz Jankelによる80年代ディスコ・クラシックをDimitri From Parisらがカバーした曲を更にRay Mangがリミックスしたものだが、どたどたしたドラムのリズムにゴージャスな響きのシンセコードやオルガン、ファンキーなギターカッティングや綺羅びやかなコーラスワーク、そしてブレイクでの懐かしさ溢れるピアノの展開など何処を切り取っても完全なディスコ・スタイル。一発で耳を魅了するキャッチーさは言うまでもないが、Ray Mangによるダビーな音響処理によってスケール感を増して気持ち良くノックアウトしてくれる。"Ero Disco Theme"は2011年作、こちらはよりアッパーでノリノリなグルーヴ感にスペーシーなシンセで爽快感を出しつつも、安定感のあるベースラインが底辺で主張し、ぐいぐいと力強く押し迫る骨太ブギー・ディスコだ。2012年のHard Tonの曲をリミックスした"In This Moment (Dimitri From Paris & DJ Rocca Erodiscomix)"は原曲はアシッドやシカゴを匂わせる曲調だったものの、リミックスではそんな雰囲気は一掃されディスコな煌めくピアノやシンセを前面に打ち出し、色っぽいファルセットボイスも合わせて随分と甘めのポップなディスコに様変わり。途中から入ってくる朗らかなフルートの旋律なんかも、古き良き時代のディスコを思い起こさせる。また配信のみ2011年作の"I Love New York"を収録しているが、こちらは90年代前後のニューヨーク系のヒップ・ハウスといった印象で、ずんずんと重心の低いグルーヴが揺れつつファンキーなボーカル・サンプルや熱くも妖艶なサックスが彩り、オールド・スクール感が爆発している。流石に名作を纏めただけに全曲素晴らしいディスコ〜ハウスばかりで、何ともお買い得な一枚だ。



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| HOUSE14 | 19:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Gallo - Colori EP (Hell Yeah Recordings:HYR 7201)
Gallo - Colori EP
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イタリアからのモダン・ディスコ/バレアリック系レーベルであるHell Yeah Recordingsは例えば日本で活動するCalmやMax Essaの作品もリリースするなど、そういったグローバルなアーティスト性によって日本でもちょっとした注目を集める実力派レーベルだ。そのレーベルからリリースされたGalloなる聞き慣れないアーティストの新作が思いの外素晴らしいので、是非とも聞いて欲しい。Galloは2018年から同レーベルやSlow Motion Recordsから作品をリリースし始めたベルリンを拠点とするイタリア系アーティストのようだが、元々DJとして活動しつつBalearic Gabba Sound Systemのメンバーの一員でもあるなど、音楽家としては決して新人ではないようだ。さて、この新作だがバレアリック・クラシックとなってもおかしくはない位に開放感があり清涼な空気に満たされるバレアリックな世界観があり、キックレスの"Colori"はきれいめの艷やかなシンセのコードやフレーズと底辺で唸るようなベースラインのみでひたすら平穏な時間が続くアンビエントな感もある曲で、全く汚れの無いピュアな響きが体の隅々まで浄化するようだ。そしてゆったりとリラックスしたリズムを刻む"Sapori"は透明感のあるパッドを伸ばしながら和んだシンセのフレーズで何処までも広がる開放感を演出し、次第に入ってくる優美なピアノのコードが加わるとイタロ・ディスコ的な雰囲気も生まれて、90年代前後のオールド・スクールな時代を思い起こさせる。"Odori"は日本の踊りを指しているのだろうか、崩れたグルーヴィーなリズム感に揺さぶられ郷愁たっぷりなメランコリーなメロディーは、海辺の夕日が落ちてオレンジ色に染まっていく時の切なさを誘う。そして何とバレアリック・レジェンドの一人であるChris Cocoもリミキサーとして参加しており、"Colori (Chris Coco Deep Space Version)"は原曲のイメージを変えるのではなく、リバーブ系の残響を用いる事で視界が揺らぐ音響を作り、身も心も全てが自然の中に融解していくような心地好い白昼夢状態を生み出している。全曲見事にバレアリック仕様、特にイビサ系の自然を感じさせるバレアリック代表のMark Barrott辺りとも共鳴する音楽性で、これは要注目な存在だ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Specter - Built To Last (Sound Signature:SSCD13)
Specter - Built To Last
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近年は主宰のTheo Parrish以外のアーティストによる作品を積極的にリリースし、それによって音楽性の拡大を成し遂げているデトロイトの重要レーベルであるSound Signature。本作はそのレーベルから2018年8月にリリースされたアルバムで、手掛けているのはシカゴ出身のAndres OrdonezことSpecterだ。過去には同レーベルより2010年に『Pipe Bomb』や2012年作の『The Gooch EP』がリリースされており、Parrishの御眼鏡に適った人材である事は明白だ。2000年の初頭からリリースを開始しているもののそれは散発的であり、デトロイトという才能が集まる場所に於いてもその知名度は大きいものではなかったが、このキャリア20年にして初となるアルバムで(レーベルの後押しもあって)その存在感ははっきりとしたものになるに違いない。過去のEPは色味が無く錆び付いた音響のロウ・ハウスであったが、その流れは基本的に変わらずにシカゴ・ハウスの簡素なマシン・グルーヴに仄かに燻るようなデトロイトの叙情性が一つとなったダウンビートなハウスが中心で、レーベル性でもあるブラック・サイケデリアにも沿っている。アルバムは安っぽい音響の簡素なリズムマシンのロウなビート感に不気味なボーカル・サンプリングをループさせ、闇の中にくすんだような上モノが微かに持続する"What Else You Do"で始まる。続く"Under The Viaduct"ではチキチキとしたハイハットと金属的なパーカッションに鈍いベース音が目立つしっとり目のディープ・ハウスで、薄っすらと浮かび上がる幽玄なシンセには燻るように燃えるエモーショナル性が感じられ、剥き出し感あるシカゴのローファイな音響ながらもじんわりと肌に染み込む感情性がある。奇妙な電子音響とカチカチとしたシンプルなリズムの"0829 Fifty Fifty"は鈍くずぶずぶとしたアシッディーなベースも相まって、混沌からトリッピーかつサイケデリックな雰囲気が生まれているが、ピアノの和やかなコードによってディスコな感覚も伴っている。一方で"Not New To This"は彼の初期の作風を踏襲したクラシカルかつメロウなディープ・ハウス性が強く、コンガのからっと爽快な響きや滑らかなビート感に情緒的なシンセや闇夜に映えるピアノを被せて、エモーショナルな漆黒のデトロイト・ハウスそのものだ。しかしやはり近年のSpecterの音楽性を表すのは、例えば"Tamarindo"のようにドタドタとした辿々しいリズムマシンのビートと鋭利なハイハットが激しく刻まれ、オルガンのミニマルなフレーズを用いて混迷とした雰囲気の中を突き進む衝動剥き出しのロウ・ハウスのような曲ではないだろうか。シカゴ・ハウスの荒くもタフな音響を受け継ぎビートダウン・ハウスによって混沌としたサイケデリック性を見せるSpecterは、Parrishが確立させた音楽の継承者と呼んでも差し支えないだろう。



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| HOUSE14 | 16:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Smallpeople - Afterglow (Smallville Records:SMALLVILLE CD 12)
Smallpeople - Afterglow
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それがテクノであれハウスであれ、情緒の深遠にいるようなムーディーでジャジーな音楽性を特に発揮するハンブルクのレコードショップ兼レーベルであるSmallville Records。Smallpeopleはその運営に関わる数人の内、Julius SteinhoffとDionneことJust von Ahlefeldから成るユニットで、そもそもどちらもソロで同レーベルより例えばデトロイトのエモーショナル性やシカゴ・ハウスのシンプルな作風と共鳴する作品をリリースしており、その両者が手を組めば派手ではなくともじんわりと心に染み込んでいくディープ・ハウスになるのは当然で、これこそSmallvilleの音そのものである事に異論は無いだろう。決して盛んではない活動のため2012年の1stアルバムである『Salty Days』(過去レビュー)から7年ぶりとなった本作は、しかしその長い時間が経過しても作風は大きく変化する事せずSmallpeopleらしさを貫いている。淡々とした乾いた4つ打ちのキックと退色した灰色の世界観の中から情緒的なピアノのコードが浮かび上がり、ダンスのグルーヴではあるが丁寧に聞かせるディープ・ハウスである"Magic Interference"でアルバムは始まり、すっきりとした間を残して硬めの跳ねるキックでシカゴ・ハウス風なグルーヴにうっとりするエモーショナルなシンセの上モノに心惹かれる"Hearts At Whole"、シャッフル調ながらもスムースなビート感で躍動し透明感のあるシンセで上品に彩る"All States Of Dawn"と、冒頭の3曲からして如何に無駄な音を削り落としながら洗練されたグルーヴと端正なメロディーやコードを用いて丁寧な作りをしているかは感じ取れる筈だ。アルバムの中ではやや癖がある"Beyond"はラテン風なパーカッションやベースラインが目立つが、それと共に催眠術のような幻惑的な上モノが酩酊感を生み、ダンスフロアでも上げ過ぎる事なくふらふらと揺らしてくれるであろうディープ・ハウスだ。そして力強いハウスのリズムを刻んでデトロイト・テクノ的な望郷の念が馳せる幽玄なパッドを配した"Sonic Winds"は、途中から希望に満ちた鍵盤のコードも加わって滑らかなグルーヴに乗って何処までもエモーショナル性が伸びていく。そして最後の落ち着きのある滑らかなリズムと静けささえも感じさせる静謐なシンセで包み込む"Afterglow"は、繊細さもあるダビーな音響によって深く潜っていくようだ。全体を見ても突出した真夜中を盛り上げるキラートラックらしき曲は一つもなく、ひたすら淡々と過剰になる事なくすっきりした音の構成で丁寧に聞かせるディープ・ハウスに忠実で、その洗練されたムーディーな世界観も決してスノッブではなく一歩引いた控えめな上品さこそ彼等の特徴だろう。



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