2019/8/23 Hi-TEK-Soul @ Contact
デトロイト第一世代の中でも最もDJとして精力的に活動するDerrick May、そんな彼によるテクノソウルを表現するパーティーがHi-TEK-Soulだ。DJとしての精力的な活動は言うまでもないが、近年はちょくちょくと自身で主宰するTransmatの運営にも力を入れており、忘れた頃にレーベルから新たなる才能を送り出したりもしている。そんなレーベルからIndio名義でアルバムもリリースした事もあるデトロイト第二世代の一人であるJohn Beltranも、Derrick同様にエモーショナルなテクノソウルを持つアーティストであり、その幻想的なアンビエンスは特に稀有な個性だ。今回Derrickと共に出演するBeltranはアンビエントセットを披露するという事前情報があり、そんな点でも興味深いパーティーになっている。
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| EVENT REPORT7 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
LSD - Second Process (LSD:LSD 001)
LSD - Second Process
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何ともいかがわしいユニット名はクラブシーンに蔓延る危うさを匂わせるが、実はLuke Slater(Planetary Assault Systems)とSteve BicknellにDavid Sumner(Function)というハードテクノやミニマルにおける重鎮が手を組んだスペシャルプロジェクトで、3人の名前の頭文字がユニット名となっている。Planetary Assault Systems名義では骨太でファンキーかつハードなテクノを展開してきたSlater、UKにおけるミニマル・テクノの先駆者であるBicknell、そしてFunction名義でディープな音響も活かしたテクノで魅了するSumnerと、それぞれがテクノというジャンルにおいて自分のポジションを確立したアーティストである。そんな彼等によって2016年にベルリンのBerghainにおけるライブからユニットは姿を現し、そして2017年にはOstgut Tonから初の作品である『Process』をリリースしていた。その後もヨーロッパの大きなフェスやクラブでライブを披露し経験を積んだ上でリリースされた本作は、アナログでは2枚組となる十分なボリュームでこれでもかとフロアでの機能性に特化したミニマルかつハードなテクノが繰り出されている。基本的には良い意味では作風は統一されているので金太郎飴的な印象にはなるのだが、ヒプノティックな上モノのループと肉体を鞭打つ刺激的なキックによる疾走感に金属的な鳴りの音響を被せた"Process 4"だけ聞いても、このユニットのダンスとしてのグルーヴ感や麻薬のようなサイケデリックな覚醒感を重視した音楽性を追求しているのは明白だろう。"Process 5"ではより鈍く唸るような低音の強いキックやベースラインのファンキーな空気はBicknellの個性を感じさせるし、"Process 6"のFunctionらしいヒプノティックなループやSlaterらしい骨太なリズムパートを打ち出して勢い良く疾走するハードテクノは全盛期のJeff Millsを思わせる程だ。"Process 7"の電子音ループは正にMillsらしいというかスペーシーな浮遊感があり、その下では地面をえぐるような怒涛のキックが大地を揺らして、その対比の面白さと共に爽快な高揚感に包まれる。得てして音楽におけるこういった特別なプロジェクトは、各々の大きな知名度とは対照的に各々の個性が上手く活かされず凡作となる事も少なくはないが、このプロジェクトに限って言えば期待を裏切る事は全くなく、それどころか甘ったるさ皆無のハードなテクノが痛快でさえある。近年はハードな音楽を聞く機会が減った筆者にとっても、この刺激的なテクノが眠ったテクノソウルの目を覚まさせる。



Check Luke Slater, Steve Bicknell & Function
| TECHNO14 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Seb Wildblood - Sketches Of Transition (All My Thoughts:AMT010)
Seb Wildblood - Sketches Of Transition
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テクノ/ハウスの境界を越えていくモダンなChurchにAll My ThoughtsとCoastal Hazeと、3つの勢いを増す注目すべきレーベルを並行して運営するSeb Wildbloodは、音楽への審美眼を含めてA&Rとしての才能は疑うべくもない。では自身をプロデュースする手腕について、つまりは自身のアーティスト性の確立についてはどうだろうか。勿論その才能についてもまごうことなきもので、目下最新EPである『Grab The Wheel』(過去レビュー)では彼らしいバレアリックやアンビエントの感覚に、テクノやエレクトロの要素を加えてダンスな性質を強めた方向性も見せて、現在もアーティストとして進化中である事を示していた。そして4枚目となるこのニューアルバム、決してダンスではないとは言わないがリスニング志向が強く、そして何よりも多彩なリズム感とムードによる音楽性の拡張を果たしつつ温かみのあるオーガニック性や純朴なバレアリック性が通底している。チャカポコとした抜けの良いパーカッションと切ないシンセのメロディーが印象的な生っぽくスローモーなハウスの"Sketches"で始まり、ディレイをかけたギターや生っぽいベースを用いて広大な開放感を感じさせるダウンテンポの"Twenty Eight"、繊細ながらも耽美なエレピや甘ったるく気怠い歌が陶酔させられざっくりとしなやかなにうねるリズムを刻むネオ・ソウルの"Thought For Food"と、アルバム冒頭3曲からしてまったりメランコリーな雰囲気が充満している。"Small Talk"はアルバムの中では比較的一般的なディープ・ハウス色が強く、すっきり端正なグルーヴと透明感のあるパッドや電子音によって、快適な浮遊感に包まれながら優雅さに酔いしれるだろう。また力が抜けて気怠い歌とポップなサウンドで懐かしさを呼び覚ますシンセ・ポップ/ニューウェーブ寄りの"Amelia"、電子音が抽象的に揺れ動き空間を満たしながら微睡み状態が続くビートレスなアンビエントの"One For Malcolm"まで、アルバムには実に様々な要素が混在しながらバレアリックなムードで統一されている。パーティーの派手派手しい華やかさや喧騒とは無縁で決して熱狂的な興奮を呼び起こすような音楽ではないが、心の中からしみじみとしたメランコリーを呼び覚まし現実ではない何処かへ連れて行ってくれるこの音楽は、安らぎを提供するセンチメンタル・ドリームだ。10曲で40分とコンパクトな構成ながらも、逆にすっきり気軽に聞けてリラクゼーションにも最適である。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Studio Mule - BGM (Studio Mule:Studio Mule 18 CD)
Studio Mule - BGM
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今や世界レベルでの重要なレーベルとなった日本のMule Musiqが、ここ数年再燃する日本の音楽にターゲットを合わせて、クラブ・ミュージックからは少し距離を置いたStudio Muleを設立したのが2017年の暮れ。それ以降、日本のシティポップのコンピレーションや日本のジャズやフュージョンにアンビエントの名作を復刻してきたが、並行してレーベル名を冠したStudio Muleというプロジェクトも進めていた。これはレーベル主宰の川崎氏によれば「特定のメンバーを持たないユニット」による「オブスキュアな日本の名曲のリワーク」を目的としているそうで、今までにもDip in the Poolの甲田益也子をボーカルに起用しMule Musiq代表格のKuniyuki Takahashiがプロデュースを手掛けて、大貫妙子による"カーニバル"を含むカバーEPの3枚をリリースしていた。懐かしい時代感を含む国産ポップスはその空気を壊さずに現代版へと生まれ変わり、昔からそれらに魅了されていた人にとっても今新たにシティポップにはまっている人にとっても、それは新鮮な風が吹くシティポップとして新しい魅力となって聞こえるものだった。その流れからのアルバムは、前述の甲田に加え渋谷系元祖と呼ばれる佐藤奈々子やシンガー・ソング・ライターの寺尾紗穂も迎えて、全てが名作カバーと呼んでも差し支えない程に充足した内容になっている。小池玉緒による"鏡の中の十月"はなんとYMO名義では唯一のプロデュースだったそうだが、ここではそのときめきテクノポップな雰囲気は損なわずに滑らかなビート感と音の厚みを増しながらも洗練したクリアな響きとなり、確かに古き良き時代感覚はありながらも今風という表現が相応しいアレンジだ。また、甘美な囁きのウィスパーボイスが特徴的な佐藤の歌も胸キュンキュンで、テクノポップなトラックに上手くはまっている。近年再発が成された山口美央子の"夕顔"はオリジナルはアンビエント・テイストの強い歌だったが、ここではエレクトロニック性を強めつつダビーな音響で奥深さも生まれており、そこに寺尾の悲壮感さえもある歌が切なさを増幅させる。そしてなんとYMOの"バレエ"のカバーまで収録されているのはテクノファンにとっては嬉しい限りだが、こちらも原曲のアンニュイで陰鬱な空気はそのままにリズムはやや力強さを覚え跳ねており、シンセベースも太みを増してファンキーなうねりとなるなど、現在のダンス・ミュージックに長けたKuniyukiの手堅いプロダクションが見事だ。大沢誉志幸のヒット曲である"そして僕は、途方に暮れる"はインストカバーだが、そうした事で清々しくも甘酸っぱい青春を感じさせるシンセのメロディーやアタック感の強い打ち込みリズムが明確に打ち出され、現代的に言えばバレアリックとでも呼ぶべきなのか、都会のネオンに囲まれたクリスタルな気分の多幸感に溢れる曲になっている。勿論前述の先行EPである"カーニバル"に"心臓の扉"や"Face To Face"も収録と、全てが名曲以外の何物でもない素晴らしいリワークが並んでおり、ジャパニーズ・アンビエントやシティポップのリバイバルの流れに乗った見事なプロジェクトだ。リミックスのようにリミキサーの新たな個性で塗り潰す如く手を加えるでもなく、シティポップをそのままシティポップとして現代風に解釈しているが、それはオリジナルへの愛が故だろう。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Hallo Androiden (Blue Arts Music:BAMCD005)
John Beltran - Hallo Androiden
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20年以上にも及ぶ音楽活動において、今間違いなく第二の春を迎えているJohn Beltran。デトロイト第二世代の中でも特にアンビエント性が強く美しいハーモニーによる情緒的なテクノに長けたこのアーティストも、しかし2010年前後の作品は今思うとどこか吹っ切れずに迷いが感じられ、活動初期に於けるデトロイト・テクノ×アンビエントな音楽性に魅了されたファンにとっては物足りなさが残っていただろう。がここ2〜3年の復調は目を見張るものがあり、大らかなアンビエントを展開するシリーズの「The Season Series EP」や今年3月に発売されたPlacid Angles名義の22年ぶりのアルバム『First Blue Sky』(過去レビュー)等でも初期作風である叙情性豊かなアンビエンスや躍動するブレイク・ビーツやジャングルまでの多彩なリズム感が復活し、ファンにとっては待ち望んでいたBeltranらしさを感じていた者は多いだろう。そしてこのBeltran名義の新作だ、何と日本のインデペンデント・レーベルである福岡のBlue Arts Musicから世界に先駆けてリリースとなったが、その内容もこれこそBeltranと呼ぶべき夢のような素晴らしきアンビエントな世界が広がっている。前述の『First Blue Sky』はどちらかと言えばブレイク・ビーツを多用しダンス性を強調していたが、本作はメロディーやハーモニーの甘美なまでの美しさを強調しており、その分だけ陶然と酔いしれる魅力が溢れている。オープニングの"Alle Kinder"は牧歌的なシンセのリフレインと幻想的な呟きを反復させ、詰まったリズムのキックでじっくりとこれから待ち受けるドラマの幕開けを展開するようにじわじわと盛り上げ、アルバムの雰囲気をリスナーに知らせる。続く"A Different Dream"はキックレスの完全なアンビエントだが、躍動するシンセのシーケンスと壮大なパッドによる叙情性爆発な世界観はTangerine Dreamのコズミックな電子音響を思わせるところもあり、リズム無しでも脈動する感動を呼び覚ます。軽快に連打されるリズムが爽快な"Himmelszelt"はシンセの旋律も軽い躍動感を伴い揺れ動き、やや陽気なラテンフレーバーもあるダンス・トラックだ。ヒスノイズらしきチリチリとした音響の奥からぼんやりとしたドローンや素朴なアルペジオが浮かび上がる"One Of Those Mornings"はビートレスな夢幻のアンビエントで、続く"It's Because Of Her"も同様にビートレスで天上から光が降り注ぐようなシンセと荘厳なストリングスの掛け合いは祝祭感があり、この世とは思えない美しさは桃源郷か。勿論"Perfect In Every Way"のように複雑なブレイク・ビーツで踊らせるダンス性の強い曲にも魅力があり、豊潤なシンセの響きがあり底抜けにオプティミスティックな雰囲気としなやかに刻まれるリズムで、心身を快活にさせてくれる。完全にBeltranの初期の作風が復活した本作に対し否定的な意見など出て来る筈もなく、この夢に溺れてしまう麗しい甘美なアンビエント・テクノの前には称賛以外の言葉は見つからない。ただひたすら、この世界は美しい。



Check John Beltran
| TECHNO14 | 08:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |