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Gonno & Nick Hoppner - Lost (Ostgut Ton:O-TON 124)
Gonno & Nick Hoppner - Lost
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2016年の初コラボレーション作である『Fantastic Planet』(過去レビュー)で互いの魅力を損なわずに相乗効果として作用させ、最高の相性を見せたGonnoとNick Hoppner。コラボレーションという行為が時として単に注目を集めるだけ企画となり、期待外れの結果となる事は少なくないが、彼等があれから3年を経て再度のコラボレーションを果たす事は当然それだけの充実した手応えを感じていたに違いない。前作ではハードウェアを用いた素朴な質感でディープ・ハウスにブレイク・ビーツやバレアリックといった要素を曲毎に表現し、かつDJツールの機能性も意識した上でメロディアスな彼等の特徴を活かした曲調で、二人の融合が確かに感じられていた。そして新作も大きな路線変更は無いのだが、しかし12分にも及ぶ"Bangalore"は特にダンストラックとして眼を見張る素晴らしい曲だ。長い尺の中で色々な展開があるのだが、始まりはテケテケとしパーカッションが鳴る中にぼんやりとした鐘のような音が瞑想的で、少しずつ美しいシンセのレイヤーとダビーな電子音響が現れてくるとキックも4つ打ちを刻み始めて、疾走感を得たダンストラックの構成へと遷移する。コズミックなメロディーが叙情性を発しつつも、重層的なフレーズが奥深さと複雑さとなり、色々な時間帯で予測不可能な構成変化を見せてドラマティックに盛り上がっていく。削ぎ落とすのではなく逆に様々な音が付け加えられ華麗に装飾されていくような曲は、だからといってけばけばしくなるのではなく綺麗さを保ち、終盤では微かにアシッド・サウンドもトリッピーな効果音として用いられて、12分にも渡るこの曲は鬱蒼とした闇を振り払うかのような希望を掴むような世界観がある。B面の2曲の方はより前作の路線に近いだろうか、ねっとりとしたブレイク・ビーツ風のダウンビートの"Love Lost"は浮遊感のあるシンセコードにヒプノティックなメロディーを掛け合わせてディープかつサイケデリックな音像を生み出して、ゆっくりとしたテンポだからこそじわじわと深く沈み込んでいくようだ。対して"Start Trying"はアップテンポで意気揚々と跳ねるリズム感で、そこに美しく透明感のあるシンセを伸ばして飛翔するような浮遊感を得るテックハウス調の曲で、輝かしい光に包まれ如くポジティブなダンスフロアの空気が封入されている。どれも前作以上にフロアを意識しながらも、GonnoとHoppnerのメロディアスな旋律やリズムの豊かさが発揮されたテクノ/ハウスで、期待に応えてくれた素晴らしいEP。この流れで是非ともアルバムもと欲張りな期待を抱いてしまう。



Check Gonno & Nick Hoppner
| TECHNO14 | 20:00 | comments(0) | - | |
Jonny Nash / Suzanne Kraft - Framed Space : Selected Works 2014 - 2017 (Melody As Truth:MAT12)
Jonny Nash  Suzanne Kraft - Framed Space Selected Works 2014 - 2017
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2000年代にニュー・ディスコの流れにも呼応していた日本のコズミックなバンドのDiscossessionの一員でもあったJonny Nashは、その後拠点をアムステルダムに移しLand Of LightやGaussian CurveにSombrero Galaxyといった複数のユニットでの活動によりダンス・ミュージックの枠組みを越えてニューエイジやアンビエントへと接近し、その自身の音楽性を表現する場として2014年にMelody As Truthを設立している。レーベル初期の活動は自身の作品と共に、ロサンゼルス出身でアムステルダム在住のDiego HerreraことSuzanne Kraftの作品で占められており、2013年の邂逅以降互いの音楽性に共感した彼等は2020年の現在に至るまで度々コラボレーションも果たすなど、音楽的な相性の良さは言うまでもないだろう。両者のバイオグラフィーについてはライナーノーツに詳細が記載されているので、是非本作を購入した後に読んで頂きたいが、さてこのアルバムはそんなレーベルにとっての第一章を締め括るような内容だ(2017年以降レーベルはニューカマーも送り出している)。Nash側からは『Phantom Actors』と『Exit Strategies』に『Eden』(過去レビュー)、Kraft側からは『Talk From Home』と『What You Get For Being Young』(過去レビュー)からそれぞれ選りすぐられ、かつ未発表曲も加えたMATの初期のマイルストーン的な内容で、現在再評価が著しいアンビエント/ニューエイジにおいても現在形のという意味で非常に重要なコンピレーションだ。二人の静けさが生み出す抒情的な美しさや淀みの無い牧歌的なムードなど音楽性に大きな乖離があるわけではないが、ギタリストでもあるNashはやはりギターサウンドが主張しており、Kraftの音楽は曲によってはクラブミュージック的なリズムも聞こえたりと、本作ではそれぞれの個性も聴き比べする事が可能だ。初期のNashの音楽は特に美しく、透明感のあるシンセのレイヤーとゆっくりと滴るように静謐なピアノを用いた"A Shallow Space"は後半では遠くで響くようなギターもゆったりと広がっていき、ここではない何処かへと連れて行く牧歌的なアンビエントにいきなり魅了される。時代によって音楽性にも変化はあり、ギターのコードとレイヤーを前面に打ち出して有機的な音色を強調した"Exit One"はコンテンポラリー・ミュージックとでも呼べばよいだろうか、気負わずに肩の力が抜けてリラックスした気分に心が落ち着く。そしてバリ島での録音に至った頃の曲である"Conversations With Mike"ではツィターやガムランのベルも用いられ、より深い木々が茂る自然世界から発せられるスピリチュアルなムードも強くなる事でニューエイジへと傾倒している。対してKraftは"Two Chord Wake"ではヒップホップ調のリズムと共に水彩画のような淡い響きが美しくあるが、メランコリーでありながら大空の下で陽気に戯れるような、ダンス・ミュージックの影響を残す曲調もある。勿論"Flatiron"のように胸を締め付けるような切ないギターと微かに響く繊細でジャジーなリズムで、内省的でしっとりとした抒情に染める曲もあれば、朧気なドローンによって抽象性を高めながらも生っぽいベースやギターがオーガニックな温かみを生む"Body Heat"など、静謐なアンビエントやニュー・エイジを軸に電子音とオーガニックを共存させて、深く深く内なる精神世界への瞑想へと誘うようだ。それぞれ元々はアナログで販売されていたものが、このようにCDで編纂されて纏めて聞く事でMATというレーベルの方向性を理解出来る点でも価値あるものだが、それを抜きにしても二人の静けさの間から生まれる素朴な美的感覚の魅力は昨今のアンビエントの中でも群を抜いている。



Check Jonny Nash & Suzanne Kraft
| ETC5 | 18:00 | comments(0) | - | |
Satin Jackets - Solar Nights (Eskimo Recordings:ESK510720CD)
Satin Jackets - Solar Nights
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2016年の初アルバムである『Panorama Pacifico』(過去レビュー)で、都会のキラキラとしたネオンライトのような眩さに包まれる多幸感に満ち溢れたニューディスコを展開し、洗練された艶やかさを持つそのサウンドはバレアリックでもあり、そしてモダンなシンセ・ポップでもありと、何処かで聞いた事のあるような懐かしくロマンティックな世界観が素晴らしかったSatin Jackets。ドイツ人であるTim Bernhardtによるこのプロジェクトは2010年に開始したのだが、本記事を書くに当たって調べてみたところ実はBernhardt自身は90年代後半から複数のユニットでずっと活動を続けていたようで、ならば歴史の浅いSatin Jacketsの音楽が非常に円熟味があったのも当然の事だと今になって理解した。アンダーグラウンドな方面でも活動していたBernhardtが、しかし人生において愛し続けていたディスコを探求すべくChicやNile Rogersのような艷やかな音楽性を目指して立ち上げたプロジェクトがSatin Jacketsでそうで、それらを今という時代にアップデートさせる事に成功したこの音楽はモダン・ディスコを象徴している。アルバムは帰還を示すであろう"Welcome Back"で始まるが、哀愁たっぷりなピアノコードと切ないギターカッティングを用いた滑らかに溶けていくようなミッドテンポのディスコは、もうこの時点でアルバムが夢のようにロマンティックな世界観を示しており安心させられる。続く"Just Like You"はややR&B風というかしっとりしたリズムと愛らしい女性の歌を起用しつつ、クリアで光沢感のあるシンセを用いて色彩豊かなポップ性を表現したミッドテンポなシンセ・ポップ。そして爽やかかつ甘く誘うような男性ボーカルを起用した"Automatic"、滑らかな落ち着いた4つ打ちに流麗なピアノコードと美しく幻想的なシンセパッドを合わせて、うっとり陶酔させられるニューディスコはあまりにもスムースで心地好い。"Northern Lights"はDavid Harksをボーカルに起用して大ヒットした先行EPの一曲で、オーロラで知られるノルウェーの美しさに影響を受けて制作されたそうで、確かに爽やかなギターカッティングと共に美しい幻想的なシンセのパッドとほんわか温まるコードを重ねて、開放感あるバレアリックな作風と親近感のあるポップな雰囲気一つなった晴れ晴れしいニューディスコとなっている。大半の曲でボーカリストを起用し作風はおおよそ統一されているのだが、"All For You"のようにインスト曲だとエレクトロニックなシンセベースに対して耽美に染めるピアノや美しく伸びるシンセパッドがしっとり綺麗に装飾をするのが明確に分かり、より曲自体の情緒的でドラマティックな構成を感じ取れる事だろう。ゴージャスかつポップながらも淀みの無いクリアな響きのモダン・ディスコは、何処を切り取っても色鮮やかなドリーミーさとロマンスがあり、その人工的な甘味料たっぷりのような甘い世界に没入せずにはいられない。古いクラシカルなディスコのファンは本作についてどう感じるだろうか、しかし表面的な音に違いはあれどこれも間違いなくディスコであり、華やかで感情性豊かな音楽として聞いてみて欲しい。



Check Satin Jackets
| HOUSE15 | 12:00 | comments(0) | - | |
Silvestre - Silvestre Is Boss EP (Secretsundaze:SECRET026)
Silvestre - Silvestre Is Boss EP
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およそ2年間の間リリースの無かったSecretsundazeが2019年の中頃に再始動し、複数のEPをリリースしているが、その内の一枚がリスボン生まれでロンドンを拠点に活動するSilvestreによるものだ。本作の前には東京のレーベルであるDiskotopiaから『Girar』(過去レビュー)をリリースしており、テクノ/ハウスの中に雑食性の強い幅広い要素を取り入れた音楽性を披露して、国境やジャンルの境目を乗り越えるユニークな音楽性が魅力的だ。だからこそ少なからずディープ・ハウスをコンセプトにしたSecretsundazeからリリースされたのは意外な感もあるが、実は同レーベルは2015年頃からテクノやブレイクビーツに目を向けた新たなラインであるSZEも立ち上げており、その両者の溝を埋める意味では本作はなる程と思えなくもない。EPはイントロと題された2分程の"Jumping Intro"で始まるが、気怠く緩いブレイク・ビーツとダーティーなベースライン、そして訝しい呟きを用いて不良っぽく悪びれた感がこれから盛り上がる予兆を匂わせる。続く"Lights"も揺れるブレイク・ビーツを用いているがややリズムは軽くなる事で浮遊感を会得しつつ、やや情緒的でありながらも不明瞭な旋律の上モノを用いる事でアブストラクトな雰囲気を作り、そして"Fuego"では更に太いキックやスネアが弾ける如くパワフルなリズムを刻んで、そこに効果音的にトリッピーな電子音を散りばめながらけばけばしくもエネルギッシュなレイヴ風に仕立て上げいる。小刻みながらも金属的な鳴りのリズムが退廃的に響く"Paying The Rent"は、チョップ風のアシッド・ベースと唸りのようなボイスサンプルも用いて、ハードな質感ではないものの暗く不気味な雰囲気が闇のダンスフロアに適しているだろう。またニューエイジ・ハウス方面で名を馳せるD.K.がリミックスした"Fuego (D.K. Remix)"は、完全にD.K.のその音楽性に染まっており、原曲のブレイク・ビーツから4つ打ちへと姿を変えながらも宗教的というかスピリチュアルな佇まいが、パワフルなダンストラックでありながら深い瞑想を誘う。激しい直球ダンストラックというわけではないが、本作ではどれもブレイクビーツによる揺れるリズムを活かしつつレイヴの悪っぽい雰囲気がダンスフロアのドラッギーな感覚を思い起こさせ、Silvestreが何でも咀嚼する懐の深さを持ちつつそれらを享楽的なダンスへと仕立てる才能を持っている事を証明しているのだ。



Check Silvestre
| TECHNO14 | 19:00 | comments(0) | - | |
Pablo Valentino - Space Tribe (Eureka!:ERK005)
Pablo Valentino - Space Tribe
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世界的に評価を獲得した日本人のDJやアーティストは増えつつあるも、一方でアーティストを送り出すレーベルとしてはまだまだ充実していないと感じる事は少なくないが、そんな状況で"Quality House Music Never Betray"を掲げて活動するEureka!は注目すべき存在だ。Midori Aoyamaらを中心としたグループは2012年頃から同名のパーティーを立ち上げ海外から新進気鋭のアーティストを招致し、若手のハウスミュージックシーンで確固たる存在感を作り上げていた。2015年にレーベルを立ち上げるとLocal Talk周辺のアーティストによる生音強めなハウスを取り上げて、ソウルフルかつジャジーな路線で良質な音楽を提供し続けているが、この2019年の最新作はフレンチ・ハウスにおいて強烈な存在感を示すMCDEやFaces Recordsを主宰するPablo Valentinoによるものだ。予てからブラック・ミュージック性の強いハウスを手掛けてきたValentinoだが、ここではFaces Records繋がりのKez YMやクロスオーバーな音楽性を持つSimbadともコラボレーションを行い、それぞれのアーティストの個性を取り込みながら生音重視な情熱的なハウスを披露している。Kez YMとの共同制作である"Bananas"は軽やかなパーカッションとズンドコと端正な4つ打ちキックにKez YMらしいファンキー性が現れているが、そこに訝しいオルガンと対照的に流麗なエレピやシンセのコードが色鮮やかにエモーショナル性で彩っていき、生音の温かみあるグルーヴが骨太ながらもエレガントでもある。"Inspiracao"はぐっとテンポを落ち着かせたダウンテンポやヒップホップを意識した曲で、湿り気を帯びたような粘りあるロービートに上モノはストリングスや鍵盤が繊細に控えめな優美さを醸し、ダンスの踊り疲れた後のほっと一息つけるようなチルアウト感覚がある。Simbadをフィーチャーした"Space Tribe"もパーカッションが軽やかなリズム感を刻んでいるが、ブロークン・ビーツやジャズ性の強いしなやかなリズム感が特徴で、そこに切なくスペーシーなシンセが緩やかなメロディーを描きながら優美さと情熱を兼ね備えた大人びた響きとなり、リラックスしたムードの中でラグジュアリーな一時を感じられる。Valentinoのブラック・ミュージックへの深い理解が複数のスタイルで表現されており、アーティストとして(特に日本では)もっと評価されるべきと常々思わせられる。



Check Pablo Valentino
| HOUSE14 | 18:00 | comments(0) | - | |