Bartosz Kruczynski & Poly Chain - Pulses (Into The Light Records:ITLIntl02)
Bartosz Kruczynski & Poly Chain - Pulses
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2019年にEarth Trax名義ではEP2枚、そして本人名義では本作を含めてアルバム3枚をリリースと精力的な活動を行うポーランドのBartosz Kruczynski。複数の名義を用いて幅広いジャンルの音楽を手掛けているが、この本人名義では過去にはGrowing Binからアルバムをリリースしており、ニューエイジやアンビエント再燃のムーブメントの中でモダン派アーティストとして頭角を現している。そしてこの新作、ギリシャ産の辺境音楽の発掘に力を入れるInto The Light Recordsからの珍しくギリシャ産音楽ではないリリースとなり、Kruczynskiと同じくポーランド出身のエクスペリメンタンル・ミュージックを手掛けるSasha ZakrevskaことPoly Chainとの共作となっている。本年度のアルバムである『Baltic Beat II』(過去レビュー)もニューエイジ路線という点では同じもののフィルド・レコーティングも用いたオーガニックな響きを打ち出していたのに対し、本作は彼等がライブで行った経験を元に複数のアナログシンセを用いてセッション的に制作された内容だそうで、その点で電子音響性の強いアンビエントが中心になっている。オープニングは霧のようなドローンが持続する"Jacana"、幻想的な雰囲気の中からシンセのアルペジオが浮かび合ってきて、キックレスではるものの次第にアシッド風に変化するシンセが快楽的なグルーヴを生む。続く"Solacious"もアナログシンセの微細な揺らぎが抽象的なアンビエント性となっているが、次第に壮大なシンセのシーケンスも加わってくると70年代の電子楽器を用いたエクスペリメンタルなジャーマン・プログレと共鳴した、例えばTangerine Dream辺りを思い起こさせる壮大なメディテーション世界へと突入していく。一方で序盤はぼやけたドローンの音像が続いてから、次第に電子音の反復がメランコリーを誘う"Quietism"は安らぎに満ちたアンビエント性があり、桃源郷へと誘うような叙情的な電子音のレイヤーは余りにも切ない。"Fluxional"はアルバム中最も刺激的な曲で、ボコボコとしたリズムと神経を逆なでするエグいアシッド・サウンドがこれだもかと脈打ち、キックレスではあるもののダンス・フロアでも興奮を呼び起こすであろうドラッギーな一曲。そこからラストの"Echolalia"では微睡むようなシンセのレイヤーが叙情的で色彩豊かな風景を描き出しつつ、徐々にそれらが溶け合いながら静かに霧散するドラマティックな流れで、安静を取り戻してアルバムは綺麗に幕を下ろす。Kruczynskiらしい情緒豊かなアンビエント性、そしてZakrevskaの前衛的なドローンが一つなり、電子音響の海が広がる現在形ニューエイジ/アンビエントとして見事なアルバムだ。



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| ETC4 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
S3A - Pages (Dirt Crew Recordings:DIRT118)
S3A - Pages
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2012年頃にデビューをしていたのでそれから7年、本当に待望のという表現が相応しいSampling As An Artを名乗るS3Aによる初のアルバムが到着。その名の通りサンプリングを武器にしたハウスの中に、ディスコやファンク、ヒップ・ホップやソウルといった要素も込めて、華々しい曲から湿っぽいビートダウン風までそのどれもフロア志向でダンサンブルな曲を大量にリリースしており、Local TalkやQuintessentialsにEureka!といった著名なレーベルのカタログに名を連ねる実績からも分かる通り人気者かつ実力者である。このアルバムでは今までの音楽性を一纏めにした集大成と呼べる今まで咀嚼してきた音楽性が各曲に混在しており、アルバムというフォーマットだからこそ表現力を存分に発揮したであろうバラエティーに富んでいる。冒頭の"Fever"は生々しく温度感のあるベースラインが効果的なファンク色強いハウスで、Zazというバンドのメンバー(Nicolas Taite、Pierre Vadon、Raphael Vallade)が作曲やプロダクションに関わっている影響もあるのだろうか、今まで以上にライブ感溢れる音響が聞こえる。"Friends"も同じプロダクションなので、やはりうねりのある生ベースや流麗な鍵盤ワーク、切れのある鋭いリズム感が活きたジャズ・ファンクで、ハウスの境界を越えていく。また"Greed"も同様なのだが、そもそもこれはオリジナルはLaurent Garnierによる鋭利なエレクトロだったが、ここではしなやかで繊細なジャズ・ドラムと甘美なエレピや艶めかしいベースが生き生きと躍動するジャズ・トラックになっており、アルバムにフロアを目的とだけせずに深みと豊かな音楽性を加えている。勿論"Lockwood"ではサンプリングを用いてフィルター処理も行い派手な展開を繰り広げるディスコ・ハウスや、ディスコのストリングスをサンプリングしたであろう優雅さとズンドコと骨太ファンキーなリズムのループ重視な"Clarence J. Boddicker"など、いかにもS3Aらしい興奮させられる憎感溢れるダンストラックも存在する。そしてヒップ・ホップ性が込められたざっくりリズムと切ないエモーショナル性の旋律でハイテンションなアルバムに一旦休息を入れる"Interlude for Marc"、そして最後のヒップ・ホップとスモーキーなビートダウンが一つになったような黒い芳香立ち上がる"Eaux Troubles"では妖艶ながらも情緒的なストリングスが美しく伸びてアルバムの旅を感動を添える。十八番のサンプリングを存分に発揮しつつ、古典からモダンまで、そしてジャンルも横断しながらパーティー感覚に溢れた音楽性で、何処を切り取ってもS3Aと呼べる要素で満たされた期待に応えたアルバムだ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Marcos Valle - Sempre (Far Out Recordings:FARO211CD)
Marcos Valle - Sempre
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9年ぶりのアルバムという事でちょっとした話題になっているみたいなMarcos Valleの新作。普段クラブ・ミュージック中心に聞く筆者にとっては余り縁の無さそうなアーティストだが、2015年には"1985"をTheo Parrishがリミックスをして話題になっていた事もあり、この新作も軽く試聴してみたところアーバンかつブギーなディスコ/ラテンな作風が直ぐに耳に馴染んだので購入した次第。Valleは60年代から活動するブラジルのアーティストで、ボサノヴァから始まりMPBにディスコ、そしてジャズやファンクにAORやソウルと様々な要素を咀嚼する事で結果的に時代に適合しながら生き抜いてきているように思われるが、過去の作品を聞いてみるとどの時代にもポップなソングライティングが発揮されておりその音は実に懐っこい。そして注目すべきは90年代後半以降はダンス系のブラジリアン・ミュージックでは筆頭格のFar Out Recordingsから作品をリリースしている事で、その点からも少なからずクラブ・ミュージック的な方面からも違和感無く聞けるダンスなグルーヴ感も存在しており、クロスオーヴァー性はここでも発揮されている。そこからのこの新作、Pat Metheny Groupに参加していたパーカッショニストのArmando Marcal、Azymuthのベースプレイヤーとして活動していたAlex Malheirosといった様々なアーティストが参加しているが、特筆すべきはIncognitoのリーダーであるJean-paul Maunickの息子であり、ハウス・ミュージックのアーティストであるDokta VenomことDaniel Maunickがプロデュース&プログラミングを担当しており、その影響として大きくブギー&ディスコな性質が打ち出されている事だ。冒頭の"Olha Quem Ta Chegando"からいきなりファンキーなギターカッティングにトランペットの情熱的な響きが聞こえ、ドタドタとした生っぽいドラムが躍動するディスコな曲で、しかし熱くなり過ぎずにサマーブリーズな爽快な涼風が舞い込んでくる。"Odisseia"では実際に生ドラムを用いた臨場感あるリズムに豊潤なフュージョン風のシンセや甘美なエレピを重ねて、派手さのあるラテンファンクかつサンバながらも哀愁も込み上げる切ない一曲。バラード風なスローテンポの"Alma"では光沢感のある優雅なシンセやしみったれたギターメロディーが活きており、AORで大人のアーバンな雰囲気には余裕たっぷりな円熟味が。そして再びディスコ・ファンクな"Vou Amanha Saber"、ズンズンと力強い生ドラムがリズムを刻み、ギターやベースがうねりつつ豪華さを彩るホーンが響き渡る、陽気さに溢れ肉体感を伴う熱いダンス・ミュージックを聞かせる。音楽的な新しさは皆無ではあるものの色々なスタイルが元からそのままであるように馴染みながら、エネルギッシュに脈動するダンスからしっとりと聞かせるリスニングまで丁寧なソングライティングが耳馴染みよく、取り敢えず老獪なベテランに任せておけばOKみたいな安心感のあるアルバム。真夏は過ぎてしまったけど、蒸し暑い時期にも体感温度を下げる爽やかなブラジリアン・フレーバーが吹き込んでくる。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2019/11/17 PRIMITIVE INC. 13th Anniversary MASTERS AT WORK in JAPAN - Our Time Is Comming - @ ageha
誇張でも何でもなく正にハウス・ミュージック界の最強の二人組コンビ、Louie VegaとKenny Dopeから成るMasters At Work。近年は別々にソロ活動が中心なものの、ラテンやアシッド・ジャズをハウスに取り込んだNuyorican Soulやよりクラブ・トラック的なKenlouといったプロジェクト、そして当然Masters At Workとしての功績はハウス・ミュージックという枠を越えてダンス・ミュージックとして大きな影響を残すレジェンドな存在。そんな二人がMAWとして揃う事は近年は稀であるのだが、ここ日本においては2016年以降PRIMITIVE INC.が主体となってMAWを軸に据えたパーティーを開催しており、当初はその余りのゴージャスさに単年開催かと思っていたものの蓋を開けてみれば本年まで4年連続開催とある種の恒例お祭り行事として定着するまでになった。本年度もメインフロアではMAWのみのロングセットを中心に、他のフロアでは近年再燃するジャパニーズ・ハウスから横田信一郎やジャンルをクロス・オーヴァーするKaoru Inoue、DJ NoriとMuroによるアナログセットを披露するCaptain Vinylらバラエティー豊かな人材が揃って、祝祭な一日を作り上げる。
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| EVENT REPORT7 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
New World Science - Osmos (Movements) (Temple:TMPL005)
New World Science - Osmos (Movements)

電子音楽の界隈で見直されるニューエイジやアンビエントの世界、それらが活発化する事で現在の時代に即したモダンなそれらも生まれているが、カナダはモントリオールから初めて耳にするNew World Scienceなるユニットのアルバムは2019年度のニューエイジでも特に目を見張るものがある。ニューカマーなのかと思っていたものの調べてみるとPrioriとしても活動するFrancis Latreilleを筆頭に、TempleのレーベルオーナーでありEx-Terrestrialとして活動するAdam Feingold、サックスフォン奏者のEmあmanuel Thibau、ニューエイジやレフトフィールド路線で活躍するRamzi、そしてTempleから作品をリリースしているRichard Wengerの5人組プロジェクトである事が分かった。電子音楽やニューエイジの方面で経験を持つぞれぞれのアーティストの技術を反映させ、ヴィンテージなシンセにフルートやサックスにギター、コンガやパーカッションも用い、電子とアコースティックの調和、即興的でありながら構築的な作風によって深い瞑想世界へ誘うモダンなニューエイジを展開する。"Movement 1"は15分にも及ぶ大作でどんよりとしながらアンビエンスを発するドローンから始まり広がるシンセのリフレインに合わせ、抽象的でスピリチュアルなサックスが現実世界でなく異空間へと誘うディープ・メディテーションな一曲。ゆっくりとした速度感でドロドロと変容しながら15分にも渡って、深い精神世界の旅が始まる。"Movement 2"ではドラムマシンやギターも用いられたダンス寄りの作風だが、朗らかなシンセのメロディーに奇妙な効果音を重ねながら土着的なパーカッションや生々しいリズムが民族間溢れるニューエイジ性を発し、原始的な祭事の踊りのようだ。そしてシンセのアルペジオが牧歌的でバレアリックな雰囲気もある"Movement 3"は、複数のシンセの層が淡い絵の具の色をぼかしていくような透明感溢れる美しさがあり、その中で叙情的なサックスフォンが引っ張っていく。"Movement 4"は5人のメンバー総員で制作した曲で、コンガ等の土着的なリズムの中に生暖かいフルートやサックスフォンが混沌と溶け合いながら生命の胎動の如く自由さがあり、ジャズやアンビエントに現代音楽等の要素が融解して一つになったようなインプロビゼーション性溢れる本EP屈指のニューエイジだ。内向的/外向的、ダンス/リスニングと振れ幅を持ちながらどれにもニューエイジによく引用される辺境性とスピリチュアル性が備わっており、例えばSuso Saiz辺りの音楽性が好きな人にとってはこのNew World Scienceもピンとくるだろう。



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| ETC4 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |