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Aphex Twin - Cheetah EP (Warp Records:WAP391CD)
Aphex Twin - Cheetah EP
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2014年の『Syro』(過去レビュー)での華々しい復活劇(後にこのアルバムはグラミー賞を受賞した!)以降、SoundCloudには膨大な未発表音源をアップロードするわ、コンセプチュアルなEPを2枚もリリースするわ、間違いなく活動が再度活発化しているRichard D. JamesことAphex Twin。常に人を食ったような音楽性、またはプロモーション方法やPVなどは何が本当で何が嘘かも分からない所もあるが、本作はタイトル通りにCheetah社の非常にレアなシンセサイザー・MS800を使用した作品だそうで、その扱い辛い機器をわざわざ用いる事でその機器自体のデモストレーションを自ら買って出たと捉えるべきなのだろうか(機材の使用が本当ならば)。そのシンセサイザーの音を楽しむという観点で聞くと、"CHEETAHT2 [Ld spectrum]"ではふらつくような不安定なパッドの裏で鳴っている多少光沢も含んだような朧気な電子音が恐らくそれなのだろうが、確かにその独特な鳴りはなかなか他では聞けるものではない。よりその音色を明確に体験出来るのはそれぞれ30秒前後のインタールードである"CHEETA1b ms800"や"CHEETA2 ms800"で、ただ音で戯れているだけのようにも思われるが、覚醒感と清涼感とほんのちょっとの毒気を含んだその電子音の個性はテクノ好きを十分に魅了するだろう。機材の特徴を率直に聞かせる為に近年の作品に比べると随分とシンプルで洗練されており、リズムもかつて程には奇抜ではなく分り易いダンス・グルーヴを刻んでいるが、明るさの中にも何処か歪んで捻くれた感覚が練り込まれており、Richard独特のユーモアとシニカルの狭間が展開されている。極度に扱い辛い機材を使用してこんなの簡単だぜっ!みたいに軽々と楽曲を披露しつつも、機材の特徴を生かしつつ自身の個性もしっかりと表現する辺りに、やはりRichardの天才肌があるのだ。と言う事で比較的大人しい作品ではあるものの、恍惚を誘う電子音の魅力を存分に味わいつつ、インテリジェンス/IDM系のテクノとしての確かな自負も伺える作品だ。尚、アナログ盤にはダウンロードコードも付いてくるので、買うならやはりアナログを勧めさせて頂く。



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| TECHNO12 | 07:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Planetary Assault Systems - Arc Angel (Ostgut Ton:OSTGUTCD37)
Planetary Assault Systems - Arc Angel
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UKテクノの歴史において、ハードテクノ全盛の古い時代から生き抜いている稀有なベテランの一人、Luke Slaterも今ではテクノの中心となったベルリン志向に傾倒しているのは明らかだ。活動の初期から用いている変名のPlanetary Assault Systemsは特にハードかつラフな質感を持ったテクノ・プロジェクトだったが、2009年にはOstgut Tonからよりミニマルで機能性重視の音楽性へとシフトしたアルバムをリリースし、見事にテクノシーンの最前線へと返り咲いた。本作はこの名義では5年ぶりのアルバムで、そしてまたしてもOstgut Tonからとなるが、実はL.B. Dub Corp名義でも2013年にアルバムをリリースしていたので思っていたよりも久しぶりではない。しかしL.B. Dub Corpの作品がレゲエやファンクも吸収した実験的なテクノだった事を考えると、このPASの新作こそがフロアの空気を的確に掴んでSlaterのミニマル志向が反映された王道的な作品だ。CDでは2枚組20曲で計90分を超える本作では、先ず「メロディー」に焦点を当てたと本人は述べているが、だからと言って一般的ないわゆるエモーショナルなコテコテのテクノとは異なっている。アルバムはカセットデッキにテープを入れる環境音の"Cassette"から始まり、続く"Angel Of The East"ではビートレスの空間にパルスのような電子音とそれを装飾する奇妙なサウンドにより音響系の傾倒を示し、ダンス・トラックだけではないアルバムというフォーマットを活かす事にも軸を置いている。3曲目の"Tri Fn Trp"でようやくリズムが入ってくるが、もはやハードな質感は無く無機的にひんやりとしたビートを刻みつつ、一方で電子音による複合的なシーケンスもビート感を生んでテクノとしての機能性を高めている。"Message From The Drone Sector"ではやや太いキックが4つ打ちを刻んでいるが、勢いで押し切るのではなく奇妙な電子音のシーケンスが闇の中に吸い込むような雰囲気を作り、リズムはあくまで淡々としていて決して感情の昂ぶりを誘うわけではない。むしろその平坦なリズムと機械的な電子音の反復がミニマルな感覚を持続させ、徐々に意識も麻痺するようなディープ・スペースへと誘われるのだ。先に述べた「メロディー」というものが決してキャッチーな音楽を指す事ではなかったが、音の反復・重なりによりグルーヴを生み持続感を作る「メロディー」への探求が、本作からは感じられる。平坦でミニマルなリズム感、重層的な電子音のシーケンス、そしてスペーシーな世界観はJeff Millsの近年の音楽性と類似しているが、そちらよりも更にモダンに研ぎ澄まされている。



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| TECHNO12 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Michael Mayer - & (!K7 Records:K7337CD)
Michael Mayer - &
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熱狂的な一夜を作り上げる一流のDJが、素晴らしい音楽センスを持ったレーベルオーナーが、必ずしも音楽制作に於いて同様の才能を発揮するとは限らない。淡々とレーベル運営に専念するアーティストもいれば、制作はせずにプレイのみで自己を主張するDJもいるが、Michael Mayerは日々DJを行いながらKompaktという巨大なレーベルの運営と制作を並行して行っている。レーベルを成長させた音楽に対する審美眼や非凡なるDJの才能については言うまでもないが、一方それらに対し楽曲を制作する事に於いては決して突出した個性を表現出来ているわけではない。新作はタイトルの『&』が示すようにMayerと親しい友人とのコラボレーションを纏めたアルバムになっているが、一人では出来ない事を多数のアーティストの協力を得て補完する事で、充実した音楽性を持った作品として成り立たせている。Gui Borattoとのコラボである"State Of The Nation"は正に彼の音が主張するシューゲイザー&プログレッシヴが打ち出された高揚感のあるテクノとなっており、アルバムの中でも特に喜びや多幸感に包まれる曲だ。一方でMiss Kittinをフィーチャーした"Voyage Interieur"は彼女のダークかつゴシックな雰囲気にエレクトロなベースラインを用いた個性ある曲で、その暗さの中にも妖艶なボーカルがそっと色気を発している。"Blackbird Has Spoken"ではフランスからAgoriaを迎え、透明感のあるシンセを用いたメロディアスで叙情的なテック・ハウスを聞かせ、その中にもちょっとした遊び心や毒気のある電子音を混ぜて強い印象を残すようだ。アルバムの最後はKompakt組であるAndrew Thomasとの共作である"Cicadelia"で、キラキラとした煌きを放つ電子音が散りばめられたアンビエントな雰囲気もあるテクノは、当然Thomasの音楽性が反映されている。他にもVoigt & VoigtやKolschのkompakt勢や、Roman FlugelやBarntにPrins Thomasといった才能豊かなアーティストが集結しており、それぞれの曲で彼等が得意とニュー・ディスコやディープ・ハウスにポップなものまで幅広く音楽性を披露している。そのおかげでバラエティー豊かなアルバムであるのは言うまでもないが、逆にアーティストとしてのオリジナル・アルバム的な意義は希薄となり、Mayer自身の個性を発揮するまでには至っていない。それでもMayerが監修したような見方をすれば、そのチョイスに間違いはないだろう。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Israel (Soul Research:SR-007)
John Beltran - Israel

2012年に設立されたSoul ResearchはYotam AvniやTitonton Duvanteらの作品をリリースするなど、特にデトロイト・テクノのフォロワー系に力を入れ、そしてアナログ・オンリーの販売に拘って運営しているレーベルだ。そんなレーベルの2014年のカタログにはデトロイト・テクノの純粋な古参の一人であるJohn Beltranも名を連ねており、そのリリース内容から明確なコンセプトが伝わってくる。そのレーベルに再度Beltranが帰還して新作をリリースしたのだが、リミキサーにはデトロイト・テクノを心から愛する屈指のフォロワーであるKirk Degiorgioが迎えられており、音を聞かずしてもこの手の音楽を好む人にとっては食指が動かずにはいられないだろう。タイトル曲となる"Israel"は近年のBeltranの中でもフロアへの視点が向けられた作品で、ざくざくと切り裂くようなリズムに乗せて滲んだ色彩を放つ幻想的なパッドが物悲しさも含んだような切ない叙情を含み、勢いのあるグルーヴだけでなく彼お得意のアンビエントな感覚も持ち込んだ、つまりは昔のBeltranの作風が蘇っている。"Achva"も同様に草原を駆け抜けるような疾走感&爽快感を伴う跳ねたグルーヴが先導し、そこにぼやけて何だか淡い抽象画のようなパッドや電子音がエモーショナルな情感を生み、有機的な質の強いデトロイト・テクノといった作風になっている。テクノという前提はありながらも、しなやかで温かみのあるオーガニックな音楽性は、クロスーヴァー路線もこなすBeltranにとってはお得意の作風なのだ。裏面には10分にも及ぶ大作となる"Israel (Kirk Degiorgio Remix)"をDegiorgioが提供しているが、これは原曲以上に弾けるパーカッションやキックに嬉々とした力が満ち、そして祝祭感溢れ神々しい光を纏ったような上モノが何処でも疾走するテクノで、デトロイト・テクノの伝統に則ったような存在感を放っている。当然と言えば当然だが、デトロイト・テクノに造詣の深いベテランが組んだのだから、期待を裏切る訳がない作品だ。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Floorplan - Victorious (M-Plant:M.PM28CD)
Floorplan - Victorious
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デトロイト・テクノの古参の一人、そして求道的にミニマリストを貫くRobert Hoodが2010年に復活させたプロジェクトがFloorplanだ。90年代に活動していたそのプロジェクトではミニマルなグルーヴの中に色気もあるディスコ/ハウスの要素を持ち込んで、DJツール性が高いながらもファンキーな響きを強調していた。一旦は本人名義やMonobox名義での活動が続いていた為にFloorplanとしての作品のリリースはストップしていたものの、2010年に復活を果たしてからは目を見張る活躍ぶりで、2013年の初のアルバムである『Paradise』(過去レビュー)ではミニマルの中にディスコ/ハウスを完璧に落とし込み、ツール性を磨きながら黒人音楽由来のファンキーな鳴りを見事なまでに生み出していた。それから3年、あれ以上は無いのではと思っていたところにこの新作もサンプリングを大胆に使用して、更にファンキーに、より強固で骨太に、よりディスコ・テイストを打ち出して非の打ち所がない音楽性を披露している。出だしの"Spin"からして執拗なまでのサンプリングのループを用いて、全くぶれる事なく一直線の突進力を持ったミニマル・ディスコな作風で、この時点でFloorplanの音楽性をおおよそ理解し得るだろう。続く"Music"ではどっさりとした重いキックと耳に残るベースライン、そして「ミュージック、ミュージック」というボイス・サンプルを大胆に用い、テクノとハウスの隙間を埋めながら爆発力と機能性を持ち合わせている。"He Can Save You"はドスドスとしたトラックの上に説法のようなスピーチを被せ、バックには微かにピアノも潜ませて血が滾るような力強いゴスペル・テクノ/ハウスとでも呼ぶべき曲となっており、如何に機械的なグルーヴであろうとやはりHoodのデトロイト育ちの精神が宿っている事を証明している。アルバムのハイライトは先行EPとしてリリースされた"Tell You No Lie"で間違いなく、Brainstormの"Lovin' Is Really My Game"というクラシックをサンプリングしているのだが、これが笑ってしまう程にリズム帯以外はモロにそのまんまなのはディスコへの愛が成せる業。リズムは格段に厚みや重さを増して強靭となりズンドコとした典型的なディスコ・ハウスなのだが、このご機嫌なノリや幸せに包まれるポジティブな感覚には抗う事は最早不可能だろう。前作以上にディスコへの愛情をテクノやハウスへと投影し、そして全く揺らぐ事のない骨組みの固まったミニマルを成し遂げ、フロアに求められている音楽性を理解した上でHoodらしさもしっかりと込められたアルバムであり、ミニマリストとしての自負さえ感じられる素晴らしい作品だ。



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| TECHNO12 | 19:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Space Dimension Controller - Orange Melamine (Ninja Tune:ZENCD231)
Space Dimension Controller - Orange Melamine
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音楽により壮大な宇宙旅行や近未来のSFの世界を展開するJack HamillことSpace Dimension Controllerは、2009年のデビュー当時でさえ19歳であった近年稀に見る早熟のアーティストだ。しかしながらその音楽性は前述の趣向と共に、何処かノスタルジックな回帰志向さえもあり、2013年リリースの初のアルバムである『Welcome To Mikrosector-50』(過去レビュー)ではテクノ/エレクトロの中にPファンクやシンセ・ポップを盛り込んで、若い年齢にしては随分と過ぎ去りし時代への甘い夢に浸るような郷愁が込められていた。そこからの2年はSDC名義でよりフロア志向のテクノを打ち出した3部作をリリースし次のアルバムはその路線を踏襲するかと思っていたところ、意外や意外に3年ぶりのアルバムは何と奇抜な音楽性を発揮するNinja Tuneからとなり、その上Hamillが18歳であった2008年当時に制作された秘蔵音源集との事なのだ。今になって8年も前の音源がリリースされた経緯については謎なものの、確かに本作はまだロウで粗削りなビートと未完成的な部分さえ残す青々しいテクノが纏められている。基本的には規則正しい4つ打ちの曲はほぼなく、始まりとなる"Multicoloured Evolving Sky"からして既に金属が裂けたようなスネアの上に望郷の念が込められたような上モノが鳴っており、一昔前のIDMを思わせる作風も。そこに続く"The Bad People"は重苦しささえ漂うダークアンビエントな感があるが、やはりビートはひしゃげて刺激的なまでに暴れている。"Scollege Campus"では安っぽいボコーダー・ボイスも利用しシンセ・ポップの懐かしさを導き、"Gullfire"ではうねるチョッパーベースや熱量の高いシンセのメロディーを導入しPファンクのような躍動を生み、"Multipass"に至ってはAutechreのような支離滅裂な破壊的なビートに幻想的な上モノを用いた作風が正にIDMらしい。どれもこれも荒削りでドリルン・ベース的なリズム感と破壊的な電子音、そして淡い郷愁を放つシンセが懐かしさを誘い、90年代初期のAphex Twinを含むR&SやWarpからの影響が色濃く出たベッドールーム・テクノなのだ。肉体に突き刺さるような刺激的な音、それと対照的なメランコリーが共存し、若さ故の衝動が前面に出つつもHamillのSFワールドが見事に展開されている。



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| TECHNO12 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(1) | |
Technique RSD 2016 (Technique:TECHNIQUERSD2016)
Technique RSD 2016

近年にわかに再燃しているレコードに対する羨望の眼差し。それとリンクするように日本でもレコードの祝祭イベントであるRecord Store Dayは定着し各レコード店毎のスペシャル盤も制作されるようになっているが、本作は日本を代表するテクノレコード店であるTechniqueによるRecord Store Day用のスペシャル盤になる。曲を提供しているのは今や国内のみならず海外でも知名度を得たGonnoや新鋭アーティストのSinob Satosi、そしてベルリン在住で海外のレーベルから多数の作品をリリースするKaitaroで、敢えて国内のアーティストに拘っている点に嬉しさを感じずにはいられない。しかし単に記念盤というだけで過大な評価を与えるわけにはいかないが、そこはTechniqueのテクノに対する品質の自負も主張するようにそれぞれテクノとしての質を兼ね備えており、各アーティストの個性が漫然と光っている。特にGonnoは閃光のような眩さの中にアシッド感を含んだシンセを用いてポジティブなメロディーを鳴らし、そして前へ前へと進もうとする跳ねたビートによってどんどん加速し多幸感の絶頂へと昇り詰めるアグレッシヴな曲を提供しており、彼らしい底抜けのバレアリック感も含んだ雰囲気はフロアの深遠な闇さえも光で消し去るような明るさがある。裏面のKaitaroは普段からモノクロなミニマルを手掛けているだけあり、音の数を減らす事で隙間を作りリズム感を際立たせたミニマルな"Mist M"を披露している。ミニマルな構成ではあるが横ずれするような揺れる感覚や、途中からホーンらしきメロディーが夜の不気味さを演出するなど、控え目に盛り上げる構成を作って機能性重視ながらも単調さを回避している。そして余り情報のないSinob Satosi、こちらは膨らみのあるキックや金属的なパーカッションが弾けてロウな質感も感じられるビートが軽快に疾走し、ほぼメロディーを入れる事なく淡々と突き進む"Kitty On Kat"でミニマルを演出。Kaitaroの深みやドープな感覚よりはより肉体的なグルーヴ感重視と言うか、もっと直接的な刺激が強くて爽快ささえも発している。それぞれのアーティストが自身の得意とするスタイルを披露しているおかげで、異なるパーティーの様式に合わせて使える便利な一枚だが、ここはやはりGonnoの曲をお勧めしたい。

試聴
| TECHNO12 | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Powder - Afrorgan (Born Free Records:BF22)
Powder - Afrorgan

Powderについて日本人の女性アーティストであるという以外に、情報はそう多くはない。今年の6月頃にレコード屋のWebで試聴をしていたところ、その一聴して耳を惹きつけられる奇妙な構成とメロディアスな作風に魅了され、全く知らないアーティストであったものの購入したのが本作だ。その後、何とResident Advisorで彼女についての特集記事が掲載されたのだが、2015年にESP Instituteからデビューしたばかりの新鋭にしては破格の扱いだろう。事実、9〜12月はアメリカやヨーロッパへの海外ツアーで飛び回っている最中で、日本よりも特に海外でPowderという才能に対しての適切な評価がなされている。この新作で先ず魅了されたのが”Afrorgan"で、タイトルからはアフロ・ビートかと思いきやそうではなく、しかし小刻みで奇妙な電子音の連打やオルガンの和みのあるコードに金属的なパーカッション、奇抜な効果音など重層的に音を被せて随分と情報量の多さが目立っている。コミカルなメロディーと共に効果音も含めた多数の音が一体となってリズム感を生んでいくが、テクノともハウスとも言い切れない感覚もあり、そしてゆったりとしながらもパワフルなトラックは間違いなくダンス・フロアで映えるだろう。乾いたボンゴによるパーカッションが打ち付ける中でぼやけて霞の中に消え入るようなボイス・サンプルが反復する"Random Ladder With 40"は、序盤はビートレスな展開ながらもトリッピーな電子音が飛び交いながら徐々にビート感を増やしていく溜めのあるテクノで、ダンス・フロアに直結するとは言いがたいが雰囲気をがらっと変えるのに使えそうなトラックだ。前述の曲とは対照的に電子サイケなロック・バンドを思わせる作風の"Fridhemsplan"は、野暮ったくもたついたキックやスネアの4つ打ちの上にドローンと共に発振音かビープ音のような電子音をループさせ、後半に向かって強度が増していく真夜中の不気味なテクノだ。A面の愛らしさもあるグルーヴィーな2曲、そしてB面の実験的ながらも刺激的な1曲、これらだけでもPowderの新しい世代の頭角を感じるには十分過ぎる程の個性が詰まっている。



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| TECHNO12 | 08:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Joris Voorn - This Story Until Now (Green:GR23)
Joris Voorn - This Story Until Now
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オランダのテクノ貴公子とも呼ばれたJoris Voorn。2013年のEPである「Ringo」(過去レビュー)以来、3年ぶりとなる新作が自身で主宰するGreenよりリリースされた。2000年代前半にデビューを果たした頃はサンプリングを多用しつつもデトロイト・テクノに影響を受けたメロディアスな作風が耳を惹きつけたものの、それ以降はDJ向けの機能重視にミニマル性の強いテクノやド派手なサンプリングによるフィルター・ハウスなどの作品が中心となり、ややエモーショナルな性質は後退していた時期もあったと思う。しかし前述の「Ringo」では物憂げで心に染み入る情緒を持った作風が復活し、往年のファンが期待しているであろう作風が戻ってきている予兆は既にあった。そしてそれは間違いではなかったようで、この新作でその予兆は現実のものとなった。"Dawn (Green Mix)"は間違いなくデトロイト・テクノに影響を受けたスタイルで、哀愁を奏でるピアノのコード展開と美しいシンセストリングスが感情の昂ぶりを誘発し、シャキシャキとしたハイハットと端正なバスドラの4つ打ちの抜き差しで劇的な展開を作る。彼の代表曲でもある"Incident"にも匹敵すると言っても過言ではないピークタイム向けのテクノであり、つまりは誰がプレイしたとしてもフロアが爆発する位の魅力的なトラックだ。"Looks Fake Obviously"もメロディアスな作風では共通しているが、アルバム『Nobody Knows』で披露したプログレッシヴ・ハウス寄りの大きなスケール感もあり、中毒性が高い響きのあるシンセやベース・ラインを用いてじわじわと盛り上げていく作風は間違いなく大箱向けだ。ここまでのエモーショナル性の高い曲は彼にとっても久しぶりだろうし、デトロイト・テクノへの憧憬を素直に自身の作品へと反映させているのも伝わり、ファンとして大手を振って喜ぶべき作品だ。



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| TECHNO12 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Quadra - Quadra Complete Selection 1995〜2007 Sketch From a Moment (Music In The Deep Cosmos:MITDC-1005)
Quadra - Quadra Complete Selection 1995〜2007 Sketch From a Moment
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2016年、Transmatからはニューアルバムをリリースし更なる躍進を果たしたHiroshi Watanabe。それとは別に自身で作品のクオリティー・コントロールを行うべく「Music In The Deep Cosmos」を立ち上げて、より自分の意思が尊重された作品を送り出す事を始めた。その結果として、彼がまだニューヨークでDJ活動を行っていた1997年の失われた作品、Quadra名義の『Sketch From a Moment』が待望のリイシューとなった。この頃と言えばまだニューヨークはハードハウス全盛時代、そんな中で作品のリリースを始めたばかりのWanatabeはNite Grooves等からハードハウスの影響を受けた今よりも激しさと荒々しさが強調されたハウスを送り出しており、その意味ではまだ若さ故の攻撃性や野心が感じられる初々しさがあった。そして同時期、日本の今はクローズしてしまったFrogman Recordsからリリースしていた名義がこのQuadraで、幾つかのEPをリリースした後に、EPの曲を収録せずに独立したアルバムとして本作をリリースしたのだ。こちらの名義はどちらかと言うとテクノ寄りではあるがやはり時代の背景は存分に音楽性に反映されており、オープニングの"Outset"からしてズンドコした激しいリズム感にうねるベースライン、ドラッギーな旋律に飲み込まれる曲調は正にハードハウスのそれだ。続く"Spiritual"では暴力的なバスドラムが弾け覚醒的なシンセが闇の奥底で黒光りするような危うさがあり、最近の優しくエモーショナルな音楽性とは対照的に真夜中の狂騒を感じさせる。勿論"Water Lily"や"Devastation"のようにKaito節とも言える大らかで包容力のあるメロディーが映える曲、激しい曲に挟まれて癒やしとなるような"Phantom"や"Spell of Rain"など胸を締め付ける程のセンチメンタルな空気に満ちた曲など、その後の円熟時代へと至る予兆は既にここに存在しているのも事実だ。また、畳み掛けるしなやかなビートを刻むドラムン・ベースの"Ground Loop"は、当時の流行を意識している点もあり驚きを隠せない。そんな失われた名作が本人によるリマスターで復活した事を喜ぶべきだが、更に嬉しい事に過去のEPやコンピレーションに収録されていたQuadra名義の曲がシングル・コレクションとして纏められたCDも付いてくるのだから、ファンとしては言う事は無しだ。余りにも感動的な正に大空へと飛翔するような高揚感のあるテクノの"Sky"、そしてその未発表バージョン、2000年以降のレアな曲まで収録されており、そこから時代毎の変化も感じ取れるだろう。長らく失われていた作品だけに、Hiroshi Watanabeの今まで知る事の出来なかった面を知る事が出来る点においても、非常に価値のある復刻と言えよう。





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| TECHNO12 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |