Bell Towers - My Body is a Temple (Unknown To The Unknown:UTTU 090)
Bell Towers - My Body is a Temple
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元々のお目当てはオーストラリアはメルボルンを代表するまでのアーティストとして評価を獲得しているAndras FoxことAndrew Wilsonのリミックスで気になっていたのだが、話題のDJ Hausが主宰しているUnknown To The Unknownの新作であり、そして本作を手掛けているBell Towersの作品自体も面白いダンス・トラックなので是非紹介したい。Towersは現在はベルリンで活動しているもののAndrasと同じくメルボルン出身だそうで、過去の作品を聞く限りでは快楽的なイタロ・ディスコや肉体感溢れるエレクトロニック・ボディ・ミュージックの音楽性が強く、一歩間違えれば今ではダサいと認定されるスレスレを行くような印象を受ける。本作もやはりその路線と言うべきか、しかし"My Body Is A Temple"のブイブイとした魅惑的なベースラインと辿々しい質素なキックが疾走りイケイケなグルーヴを生み出すこの曲はダサくもハイエナジー、そして何か無機質でしゃがれたような歌い方はEBMのそれである。しかし、薄っすらと浮かび上がってくる叙情的なパッドが入ってくる瞬間はぐっとエモーショナルな雰囲気に変化したりと、けばけばしく快楽的なイタロ・ディスコの中にもコズミックな感覚があるというか。似たようなタイトルをした"My Body Is A Tempo"は別バージョンと思われ、よりニューウェーブやEBMを意識したように音の隙間が目立ちながらよりリズムは重厚で攻撃的、ノイズや電子音を用いたダンサンブルなグルーヴなのに汗臭ささえも感じられるような肉体感に迫力が感じられる。そして注目すべきはAndrasによる"My Body Is A Tempo (Andras Remix)"、様々なスタイルや表情を持つAndrasがここではダンスの機能性に磨きを掛けており、原曲を研磨したように滑らかなキックに差し替えつつ上モノの動きも抑え目にミニマルな流れを生み出し、そしてキックが消えた瞬間に現れるアンビエント感溢れるメロディーのブレイクでぐっと情感を高める流れはドラマティック。Andrasによるリミックスはイタロな雰囲気もありながらよりモダンに洗練されており、こちらは硬派なテクノセットの中に組み込んでも違和感は無い出来だ。勿論Towersの野暮ったいディスコな作風も愛着があり、収録曲全てそれぞれ魅力的である。



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| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Waajeed ft. Ideeyah - Strength EP (Dirt Tech Reck:DTR14)
Waajeed ft. Ideeyah - Strength EP

かのJ Dillaもメンバーであったデトロイトのヒップ・ホップ集団であるSlum Villageの元メンバー、そんな肩書きを持つRobert O'BryantことWaajeedはヒップ・ホップを嗜む人にとっては知っていて当然の存在なのだろうが、そうでない当方にとっては馴染みは薄い。しかし近年Sound SignatureやPlanet Eといったデトロイトの大御所レーベルからのリリースやAmp Fiddlerへのリミックスの提供もあり、ハウス・ミュージックの方面からも目に付くようになっていたが、自身が主宰するDirt Tech Reckからのこの作品を聞いてWaajeedはハウスへと傾倒している事を確信している。本作はリリースされたばかりの『From The Dirt LP』の先行EPだが、特筆すべきは同じデトロイトから新世代として頭角を現しているJay DanielやUR一派のJon Dixonをリミキサーに起用している事で、もしWaajeedを知らない人にも興味を抱かせるような人選となっている。勿論オリジナルの曲もソウルフルなハウスとして素晴らしく、Ideeyahの優しく包容するような感情豊かな歌、そしてカラッと乾いたパーカッションが爽快に響き優美なピアノのコード展開やコズミックな電子音が飛び交う"Strength (Original Mix)は、じんわりと低温状態から温まっていくような渋い流れがある。そしてWaajeedによるもう一つのバージョンである"Strength (Waajeed’s String Mix)"は同様に抜けの良いパーカッションが爽快に弾けながらより強い4つ打ちで疾走し、エモーショナルなシンセストリングスが躍動的に展開するややゴージャスな作風で、デトロイト・ハウスのポジティブな方面に属す希望を高らかに歌い上げる曲だ。面白いリミックスとなったのは"Strength (Jay Daniel Remix)"で、エッジの効いた硬いヒップ・ホップのリズムへと塗り替えつつそこにデトロイトらしい叙情性のあるパッドを配し、フュージョン風な煌めくシンセの旋律で豊かな味付けを加えている。最もデトロイト・ハウスらしい雰囲気があるのは"Strength (Jon Dixon Remix)"で、オリジナルの作風を大きくいじる事はせずにリズムをややかっちりと硬く強調し、そしてドラマティックな展開を生むデトロイトよろしくなシンセストリングスを用いて壮大にポジティブな光で包み込んでいく作風は、正にUR一派らしいHi-tech Jazzの延長線上といった作風だ。デトロイト好きにとっては堪らないリミキサーの起用でそれぞれが期待通りのリミックスを披露しているが、オリジナルの2曲もアルバムへの布石という点で十分に聴き応えがあり、Waajeedのハウス・ミュージックの方面での評価を上げる事は間違いないだろう。



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| HOUSE13 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Mr Fingers - Cerebral Hemispheres (Alleviated Records:ML-9017)
Mr Fingers - Cerebral Hemispheres
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ダンス・ミュージックという移り変わりの早い業界の荒波に飲み込まれる事なく、常にマイペースに自分の世界観を守り続けてきたその活動もいつかは終わりを迎えるように、2012年に聴覚障害を理由に一旦はDJ業から身を引いたLarry Heard。それと共にリミックス業以外では作品のリリースも停止し、淡々としながらも真摯に音楽に向き合ってきた音楽の道も停止してしまうのかと心配していたが、なんと2016年のDimensions Festivalでのライブを皮切りに復活を果たす。そう、やはりHeardの音楽性が最も発揮されるのは自身で制作した曲をライブで表現する事であり、それは彼が作曲家としての帰還を表明した瞬間だったに違いない。事実、本作はMr. Fingers名義での24年ぶりとなるアルバムで、わざわざこの古い名義を用いたのには何か音楽活動に対する決意表明のような意味合いが込められているように感じずにはいられない。とは言っても時代に取り残されたように、しかし全く風化しない思慮深いディープ・ハウスの作風はHeardらしい柔らかい優しさがありつつも、普遍的な強度が貫いている。開始となる"Full Moon"も囁くような優しいHeardの歌に静謐な美しさを際立てるピアノの旋律が落ち着いた叙情を生み、淡々としたハウスの4つ打ちと相まって、いわゆるクラブミュージックにありがちな押し付けがましい興奮は一切ない。"Urbane Sunset"では枯れた味わいのあるギターと繊細なピアノを合わせ、そこに手数の多いパーカッションも加えてジャズやフュージョンのセッションしているような、実に歳を重ねたからこその円熟味のある曲だ。もちろん"Sands Of Aruba"のようにしっとりしながらも軽快なハウス・ビートを刻む曲もあるが、それにしても温かい感情を吐露するようなサックスや透明感のあるキーボード使いが、耳に優しく吐息を吹き掛けるように響いてくる。CDで言うと2枚目に当たる方は比較的フロア寄りの曲が多く、遂になった"Outer Acid"と"Inner Acid"の二曲は、どちらもダークでじわじわと精神を侵食するようなアシッド・ベースを用いたフロア向けのハウスだが、これにしてもアッパーで強迫的に踊らせるようなものでもなく、聞き手にダンスともリスニングとも解釈を委ねる大らかさがある。"Stratusfly"ではTikimanことPaul St. Hilaireをフィーチャーし、時間を経て味わいを増した哀愁が枯れた感もあるボーカル・ハウスを形成し、この俗物にまみれた世の中から距離を置くようにただただ自分の内面を見つめ直している感さえある。そしてこれぞHeardな揺蕩う浮遊感のある叙情的なディープ・ハウスの"Aether"から、最後はNicole Wrayを歌手に迎えてややポップで可愛らしくもある歌と親しみのある明るい基調のトラックから成る"Praise To The Vibes"で、深い深い内面旅行を終えて現実へと戻ってきたかのように明るさを取り戻して終わる。音楽的な面でMr. Fingers名義だから特別だという事は全くなく、スムースなディープ・ハウスにジャズやR&Bのスパイスも加えて、つまりLarry Heardとしての集大成のようにも感じられるメランコリーで深く優しい世界観は時代に左右されない完成されたスタイルなのだ。寡黙ながらも音楽に対して誠実なHeardの性格が伝わってくるような、そんな心温まるアルバムだ。



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| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
keita Sano - Ōtotsu (Let's Play House:LPHWHT18+)
keita Sano - Ōtotsu
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引く手数多と呼ぶには言い過ぎだろうか、いや、決してそれも誇張ではない位に日本から世界に向けて今最も注目を集める若手アーティストであるのは間違いなく、事実Crue-L RecordsをはじめRett I FlettaやMister Saturday Nightと言った人気レーベルからHolic Traxや1080pを含む多くのアンダーグラウンドなレーベルからも求愛を受けるアーティストがKeita Sanoだ。2012年頃から作品をリリースするも既にその量は30作を超えるなど尋常でないハイペースで量産しながら、その多作さに呼応するようにテクノ〜ハウス〜ディスコと作品毎に作風のバラエティーも広げて、幅広くファンを獲得している。本作は過去にもリリース歴のあるニューヨーク拠点のLet's Play Houseからとなるアルバムで、実はアナログでは『Kubo』と『Totsu』として別々にリリースされたものを、配信では合わせて凹凸=Ototsuとして纏めた作品だ。ここでは基本的にはハウスをベースにした作風になっているが、何と言ってもどれもフロアを強烈に沸かせるダンス・トラックである前提ある事を主張したい。8分にも及ぶ"A Place Called Sun Beach"は特にじわじわと来る快楽的な一曲で、序盤の溜めに溜めたシンセベースのシーケンスで長く引っ張りつつトランシーな上モノも入ってくれば、ディスコティックな多幸感の雰囲気に染まる機能的な作風で、幕開けから強烈な一撃を食らわせる。鈍いアシッドと不気味なホーンを用いてシカゴ・ハウス風な悪っぽい不良感のある"Hmmm"は、ロウな質感も相まって粗悪なマシン・グルーヴがより覚醒感を誘発する。次の"Sweet Fruit"もラフな音質ながらもズンドコとしたドラムやカラッとしたパーカッションで構成されたリズム重視のハウスで、亜熱帯の密林を喚起させる原始的なトライバル感が心地好い。ここまでの『Kubo』で十分に作風の幅広さは証明されているが、続く『Totsu』は更に賑やかなパーティー仕様な曲調が強くなっている。ピュンピュンとしたコズミックなSEや管楽器の派手なディスコ・サンプリングを多用した"Can't Wait The Party"は、そのタイトル通りにパーティーが待ち遠しくなるズンドコとしたフィルター・ディスコで、ドタドタとした安っぽいビート感ながらも輝きを放つようなメロディーで楽しさに溢れている。そして色っぽい女性ボーカルのサンプルを用いた"Bitch"はソウルフルかつ優美なディスコ・ハウスで官能的に聞かせつつも、最後の"The Stripper"は回転数が狂ったようなスローモーなテンポ、そして即興的なボーカルも入り紫煙も揺らぐ怪しい残響も加えてダンスホール・レゲエ調と、曲調は正に様々でありながらあの手この手で踊らせる曲ばかり。悪っぽさ、または華やかさなど曲毎に異なる表情やスタイルがありバラエティー豊かで、しかしどれもSanoの衝動的な勢いでの世界観の統一があり、大量にリリースをしているにもかかわらず爆発力は一向に衰えない。更に今度はClue-lからのアルバムも控えており、一体何処までこの勢いは続くのだろうか。



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Nick Anthony Simoncino - Mystic Adventures (Vibraphone Records:VIBR 012)
Nick Anthony Simoncino - Mystic Adventures
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2015年に復活を果たしたイタリアの伝説的レーベルであるVibraphone Recordsは、92〜93年頃の僅か短い期間だけ活動を行っていた。復活後も当初は以前にリリースされていた作品のリイシューが中心だったものの、再評価に伴い活動も軌道に乗っており、今では積極的にイタリアの現在形のアーティストの後押しを行っている。そしてレーベルとしてはやや古典的なハウスを得意としているが、イタリアにおけるシカゴ・ハウス狂のアーティストと誰を差し置いてもSimoncinoなわけで、このレーベルとの相性の良さは説明するまでもないだろう。基本的にどのレーベルからのリリースであろうとSimoncinoの作風に大きな差はなく良くも悪くも金太郎飴的、本作においてもアナログサウンド全開の簡素な味わいのディープなシカゴ・ハウスが中心だ。TR系の音に近似したドタドタとしたキックと生々しいハイハットが骨のある4つ打ちを刻み、そこに毒々しくヒプノティックなシンセのフレーズを被せた"Mystic Adventures"は、非常にシンプルな構成が故にシカゴの狂気や荒々しさが端的に表現されたハウスだ。中毒的なアシッド・ベースが這いずり回る開始から淡々として無機質なキックやハイハットが加わりビートを作っていく"Righteous Rule"も、基本的に似たような作風でミステリアスなメロディが不気味な空気を発している。"Alba Techno"も無機質な4つ打ちビートという点では全く同じだが、浮遊感のある上モノやSE、そしてダビーな残響の効果によって荒々しさだけでなくディープな雰囲気も伴う。攻撃的で粗暴なトラックである"Galactic Devotion"は膨らみのあるキックや粗いハイハットによってラフさとパワフルな圧を生み、トランシーでもある快楽的な上モノも用いてレイヴ風なケバケバしさもある。動物の鳴き声みたいな効果音がユニークな"RX5 Theory"のみは抜けの良いパーカッションも加わってトライバルな感覚もあるが、それにしてもやはり無機質というか淡々としたリズムマシンの音が何処か空虚だ。シカゴ・ハウスへの愛が故に一本調子な安っぽいアナログ・サウンド全開、良く言えば非常に分かりやすい音楽性でぶれる事はないし、好きな人にとっては浮気させない位の変わる事のない魅力を放つ作品でありアーティストだと思う。



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| HOUSE13 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hear & Now - Aurora Baleare (Claremont 56:C56LP011)
Hear & Now - Aurora Baleare
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2018年も注目すべきバレアリック・ミュージックは多くこのジャンルが豊潤の中にある事は間違いないが、そんな一年の中でも特に見逃せない作品がClaremont 56から夏頃にリリースされたHear & Nowの初のアルバムだ。Claremont 56と言えばPaul 'Mudd' Murphyによって運営されているUKのクラシカルなバレアリック・レーベルの代表格であり、バレアリックというスタイルの周りにディスコやクラウト・ロックにダウンテンポといった要素を取り込んで、特に生音の有機的な響きを用いた開放的なサウンドが特徴的だ。そんなレーベル性にこれ以上ない位にぴったりな音楽性を本作は含んでいるが、そのHear & Nowは2000年代から活動するイタリアからNYハウスへと接近したハウスアーティストであるRicky Lと、そして同郷のアーティストであるMarcoradiによる二人組の新しいユニットだ。このユニットの経歴としては同レーベルに一枚のEPを残しているだけで決して長くはないが、その音楽性はその活動歴よりも遥かに円熟している。アルバムは湿った霧が満ちる中でゆっくりと眠りの中から目覚めていくような"Aurora Baleare"で始まり、哀愁のギターの旋律と透き通ったシンセが溶け合い微睡んでドリーミーな雰囲気から徐々に動き出す。神秘的なシンセや凛としたエレピで青々しい空の下で闊歩するような長閑なニューディスコの"Stella Dei Venti"は、しかし中盤から印象的なベースも加わってよりオーガニックな響きによって血の通ったサウンドを増す。メランコリーな泣きのギターとからっとしたパーカッションが乾きながらも心地好いディスコダブな"Salsedine"、浮遊感と透明感のあるパッドを用いてバレアリックな壮大さを演出しながらもしっとりしたディスコのリズムがある"Trasimeno"、ここら辺もギターやドラムの生な音を前面に打ち出されており、身も心も包み込んでくれる優しさに溢れた温かさを感じる事だろう。風の音や鳥の鳴き声から始まる"La Marsa"はいかにも古典的なバレアリックとも言えるが、繊細なギターのメロディーから徐々にギターカッティングやシンセーベースも加わり、そして安っぽいマシンビートも入ってくれば途端にイタロの快楽的なディスコになる流れで、底抜けな多幸感へと突入する。そして最後の"Airone"はアルバムを締め括るに相応しい憂いの感情が溢れ出すセンチメンタルかつバレアリックなアンビエント系で、抜けの良いパーカッションがキックレスながらも大らかなビートを感じさせ、そこに哀愁溢れるシンセと泣くように咆哮するギターがこれ以上ない程にドラマチックに展開して、感動的な映画の一場面を見せるが如くのサウンドスケープを広がらせる。アルバム通して基本的には踊らせるのではなく心に響かせるリスニング主体となっており、特に感情を全く隠さずに豊かな心の内を見せる豊かな響きは何処までも清々しく、そして太陽の光を全身で浴びるが如くの楽天的な世界観だ。夏にリリースされた作品ではあるが、夜が長くなってくるこれからの季節にもぴったりな一枚。



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| HOUSE13 | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Lay-far & Phil Gerus - Solitary High Social Club (Leng:LENG041)
Lay-far & Phil Gerus - Solitary High Social Club
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バレアリックシーンの代表的レーベルの一つであるClaremont 56、そのサブレーベルとして運営されるLengはどちらかと言うとユーモアや実験性もあるニューディスコ寄りのレーベルで、フロア向けのダンス・トラックを送り出している。そのレーベルの新作はロシアはモスクワからの人気アーティストであるAlexander LeyfaことLay-farと、そして同郷であるPhil Gerusの共作だ。Local TalkやSoundofspeed等からディープ・ハウスにヒップ・ホップやモータウン感覚を取り込んで優美に磨き上げた音楽をリリースする前者、そしてSonar KollektivやBastard Jazz等からブギーなディスコを送る後者と、今ではどちらもロシアン・ハウスの信頼の置けるアーティストだ。ここでは共作という形が単に話題性だけではなくその言葉通りに二人の音楽性が共存して良い具合に相乗効果となっており、Lay-farの色彩豊かな音色と多彩なビート感、そしてGerusの輝かしいコズミックなディスコ感が自然と一体化している。それが最も端的なのは"City 2 City, Star 2 Star"だろうか、もっさりしながらもずっしりブギーなディスコのビートに優美なエレピやシンセのメロディーで実に情感たっぷりに展開する豊かな音楽性で、特に咽び泣くようなシンセソロのエモーショナルな旋律に胸が締め付けられる。"Am I Tripping"もしんみりと憂いを含んだシンセのメロディーが耳に残るが、更にしっとりとした質感を生むヒップ・ホップかまたはエレクトロにも近い落ち着いたビート感で、勢いを抑える事によりしっかりとメロウな響きが耳に入ってくる。と思いきやずんどことけたたましく生っぽいディスコビートな"Love Life"ではゴージャスなシンセの響きやコズミックなSEもあって賑やかでハッピーなディスコ・ハウスを聞かせ、"4 Snowflakes On Her Lips"では優しく包み込むようなエレピのコードに豊かなシンセを被せて滑らかな展開で軽快なビートを生み、ブギーでうきうきと体も弾むディスコを披露している。比較的Gerusの影響と思われるディスコティックなビート感が強く出ているかなとは思うが、Lay-farによる動きの多いフュージョン風なシンセもしっかりと盛り込まれ、肉体的に踊れる感覚とリスニングの面でも申し分なく作曲家としての非凡なる才能を感じさせる作品だ。



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| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Baaz - Earth 2 (Office Recordings:OFFICE 14)
Baaz - Earth 2
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アナログをこよなく愛するものの置き場所に困る事や価格高騰の煽りを受け、当方も最近ではすっかり配信で音源を購入する事にも抵抗は無くなっている。例えそうだとしてもしかしアーティストにとってアナログでのリリースは価値あるものだと思うが、しかしベルリンの正に深い音響を放つディープ・ハウスのレーベルであるOffice Recordingsすらも積極的に配信に力を入れるようになるとは、これも時代なのだなと感慨深い。本作はそのレーベルの中心的存在であるBastian VolkerことBaazによる作品で、恐らくアナログでは2枚組でリリースされるのだろうが、今現在では配信でのみリリースされているのものだ。このレーベルのみならず過去にはElevateやSlices Of Lifeからもリリース歴があるのを理解すれば、如何にBaazの音楽性がミニマルな機能性があり深遠なる音響を持っているかを想像するのは難くないだろう。冒頭の"Who Am I"からして太くも軽快な、そして単純な4つ打ちのグルーヴを刻み、うっすら情緒匂わせる上モノのループとシンセストリングスによって仄かなエモーショナル性が発せられ、8分の中で大きなブレイクも特に用いずただただ心地好く踊らせるだけのミニマルなディープ・ハウスは彼の真骨頂だろう。続く"Odeon"ではロウで乾いた音質の詰まったリズムが変則的で、しかし優しく延びるシンセや耽美なコード展開を配して、これまた控えめに耽美な響きを持ったオールド・スクール寄りのハウスだ。次は一点してゴリゴリとした厳ついキックが打ち付ける骨太なグルーヴの"Hiding Space"、しかしここでも酩酊感を誘う幻惑的なシンセが奥深い空間演出を成し、淡々と冷えた感覚が持続しながらディープに潜っていく。"Oza"ではぐっとビート感は弱まりさざ波が広がっていくような穏やかなビートが優しく持続し、ぼんやりと浮遊するムーディーな上モノや遠くで聞こえるようなボイス・サンプルの効果もあって、殆どアンビエント・ハウスの状況ながらもより情緒が強く漂う。どの曲に対しても言える事は淡い音像が生み出す仄かなエモーショナル性、ミニマルに洗練されたグルーヴ、深い音響とBaazの個性は確率されている。ボリューム的にはアルバムと変わらない程で、Baazの魅力を十分に堪能する事が可能だ。



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| HOUSE13 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Tom Flynn - AW18 Collection (Planet E:PLE65393-6)
Tom Flynn - AW18 Collection
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もはやデトロイト・テクノ/ハウスという言葉だけでは括れない程に初期の頃から変化はしているものの、しかし今も尚積極的な活動を続けるデトロイトの古参レーベルであるPlanet E。特に主宰者がDJ業に勤しんでいる為か彼のオリジナル新作は滅多にリリースされないものの、デトロイトやまたはその外の世界からも優秀なるアーティストの作品をリリースする事でレーベルに多様性をもたらしながら、停滞する事なく活動を続けられているのだろう。レーベルの新作はまたしてもデトロイト外、UKはバーミンガムからのTom Flynnによるもので、2010年頃からStrictly RhythmやHypercolourを含む様々なレーベルから作品を量産するようにリリースしており、それはテクノ〜ディープ・ハウス〜エレクトロと多岐へと渡っていて音楽性の広さもあるようだ。そしてPlanet Eからの本作、ここでは官能的で大人びたディープ・ハウスを披露しており、いわゆるデトロイト的ではないものの美しく花弁が開くような叙情性はエモーショナルという点で共通項はあるだろう。"Packard"では淡々と4つ打ちのハウスのリズムを刻む中で、闇夜の中で黒光りするような繊細ながらも艷やかなピアノが妖艶に鳴っており、そこに時折ミステリアスなボーカル・サンプルのループが繰り返されたりするも、基本的に大きな展開は無くジャズ影響下のピアノが官能的な世界を作り上げている。同様のスタイルを踏襲する"Anna"も色っぽくムーディーなピアノが闇の奥で鳴っているようで、そこに女性の呟きを被せながらしっとりメランコリーな空気で満たしているが、若干パーカッシヴで鋭いリズムによって切れがあるハウス・トラックになっている。残りの"Marx"は前述の曲らと似たような官能性はあるのだが、曲調自体はよりヒプノティックな電子音が色々と現れて酩酊感を誘うヨーロッパのモダンな、例えばIsolee辺りの奇妙なエレクトロニックな鳴りのするハウスに接近している。一体どれがFlynnの主となる音楽性なのかまだ掴む事は出来ないが、ここではそのしとやかな官能性が十分に発揮されており、真夜中にもばっちりとはまるだろう。



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| HOUSE13 | 19:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Paolo Di Nicolantonio - Close To Me EP (Craigie Knowes:CKNOWEP9)
Paolo Di Nicolantonio - Close To Me EP
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リリース元のレーベルもアーティストについても全く知らなかったものの、色々と試聴している内に一聴して魅了されて購入した本作。グラスゴーの新しいレーベルであるCraigie Knowesからイタリア人のPaolo Di Nicolantonioによるもので、YoutubeではSynthManiaなるチャンネルを主宰しており、特にシンセサイザーやキーボードのマニアとして様々な電子楽器を紹介している。また元々90年代から音楽家としも活動はしていたようだが、本作がEPとしては初のリリースになるようだ。"Pyramid"はいきなりシンセのシンセらしい音色を発揮したバレアリックな曲で、ビート無しながらも光沢感を伴うゴージャスなシンセをメロディアスに展開して甘ったるいドリーミーな世界に即座に引き込み、イタロ・ディスコからリズムを抜いたらこんな曲になるのだろう。そしてお待ちかねビートも入ったダンス曲の"Close To Me"では、綺麗めの伸びやかなシンセストリングスで優雅なメロディーを配し、少々エグみもあるシンセベースがイタロな雰囲気を醸し、そこに安定感あるリズムマシンの4つ打ちと抜けの良いパーカッションを被せてずんずんと意気揚々と闊歩するようなバレアリック/イタロ・ディスコを聞かせる。シンセの音色の魅力を伝えるべく常に電子音が鳴っていているものの決してしつこくなり過ぎてはなく、青空を喚起させるような爽快なシンセの音色は野外パーティーにもはまる外向的なバレアリックで、8分という長さも全く長尺に感じさせない程の白昼夢だ。それをリミックスしたのはデトロイト・テクノ寄りでメロディアスな作風を得意とするJohn Shimaで、繊細で生っぽい響きのつまらせたリズムで変化を持たせ、シンセの音色はどちらかというと内向的で落ち着きを持たせて何だか90年代のAIテクノや初期のデトロイト・テクノへと接近した作風になった"Close To Me (John Shima Remix)"。元の太陽の光に照らされたような陽気な雰囲気に比べると、レトロ・フューチャーな懐かしく未来的なSFの世界をイメージさせる点で想像力を掻き立てる作風だ。原曲もリミックスも各々のアーティストの個性がしっかりと反映されているが、どちらもやはりメロディーに重きを置いている点が共通している。是非ともDJ向けのEPではなく、アルバムもと期待したくなる作品だ。



Check Paolo Di Nicolantonio
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