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Pablo Valentino - My Son's Smile (MCDE:MCDE 1215)
Pablo Valentino - My Sons Smile
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MCDE主宰、自身としてもCreative Swing Allianceの一員として活動しフランスのディープ・ハウスにおいて前線に位置するPablo Valentino。ジャズやファンクにディスコといった音楽を咀嚼して、実にエモーショナルなハウスを聞かせる音楽性は、だからこそMotor City Drum Ensembleと共鳴するのも納得だ。さて、ソロ名義では実に4年ぶりとなる新作は、EPのタイトルからも分かる通り彼の息子へと捧げられている。タイトル曲の"My Son's Smile"は正にレーベルの音楽性が発揮されており、優美でしとやかなフェンダー・ローズのメロディを用いつつディスコを思わせる効果音やファンキーなベースを挿入した味わいのあるディープ・ハウスになっているが、息子の笑い声もサンプリングに用いて雰囲気作りに一役買っている。一方で"Atlantic's Calling (One For Portugal)"はデトロイトのビートダウン・ハウスにも接近したスローモーで重心のどっしりした作風で、ざらついたビートが生々しさに繋がりつつも華麗なエレピがしっとりと情緒を付け加えていて、ゆっくりじわじわと染みるエモーショナル性がある。そしてざっくりとしたメロウなヒップ・ホップの"Good Ol' Days"においてもValentinoのエモーショナル性は際立っているが、これもジャズやファンクのみならず黒人音楽というものに対しての造詣があるからこそで、懐の深さは流石MCDEを主宰するだけある。またタイトル曲をSound Signature等でも活躍するNYのアーティストであるGe-Ologyが"My Son's Smile (Ge-ology 'Teach The Babies' Remix)"としてリミックスしているが、オリジナルのフェンダー・ローズから透明感のある綺麗なシンセに置き換え、またリズムは跳ねるような躍動感を獲得してオリジナルよりも綺麗で流麗なテック・ハウスへと変化し、素晴らしいリミックスを披露している。レーベルとしてのMCDEに期待している音楽性がここにはあり、やはりMotor City Drum EnsembleのみならずValentinoも要注目なアーティストである事を証明している。



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| HOUSE13 | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
DJ Pierre - Wild Pitch : The Story (Get Physical Music:GPMCD174)
DJ Pierre - Wild Pitch : The Story
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RolandのAIRAシリーズの発売の影響も少なからずあるのだろうか、積極的に刷新された名機を用いて現代版とも言える音楽が生まれているアシッド・ハウスのムーブメントは、オリジネーターさえも刺激したに違いない。アシッド・ハウスの元祖である"Acid Tracks"を生み出したPhutureの一員であるDJ Pierreも、近年はPhuture名義でライブを積極的に行いオリジネーターとしての存在感を放っているが、その勢いに乗って遂にキャリア30年の中で初のソロアルバムを完成させた。レーベルの案内に従えばオリジナルとリミックス、そして新旧の曲を収録している事から完全なオリジナル・アルバムではないものの、DJ Pierreによるアシッド・ハウスの魅力は当然としてNY系のソウルフルなハウスまで網羅されており、正にタイトル通りにWild Pitchスタイルの物語を聞く事が出来る。最初にセットされているのはBlunted Dummiesによる1993年作をDJ Pierreがリミックスした"House For All (DJ Pierre Wild PiTcH Mix)"で、オリジナルのソウルフルな雰囲気をいじらずに音質をクリアにしながら、その意味ではモダンさも意識したNY系ハウスになっている。そしてDJ Pierreによる新作である"MuSiQ"も官能的に囁くような女性ボーカルと切ないエレピのメロディーを用いたソウルフルなハウスだが、それは彼が単にアシッド・ハウスの開拓者である事だけでなくハウス・ミュージックに対して求道者である事を示しており、アシッド・ハウス方面しか知らない人にとっては新鮮味もあるかもしれない。序盤はそのようにクラシカルである意味ではこてこての熱量高いハウス・ミュージックが多いが、中盤になると"My Warehouse (DJ Pierre's Wild Pitch Remix)"のように控えめなアシッド・サウンドとギラギラとしたメロディーを武器に、所謂DJ Pierreらしい不気味で妖艶なハウス性が現れてくる。シカゴ・ハウスのレジェンドであるMarshall Jeffersonとの共作である"House Music"も不気味な男性の呟きや暗いベースラインによる催眠的な効果があり、ドラッギーなシカゴ・ハウスにはベテランとしての貫禄も滲み出ている。面白いのはクラシックをアシッド解釈したカバーも手掛けており、メロウなガラージ・クラシックに陽気なアシッドも加えながらも原曲の雰囲気を忠実に守った"Thousand Finger Acid"、快楽的なシンセベースのシーケンスとアシッド・サウンドが絡んで多幸感を増した"I Feel Love (1979 Disco Club Mix)"と、普遍性を損なう事なくアシッドの魅力も盛り込んでいる。最後は1994年の名作"What Is House Muzik"をオリジナルのままに収録しているが、跳ねながらタフなリズムを刻むドラムと覚醒的でアシッディーなメロディー、エネルギーが溢れ出す勢いのあるグルーヴと堂々たるハウスのクラシック的な佇まいがあり、何だかんだでアルバムの中でこの曲が一番カッコイイのは少々悩ましくもある。しかし、アシッド・ハウスが再燃している中でのパイオニアによる初のアルバムと言うだけでも、十分に魅力的な作品である事に変わりはない。尚、アナログは一部の曲しか収録されていないため、本作は絶対にデータでの購入がお勧めである。



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| HOUSE13 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Jun Kamoda - Misty Funk EP (Steel City Dance Discs:SCDD005)
Jun Kamoda - Misty Funk EP

2016年にMister Saturday Night Recordsからのリリースを皮切りにUKはブリストルのBlack Acreからも作品をリリースするなど、今注目を集めているJun Kamoda。またの名をイルリメと名乗る邦人アーティストは、そのイルリメ名義ではヒップ・ホップのラッパーとして、そしてTraks Boysのメンバーと組んだポップス・バンドである(((さらうんど)))の一員としても活動しているが、このJun Kodama名義ではハウス・ミュージックが基軸になっている。Jun Kamoda以前の活動は個人的な好みには合わず全く追っていなかったものの、Mister Saturday Nightからの本人名義でのデビューはそれまでフォローしていなかった当方にとってもサンプリング重視でファンキーながらもユニークなハウスが出てきたなという驚きがあり、それ以降は新作を聞きながら注視をしていた。そして現時点での最新作、こちらがオーストラリアの新興レーベルであるSteel City Dance Discsの第5弾とし2017年の終盤にリリースされたものだ。Jun Kamodaの音楽は例えばUSのソウルフルなハウスとも、欧州の洗練されてディープなハウスとも異なり、何処か遊び心さえも感じられるのはイルリメと同一人物である事が影響しているのは少なくないだろう。軽快に闊歩するような颯爽としたリズム、そしれ切り刻んだようなシンセのポップなメロディーが印象的な"Flaming Flamingo"は、トロピカルの陽気なムードや童心の無邪気さも感じられ、圧力のあるグルーヴやミニマルな構成に頼らない豊かな響きによって楽しませるトラックだ。よりざっくり生っぽいリズム感がファンキーさにも繋がっている"Misty Funk"にしても、嬉々としたポジティブな感覚が強く豊かな色彩を放つシンセが開放的に躍動し、ラフな響きも相まって手作り感のあるハウスは素朴ながらも生き生きとしている。裏面ではスネアのアタック感が強い"The Fine Line"において奇妙な電子音の響きと楽しげなメロディを交差させ、レトロなディスコ感を現在へと復刻させたようなポップな曲も。そしてそれをメルボルンのアーティストであるNite Fleitがリミックスした"The Fine Line (Nite Fleit Remix)"は、麻薬的なシンセベースのラインが暗く惑わせるエレクトロの味付けを行い、原曲とは逆方向に進んだような真夜中のダンス・トラックになっている。どれもこれもまさかイルリメの時には全く予想だに出来なかったユニークなハウス・ミュージックは、またこれもJun Kamodaの新たなる個性となるには間違いなく、新人ではないものの非常に面白いアーティストが出てきたなと思わせられる。



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| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Japanese Boogie & Disco Volume 2 (Black Riot:JBVOL2)
Japanese Boogie & Disco Volume 2
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公式やブート含めディスコ・リエディットの熱が続くダンス・ミュージックの業界で、その中でも一際注目を集めているのは和物である事に異論はないだろう。外国人にとっては日本語という独特の響きが新鮮に聞こえる事もあるのだろうが、またディスコやポップスの色褪せない良質な音楽が日本にもあったおかげで、それらが国内外のDJ/アーティストによって手を加えて掘り起こされている。特に私もそうだが古い時代のジャパニーズ・ポップス等には造詣が無い者にとっては、リリースから数十年を経て現代へと蘇る曲は新鮮に聞こえるわけで、懐かしい響きと共に新しい出会いとなるこういった動きは歓迎したい。本作はYam Who?が運営するロンドンのBlack Riotからリリースされたリエディット集で、名目上は第二弾と謳ってはいるものの第一弾は存在しない。Yam Who?以外は比較的若手のアーティストが参加しているようだが、どれも元々の曲の魅力が十分なせいもあるのだろうがリエディットも強烈なディスコ作品となり、フロアを鮮やかに彩るダンス・グルーヴの機能も伴ったものになっている。大貫妙子の"Carnaval"をエディットした"Kannushi"は、強烈なシンセベースのシーケンスが加わっているのが特徴で、更に過激なフィルター使いで盛り上がる展開も誘い、これぞ現代版ニューディスコだ。松原みきによる熱量の高いファンクやソウルの要素を含んだ"One Way Street"は、ここではボーカルは最小限に用いられる事でミニマル・ディスコといった趣きに変化。スローで甘く誘うようなポップスの松任谷由美「影になって」のリエディットの"Tepumashin No Dabumikkusu #1"は、正に広がりのあるダブ・ミックスが施され、原曲のアンニュイなムードを活かしながらダブ感が心地良い。そしてCosmosによるブギー・フュージョンな"Midnight Shuffle"をYam Who?が手を加えた"Mono Drive"は、原曲からの大きな変化はないもののドラム等が芯の詰まった音質へと入れ替えられ、やや落ち着いて穏やかなムードが強くなっている。どれもDJが使用するにはうってつけなジャパニーズ・ディスコ盤であるが、リスニングの観点からも曲の良さに魅了されてオリジナル盤にも手を出したくなる魅力を持っている。尚当方はアナログ盤を購入したが、配信では14曲収録とそちらの方をお勧めしたい。

| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki & Friends A Mix Out Session - Mixed Out (Soundofspeed:SOSR023)
Kuniyuki & Friends A Mix Out Session
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ここ数年、DJ NatureやVakulaにJimpsterなど著名なアーティストと積極的にコラボレーションを行い、プレイヤー/アーティストとしての手腕を発揮しているKuniyuki Takahashi。一連のシリーズとして続いたそのラストはロンドンの気鋭アーティストであるK15とのコレボレーションだが、K15と言えばWild Oatsからの作品を始めとしてオーガニックで情熱的な響きを打ち出してハウスのみならずブロークン・ビーツやダウンテンポやジャジーなものまで巧みに披露するアーティストで、そういった素養があるからこそKuniyukiとの共同作業は当然の如く相乗効果として働くに違いない。ここでは二人で制作した楽曲をそれぞれが解釈したバージョンで収録されているが、"Moving Minds (Kuniyuki Version)"はKuniyukiらしい人情味溢れる作風なのは当然としてフュージョンらしいの光沢のシンセが躍動し優美なエレピでしんみりムードを強めつつ、軽快ですっきりしたジャジーなマシン・ビート感で肉体を程良く揺らす。ジャズのスウィング感と呼んでも全く違和感はなく、Kuniyukiらしい熱き感情を誘発する作風が発揮されている。一方"Moving Minds (K15 Version)"も艶と温かみのあるシンセのメロディーで引っ張る点は変わらないが、全体的に慎ましくスピリチュアル性を増したモダン・フュージョンで、内面へと深く潜っていくような繊細なディープ性が際立っている。そして本作には過去にリリースされたJimpsterとの共作をTerre ThaemlitzことDJ Sprinklesがリミックスした"Kalima's Dance (Sprinkles' Deeperama)"が収録されているが、ある意味ではこれもリミックスという作業を通してのコラボレーションと解釈するのもありだろう。ジャズやファンクの要素に華麗な雰囲気もあった原曲から一転、DJ Sprinklesらしく無駄な脂を落としたつつ乾いたパーカッションも加えて枯れた侘び寂びの世界観を演出したディープ・ハウスは、全く派手な瞬間はないものの深い残響を活かしたアンビエント性によってしみじみと心に染み入る彼の作風へと生まれ変わっている。どれもアーティストの誠実さが伝わるような素晴らしい作品だが、特にDJ Sprinklesの枯れた中に存在する退廃的な美しさは圧巻だ。



Check Kuniyuki Takahashi & K15
| HOUSE13 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Jouem - Episodes 5/8 - The Edict Of Restoration (Mojuba:mojuba jouem 5)
Jouem - Episodes 5/8 - The Edict Of Restoration

2012年に開始したJouemの「Episodes」シリーズも5年をかけてようやく5枚、つまり平均すると1年に1枚のペースなので合計8枚を予定している事から残りは3年。随分と長い時間をかけて完結に至るこのシリーズは、8枚のEPのジャケットを合わせると1枚のアートワークが完成するというコンセプチュアルな内容だ。手掛けているのはMojubaを代表するアーティストの一人であるSven Weisemannで、複数の名義を用いて活動している事もありこのシリーズとしては実に2年ぶり。少々時間は空いてしまったもののSvenらしい繊細な美しさや叙情性の強いムード、そして深いダビーな残響を活かした作風に変わりはなく、ダンスからリスニングまで作風はありながら深遠な世界を覗かせる。A面にまるまる収録された"Anomalous Diffusion"はテンポよく心地良い4つ打ちを刻むダンス・トラックではあるが、ぼやけた男性声のサンプリングや紫煙のように抽象的なアンビエントな上モノを用いて幻惑的な揺らぎを生みつつ、スモーキな音像の中に反復する電子音が道を指し示すようで、ヒプノティックな性質が強い。よりアンビエントなりディープな要素が強い"Kazumi Cycle"は湿り気を帯びながらも無感情に淡々とした4つ打ちがJouemらしく、底から浮かび上がってくるパッドは薄く薄く伸びていく中にひんやりとしたパルスも織り交ぜ、感情を排してアンビエントの霧の中を突き進む。隙間の目立つ緩やかなブレイク・ビーツを刻む"Contagion"は異色さに面白さを感じるが、悲壮感漂う繊細なピアノの美しさや変則リズムから広がっていく残響が奥深さへと繋がっており、ダブ・テクノの深遠さを特に物語っている。毎度の事ではあるがこの幻想が広がる残響の中に情緒性も交えたWeisemannの作風は、その強い個性が故に逆にレーベルに対してのイメージも植え付ける程で、Mojubaを代表すると言っても過言ではない。とアーティストとして非常に才能があるにもかかわらず、ここ何年も来日が無いのは至極残念である…と思っていたところ、当記事執筆中に来日が決定したようだ。



Check Sven Weisemann
| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Norm Talley - Norm-A-Lize (FXHE Records:FXHE NT#1000)
Norm Talley - Norm-A-Lize

作曲家としてデビューは1997年と決して彼の周辺のアーティストに比べると早くはないため知名度では及ばないものの、80年代からDJとして活動をしているデトロイトの古参の一人であるNorm Talley。2000年代に入ってからはビートダウン・ハウスの盛り上がりの中でDelano SmithやMike Clarkと組んだThe Beatdown Brothersなる活動等で注目を集め、特に2010年以降は積極的に楽曲制作を行いミニマルな機能性からソウルフルな感情まで持ち込んだハウスをリリースし、停滞するデトロイト勢の中でも息巻いている一人だ。さて、デビューから20年を経て初めてリリースされたアルバムは、同じくデトロイトのOmar Sが主宰するFXHE Recordsからだ。レーベルとしては粗い音質のロウ・ハウスから感情性を込めたビートダウン・ハウスにディスコ・サンプリングなモノまで扱っているが、このアルバムにはそれらの要素がみな詰まっていて、そして何よりも長いキャリアを経てリリースされただけに円熟味なり安定感を含んだ完成度だ。アルバムの始まりは恐らくサンプリングを用いたであろう"Get It Right"で、凛とした輝きのあるピアノコードや女性のボーカルに引っ張られるディスコ・ハウスでファンキーだ。続く"Seneca St. Gruv"は鋭いハイハットが切り込んできて機能的なミニマル性もあるハウスだが、しっとりエモーショナルなシンセのコードがいかにもデトロイトらしい。そして底からもりもりと盛り上がってくるようなビートダウン風な"Dub Station"は、そこまでは遅く粘性のあるスタイルではないものの反復する上モノの覚醒感で深みにはまる。ディスコ・ハウス路線が爆発した"Alright"はアルバムの中でも特に耳を惹き付ける曲で、同郷のL'Reneeをフィーチャーしてファンキーな歌を聞かせつつ図太いキックの4つ打ちやサンプリングによる金属的な上モノの派手な響きもあり、肉体は激しく揺さぶられる。かと思えばざらついたフィルター処理で訝しい黒さに染まるビートダウン・ハウスの"No Need 2 B"、デトロイト・テクノのハイテックな感覚を持ち込んだ疾走感のあるテクノの"Cause I Believe"、アルバム中最も激しくひしゃげたようなリズムを刻むテクノともディスコ・ハウスともとれる強烈なダンス・トラックの"The Body"、そしてリズム重視でひんやりとした温度感のミニマル・テクノな"The Rise"と、様々な曲調が収められた本作は長いキャリアに於ける集大成と捉えられるだろう。決して作品として纏まりが無いようには全く感じる事はなく、色々な要素は確かにありつつもそれもデトロイトのアーティストが実践しているものであり、長年の経験に裏打ちされた音楽性がここに集約されているのだ。



Check Norm Talley
| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Walter Jones - Instant Gratification (Whiskey Pickle:WPW002)
Walter Jones - Instant Gratification

デトロイトにも同姓同名のアーティストがいるので紛らわしいが、こちらはニューオリンズ出身のWalter Jonesによる2017年作。2003年にWestbound Musicから初リリースしたのをきっかけに、それ以降もCisco InternationalやDFAにPermanent Vacation等から数える程の僅かな作品数ではあるもののリリースしており、コズミックなシンセ使いで煌めくようなディスコ〜バレアリックなハウスが彼の個性として定着している。本作はアナログでは3年ぶりとなる新作ではあるが、おおよそ作品的には大きな変化は無くファンの期待に沿った内容だ。流麗なシンセのコードと星の煌めきのような電子音を散りばめた"Razzamatazz"は特に彼らしさが感じられるオールド・スクールなハウスで、その哀愁のある世界観や安定して落ち着いた4つ打ちのリズムからはややディスコティックな雰囲気もあり、大きな揺さぶりは無いがすっと肌に馴染むエモーショナル性が心地良い。対照的にダーティーで暗めのシンセベースが浮かび上がる"Harmonic Urgency"は、更に捻れたようなアシッド・サウンドも加わって次元を歪めるようなサイケデリアがあり、中毒的なディープ・ハウスになっている。作品中最も弾けて躍動するグルーヴが感じられる"The Grinder"では爽快なシンセをコード展開しつつディスコティックな眩い煌きが現れ、そしてラストの"Making Love"ではビートは入らず鳥の囀りやスポークンワードから始まり壮大なシンセによるアンビエント的な展開が素晴らしく、どの曲に於いてもやはり輝きを含んだシンセ使いによる装飾が映えている。斬新性や革新的ではなくクラシカルなハウス性だからこそ質が重視され、耳を惹き付けるそのメロディーセンスは確かなものだ。なればこそ、その構成力は是非ともアルバムでと期待してしまう。



Check Walter Jones
| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Nick Hoppner - Work (Ostgut Ton:OSTGUTCD40)
Nick Hoppner - Work
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ドイツのテクノ/ハウス帝国の中心であるOstgut Ton、「Berghain/Panorama Bar」という著名なクラブを運営する傍らレーベルとしても確固たる存在感を確立させてきたが、その初期のマネージメントを行っていたのがNick Hoppnerだ。Panomara Barで長年レジデントを務めるDJとしての素質は言うまでもないが、数年前にはレーベルのマネージメントから身を引きアーティスト活動に専念したというだけあり、アルバム制作にも身を乗り出し制作者としても頭角を現している。本作は2017年にリリースされた2枚目となるアルバムだが、前作でもテクノやハウスのみならずダウンテンポやブレイク・ビーツの要素を取り込んでいたが、ここに於いては更なる表現力に磨きを掛けてアーティストとしての成熟を見せている。アルバムはゆったりした変則的なマシン・ビートに魅惑的な美しい電子音響が展開される"All By Themselves (My Belle)"で始まるが、ここからして既に単純な4つ打ちとは異なるIDM的な作風を見せ、アルバムの流れは全く読めない。続く"Clean Living"は彼がDJとしてもプレイする古典的なハウスを現代風にアップデートしたような力強くもソウルフルな曲だが、面白いのはそういった普通の曲ではなく例えば鋭いブレイク・ビーツを刻み遊び心あるポップな上モノが舞う"Hole Head"など、闇の深い熱狂真っ只中のクラブでは聞けないであろう曲だ。闇が似合うに曲にしても"The Dark Segment"の深海から響いてくるようなスローモーなダブ・テクノは、決して騒ぎ立てるような曲ではなく慎ましく闇に染める残響の美しさがある。勿論全くクラブの雰囲気が完全に喪失している事はなく、勢いのある硬めのハウス・グルーヴと幻惑的な上モノの魅力的な"Forced Resonance"やリラックスしたビート感と多幸感あるメロディーに天上へと昇っていくようなニューディスコの"From Up And Down"など、ダンス・トラックも盛り込みつつHoppnerらしい繊細な美しさを披露している。多様な音楽性を披露したその最終型はラストの"Three Is A Charm"で、Randwegをフィーチャーして生演奏も取り入れてフォーキーなりインディー・ロックな雰囲気もある曲で歌心さえ感じさせる牧歌的なムードに心は安らぐばかり。アルバムだからこそと言う事もあるのだろうが、かつて制作していたフロア特化型のEPに比べると機能性に依存せずより音響の美しさやリズムの多用性に進んでおり、Ostgut Ton一派の中でも特に表現者として優れている。何度でもリスニングに耐えうる充実した一枚だ。



Check Nick Hoppner
| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Mark Barrott - Cascades (Francois K Mix) (International Feel Recordings:IFEEL 068)
Mark Barrott - Cascades (Francois K Mix)
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バレアリック・シーンの最前線を突き進むInternational Feelの主宰者であるMark Barrottの作品ならば、 何はともあれ注目しておいて損はないだろうが、その上ジャンルを超越しダンス・ミュージックの生き字引とも呼べるFrancois K.という御大を引っ張り出してきたのだから、本作はもはや見過ごし厳禁だ。元々は2016年にリリースされていた"Cascades"はBarrottらしい屋外の壮大な空の広がりや燦々と降り注ぐ太陽光をイメージさせる生命力に溢れたバレアリックなトラックで、多幸感溢れるアルペジオが流れる中に爽快なタムが弾け、優美なフルートらしき旋律に導かれる至福に包まれる大らかな内容だった。そんな元々完成度の高い曲に対しFrancoisはどう向かい合うのか、その結論としては敢えて奇を衒う事は一切無くオリジナルを尊重してイメージを壊さずにクラブフレンドリーな正統派4つ打ちに、横綱相撲と言うかベテランの貫禄たっぷりなりミックスを披露している。"Cascades (Francois K Mix)"は序盤から分厚いハウスのキックが生命力を感じさせる力強いビートを刻み、硬いパーカッションやテクノ的な電子音も追加して随分と骨太に音を追加しているが、元の開放感や爽快感を損なうような手の加え方はしていない。それどころか原曲のオーガニックな響きに更に大地の鼓動も加わって豊かなエネルギーが溢れ出すように、リミックスが原曲の魅力に更に磨きを掛けている事にFrancoisのDJ/エンジニアとして実力が示されている。またBrrottによる新曲"Theme From Nowhere"も素晴らしく、生命力が茂る生き生きとしたパーカッションと躍動的なベースから始まり、優美なフルートらしき笛の音色や色彩豊かなピアノで総天然色な世界を描き出すオーガニックなバレアリック・ハウスは、イビサの享楽的なダンス・ミュージックの夜ではなくBarrottが過ごす長閑な自然が息衝くイビサからのインスピレーションなのだろうか。たった2曲だけの作品だがどちらもInternational Feelらしい大らかなバレアリック感があり極上の曲であるが、また久しぶりのリミックスワークを披露したFrancois、その手腕は全く衰えていない事が示されただけに新録やリミックスをもっとと渇望してしまう。



Check Mark Barrott
| HOUSE13 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |