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Robert Hood - Paradygm Shift (Dekmantel:DKMNTL050)
Robert Hood  - Paradygm Shift
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近年はディスコ・サンプリングを前面に打ち出したファンキーなゴスペル・ハウスな作風が特徴のFloorplan名義がヒットして、ベテランながらもより一層アーティストとしての進化を見せつけているRobert Hood。しかし根はやはりデトロイト生まれのテクノ・アーティスト、かつては最初期のURメンバーとして、そして脱退後にはミニマル・テクノのオリジネーターの一人として活動していた事もあり、Hood名義でこの何処を切り取ってもミニマル・テクノなアルバムへ5年ぶりに戻ってきたのは意外でも何でもない。2017年作の本作はしかも今や世界有数のフェスティバルとしてのみならず実力派レーベルとなったDekmantelからのリリースで、レーベル自体は個性的で豊かなジャンルに及ぶ多様性があるが、そんなレーベルからこういったテクノ頑固一徹な音楽がリリースされるのも、やはりレーベルからレジェンドに対する畏敬の念みたいなものもあったに違いない。出だしの"Preface"こそ深い底で謎めいた電子音が蠢きクリック音等が連打されるビートレスなアンビエント調の曲だが、それ以降に続く曲はある意味では金太郎飴的とも言える、決して流行や新鮮味とは無縁の冷えて無機質なリズムを刻む、しかし一方でマッチョな肉体感も伝わってくるミニマル・テクノが陣取っている。金属の鳴りが強いシンバルとドスドスとしたキックの応酬に、ミニマル性が根付く単純なシンセのリフ、スプレーのような音響も交えた"Idea"は音の抜き差しによって若干の展開はあるものの、古典的なミニマルの様式美を実践する曲だ。続く"I Am" - 俺とは - という自己主張を感じさせるこの曲は、より平坦なキックとハイハットやハンドクラップの永続的なグルーヴと警告音のようなシンセの反復が、永続的な催眠性を催してミニマル地獄へと誘うファンキーなテクノで、こういった冷たくも肉感溢れるテクノがHoodらしさを主張する。同じミニマルな構成でも、例えば"Nephesh"のように明るいコードを用いて陽気なファンキーさを打ち出した曲、ドンドンと太い芯を持ったキックが骨太ながらもエモーショナルなシンセのループを用いて若干デトロイトな雰囲気もある"Pneuma"、音の隙間を浮かび上がらせる事でリズムの生々しい骨っぽさを強調する"Thought Process"など、ミニマルという軸を守りつつ曲毎に個性があるからこそアルバムを通して全く飽きさせない流れも見事だ。最近のシーンに溢れる線が細く揺らめくグルーヴを用いたミニマルとは一線を画す、これがオリジネーターだ、これがデトロイトだ、という気概が伝わる骨太なこのミニマル・テクノはもはやクラシック。断然支持する。



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| TECHNO14 | 22:00 | comments(0) | - | |
Lost Souls Of Saturn - The Awakening (R & S Records:RS 1908)
Lost Souls Of Saturn - The Awakening
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2017年に名門テクノレーベルのR&S RecordsからデビューしたLost Souls Of Saturnは、完全な新人ではなく実は人気DJのSeth TroxlerとPhil Moffaによるユニットだ。とは言いながらも個人的に両アーティストがお気に入りではなかったのだが、この新作ではBorder Community主宰のJames Holdenが久しぶりにリミックスを提供しているのだから、自然と注目せずにはいられずに購入に至る。Troxlerについては機能的でDJ向けの曲を作るアーティストであるが、Moffaについては全く知らなかったので調べてみると、最近ではドローンを用いた重厚なアンビエント・アルバムも手掛けていたりしている。そんな二人によるLSOSは、最近はなかなかリミックスも行わないHoldenさえもが興味を抱く程に独特で奇抜な音楽性を含んでおり、このEPでも単純なクラブ・トラックではなくアンビエントに民族音楽やスピリチュアル性に映画音楽といった要素が一つなり、ライブ感に満ちた胎動と共にダークかつサイケデリックな世界を構築している。"The Awakening"は平坦なドローンを用いた穏やかなアンビエントで開始するが、その闇の何で繊細ながらもヒプノティックな電子音の粒が不気味にうなり、そして宗教感がある祈りのような重層のコーラスも加わり、静謐ながらも厳かな佇まい。しかし中盤以降は闇の奥底でズカズカと鳴る民族的なパーカッションによって土臭さも獲得し、破壊的なエネルギーが炸裂し強烈なグルーヴに飲み込まれていく。しかしやはり格が違うのはHoldenで、元々8分だった曲が12分越えまで拡大された"The Awakening (James Holden's Past Life Rave Regression)"は、序盤こそ原曲のエスノ・トライバルな雰囲気は残しているが、次第に鋭利でささくれだったビートを刻みながら毒々しくもトランシーなモジュラーシンセのループによってHoldenらしいトランス感で包んでいく。重層的なシンセが生み出す目くるめくサイケデリックな幻覚、浮かんでは消える崇高なコーラスもより魔術のように効いてきて、Holdenの狂おしくも美しく音響によって麻薬のようにズブズブと嵌めてくるサイケデリック・エレクトロは圧巻以外の何物でもない。Holdenのリミックスは言わずもがな素晴らしいが、LSOSの音楽性も個性的であり、本作の後にリリースされたアルバムも注目すべきだろう。



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| TECHNO14 | 22:00 | comments(0) | - | |
Santiago Salazar - The Night Owl (Love What You Feel:LWYFLP 02)
Santiago Salazar - The Night Owl
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かつてはUnderground Resistanceという集合体の一員として、そしてLos Hermanosのメンバーとして活動していたDJ S2ことSantiago Salazar。ロスアンゼルスからデトロイトへと移住し憧れのURの中で大きく羽ばたいたSalazarは、しかし成長と共に自身の足で歩むべきグループを離脱して、ラテンプロジェクトのIcan Productionsやテクノ寄りなHistoria y Violenciaを運営するなどしていた。今では活動が停滞しているURに関連するアーティストの中では現在形の人であり、積極的にアルバムも制作するなどデトロイト・テクノ好きなファンだけにではなくより開かれた存在と言えるだろう。そんなSalazarによる2019年リリースの3枚目のアルバムでる本作は、アナログでリリースされた同名のEPに曲を付け加えて配信でリリースされたものだ。随分と前にURを離脱しロスアンゼルスへと戻ったりとはしているものの、デトロイト・テクノへの敬意を忘れずに、そしてチカーノ系アーティストとしてラテンな根源を含むその音楽は、流行に左右されないテクノとハウスの中庸な音楽性だ。情熱的で希望を抱かせるシンセのメロディーとブイブイとしたベースライン、弾ける爽快なパーカッションに足も軽くなる"Light The Sage"は、内省的ながらもいかにもデトロイトらしいエモーションが伝わってくる。音の数を絞った事で臨場感のあるハイハットやベースが強調された"Loca"は、一見地味ではあるがDJとして立場からツール性を意識したキープ感を強調している。一般的なデトロイト・テクノのイメージと特に合致するのは"Midnight Oil"だろうか、軽快に疾走する4つ打ちのグルーヴに叙情的なシンセストリングスとコズミックな旋律を絡めたこの曲は、完全にURの系譜に属するハイテックなテクノで宇宙へと飛び立っていく。同じようにコズミック感溢れる"The Night Owl"はどちらかと言えばディープ・ハウス寄りで、ゆったりと余裕のあるグルーヴ感に乗って大空で遊泳を楽しむかのような壮大な曲。"Cosmic Creasing"はファンキーなラテンのフレーズを執拗に用いつつハウスへと落とし込み、ミニマルの流れでじわじわと持続感を保ちつつ酩酊感のある電子音を用いて深さも感じさせる。同じラテン系でも"Chuco's Groove"は激しいパーカッションや力強いドラムマシンのリズムが肉体を激しく揺さぶる勢いがあり、多くのダンサーが熱狂的に躍り狂うカーニバルの喧騒のようだ。アルバム全体を通して決して特別な衝撃を受けるような斬新性や流行のスタイルは皆無ではあるが、デトロイトのクラシックな作風に則った音楽性には寧ろ安心感を覚えるだろうし、リスナーもそれを期待しているだろうからこれで良いのだ。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
STEREOCiTI - Constant Turbulent Riot EP (Groovement:GR034)
STEREOCiTI - Constant Turbulent Riot EP
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日本からベルリンへ移住し、そして現在はリスボンを拠点に活動するSTEREOCiTI。自身でWAVEGUIDEというレーベルを設立した上で同名のプロジェクトであるWaveguideによって、かつての深遠なるディープ・ハウス色の強かったSTEREOCiTIからハードなテクノへと舵を切ったKen Sumitani。ここに来て久しぶりのSTEREOCiTI名義の新作はどのようになっているのかと興味は尽きないが、蓋を開けてみればやはりこの名義でもテクノ色を強めた上に、更にはDrexciyaのようなエレクトロへと果敢にも挑戦し、その意味ではより無骨でハード(響きではなくスタイルとして)な方向性へ向かっている。特にエレクトロを打ち出したのがタイトル曲の"Constant Turbulent Riot"で、ミニマルかつヒプノティックな電子音のループに鞭で叩き打つような鋭いビートを合わせて、暗き闇が広がる無機質なエレクトロを披露。ジャンルとしては以前のディープ・ハウスとは異なるものの、無駄な音を排して隙間を活かして骨格を浮かび上がらせた構成はいかにもSTEREOCiTIらしく、厳ついエレクトロ・ビートなもののどこか侘び寂びも感じられる。"Celestial Seeker"はテクノともハウスともとれる中庸な曲調で、Mojubaからリリースしていた頃の浮遊感のある電子音を散りばめる事で幽玄な叙情性を生み、しかしややこれもロウなリズムの響きがエレクトロを匂わせる。"Ineffable Truth"は比較的近年のWaveguideのツール性の強いミニマルなテクノに寄せてきた感もあるが、すっきりとしたキレのある4つ打ちに従来の微睡んで叙情性のある上モノを被せた上に繊細な電子音響を込めた作風は幽玄なテック・ハウス性もあり、Mojubaの頃の音楽性を備えつつテクノ化したような。最後の"Paragraph"が一番従来のSTEREOCiTIらしいディープ・ハウスだろうか、内向的な深遠な音響の中には覚醒的なアシッドもじんわりと牙を向きつつも、ハードなのではなく慎ましささえ感じられる控えめな神秘性が現れている。一つのEPの中で色々な方向性が含まれているのはシーンに適応すべく色々と試しているのだろうか、しかしそのどれもSumitaniの燻し銀的な渋い魅力がある。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Sonmi451 - Nachtmuziek (Astral Industries:AI-13)
Sonmi451 - Nachtmuziek
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沸き立つアンビエント/ニューエイジのムーブメントが比較的ダンス・ミュージックの外から起きているのに対し、ロンドンを拠点にするAstral Industriesはよりエレクトロニックで表向きはそうでないものの夜のダンスが根底にあるアンビエント/ニューエイジを掘り下げるレーベルだ。人気のあるテクノ系のアーティストの新作だけでなく、過去の埋もれたアンビエントの編纂も行い、このムーブメントが発生する前からレーベルの特異性を確立している。本作はベルギーのアーティストであるBernard ZwijzenことSonmi451の過去音源を纏めたもので、アーティスト自身がそれ程知名度があるわけではないものの、2005年頃から活動を初めてアルバムリリースは10枚を越えるなど精力的な活動を行っている。その音楽性はグリッチやミニマルを含むアンビエントで、"Probe"を聞けば分かる通り水面に波紋が伝わっていくような揺らぎのあるシンセレイヤーに繊細な美しさを秘める電子音やヒスノイズを散らし、ダビーな音響によって更に酩酊する揺らぎを生み出して、時間軸が遅くなるような感覚に陥らせる。時折入っくる日本語サンプルは妙に艶かしく、エレクトロニックでありながら有機的であり、人肌の温もりが伝わってくるようだ。よりチリチリとしたヒスノイズとぼやけた音像を作るドローンに覆われる"Vladivostok"も、日本語サンプルや動物の音らしき環境音を導入して有機的な響きを打ち出し、殆ど動きの無いひたすら安眠作用の強いアンビエントを展開。"Outer Shell"はザラザラとしたノイズやクリック音の上に弦が物静かに美しく鳴り、怪しくながらもその静謐な幽玄さに魅了される。"Quiet Piece For Bram"に至っては広大な宇宙に数々の星が瞬くように、ぼんやりとした音の粒が繊細な美しさを発しており、日本語の呟きが催眠的に用いられながら寝る前の子守唄かの如く安らかな鎮静作用のあるアンビエンスを発揮している。複数のアルバムやEPからの曲を纏めながらも世界観は一貫して心を落ち着かせる癒やし効果もあるアンビエントで、Sonmi451というアーティストの音楽性が正確に伝わってくる良質なコンパイルがされている。闇夜が広がる時間帯にぴったりな、しっとりとしながら美しいアンビエントで、是非とも寝る前にかけておくと最適だろう。



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| TECHNO14 | 09:00 | comments(0) | - | |
Grand River - Pineapple (Spazio Disponibile:Spazio 015)
Grand River - Pineapple

全く知らないアーティストだったものの、Donato DozzyとNeelが主宰しトランス感覚を含むディープな音響テクノを実践するSpazio Disponibileからのリリースだった事もあり試聴してみたところ、思いの外に想像力を刺激するようなアンビエントやニューエイジの要素が鳴っているリスニング寄りの音楽性に魅了され購入を決断した一枚。それこそイタリアのアーティストであり、本人曰くサウンドデザイナーを務めているAimee PortioliことGrand Riverによるデビューアルバムで、2017年に同レーベルからEPをリリースしてその翌年には本作へと繋がるのだから、レーベルの期待値も大きかったに違いない。勿論、時代的にも丁度アンビエント/ニューエイジが再燃しているタイミングだった事もあり、その意味ではリスナーにとっても非常に自然と受けいられる内容だ。アルバムの始まりからして非常にイマジナリーかつディープな"Pleasure Garden"が待ち受けており、重厚感のあるドローンに覚醒的なアルペジオや神秘的な電子音が入り組み、多層になって絡み合うようなエレクトロニクスが深い瞑想のアンビエンスを生み出している。続く"Installation"は一転して音の数は減少し間を作る事で奥深い空間演出をし、霞んだような音響によってアブストラクトな雰囲気もあるニューエイジ風。そして特にニューエイジを強く感じさせるのが10分にも及ぶ"When It All Was Flourishing"で、ぼんやりとした電子音のループはしかし抽象性もあり、ゆったりと液体が形を変えていくように少しずつ変化し音が組み立てられ、ライブ感を伴いながら輝かしい多幸感の中へと入っていくノンビート・アンビエントだ。かと思えば長閑な田舎風景が思い浮かぶ素朴な電子音に懐かしみを感じる"Matter"や、生き物の活動が聞こえるフィールド・レコーティングにヘビーなドローンが被さり、そして何処か民族的で太古の時代を思わせるパーカッションも加わった原始的な"Ecouri"と、しっかりと軸はありながらも曲毎にそれぞれ強い個性が現れている。フロアを沸かすダンス・トラックは皆無とSpazio Disponibileの作品にしては意外に思うところもあるが、繊細で美しくもあるディープな音響という意味では共通点もあるし、またサウンドトラック的で風景を描写するような音楽性が芸術的でもあり魅惑を持っている。デビューアルバムながらも、新人とは思えない高品質なアンビエント・テクノだ。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Jimi Jules - Karma Baby EP (Innervisions:IV86)
Jimi Jules - Karma Baby EP
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数多くのタレントを擁しベルリンが誇るレーベルであるInnervisions、そんなレーベルから2019年に送り出されて気になった作品が本作。スイスはベルン出身のJimi Julesはエレクトロバンドの一員としても活動しつつ、WatergateでのレジデントDJとしての活動やDefectedやCocoonからも作品をリリースし、今ダンス・ミュージックのシーンで有望なアーティストの一人だ。エレクトロニックでドラッギーなのに、マルチプレイヤーらしく艶めかしくもあるトラックに時にはソウルフルな歌も乗せた曲調が印象的で、2013年にはOliver $との共同作品であるブラックネス溢れる"Pushing On"をヒットさせて、既に一際注目を集めていたようだ。Innervisionsからは初作品となるが、特に過去の曲から大きく変化したわけではないものの、やはりInnervisionsによる太鼓判が押されているだけあってよりディープかつネオントランスとでも呼びたい覚醒感溢れる響きはより一層黒光りする魅力を放っている。重厚感溢れるドラッギーなベースサウンドと対照的に奥で鳴っているような繊細で美しい効果音から始まる"End Of The World"は、しかし直ぐにInnervisionsらしいヒプノティックなシンセのリフが浮かび上がり、土着的な歌も加わって背徳的ながらも恍惚感に満ちた美しさを披露するディープ・テックな曲。"Karma Baby"はフラットで淡々としたビートと微かにダビーな音響によって深い深海を潜航するようなダークなディープ・ミニマルで、大らかに包み込むようなシンセの音響美と金属的なパーカッションや繊細なSEが狂おしくも美しく装飾するなど、闇の中で映える背徳的な美意識が感じられる。"We Out Here"になるとリズムはやや勢いを増してテッキーな上モノのリフやトランス的な快楽性に満ちたループを存分に用い、一聴して耳を惹き付けるメロディアスな作風とダンスとしての機能性を両立させた、これも正にInnervisions的な世界観を表現する。Jules のソウルフルな面が強調されたのは"Last Muuh Before Paradise"だろうか、生っぽくライブ感あるざらついたビート感に笛やベースに民族的なパーカッションを織り交ぜたアフロかつディープな黒光りするハウスは、そして祈りを捧げるような歌も加わってスピリチュアルに展開する様はOsunlade辺りの音楽性が思い浮かんでくる。音楽的には壮大なスケール感と揺らめく恍惚感がありInnervisionsの音楽性と完全に合致しており、これからのレーベルを引っ張っていけると思わせられる程にどの曲も魅力的だ。これは是非ともEPだけでなく、アルバムも聞きたくなる存在である。



Check Jimi Jules
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Steven Rutter & Kirk Degiorgio - Braconian Beta (FireScope:FS016)
Steven Rutter & Kirk Degiorgio - Braconian Beta
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密室のベッドルームから宇宙への夢想、かつて90年代前半に盛り上がったインテリジェンス・テクノというムーブメントの元祖の一つに挙げられるのが、B12またはRedcell名義で活動していた二人組だ。大きなムーブメントとなる事は、逆にそれが去る時も早く2000年になる頃にはこのユニットの活動もほぼ停止しシーンからすっかり忘れ去られていた。その後も細々とは活動していたようだが、二人の内の一人であるSteve Rutterが2016年にFireScopeを立ち上げてからの勢いは目を見張るものがあり、自身ソロやB12名義だけでなくRuss GabrielやJohn Shimaといったデトロイト・フォロワーの作品もリリースし、全盛期にも劣らないインテリジェンス・テクノのオリジネーターとしての実力を発揮している。本作はそんなRutterと同じくインテリジェンス・テクノでは大ベテランのKirk Degiorgioが2018年末にリリースしたEPで、恐らく二人を知っている者であればおおよそ予想が出来るデトロイト・テクノの未来感にも共鳴しながら洗練されたテクノで、全く驚くような作品ではなく寧ろその出来に安心出来る期待通りの内容だ。決してリスニング寄りの曲だけでなく、例えば"Reconnaissance Pass"のように跳ねるようなリズム感と美しいパッドを伸ばしたデトロイト・テクノ的な曲もあり、アシッド風なベースラインやコズミックなSEを織り交ぜて、広大な宇宙空間を高速で移動するようなSF感覚は二人の得意とする音楽性だ。"Sechel"ではぐっとテンポを抑えて、そこに光り輝くようなコズミックなシンセのリフやトリッピーなアシッド・ベース、そして望郷の念を感じさせるロマンティックなシンセストリングスが宇宙を描き出し、ゆっくりと未知なる宇宙の深層へと入っていく。如何にもインテリジェンス・テクノらしい曲は後の2つだろうか、霞みながらも幻想的なパッドに覆われる中に美しいシンセが層となりアンビエンスな感覚も作る"Encapsulation"、ラフながらも軽快なリズムを刻む中にしっとりとしながらも未来的な音の鳴りをするシンセが瞑想へと引き込む"Tri Order Descent"、ベッドルームという閉鎖空間に深い精神世界への旅を発生させる想像力が感じられる。当たり前と言えばそうなのだが、この手の音楽の先人だけあり二人の相性も抜群で、これがインテリジェンス・テクノだと言わんばかりの音楽は時代に左右されず普遍的な魅力を持っている。



Check Steven Rutter & Kirk Degiorgio
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Keihin - Esoteric Communication (Prowler:PROW001)
KEIHIN - Esoteric Communication

千葉を拠点として数々のアンダーグラウンドなパーティーを活動の場にし、自らでは今は無きModuleでAlmadellaを主宰していたKeihin。4つ打ちのテクノだけでなく変則的なリズムと、そしてダブ・ステップやトランスにインダストリアルといった複数の音楽性を貪欲に咀嚼したそのDJプレイは、筋肉隆々とした肉体感を思わせるエネルギッシュな勢いと荒廃したようなダークな世界観が特徴だ。2016年頃からは子育ての為に一旦活動は休んでいたものの、2018年暮れに遂に再始動に合わせ遂にProwlerを立ち上げて、2019年1月にはこのレーベル第一弾となる初のEPをリリース。もし過去にKeihinのDJを聞いた事がある人であれば、本作を聞いたら正にKeihinの音楽性そのものである事は直ぐに理解出来るような、ベース・ミュージックやブレイク・ビーツも咀嚼した切れ味鋭くもハードなリズムにインダストリアル系譜の機械的で荒廃した響きがあり、そして何よりフロアを刺激するダンス・トラックである。"Dawn"は初っ端から太いキックが変則的なリズムを刻むダブ・ステップ調だが、闇の奥底で不気味な何かが蠢くような音がジワジワと鳴っており繊細な音響も聞かせたりと、ハードなグルーヴ感にダビーな響きも織り交ぜて勢いだけではなく深い酩酊感も伴うディープな一曲。より金属的で鋭いリズムが肉体を抉るような"Rust"は特に連打されるブレイク・ビーツが刺激的で、中盤からはホラー的なぼやけた音像が恐怖を煽るようなインダストリアル調もあったりと、全く明るさの見えない退廃的な世界観が続くアグレッシヴなテクノだ。"Stiff"では更にイーブンキックから外れてつんのめって角々としたリズムを刻み、横にぐらぐらと揺らすベース・ミュージックやダブ・ステップの要素が前面に出てくるが、ここでもうっすらとした冷えたパッドや闇夜に浮遊するダビーな音響がディープな面も作り出して、勢いだけではない深みはKeihinのDJと同様だ。そして今回ドローン音響ユニットのSteven Porterの一人でもあるKatsunori Sawaがリミックスを提供しているが、"Dawn (Katsunori Sawa Remix)"は原曲のイメージを損なわずにより打撃が強いインダストリアル性と、ダブ音響を増す事で空間の広がりを獲得し、ダークながらも恍惚のトランス感を引き出したこちらも盛り上がるリミックスとなっている。どれもKeihinのDJ経験に裏打ちされたテクノ×ダブ・ステップの機能的なダンス・トラックで、まだDJを体験した事が無い人でも本作を聞けば彼のDJがどんなものか一端でも知る事が出来るに違いない。



Check Keihin
| TECHNO14 | 11:00 | comments(0) | - | |
Trux - Untitled (Office Recordings:OFFICE 13)
Trux - Untitled
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ディープな音響美学に定評のあるBaaz主宰のOffice Recordings、そのレーベルが今特にプッシュしているのが不明瞭ながらも情緒的なアンビエンスを奏でるTruxで、2016年に『Trux』(過去レビュー)で同レーベルからデビューして以降、今に至るまで蜜月の関係を築き上げている。霧に覆われたような不鮮明な音像と同様にそのアーティストの存在もミステリアスなままで今も尚Truxとは誰ぞや?という状態だが、例えば2nd EPである2018年発表の本作もアンタイトルとわざわざ付けている通りで、ミステリアスな存在感を敢えて敢えて演出する事で音楽性に惹き付けられるのだろう。基本的にアブストラクトな作風に大きな変化はないが、本作では特に吹雪に覆われたようなヒスノイズ混じりのドローンが一貫して鳴っており、それが特に不明瞭な世界観を強くしている。サーっ鳴り続ける柔らかなノイズの音像の中に不規則なリズムが鳴る"Just A Moment"、朧気ながらもほんのり暖かいパッドが浮かび上がってくると心地好いアンビエンスを発しながらも、抽象性の高い景色に行き先が全く読めない。"Leash"もチリチリしたノイズと幽玄なドローンがダビーな音響で鳴る事で奥深い空間演出にかっており、柔らかなノイズが吹き荒れながらも激しさよりは壮大で大らかなアンビエントに包まれる。特に印象的だったのは"Gold"で、ぼんやりとした不鮮明なシンセとゆっくりとしながらも牧歌的なブレイク・ビーツ風なリズムが合わさったこの曲は、90年代のアーティフィシャル・インテリジェンスのテクノかBoards Of Canadaを思わせるノスタルジーが蘇ってくる。しかし、そこから一転強く重いキックと切れのあるハイハットに目が覚める"Pulse"、ミステリアスなパッドの上を情緒的なシンセが舞い躍動感のあるブレイク・ビーツに揺さぶられる力強いダンストラックだ。またリミックスも2曲収録されており、ずぶずぶ深い音響とミステリアスな雰囲気を残しつつ4つ打ちに接近し心地好い浮遊感を生む"Pulse (Lowtec Remix)"、原曲からがらりと様相を変えてドローンが晴れつつメロディアスでのどかなダウンテンポ寄りへと作り変えた"Just A Moment (O$VMV$M Version)"と、これらも面白い作風ではあるがやはりTruxの原曲が強い印象を植え付ける。



Check "Trux"
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |