Âme - Dream House (Innervisions:IVLP09)
Ame - Dream House
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2004年にリリースされ世の中はデビューアルバムだと思っていた『Âme』(過去レビュー)は、実は本人達の中ではコンピレーション的な意味合いだったらしく、デビューから15年を経てようやくリリースされた本作こそ本当のデビューアルバムだと言う。そのように述べるアーティストこそベルリンのディープ・ハウス市場を長らく席巻するInnervisionsを代表するアーティスト、Frank WiedemannとKristian Beyerから成るÂmeで、様々なミュージシャンとのコラボレーションも行いながら構想も含めて3年に渡る制作の結果、ダンス・ミュージックという枠を越えてホーム・リスニングに耐えうるアルバムを完成させた。兎にも角にも「Rej」というフロアを揺るがす大ヒット作が記憶に残るものの、アーティストが成熟するにしたがってありがちな展開であるダンスにこだわらないホーム・リスニングという構想に良くも悪くもはまってしまったのか…という杞憂も無いわけではないが、元々ビート感に頼らずともメロディーとコードでの魅了する才能を持っているからこそ、結果的にはリスニング仕様になったからといって彼等の魅力は大きくは変わっていないし、ダンスだけにならなかったからこそより表現豊かにもなっている。Matthew Herbertをフィーチャーした"The Line"はビートレスな構成で、魔術を唱えるような歌に合わせミニマルな電子音の反復を合わせ、何やら宗教的な荘厳ささえも感じさせるアンビエント性があり、じわじわゆっくりと艶やかに展開する様はÂmeらしい。続く"Queen Of Toys"は比較的ダンス性の強い曲だがこれも上げるのではなく、歪なキックや不気味な電子音が暗い闇を広げてずぶずぶと深い所へ潜っていくディープなニューウェーブ調。"Gerne"ではジャーマン・ニューウェーブのMalaria!のメンバーであったGudrun Gutをフィーチャーしている事もあり、レトロな時代感のあるボディーミュージック的というか、刺激的なマシンビートを刻みながら汗臭くあり肉体感を伴うグルーヴが感じられる。そして遂にはジャーマン・プログレの鬼才であるClusterからHans-Joachim Roedeliusも引っ張り出して完成した"Deadlocked"は、前のめりなダンスではない変則ビートを用いた上に、キーボード演奏らしきフリーキーなメロディーや重厚な電子音響がどんよりと立ち込めるクラウト・ロック調で、変異体であったジャーマン・プログレへの先祖返りを果たしつつÂmeらしく深遠にメランコリーを響かせている。勿論全てがリスニング向けというわけでもなく、"Helliconia"ではDavid Lemaitreによるサイケデリックなギターをフィーチャーしながら、覚醒感を煽る多層的なシンセのリフと低空飛行のじわじわと持続するグルーヴ感によって、パーティーの中で感動的な場面を作るようなダンス曲もあり従来のÂmeらしさを踏襲している。しかしやはり全体としてはじっくり耳を傾けて聞くべき作風が多く、その後も木製打楽器のような不思議なリズムに祈りを捧げるような合唱で神聖な響きを打ち出したエレクトロニカ調の"No War"や、切ない感情を吐露する歌とメランコリーなバレアリック調のトラックを合わせた"Give Me Your Ghost"と、強烈なビート感は無くとも何度も聞くうちにじんわりと肌の奥底まで染み込んでいくようだ。シングルヒットを重ねてきた過去の作風と比較すれば一見して地味なリスニング寄りのアルバムであるのは否定出来ないが、じっくりと時間を掛けて制作した事もあり何度も聞く事で魅力が深まっていく作品でもある。ダンス曲も聞きたいという思いもあるが、それはこの業界らしくEPで披露するという事なのだろう。



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Silent Harbour aka Conforce - Noctiluca LP (Echocord:Echocord 078)
Silent Harbour aka Conforce - Noctiluca LP
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2008年頃からリリースを始め、この10年間でConforceやSevernayaにVersalifeその他含め多くの名義を用いてテクノやエレクトロにアンビエントやエクスペリメンタルと、様々な要素の音楽性を展開してきたオランダのBoris Bunnik。そしてこのSilent Harbour名義はその中でもダブ・テクノを担うプロジェクトに分類され、決して活発とは言えないこのプロジェクトは過去にダブ・テクノの名門であるEchocordとDeep Sound Channelから2枚のアルバムをリリースしており、そういった経歴からも如何にダブ・テクノへ取り組んだ名義であるからは理解出来る。様々な名義で活動するBunnikの中では休眠状態が長きキャリアの中心となるものではないだろうが、しかしその深い残響の中に潜む美しい音像は決して小手先で取り組んだものではなく、Bunnikにとって多面的な音楽性の一つとして確立されている。さてこの3枚目となるアルバムは6曲で構成されたミニアルバム的な扱いでボリュームは少なめで、今までの作風同様にダブな音響と不明瞭な響きを活かしつつ、曲によっては全くダンスフロアも意識しないアンビエント性まで取り込んでいる。実際にオープニングには全くリズムの入らない"Riparian"が配置されており、空間を切り裂くような電子音響が浮遊したドローン状態が持続して惑わされ、続く"Noctiluca"でもアブストラクトで快楽的な上モノと濃霧のようなぼやけた残響に覆われたBasic Channel直系のビートレスなアンビエントで、光の差し込まない深海の海底を潜航するようだ。序盤の2曲でダブ音響を主張したところで、それ以降はハートビートの如く安定した4つ打ちを刻むダブ・テクノが続く流れで、叙情的な上モノが心地好く伸びて時折奇妙な電子音響も混ざる"Dwelling"から、グルーヴを落ち着かせて音数を絞る事でダブの残響を目一杯強調した奥深い空間演出をした"Peridinum"、官能的な上モノのリバーブとざらついた音響がまんまBasic Channelな"Fusiformis"、そして開放的な広がりのある残響がゆったりと広がりディープかつ叙情的な風景を描く快楽的なミニマル・ダブの"Pelagia"と、決して強迫的なダンスのグルーヴを刻む事はないがリスニング性を伴いながら陶酔感たっぷりなダブの音響を活かしてふらふらと踊らせる曲を用意している。本気でダブ・テクノに取り組んだ事が明白な完全なるダブ・テクノのアルバム、意識も朦朧となるようなリバーブの残響に覆われた見事な統一感があり、Bunnikによる複数のプロジェクトの中で明確な存在感を発している。



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| TECHNO14 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hoavi - Phobia Airlines (Fauxpas Musik:FAUXPAS 029)
Hoavi - Phobia Airlines
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NocowやRising Sunといったレーベルを初期から支えるアーティストに、そしてSven Weisemann変名のDesolateやConforce変名のSevernayaら著名なアーティストもカタログに名を連ねるドイツはライプツィヒのFauxpas Musikは、テクノからハウスにブレイク・ビーツからリスニング系まで多少なりとも幅を持った音楽性のあるレーベルだが、おおよそどの作品にも共通する要素は包み込むような温かいアンビエント性だろう。本アルバムもそのレーベル性に沿った内容で、手掛けているのはサンクトペテルブルク出身のKirill VasinことHoaviだ。Web上にもアーティストの詳細は余り公開されておらず作品数も多くないためどういったアーティストかは不明だが、まだ20代後半と比較的若手の存在である。アルバムの出だしこそ落ち着いたノンビート構成の"Cloud9"で深い濃霧に覆われたような視界もままならないディープなアンビエントだが、人肌の温もりを感じさせる温度感は非常に情緒的。そこからは曲毎に様々な変化を見せ、湿度のあるキックに硬いパーカッションが打ち付ける"Kill The Lama"はアシッド・サウンドが飛び交いつつアンビエントなパッドに覆われ、"Can't Explain"ではぐっとテンポを抑えたダウンテンポに80年代風のローファイなパーカッションやアシッドを絡めた叙情的ながらもヒプノティックな響きがあり、そして"Phobia Roadlines"ではしなやかなドラムン・ベースかブレイク・ビーツかと言わんばかりの小刻みなリズムを刻みつつ無重力で浮遊感のある上モノを張り巡らせたアトモスフェリックな作風と、とても一人のアーティストとは思えない程にバリエーションの豊かを強調する。"Contour"辺りは安定感あるキックとディレイを用いたダビーな音響による幻惑的なディープ・ハウスで、特に幽玄なエレクトロニックの響きに陶酔させられる。時に激しく振動するリズムから大らかな波のようにゆったりとしたグルーヴまで、曲毎に動静の変化を付けてリスニングとダンスを行き交うアルバム構成だが、一環して霞がかった深い音響によるディープなアンビエント性は鎮静作用があり、睡眠薬の如く微睡みを誘発する。前述のSven Weisemannらの静謐で残響心地好い音楽性と共鳴する内容で、まだアーティストとして未知な部分は多いものの期待が寄せるには十分だ。



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| TECHNO14 | 11:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Trux - Orbiter (Avenue 66:AVE66-04)
Trux - Orbiter
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その名の通りアシッド・サウンドに偏執的なこだわりを持つLAのレーベルであるAcid Test、その傘下で運営されるAvenue 66は同様にアブストラクトな音響を引き継ぎつつも更にエクスペリメンタル性を伴いながらディープへと潜っていく音楽性を軸にしている。そんなレーベルのミステリアス性と共振したのは2016年にBaazのOffice RecordingsからデビューしたTruxで、アーティストについての公開情報が何も無くミステリアスなアーティストとしてダンス・ミュージックの枠にはまる事なく、その匿名性をアピールするようにエレクトロニカやアンビエントにジャングルまで咀嚼しながら変異体な電子音響を聞かせる不思議な存在だ。そんなTruxによる初のアルバムはやはり過去の作品を踏襲し一般的な躍動するビート感のダンス・ミュージックは無く、以前にも増して曲毎に蒸気のように形を変えて不鮮明な音響で満たすディープかつアブストラクトな作品だ。オープニングはノイズにも似た不鮮明な音響が溢れ出す"With It"で始まるが、曲の途中からはっきりと明瞭な鍵盤の音が物悲しい旋律をなぞる変化を見せ、開始からして一筋縄ではいかない。続く"Orbiter"はダビーなシンセが空間の広がりを生みつつ変則的なキックも軽く刻まれて、あてもなく濃霧の中を彷徨うアブストラクト・アンビエントだ。そして再度ビートレスな"Blinko"ではぼんやりとしながらも幽玄な上モノが浮遊し、軽くハイハットやタムも聞こえてはいるがその抽象性の中で幻惑的な響きをし、終始もやもやと意味もなく不鮮明な鳴りのまま続く。比較的ダンス・ミュージックとしての体を成しているのは"My Row"だろうか、微細なハイハットが薄っすらとビートを刻んでいるが、そこに霧のような深く叙情的なドローンとぼんやりとした呟きを被せて、刺激を一切与える事なく揺蕩いながら空間の中に溶けていくディープ・アンビエントで不明瞭な世界観は変わらない。そして最後はフィールド・レコーディングの向こうにオルゴール風な悲哀なメロディーが浮かび上がるIDM風な"Agoma"で、終始深く不鮮明な電子音響が続くアルバムは最後にきてぐっと感傷を強めて、しかし決して荒ぶる事なく静けさを保ちながら霧散する。終始アブストラクトな音響に包まれたリスニング志向の強い音楽は、しかし一方で微睡みを誘うアンビエント性や淡い情緒によって心を落ち着かせ穏やかな気分へと至る鎮静作用があり、エクスペリメンタルではあるが決してとっつきにくいものでもないだろう。



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| TECHNO14 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Brother Nebula - Going Clear EP (Touch From A Distance:TFAD4)
Brother Nebula - Going Clear EP
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世界的な知名度を誇るBerghainが主宰するOstrut Tonというレーベルで、長年A&Rかつマネージャを務めていたNick Hoppnerがそんな名誉ある役職を捨ててまでやりたかった音楽とは一体何なのか、その答えこそが新たに立ち上げたTouch From A Distanceにあるだろう。レーベルとしては4作目となる本作を担当するのはイギリスのBrother Nebulaで、詳細については存じていないが2018年にLegworkから2枚EPを出している位の活動なので、比較的若手のアーティストなのだろうか。オープニングの"Double Helix"はスペーシーな電子音に語り口調のボイスサンプルが乗っかった壮大なサウンドトラック的なアンビエントで、短い序章ながらもEPの道標となる曲だ。そこに続く"Infinity 2"ではタイトな4つ打ちにディスコやエレクトロを思わせる電子ベースが躍動し、荘厳なパッドと透明感ある叙情的なメロディーの絡みによるデトロイト・テクノ的なスペーシーさも現れ、すっきり洗練されながらもエモーショナル性を発揮したグルーヴィーな一曲。情緒的で耳に残るメロディーの秀逸さは"Sky Walking"でも変わらないが、鋭く細かく刻まれるブレイク・ビーツと陽気なアシッド・サウンドは非常に刺激的で、レトロ・フューチャーなロボット・ボイスも加わると途端に未来的な景色を浮かび上がらせる。更に大きく揺れるレイヴ色もあるブレイク・ビーツが特徴の"Going Clear"でも幽玄な電子音響が活きており、そこに鈍いアシッド・ベースやスペーシーなボイスサンプルを細かく配置して、SFの近未来的世界観を描き出すその音はエレクトロだ。Ostrut Tonが比較的クラブでの機能性重視な音楽性に偏っているのに対し、やはりこのBrother Nebula、ひいてはTouch From A Distanceはダンスとしての機能性が無いわけではないが、それよりも魅力的なメロディーやムードにより重点を置きミックスされずとも魅了するような音楽性に向かっているのは明白だ。HoppnerがOstrut Tonを離れたのも納得であり、そしてTouch From A Distanceという場所でHoppnerの音楽観はより一層これからを担う若手の後押しをするに違いない。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Blue Closet - To The Ocean Floor (Mojuba Records:Mojuba 027)
Blue Closet - To The Ocean Floor

毎週毎週大量のEPがリリースされるダンス・ミュージックの業界においてその中から良質な作品を掬い上げるにはそれなりの時間と労力を要すわけだが、しかし特定の質の高いレーベルからリリースされた作品は太鼓判を押されたようなもので、比較的レーベル買いを安心して行う事も出来る。本作はBlue ClosetによるデビューEPで、これでデビューしたばかりなのだからアーティストについての詳細も経歴も何もかも分からないものの、ドイツの深遠なる電子音楽の探求に務めるMojubaからのリリースという事で購入に至った。作風はいかにもMojubaらしいやや謎めきながらもディープでダビーな音響、そしてひんやりとしながらも奥には叙情を隠し持ったような慎み深さもあり、例えばデトロイトの叙情性とも共鳴する(それよりはより洗練されているが)。"To The Ocean Floor"は11分越えの大作で、すっきりと細く軽いビートを刻む4つ打ちが淡々と響きながらも、そこに乗ってくる朧げで幻想的なパッドやヒプノティックなパルスのようなループによって非現実的な夢の世界へと誘われるような、長い時間をかけて意識を融解させて深く溺れさせていく。更に変則的なキックとリバーブを強調したダビーな音響によって奥深さが聞こえる"Dreaming Of Paradise"はこれぞMojubaとでも呼ぶべきディープな美しさが光るダブ・ハウスで、オーロラの如く揺らぐパッドや繊細な電子音響の美しさが素晴らしい。感情を吐き出すような歌がこのレーベルにしては珍しいが、それはテクノ・ソウルを打ち出す事にも貢献している。そしてレーベル主宰者であるDon WilliamsことOracyがリミックスを行った"Dreaming Of Paradise (Oracy's Leaving Eden Dub)"、こちらは原曲から直球ダンスへと作り変えて太いキックがパワフルな4つ打ちだが、圧力はありながらも全体は音の間を活かしたクリアな響きで、軽くダビーさも残しつつ無駄を削ぎ落としながら硬いテクノ仕様となっている。どれもダンスな作風ではあるがじっくりと耳を傾けて、その深遠なる音響に耽溺したくなる音楽で、今後を期待させてくれるアーティストになりそうだ。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Tejada - Dead Start Program (Kompakt:KOMPAKT CD 141)
John Tejada - Dead Start Program
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LAを拠点にするDJでありドラマーでもあるJohn Tejadaは、USテクノのベテラン勢が制作面で停滞している中でコンスタンスに作品をリリースし、またアシッド・テクノ狂のTin ManやボーカリストのReggie Wattsらとコラボーレーションする事で音楽性の幅を広げたりと、長きに渡り積極的に音楽制作を行う点だけでも十分に評価すべき存在だ。ここ数年はケルンは老舗レーベルのKompaktと関係を築き上げそこからのリリースが続いているが、この2018年の最新作は同レーベルから4枚目のアルバムとなる。Kompaktからのリリースとなって以降はTejadaの多彩な表現力はそのままにポップさやメランコリーといった性質が強く打ち出されていたが、このアルバムではややダンス・フロア寄りのミニマル性も伴う曲調へと戻っており、爆発力や強烈な個性を発するわけではないが多彩性がありながらもベテランらしく手堅く纏めた音楽性はより洗練を極めている。冒頭の"Autoseek"は不整脈のような歪なリズムを刻みややダブ・ステップらしく感じるところもあり、そしてプログレッシヴ・ハウス調な恍惚感あるメロディーにうっとりと陶酔させられる。メロディやコードの妖艶さは"Detector"でも際立っていて、そこに滑らかな4つ打ちのリズムが入ってくれば、機能的かつモダンなテック・ハウスとなる。しかし単純な直球テクノ/ハウスだけにならないのが彼の幅広い音楽活動によるもので、"Sleep Spindle"ではライブ感ある生っぽいブレイク・ビーツを披露したり、"Loss"における金属がひしゃげるような鈍いパーカッションが印象的なダブ・ステップ風など、ここら辺のリズムの豊富さは本人がドラムプレイヤーである事も影響しているのだろう。勿論そんな奇抜な曲だけではなく例えば"The Looping Generation"のようにすっきりと贅肉を削ぎ落としつつ、ミニマルのグルーヴを重視してヒプノティックな旋律のループや中毒的なアシッド・ベースによる恍惚感を打ち出して機能性に溢れたテック・ハウスにおいては、音圧や勢いに頼らずに洗練されたグルーヴを生むTejadaのセンスが現れている。他にもデトロイト・エレクトロのコズミック感にも似た感覚がある鈍いエレクトロの"Telemetry"や、小気味良いブレイク・ビーツにシンセパッドも用いた叙情感溢れるAIテクノ風な"Quipu"など、曲調は様々だがアルバムという枠組みの中でフロアに即したダンス・トラックとして纏まっている。海外ではさておき日本では不遇な程に決して知名度が高くはないのだが、非常に多くの作品を送り出しながらも聞き込める高い水準で毎回アルバムを作っており(だからこそKompkatからリリースされているのだが)、本作も粒揃いという表現が相応しい内容だ。



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| TECHNO14 | 11:59 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Ludwig A.F. Rohrscheid - Xhale (Unknown To The Unknown:UTTU092)
Ludwig A.F. Ludwig A.F. Rohrscheid - Xhale
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ローファイやゲットー・ハウスにも接近し奇抜な新世代を送り出しているDJ HausのUnknown To The Unknown、そんなレーベルから2018年に特に気になった作品がフランクフルトの新星であるLudwig A.F. Rohrscheidによる2作目。同年2月頃に自身で主宰するExo Recordings Internationalから『Velocity』でデビューを飾っており、その作品は海外ではかなりの注目を集めていたようで(日本には殆ど入荷しなかった)、一枚のEPの中にレイヴ調なブレイク・ビーツからロウでアシッドなハウスに清々しいアンビエント・ハウスまで収録されているが、そのどれもが一聴して耳を惹き付ける魅力を持っていた。本EPもその路線から殆ど変わりはなく期待通りに色々な音を聞かせてくれ、タイトル曲の"Xhale"は極太で硬いキックとエレクトロニックで毒々しいベースラインで下地を作りつつ、ディジュリドゥらしき不気味な音色やトリッピーなループ等を用いてトランス的な快楽作用を誘発し、のっけから中毒的な魔力に引き込まれる。パルスのような電子音と金属的な音響のループが印象的な"Shiitake"は、底辺ではマッドなベースラインが躍動しリズムはざらついたブレイク・ビーツ調で往年のレイヴの雰囲気を匂わせているが、ただ懐古的に向かうのではなく古臭さを感じさせないすっきり洗練された響きをもってして現在形のダンス・ミュージックとして鳴らしている。"Firefly"はEPの中では滑らかなリズム感を活かしたダークなテック・ハウスだが、薄っすらと情感の乗った上モノに対しドラッギーなシーケンスの組み合わせが情熱と恍惚の狭間を行き来するようで、フロアの闇の中でどっぷりと陶酔に浸してくれるであろう。とここまで盛り上がってきて最後の"Omega Quest"はビートレスな美しきアンビエントと意外なる転調だが、これも小手先の内容ではなくぐっと切なさを増しバレアリックにも共振する感情性を秘めた深遠なアンビエントで素晴らしい。なるほどデビュー作が多大な注目を集めたのも納得する才能を感じさせるこの2枚目、バラエティーに富んだ内容ながらどれも違和感無くアーティストの個性として馴染んでもいるようで、今後の活動にも目が離せない。



Check Ludwig A.F. Rohrscheid
| TECHNO14 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Museum - Sandra (Indigo Aera:AERA023)
Museum -  Sandra

デトロイト・テクノのエモーショナル性と共振しながらヨーロッパ的な洗練されたモダン・テクノを送り続けるIndigo Aera、そのレーベルの最新作は過去にも同レーベルからリリース歴のあるMuseumによるもの。MuseumはRadialとしても活動するJeroen LiebregtsとAnton Pieeteによるユニットで、それぞれ長いキャリアを持ちソロ活動や過去のMuseum名義ではMarcel Dettmann RecordsやDrumcodeにRejectedやOvum Recordingsからもリリースしていた事からも分かる通り、ハードで機能的なテクノの音楽性が強く一見Indigo Aeraとの親和性については不可解と思う点もあるかもしれない。しかし蓋を開けてみれば90年代前半のデトロイトにあったミニマル・テクノとエモーショナルなテクノの自然な融和が成されたテクノが詰まっており、Indigo Aeraらしい叙情性に寄り添いながらMuseumのハードな作風を貫いている。冒頭の"Plex"はこん棒で乱打するようなキックやカチカチしたパーカッションがハードさを演出しているが、途中からはコズミック感と躍動感を伴うシンセの旋律によってデトロイト・テクノらしくなるメロディアスなテクノで、疾走する勢いもあって非常にフロア映えするであろう曲だ。それに対し変則的なリズムで揺らぎを作る"Sandra"はやはり動きの多いシンセが控えめに叙情性を匂わせて、シンセの音自体もリズムとなって軽く跳ねるようなグルーヴを刻む事でツール性も強く表現されている。"Cafe"は例えばPurpose Maker路線のトライバル感もあるリズム感がファンキーなテクノで、ミステリアスなシンセの使い方は近年のスペーシーな路線のJeff Millsを思い起こさせる一面もあり、やはりデトロイトのテクノへのシンパシーが感じられる。"Sum"はデトロイト・テクノがダブ化したらこんな曲だろうか、切れ味鋭いリズムと音の隙間を目立たせながらダビーなシンセを用いる事で空間の広がりを感じさせ、EPの中では地味な作風ながらも機能性を体現している。結果的にはIndigo Aeraらしさ、そしてMuseumらしさのその両方のいいとこ取りな音楽性が表現されており、どれもフロアで耳を引き付ける魅力を持っている。それはデトロイト・テクノ好きにも、そしてモダンなテクノが好きな人にとっても訴求する。



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| TECHNO14 | 22:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Waveguide - Venera EP (WAVEGUIDE:WAV.G002)
Waveguide - Venera EP

日本を飛び出しベルリンへと移住して(現在は更にリスボンで活動中のようだ)海外を拠点に活動しているKen SumitaniことSTEREOCiTI、当初の活動はベルリンはMojubaからの幽玄かつ仄かの情緒を忍ばせたディープ・ハウスな作風が特徴だったが、海外での音楽環境から受けた影響はテクノへと歩みを進ませる事になり、2017年には遂にモダン・テクノへとフォーカスしたWAVEGUIDEを設立していた。そしてそんなレーベルが遂にはアーティスト名にもなったレーベル第二弾が本作、『Venera EP』だ。テクノを送り出すレーベルがそのままアーティスト名になったのだから、よりハードなテクノ性が押し出される事となり、過去の作風と比べても非常にツール性の高いミニマルなモダン・テクノが出来上がっている。特にタイトル曲となる"Venera"、変則的なぶれるキックに鋭いハイハット、そして金属的なパーカッションの連打が組み合わさり、荒廃した闇の中を猛スピードで駆け抜けるトラックだが、中盤からは幽玄な上モノとヒプノティックな反復音も加わって、ミニマルな持続感を伴いながら深く潜っていくような感覚もあるハイエナジーなテクノだ。"Zond"はつんのめったリズム感でグルーヴは抑制されながらも、金属的な音のループと奥で鳴っているようなダビーなパーカッションを前面に打ち出して、奇矯な効果音も時折折り込みながらリズム重視で引っ張っていく作風で、より感情性を排してツールとして特化させている。"Rosetta"になってくると冷えたハイハットのリズムと唸る低音のベースライン、そしてサイケデリックかつミステリアスな上モノの音響が相乗的にインダストリアルな雰囲気を生み出しており、昔のハードミニマル全盛時代から派手さは削ぎ落として骨太さのみを残したようなハードさが伺える。"Philae"はチキチキと粗い質感のハイハットと落ち着いたキックの4つ打ちが平たいリズムを刻んでいるが、それに合わせて抽象的に鈍くうねる金属的な電子音響がアブストラクトな空気を作り、その不明瞭な響きがサイケデリック性に繋がるこれもDJツール。本作以前からもテクノ化の傾向は見られたものの、本作によってその志向は完全に達成され、そして新たWaveguideなる名義となったのも納得の路線。全く過去のSTEREOCiTIとは異なるものの、小手先の音楽ではなく本気でテクノを歩もうとしているのが感じられる。



Check STEREOCiTI
| TECHNO14 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |