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Marvin Dash - MD 50 (Into The Deep Records:ITDR004)
Marvin Dash - MD 50

過去にはDerek CarrやLeonidらの作品をリリースしており、90年代で言うインテリジェンス・テクノ的な内向的ながらも叙情性のある世界観が特徴のInto The Deep Records。2016年設立とまだ新興レーベルで作品数も多くはないが、その分だけ作品は選りすぐられており今後も注目すべきレーベルと感じている。2019年リリースの本作は過去にはForce Inc.やWorkshopからミニマルな性質とデトロイト・ハウスを一つにしたようなファンキーかつエモーショナルなハウスを作品をリリースしていたMarvin Dashによるもので、最後のリリースが2011年だったのでなんと8年ぶりの新作という事になる。なんでもInto The Deep Recordsが過去4年間に渡りDashを探索していたようで、何とか追跡出来た上に説得して本作のリリースに至ったようだが、そんな努力が花開く期待以上に素晴らしいEPだ。Dashのロウな作風よりはやや綺麗めの音にはなっているものの、アナログ・ハードウェア機材をベースに作られた曲は人肌を感じさせる素朴な響きもあり、ミッドテンポのディープ・ハウスからダウンテンポまで展開し穏やかな叙情性を発揮している。しっとりした4つ打ちのキックを刻みつつカラッとしたパーカッションが響き、そして透明感があり涼しげなシンセのメロディーや優美なストリングスが伸びる"A1"は、野外の開放感や爽快感が広がる大らかなディープ・ハウスで、熱狂に塗れる真夜中のダンスフロアとは真逆のリラックスして至福の音に身を任せたくなる快適な曲。"A2"は過去の作風にも近い内向的なディープ・ハウスで、こちらもしっとり湿り気のあるキックの4つ打ちやベースラインが安定感のあるグルーヴを作りつつ、上辺で華やかなストリングスが優雅に装飾しつつキラキラとした電子音を散りばめているが、闇が広がる深いフロアで鳴っていそうなミステリアスな感覚は催眠的だ。そして一曲やや浮いた感もあるのが"B1"で、カタカタとしたドラムマシンのリズムは粗雑でロウな鳴りをしており、アシッドで中毒的な電子音のループと対照的にきらびやかな上モノのコードによって酩酊感を生むこの曲は、個性的なレフトーフィールドのハウスだ。8年も待たせたわりには僅か3曲と思うかもしれないが、どれも待たせられた分を埋めるだけの魅力的なハウスで、ここからの再活動に期待を膨らませる。



Check Marvin Dash
| HOUSE14 | 21:00 | comments(0) | - | |
Earth Trax & Newborn Jr. - Truth EP (Phonica Records:PHONICA026)
Earth Trax & Newborn Jr. - Truth EP
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Bartosz Kruczynskiとしてオーガニックなニューエイジやアンビエント方面で評価も高いEarth Trax、そしてヒップ・ホップやダウンテンポも取り込んだアルバムをDopeness GaloreからリリースしたNewborn Jr.によるポーランドのコンピは、2016年頃から手を組んでヒット作を送り出しているが、活動初期はアンビエンス感溢れるシンセを用いたエモーショナル性の強いディープ・ハウス色が特徴だったものの、リリースを重ねるに連れてアシッド・サウンドやうねるブレイク・ビーツが徐々に現れはじめ、レイヴ再燃の動きに同調している予兆は既にあった。そしてそれが完全に顕になったのが本作、90年代の懐かしくもエネルギッシュな興奮が詰まったレイヴを、彼等のかねてからの音楽性とミックスして自分達のモノとしている。タイトル曲の"Truth (Main Street Mix)"からしてTB-303らしきアシッド・サウンドがビキビキとうなりつつダーティーなベースが下部を支え、熱狂的なシャウトやギトギトしながらも派手なシンセサウンドのメロディーが引っ張っていくこのレイヴィーなハウスは、90年代のクラシカルな雰囲気さえ漂わせている。別バージョンとなる"Truth (Back Alley Mix)"も大きな違いはないものの、一部にダブな処理を加えて揺らめくような残響がシカゴのアシッド・ハウス的にも聞こえたりもする。一転して"Old Way, New Way"は従来の彼等らしいアンビエント・ハウスで、若干アシッド風なベースは用いつつもフルートの朗らかなメロディーと優美なピアノのコードを展開し、軽快なブレイク・ビーツで快適なグルーヴを生むこの曲も90年代のオールド・スクール感がある。"And Then"も同様にフルートを用いているが、先程の曲が陽だとしたらこちらは陰、夜の怪しい雰囲気に覆われ激しいグルーヴではないものの真夜中の熱狂的なダンスパーティーへと次第に移っていくような時間帯のブレイク・ビーツ調のハウスで、じわじわと感情を揺さぶっていく。再燃しているレイヴサウンドを意識しながらも、単なる焼き直しに終始せずロウな感覚やアンビエント性も取り込み、強い印象を残す作風として素晴らしい。



Check Bartosz Kruczynski & Newborn Jr.
| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
D.K. - Rising EP (Antinote:atn 052)
D.K. - Rising EP
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ニュー・エイジ/アンビエント方面で注目を集めていたパリジャンのDang-Khoa ChauことD.K(45 ACP名義やSlack DJs名ではインダストリアルに接近した作風もあるが)、温かくドリーミーな世界観に包まれる牧歌的なリスニング系の作風が特徴であったものの、2019年には古巣Antinoteからダンス3部作EPのシリーズを立ち上げ、『Mystic Warrior EP』(過去レビュー)や『Riding For A Fall EP』(過去レビュー)をリリースしてきた。お得意のニュー・エイジをハウスに取り込み、更にはエスノ×トランスな拡張を見せたりと進化を遂げていたが、一端はそんな果敢な挑戦もこのシリーズ最終作となる本作で完結を迎える。前の2枚のEPでおおよそ音楽性は出来上がっていたので本作でも特に大きな変化は無いのだが、更にマッチョで肉体的なグルーヴを感じさせるEBM(エレクトロニック・ボディ・ミュージック)な雰囲気を纏っており、前述の45 ACPとの境界が埋まっていくような感さえもある。"Storm Of Steel"が特に激しく破壊的な響きをしており、金属的な打撃音と毒々しいベースラインによるインダストリアルな世界観が凶悪で、そこに鉄琴らしきミステリアスな響きと尺八風なエキゾチックな笛の音色、そしてぐしゃっとしたスネアやパーカッションも入ってきて、ニューエイジにハウスやインダストリアルと様々な要素が融合したダンス・ミュージックがユニークだ。最近の流行りでもあるレイヴも意識したようなブレイク・ビーツ調の"Code Breaker"でも、やはりシンセの謎めいたコード展開と怪しい笛のメロディー、そして生々しく土着感溢れるパーカッション使いがエキゾ性を打ち出していて、これは前作までのニューエイジ・ハウスといった趣きだ。タイトル曲である"Rising"もつんのめったリズムがダンス曲に仕上げているものの、チャカポコとした弾ける土着パーカッションや瞑想の笛の音色とアジア圏のエスノな感覚に合わせ、荘厳で神聖なコーラスが覆い尽くす事で宗教的な雰囲気を漂わせ、メランコリーな霊的ニューエイジと化している。どれも真夜中のダンスフロアに適応したダンストラックである事は前提なのだが、この土着性やエスノの感覚も交えた独特の世界観はD.K.の確立された個性と言えよう。



Check D.K.
| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
FSQ Feat. Dolette McDonald - I Zimbra (Midnight Riot Recordings:MIDRIOTD 178)
FSQ & Dolette McDonald - I Zimbra
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David Byrne率いるTalking Headsの1979年作、"I Zimbra"が2019年にカバーとして復活。オリジナルは早過ぎたオルタナティブな感覚もあるニューウェーブ・ディスコで、肉体が痺れるような生々しいライブ感溢れアフロやファンクの要素も含むディスコだったものの、本作のカバーではUSのファンク/ディスコ集団であるFSQ(Funk Style Quality)が現代に適したモダンな作風へと生まれ変わらせている。その際にTalking Headsでバッキング・ボーカルを務め、他にもStingやChicらの多くのアーティストの作品にシンガーとして参加してきたDolette McDonaldもフィーチャーしているが、そのせいもあってか原曲よりも華やかなディスコ性が強調されている。トラック自体も原曲は粗雑さが荒々しさに繋がっていたが、ここでは端正なディスコのリズムを刻みギターやベースを用いながらも無駄無く隙間が目立つ程の洗練された構成だが、ややカリビアンの楽天的な雰囲気もあり、陽気で爽快なモダン・ディスコといった印象だ。カバー自体は曲の良さとは別に3分弱と短く時間的には物足りなさが残るものの、そこは現在形のDJがクラブフレンドリーなリミックスを提供する事で、このEPを補完している。"Soul Clap Remix"はディスコからハウスへと傾倒したリミックスで、軽やかなパーカッションのグルーヴがトライバルな雰囲気を作り出し疾走感を獲得、そしてやはり音を最小限に絞る事で動きのあるベースラインも目立ち、エレクトロニック性の強いモダンなハウスへと新たに上塗りされている。"Alan Dixon Remix"はカバー曲の雰囲気を踏襲して生音の強いディスコだが、ややテンポを上げて更にベースサウンドを更に強くする事でクラブトラックらしさを打ち出し、また切ないピアノやワウワウ鳴るファンキーなギターを加えてやや華やかな装飾を加えて豊かな展開を作っている。カバーよりは後者の2つのリミックスの方がよりクラブで映えるであろう内容で、ここはやはりDJのセンス勝ちといったところか。



Check FSQ
| HOUSE14 | 11:30 | comments(0) | - | |
Awida - NYC Connexion EP (World Famous:WF-005)
Awida - NYC Connexion EP
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数年前にNYに移住したために日本ではその名を聞く機会が減ってしまったが、InnervisionsからのTokyo Black Star名義での華々しい活躍と共に今も尚DJとしてもアーティストとしても活動するAlex From Tokyoを含むニュープロジェクト、それこそがAwida。どうしても知名度的にAlexの名前が表に出てしまうが、Alex Fromの他にMusic For Dreamsで活躍するWillie Graff & Darren Eboliの頭文字から取ったプロジェクト名からも分かる通り3人組のユニットで、何でもニューヨークのクラブ・Cieloで出会った彼等がニューヨークやイビサにベルリンの音楽に影響を受けて、真夜中のジャムセッションから出来上がったのが本作との事。Alexについては陶酔感のあるエレクトロニックなハウスからディスコという音楽性で、そしてGraff & Eboliの方は多幸感の強いバレアリック・ディスコといったもので、そんな彼等が一体となるとどうなるのか。"Pompa Sonic"はメロディーは抑えながら揺れ動くようなベースラインが低い箇所で主張し、シンプルなリフとコズミックな音を挿入しながらあくまでねっとりとしたグルーヴ重視なDJ仕様な曲調。特に彼等の多幸感や快楽性が打ち出されているのが"Tranz Mekanica"で、強烈で快楽的なシンセのベースラインがディスコティックに刻まれ、殆ど大きな展開もなく微かに上モノのシンセや効果音を挿入しながら、終始ぐいぐいと引っ張っていくベースが脳裏に刻まれるこの曲は単純ながらもフロアでは非常に魅力的に聞こえるに違いない。"Cielo Dance"はどちらかと言えばGraff & Eboliの多幸感が現れているだろうか、朗らかで和みのあるバレアリックな上モノのループと軽やかで落ち着いたビートが続く開放感のある曲調で、途中からは陽気で明るいシンセのメロディーも展開しながら長閑な田園風景が広がるようなバレアリックなムードが続いている。真夜中のセッションから生まれた事もあり享楽的な覚醒的なダンスモードから、しかし昼間の落ち着いたイビサ的であろう曲調まで、どれもそれぞれのシチュエーションに沿った雰囲気があり納得の出来だ。是非とも単発で終わらずに、継続的な活動を期待したいニュープロジェクトである。



Check Awida
| HOUSE14 | 20:30 | comments(0) | - | |
Pepe Bradock - What A Mess! (Atavisme:ATA 0π)
Pepe Bradock - What A Mess!
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ダンス・ミュージックの世界において奇才と呼ぶべき存在は多くはないが、しかしフランスのPepe Bradockについては間違いなくそんな存在の一人だろう。敢えて何かに当て嵌めるならハウス・ミュージックというジャンルになるのだろうが、コラージュ的な音響構築による通常のダンスを超越した変幻自在で不定形のエクスペリメンタルなダンスは、間違いなくBradockの個性を確立する唯一無二の作風となっているし、このデジタル化が進む中でも断固としてヴァイナルでのリリースにこだわる頑固親父というか職人気質な性格もあって、特別な存在感を放っている。基本的にはEPを年に1〜2枚リリースとマイペースに活動を続ける一方で、理由は定かでないもののアルバム制作には無頓着なアーティストである事に歯痒さもあったが、2019年に21年ぶりとなるアルバムである本作をリリースしたのは驚きだ。その上、片面1曲ずつで合わせて45分1曲とも考えられる構成のアルバムな事で、Bradockの独創的な響きと展開がよりバラエティー豊かに映えるのは当然だろう。古いラジオから流れてくるようなガヤガヤとしたざわめきから始まり、不穏なノイズ音響からBradockらしいぶつ切り風ながらもマイナーコードの情緒的なシンセの展開に抽象的に混ざったコラージュ的な音像と、序盤からもはやジャンル不明な想像の出来ない展開が繰り広げられ、Bradockの奇想天外な異次元世界が広がっていく。突然つんのめったアブストラクトなヒップ・ホップ調のリズムが入ってきて忙しないダンスビートに飲まれるも、徐々にスローダウンしながらフィールド・レコーディング風な曲調や形容出来ないグチャグチャのコラージュが入り乱れ、余りの情報量の多さに理解する事が無駄かと思う程の荒唐無稽なスタイル。裏面へ移るとダブ・ステップ風な色褪せたキックと鈍く重いベースが唸りながら、幻惑的な上モノが入り乱れ享楽的なダンスモードかと思いきや、そこからアブストラクトな音響が立ち込めるアンビエントやガラクタをこねくりまわしているようなローファイなダウンビートへとあちらこちらに展開し、全く予想だに出来ない流れだ。しまいにはカタカタと味気ないTR系のキックとTB系のどぎついベースが走り出す粗悪なアシッド・ハウスへと突入し、興奮の高みへと達する瞬間を迎える。が、そこから不明瞭な音響が立ち込めるエレクトロニカ風やフィールド・レコーディングへと戻るなど、徹頭徹尾捉えどころのない流れに抗えずに飲み込まれてしまう。様々な音楽を切り貼りしたような、つまりはBradockの曲の中にあるコラージュ性をアルバムというフォーマットへと適用させた本作は、アルバムという尺だからアーティストの個性が爆発してより効果的になっている。EPでは才能を発揮していたアーティストがアルバムを作るとつまらないという事は多々あるが、Bradockに関してはそれすらも杞憂だったと言わざるを得ない。



Check "Pepe Bradock"
| HOUSE14 | 19:00 | comments(0) | - | |
Embezzlement Society - Contrasting Outputs From The Hood (Omena LTD:OMLTD009)
Embezzlement Society - Contrasting Outputs From The Hood
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ハウス・ミュージックを中心にテクノやディスコにジャズやダウンテンポと展開し、そしてベテランではなくこれからを担うであろう若手の世代を積極的に紹介するなど、スウェーデンはストックホルムのOmenaはアーティスト/ジャンル共に豊かな多彩性があり注目すべき新興レーベルだ。そのレーベル傘下のOmena LTDからリリースされたアイルランドのSteven MahonことEmbezzlement Societyの音楽もハウスが軸にあるが、そこにはサンプリングを多用してディスコやジャズの要素も持ち込んだブラック・ミュージックの訝しさが溢れており、曲毎に異なる魅力を放っている。例えば"Meanwhile At A Windsor Ballet"はデトロイトのハウスを思い起こすだろうか、古いラジオから流れてくるようなノイズ混じりのサンプリングで始まるが、ドスドスとした4つ打ちを刻みだすとマイナー調の滑らかなコード展開も加わりスモーキーで生っぽいディープ・ハウスへと突入し、曲の途中でも幾度かガヤ声サンプリングを挿入するなど、Moodymann辺りの音楽を連想させる。"Let Me Ride"も同じ路線でドスドス野太いキックの4つ打ちに蠢くベースラインやガヤを合わせているが、少しずつエレピ・サンプルのループが浮かび上がり、フィルターで変化も付けながら比較的ミニマルな要素を打ち出したファンキーなディープ・ハウスだ。"She Knows What She Wants"も呟きのような艶めかしいサンプリングを用いているが、ストリングスの豪華な響きとフェンダー・ローズのしとやかな美しさが絡んで、クラシカルなディスコのような生感の強いハウスにはうっとりさせられる。そしてQuincy Jonesの"Summer In The City"をサンプリングした"Summertime In The Sewer"では、ざらついてヒップ・ホップな感もあるビートダウンなリズムとエレピ等の生音を打ち出したメロディーによって、内向的で切なさに染まったしっとりダウンテンポを展開する。どれもラフな音質ながらも生々しい艶めかしさとブラックネス溢れる音楽性に染まっており、既成のスタイルからまだ飛び出してはいないもののサンプリングのセンスや雰囲気作りは素晴らしく、ハウス好きならば一目置いても損はしない。



Check Embezzlement Society
| HOUSE14 | 13:00 | comments(0) | - | |
Max Essa - Barkhan Dunes EP (Palms & Charms:PAC007)
Max Essa - Barkhan Dunes EP
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最大の繁栄を迎えているバレアリック・ミュージックにおいて、しかしそういった流行の以前よりその要素をディスコやファンクに落とし込んでリスニングとダンスの両面から展開してきた東京在住のMax Essa。Bear FunkやIs It Balearic?にHell Yeah RecordingsやMusic For Dreamsといったバレアリック方面で大きな功績を持つレーベルからのリリースが多い事からも、Essaの音楽性は容易に推して知るべし。2019年はこのEP一枚だけしか聞けなかったものの、ダンスからチルアウトまで揃えており、そのどれもが大らかな多幸感に溢れるバレアリック感覚に満たされたEssaの音楽性そのものだ。"The Price You Pay (For Loving That Way)"は真夏のビーチ・ディスコだろうか、抜けの良い爽快なパーカッションと弾力のあるシンセベースに先導されながら、爽快なギターフレーズや微睡んだサックスに透明感のあるシンセと豊かな色彩感覚に包まれ、脱力させられながら全身で太陽の光を浴びるような感覚だ。夏であっても汗いっぱいに熱狂的というよりは、ビーチのサマーベッドで横になりながらラグジュアリーな一時を過ごすような、余裕のある時間帯のイメージだろう。"Kites At Nemoto Beach"はノンビート構成で近年のアンビエント/ニューエイジ隆盛に倣った曲で、霧のように幻想的なシンセとディレイの効いた開放感のあるギターがゆったりと波の如く広がりながら、そこに清らかで耽美なピアノのメロディーとコーラスボーカルが被さり、ゆっくりと静かに展開をしていく火照った体を冷ます安らぎのチルアウト。最後の"Sundowning"はタイトル通り太陽が沈みゆく光景が想起されるミッドテンポのAOR風ダウンテンポで、ファンキーながらも切ないギターを前面に厚みのあるシンセベースと生々しいリズムマシンのビートがゆったりとしたグルーヴ感を生み、闇の帳が下りる時間帯へしっぽりとした情緒と共に向かっていく。3曲毎に異なるスタイルで豊かな表現力があり、しかしバレアリックという雰囲気の統一感をもってEssaの世界観を主張するEP、この手の音楽に対する深い造詣が伝わってくる。



Check Max Essa
| HOUSE14 | 13:00 | comments(0) | - | |
D.K. - Riding For A Fall EP (Antinote:ATN048)
D.K. - Riding For A Fall EP
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Melody As TruthやAntinoteからリリースしたドリーミーなニューエイジ/アンビエント作、またはMusic From Memory傘下にあるダンス寄りな別ラインのSecond Circleといったレーベルからの桃源郷のような雰囲気のハウス、それらによって現代のニューエイジ方面では急先鋒となったパリジャンのDang-Khoa ChauことD.K.。しかし2019年のD.K.は完全にダンスの季節なのか、三部作の開始である『Mystic Warrior EP』(過去レビュー)によってニューエイジ・ハウスへと足を踏み入れると、この二番目となるEPではよりテンポを上げてニューエイジどころかトランシーな雰囲気さえ纏うハウスで勢い付いている。"Voices"は出だしからローファイな響きのマシンドラムやカチコチとしたパーカッションが密に刻まれ勢いのあるグルーヴが走り、そこにデトロイト・テクノな雰囲気もあるシンセパッドが幻想的な情景を見せ、微かに配置されたアシッドの粒もコズミックな感覚を生む。常に疾走する流れで完全にフロア対応のダンス・トラックだが、曲の中ではエスノやアジアンな雰囲気のあるメロディーも現れたりと、どこか霊的な背景が見え隠れする音楽性はD.K.が以前から持っているものだ。"Shoubuari (Battle Mix)"はゲームのサムライスピリッツに触発されて作った曲だそうで、確かにどこか和の雰囲気な笛等や剣の鍔迫り合い的な打撃のパーカッションも聞こえ、ゲームらしい緊張感が張り詰めながらストーリー性を展開するような高揚感が満ち溢れている。それらアップテンポで攻撃的な二曲に対し、最後の"Riding For A Fall"は従来のD.K.に近いスピリチュアル性の強いダウンテンポで、熱帯雨林の奥深くで原始的な儀式で踊っているような大地の香り漂うトライバル感と秘密めいて壮大な神秘性があり、その意味では正に精神世界を旅するニューエイジそのものか。初期のリスニングな音楽性から随分と反対方向へ振り切れて驚きは隠せないが、しかしニューエイジというD.K.の源流が枝分かれしたと考えれば違和感の無い作風で、上手くフロアへ適応している事にアーティストの素質の高さが伺える。



Check D.K.
| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Eddie C - Green Space (Endless Flight:ENDLESS FLIGHT CD 18)
Eddie C - Green Space
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今や世界各地のタレントを抱える日本初のMule Musiq、そしてその傘下のEndless Flightはエディットやサンプリングを用いたディスコやハウスの色が強いレーベルで、こちらも当然多くの才能あるアーティストを擁している。だからといってEPならまだしもアルバムを定期的に作れるアーティストの存在は稀有であるのだが、その意味ではEndless Flightを代表するアーティストを挙げるのであれば、カナディアンで現在はベルリンを拠点に活動するEddie Cが妥当であろう。2011年に同レーベルから初アルバム『Parts Unknown』(過去レビュー)をリリースして以降、この最新作でアルバムは4枚目とEP中心の業界において、積極的にダンスフロアだけに依存しない音楽表現を実践している。EPではサンプリングを軸にしたダンスフルなファンキーなニューディスコを制作する彼が、アルバムでは同様にサンプリングベースながらもダウンテンポやヒップ・ホップにラテンやファンクといった方向性も見せ、DJではなくアーティストとしての才能を発揮していたが、この最新作は以前にも増してバラエティーに富みながら緩くて気怠くも心地好いリスニングへの道を示している。始まりはざっくりしたビートがヒップ・ホップのテイストもある"Hello Baby"、1分弱の尺でオーバーチュア的な曲だが、続く"Carbon Date"も生っぽいドラムのビートと温かみのあるベースを活かしたサンプリング風味のファンキーなヒップ・ホップ風で、そこに叙情性のあるシンセを被せてメロウな方向性へ連れて行く。そしてノリの良いブレイク・ビーツを刻む"In The Park"は耽美なエレピや美しいシンセストリングスを用いて、開放的なバレアリックへと向かったアルバムの中でも屈指のリゾート感覚のある緩いダンストラック。勿論、"Way Uptown"のように生っぽくラフな質感のあるディスコ・ハウスや、その曲名の通り爽やかなパーカッション乱れ打ちなブラジリアン・ハウスの"Batucada"、豊かな残響に視界も揺らめくトリップ感の強いダブ/レゲエ路線の"Dancin' Music"、そして不気味な呟きも用いたアシッド・ミニマルの"Bad Words"まで、様々なスタイルを咀嚼しながらフロア向けのダンストラックも収録している。色々な音楽性が詰まっていながらもそれらが散漫にならないのは、メロウな雰囲気やサンプリングベースな生っぽさの共通項によってであろうが、こう音楽的豊かさを拡張しながらも最初のアルバムから存在する緩い楽天性はEddie Cの魅力だろう。



Check Eddie C
| HOUSE14 | 11:30 | comments(0) | - | |