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Maat - Solar Mantra (Growing Bin Records:GBR023)
Maat - Solar Mantra
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時代の狭間に埋もれていたニューエイジ/アンビエントの発掘によって再評価が2020年も進んでいるが、そういったジャンルにて古典ではなく現在から未来への視点を持って、そしてバレアリック呼ばれるスタイルも内包しながらこのムーブメントを引率するGrowing Bin Recordsは、今レーベル買い出来る程に信頼に足るレーベルだ。前述のジャンルのみならずクラウトロックやジャズ&フュージョン、エレクトロニックにディスコ等も披露するなど、特定のジャンルに依存せずに自由な音楽性を持っているのがレーベルの特徴だが、その意味ではこのアルバムは特にレーベル性を象徴しているとも言えるかもしれない。Maatなる初耳のこのユニットはAdrien ColleとTim KarbonとMaxime Castanetから成るトリオのようで、それぞれが今までにもバンドやソロ活動を行っていたようで、そんな3人による音楽性が揃った事でここではハウスやダブ、ジャズやバレアリックにアフロといった多種多様な音楽のハイブリッドになっている。レーベルインフォに拠ればDon Cherryを含むワールド・フュージョンのバンドであるCodonaに捧げられたとの事で、国境やジャンルを越えたCodonaの音楽性という観点から共鳴する所もあったのかもしれない。残響広がる土着的なパーカッションと揺らぐような4つ打ちのグルーヴ感がある"The Walk"は微睡んだダブ・ハウスなのだが、甘く靄のような歌やセンチメンタルなシンセや鍵盤も加わり、何だかバンドで演奏しているようなライブ感のある曲だ。続く"Jaki & Bryn"も湿ったトライバルな打楽器が印象的だが、憂いに満ちた歌とフォーキーなベース等も入ってくると、エキゾなポスト・ロック的な感覚に染まっていく。しなやかにスウィングするジャズ・ドラム風な"Feuglace"ではメランコリーな鐘や陰鬱なギターが深い情緒を生み、そこに更に悲壮感にも似た感情の込められた歌も加わり、艷やかではあるが随分と内省的なジャズ・ハウスだ。"Solar Mantra"では繊細なアコースティックギターと軽いパーカッションがエキゾな旋律を奏で、幻想的な歌も加わり桃源郷へと誘うようなアンビエント・フォークとでも呼びたくなる。"Quetzal Pacino"はエキゾやアフロな空気を滲ませながらも特にフロアを意識したハウス・グルーヴを刻むダンスだが、ライブ感のある響きが古代や原始の胎動を思わせる。今風のニューエイジに当てはまるのは"Mount Beuvray"、チャカポコとしたパーカッションに長閑なホーンと澄んで綺麗ななシンセが波紋のように広がっていく甘美なノンビート曲で、ドリーミーなアンビエントでもある。そしてアコギの爽やかな音と乾いた残響が効いたダブ・パーカッションが響き、そこにカラフルな電子音も入り混じり、開放的なバレアリック性を開花させた"Llome Dub"によって、アルバムはほっと安堵に満ちながら締め括られる。実にGrowing Binらしい多彩なジャンルを含む折衷主義で、その上で現在のバレアリックやニューエイジの文脈に自然と存在する今っぽさもあり、デビューアルバムからして鮮烈な印象を残している。特にオーガニックなバレアリック好きな人には、是非ともお勧めである。



Check Maat
| HOUSE15 | 17:00 | comments(0) | - | |
DJ Mitsu The Beats - All This Love (Jazzy Sport:ZLCP-370)
DJ Mitsu The Beats - All This Love
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ヒップホップのDJ/ビートメイカーであるDJ Mitsu The Beatsは、またヒップホップのトリオであるGagleの一員としてそちらではより鋭利なビートが効いたトラックを制作するアーティストであるが、ソロ活動に於いては勿論そういったビート中心の制作も行うがどちらかというとメロウなジャジー・ヒップホップの活動が特に注目を集めているように思われる。ここ数年は前述のGagleのエッジのあるヒップ・ホップなアルバムや、ソロ活動に於いてもビートに主軸としていたのだが、やはりシンガーとコラボしてR&Bやソウルを下敷きにしたメロウな作風でヒップホップの枠組みを越えていく音楽性が魅力的なのであり、その意味ではこの久しぶりのソロアルバムは歌とインストによるジャズやコンテンポラリー・ミュージックにネオソウルといった要素も聞けるアルバムでファンの期待に応える秀作だ。本作ではMarter、Mahya、Akiko Togo、Naoko Sakaiの4人のシンガーと、そして演奏者ではMark De Clive-LoweとCro-magnonのキーボーディストである金子巧が参加しており、以前にも増してしっとりとした艶めかしい情緒が印象的だ。Marterが参加した"Togetherness"では落ち着いた華やかさを放つエレピとしっとりしたベースにねっとりしたダウンテンポのリズムのトラックに、枯れた味わいのある声で希望を謳い上げ、アルバム冒頭から期待通りのメロウネスに満たされる。続くインストの"Mellow Curves"はフェンダー・ローズの湿っぽく優美なコードが印象的なジャジー・ヒップホップで、展開を抑えたビートの上で鍵盤が切ない感情を吐露するように引っ張っていく。Mahyaをフィーチャーした"You Are Mine"でもゆっくりと滴り落ちるようなピアノが情緒的だが、やはり愛らしく甘い歌が加わる事でR&Bやソウルといった趣きが強くなり、リズムは軽やかで心地好いがねっとり甘い世界観にうっとりとさせられる。一方でMark De Clive-Loweが参加した"Slalom"は軽快に響くアフリカンなパーカッションと走るハウスの4つ打ちに合わせて感情性豊かなエレピソロも躍動感に溢れており、そして金子が鍵盤を弾く"Intimate Affairs"はメロウに揺らめく情緒的なエレピに4つ打ち合わせおり、どちらも一見ハウス・ミュージックなのだがジャズが根底に感じられる共通点がある。目玉はJose Jamesをフィーチャーした10年前の名曲である"Promise In Love"のリミックスで、原曲の陽気なトランペットを抑えつつざっくり生々しいビートとピアノの艷やかな響きを前面に出した事で、情緒を残しながらもすっきり研ぎ澄まされたソウルとジャズとヒップホップの混合が聞ける。徹頭徹尾、間違いなくDJ Mitsu The Beatsのメロウと呼ばれる性質が横たわるアルバムで、最早ヒップホップだとかジャズだとかジャンルを区分けする必要もなく、その湿り気を帯びたメロウネスにこれでもかと浸れる世界観はアダルトな円熟味に溢れている。



Check DJ Mitsu The Beats
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | - | |
Various - Claremont Editions One (Claremont 56:C56CD022)
Various - Claremont Editions One
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ディスコ〜バレアリックを提唱するシリーズ『Originals』で定評を得たClaremont 56。長らくバレアリックを主導するPaul Murphyが主宰するこのレーベルはディスコを軸にしながらも、フォークやプログレにソフトロック等にも取り組む事で所謂一般的なダンスのフォーマットを越えて、多様な音楽性を内包しながらバレアリックを体現してきた。そして前述の『Originals』シリーズは著名なDJによってジャンルを限定せずにレアな音源が纏め上げられ、バレアリックという雰囲気に統一したレーベルの音楽性を象徴する一連の作品となったが、そのシリーズが2013年に終了した後にMurphyが考えたのは、レアな音源ではなくレーベルに於いて成長しているアーティストに対しての後押しだったようで、それを形としたのがこの『Claremont Editions』シリーズだ。基本的には過去にレーベルと関わりを持ったアーティストの新曲を収録しており、それに加えてレーベル外からもClaremont 56のイメージに沿う曲も加えて、ジャンルレスに長閑で開放感のあるドリーミーな世界観に纏め上げている。Hear & Nowは今レーベルが最も一押しするユニットではないだろうか、このイタリアの二人組はディスコをベースにギターも多めに用いた作風が特徴で、朗らかなギターフレーズと多幸感溢れるシンセのラインが温かい太陽光が降り注ぐような感覚を生む"Alba Sol"は有機的なバレアリックで、底無しの優しさに抱擁される。Statuesもまだ作品数は少ないもののレーベルが発掘したトリオのようで、"Heaven Fades"は切り裂くようなサイケデリック・ギターと哀愁のピアノが物哀しい雰囲気を作りつつ、そこに有機的な電子音と朧げでドリーミーな歌が加わりながら、白昼夢に浸るようなソフトロックを奏でている。本作の目玉の一つはHF Internationalの"I Can't Go For That (No Can Do) (KI's Extended Disco Dub)"である事は間違いなく、Hall & Oatesの名曲をユニットがレゲエ・ディスコとしてカバーしたものを更にKoaru Inoueが手を加えているのだが、歌を削ぎ落としダブ化した事でディスコのリズムが際立ち朗らかなギターカッティングも浮かび上がり、トリッピーな効果音を織り交ぜながら心地好いダンスグルーヴを刻むディスコ・ダブと化している。Fursattlの"Leerlauf"に至ってはリズムが跳ねて走り、揺らめくようなフォーキーなギターが爽やかなクラウト・ロックだが、満ち足りた至福感のバレアリックという観点から見ると本コンピレーションに馴染んでいる。アルバムの最後はCanのメンバーでもあったHolger Czukayとその妻であるU-Sheによる数年前に録音された未発表曲の"Longing"で、オーケストラのようなゴージャスなストリングス使いとは対象的に気怠い歌によって弛緩した雰囲気はクラウト・ロック版のチルアウトで、終盤にかけてリズムが暴れ出して盛り上がっていく感動的な流れは締め括りに相応しい。他にもAORやダウンテンポを含むこのコンピレーションは多彩なジャンルが故に必ずしもフロアに即した音楽だけではないが、そのようなダンスもありながらダンスの枠組みも越えていく音楽性がClaremont 56の特徴の一つであり、その意味では非常にレーベルの方向性を示唆していると言えよう。第二弾も楽しみにならずにはいられない素晴らしいシリーズだ。



Tracklistは続きで。
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| ETC5 | 12:00 | comments(0) | - | |
Pacific Breeze Japanese City Pop, AOR & Boogie 1976-1986 (Light In The Attic:LITA 163)
Pacific Breeze Japanese City Pop, AOR & Boogie 1976-1986
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近年日本のジャパニーズ・アンビエント/ニューエイジの掘り起こしの勢いには目を見張るものがあるが、その代表的なコンピレーションである『Kankyō Ongaku (Japanese Ambient, & New Age Music 1980 - 1990)』(過去レビュー)を手掛けたUSのLight In The Atticは、それ以前にも例えば細野晴臣の複数のアルバムを復刻しており日本の音楽に興味を持っていた事は間違いないだろう。そんなレーベルが続いて送り出したシリーズは、日本のシティ・ポップやAORとブギーに焦点を当てた「Pacific Breeze」シリーズ。その第一弾となる本作は1976〜1986年に制作された日本産の音楽で、細野晴臣、大貫妙子、吉田美奈子、高橋幸宏、鈴木茂、高中正義、井上鑑、佐藤博、松任谷正隆、F.O.E.、石川鷹彦、惣領智子、佐藤奈々子、小林泉美、阿川泰子、当山ひとみ、豊島たづみの曲がコンパイルされている。ジャケットを担当したのは大滝詠一の『A Long Vacation』のアルバムカバーも手掛けた永井博で、バックに澄んだ青々しい空が広がるリゾート地のような絵も完全にシティ・ポップの雰囲気そのもので、聞く前の雰囲気作りからして完璧だ。しかし何故、今更日本のシティ・ポップやAORなのか。暗くどんよりしたムードと閉塞感が続く世の中で、キラキラとしたクリスタルな感覚を持つポップな音楽がそういった暗雲を少しでも振り払ってくれるからだろうか。そんな仮定を抜きにしてもこの古き良き時代の日本の音楽は、海外の音楽を咀嚼しながら当時まだ新しかった電子楽器と生演奏を匠に融合させ、お洒落で日本独特のポップな感覚に昇華しており、実は時代が移り変わろうとも色褪せない普遍的な魅力を持っていたのだ。佐藤のヴォコーダーを用いた歌に爽やかなギターカッティング、そしてブレイクでのフュージョン的な鍵盤ソロなど都会的で洗練された音を聞かせる"Say Goodbye"、そして甘ったるくもきざな歌と煌めきを感じさせるシンセが魅力的な高橋の"Drip Dry Eyes"等は『Pacific Breeze』の雰囲気に最適でシティ・ポップの魅力を実直に伝えてくる。しかし本盤を聴き通してみるとシティ・ポップと一口で言っても多様な要素が存在しているのが分かり、スティール・パンの乾いた音が可愛らしく腰に来るリズム感がファンキーな高中の"Bamboo Vender"はラテン・ジャズ・ファンクだし、電子音とパーカッションも用いてエレクトロ的なリズムを叩き出すF.O.E.の"In My Jungle"は土着ファンクで、阿川の艷やかで夜のアダルトな空気が滲む"L.A. Night"はアーバン・ソウル、小林のトロピカルやファンクも咀嚼した"コーヒー・ルンバ"のエキゾチック感と、海外からの時流の音を貪欲に取り込みながら日本の都会的な音として表現している。またこのコンピレーションでは女性アーティストの曲が多い事も印象的で、情緒たっぷりで切ないディスコ・クラシックである吉田の"Midnight Driver"からゴージャスな音使いと魂が叫ぶような和製ソウルな豊島の"待ちぼうけ"、フルートの朗らかな音色に引かれてブラジリアン風なリズムが爽快でポップな大貫の"くすりをたくさん"等、特に女性の声がこのジャンルに合っているように感じられる。電子楽器やエキゾチカも取り込むなど先鋭的な感覚を持っていたこれらの音楽は、そしてネオンライトに溢れる都会的なキラキラした輝きもあり、非常に時代性の強い音楽であり懐古的な気分になる事は否めない。しかし、その魅力は普遍的なものだからこそ現在に於いて再度評価されるのだろう。ああ、何だか懐かしいクリスタルな日々が目の前に浮かび上がってくるようだ。



Tracklistは続きで。
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| ETC5 | 12:00 | comments(0) | - | |
Susumu Yokota - Cloud Hidden (Lo Recordings:Lo166CD)
Susumu Yokota - Cloud Hidden
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2015年3月に亡くなられた横田進は日本のテクノ創世記の礎となった一人だ。活動が盛んな頃には半年に一枚のペースでアルバムをリリースし、その内容もどんどん変化してアシッドからテクノにハウス、アンビエントやダウンテンポにブレイク・ビーツ、果てはエクスペリメンタルまで、兎に角歩みを止めずに溢れ出すアイデアを即座に作品に投影して自身の唯一無二の世界観を確立していた。そんな音楽に魅了された人は多く、事実ダンス・ミュージックの枠を越えて他のアーティストからも評価されており、日本に於ける電子音楽の伝説的アーティストと呼んでも過言ではない。そんな横田の多大な功績もあってか彼が亡くなって以降は初期のアルバムが複数枚復刻されていたが、本作は復刻ではなく完全なる未発表音源だ。なんでも過去に横田と共作をしたMark BeazleyことRothkoは、2002年作の『The Boy And The Tree』と同時期のラフスケッチが収録されたDATテープを過去に横田から受け取っていたそうで、それをLo Recordingsを主宰するJon Tyeが「横田の作品の精神と遺産に敬意を表して形にした」との事だ。この2002年頃には既に普通のダンス・ミュージックの枠を飛び越えて、ダンスに依存しないエクスペリメンタルな方向へ足を踏み出していた時期で、実際この未発表曲群も最早ダンスフロアとは無縁のイマジネーション溢れる現実と虚構が入り乱れる倒錯の世界のようで、また『The Boy And The Tree』と同様に和的というかオリエンタルな雰囲気も感じられる。夢の中で鐘や弦などの原始的な楽器が鳴り響いているようなエキゾ・トライバルな"Spectrum Of Love"で始まり、寺院のスピリチュアルな雰囲気ながらも迫力あるパーカッションが乱れ打つニューエイジの"Implications Of Karma"、寂れたギターらしき物哀しいメロディーを軸にした怪しげな笛が加わるアブストラクトな"The Reality Of Reincarnation"と、序盤から形容のし難いジャンルながらも横田らしい静謐な美学が光っている。光が放射し圧倒的な眩しさと多幸感に包まれる"Ama and the Mountain"はもう完全にニューエイジそのもので、一方でガムランらしき音とぼんやりとした電子音が揺らぐ"The Seven Secret Sayings of God"はバリ島のガムランのアンビエント化で、この頃はアジア音楽に興味を持っていたのだろうか。ダンス・ミュージックではないものの原始的な胎動が潜み、この世とあの世を行き交うような夢想の世界は霊的で、聞く者を一時の白昼夢へと誘うだろう。また現在盛り上がっているニューエイジ/アンビエントの流れに乗っても違和感無く、横田の早過ぎた傑作と断言したい。



Check Susumu Yokota
| TECHNO15 | 10:30 | comments(0) | - | |