2024.02.13 Tuesday
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テクノ界に極僅かに存在する金太郎飴的な存在、それをもしダブ・テクノの方面から選ぶのであれば間違いなく真っ先に挙がるのがRod Modellであろうか。 90年代後半からリリースを始めたデトロイトからのダブ・テクノ/アンビエントの職人であるModellは、DeepChordやEchospaceにWaveform Transmission、その他多くのプロジェクトを並行させながら活動しているが、名義毎に大きな差異を見つけるのは難しい程にダブ・テクノにアンビエント成分を溶け込ませた音楽性として一貫性を持っている。もっと言ってしまえばBasic ChannelことRhythm & Soundが作り上げたダブの音響という線路上を、ずっと真っすぐに進んでいるような活動でもあり、揶揄するわけではないが金太郎飴的というのは自身の音楽性にぶれがなく純度を高めているという事でもある。また2014年に発足したロンドンのAstral Industriesは、アブストラクトでアンビエント性の強いダブ・テクノにフォーカスしたレーベルなのだが、その初作はDeepChordのアルバムであったし、その後もModellは度々レーベルのカタログに名を残すなどAstral Industriesを代表するアーティストにまでなっていて、Modellのダブ・テクノの追求は最早偏執的な愛だろう。その流れからのAstral Industriesから2023年にリリースされた『Ghost Lights』もやはりAstral IndustriesらしくもありModellの濃霧のようなダブ音響とアンビエントな感覚が充満したアルバムで、レコードでは便宜上A〜Dと4曲に分けられているが、計70分にも及ぶ現実逃避的な深遠なるダブの旅と呼んでも差し支えない内容だ。ベースやリズムは一切排除されくぐもった不鮮明な電子音響やチリリチとしたヒスノイズに様々なフィールド・レコーディングから成り立った音楽は、定型的な流れもなくただただふらつき浮遊し彷徨うような感覚。"Side A"では放射するような荘厳な電子音に満たされながら鳥の囀りなどのフィールド・レコーディングを散りばめて、ゆっくりとした立ち上がりで、"Side B"に移行するとシューゲイザーのようなダブ音響に加えスペーシーな効果音や音に色味も感じられるようになりドラマティックに展開し、星が煌めく宇宙へと放り出されたかのよう。"Side C"は地上へと戻ってきたのだろうか、雑踏の環境音のような音が浮かび上がり幾分か現実的世界の雰囲気を増し、何だか重苦しい地球の重力を感じるようでもある。そして最後の"Side D"、煌めくような壮大な電子音の放射の中に星の瞬きのような美しい音や繊細なヒスノイズを織り込み、穏やかなアンビエントムードに傾倒しながら70分にも及ぶ高密土なダブ音響の終わりを迎える。流体のように常に変化し抽象的なダブサウンドに包まれた長尺な構成のため、断片的な部分での評価に意味はなく、だからこそ他のアルバムとの大きな差異を述べるのは難しい。だとしても本作の余りにも深いダブの音響と美しいアンビエントのムードは垂れ流して聞く分には最高で、ここまで一貫した作風は職人芸と呼ぶに相応しい。
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