Specter - Built To Last (Sound Signature:SSCD13)
Specter - Built To Last
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近年は主宰のTheo Parrish以外のアーティストによる作品を積極的にリリースし、それによって音楽性の拡大を成し遂げているデトロイトの重要レーベルであるSound Signature。本作はそのレーベルから2018年8月にリリースされたアルバムで、手掛けているのはシカゴ出身のAndres OrdonezことSpecterだ。過去には同レーベルより2010年に『Pipe Bomb』や2012年作の『The Gooch EP』がリリースされており、Parrishの御眼鏡に適った人材である事は明白だ。2000年の初頭からリリースを開始しているもののそれは散発的であり、デトロイトという才能が集まる場所に於いてもその知名度は大きいものではなかったが、このキャリア20年にして初となるアルバムで(レーベルの後押しもあって)その存在感ははっきりとしたものになるに違いない。過去のEPは色味が無く錆び付いた音響のロウ・ハウスであったが、その流れは基本的に変わらずにシカゴ・ハウスの簡素なマシン・グルーヴに仄かに燻るようなデトロイトの叙情性が一つとなったダウンビートなハウスが中心で、レーベル性でもあるブラック・サイケデリアにも沿っている。アルバムは安っぽい音響の簡素なリズムマシンのロウなビート感に不気味なボーカル・サンプリングをループさせ、闇の中にくすんだような上モノが微かに持続する"What Else You Do"で始まる。続く"Under The Viaduct"ではチキチキとしたハイハットと金属的なパーカッションに鈍いベース音が目立つしっとり目のディープ・ハウスで、薄っすらと浮かび上がる幽玄なシンセには燻るように燃えるエモーショナル性が感じられ、剥き出し感あるシカゴのローファイな音響ながらもじんわりと肌に染み込む感情性がある。奇妙な電子音響とカチカチとしたシンプルなリズムの"0829 Fifty Fifty"は鈍くずぶずぶとしたアシッディーなベースも相まって、混沌からトリッピーかつサイケデリックな雰囲気が生まれているが、ピアノの和やかなコードによってディスコな感覚も伴っている。一方で"Not New To This"は彼の初期の作風を踏襲したクラシカルかつメロウなディープ・ハウス性が強く、コンガのからっと爽快な響きや滑らかなビート感に情緒的なシンセや闇夜に映えるピアノを被せて、エモーショナルな漆黒のデトロイト・ハウスそのものだ。しかしやはり近年のSpecterの音楽性を表すのは、例えば"Tamarindo"のようにドタドタとした辿々しいリズムマシンのビートと鋭利なハイハットが激しく刻まれ、オルガンのミニマルなフレーズを用いて混迷とした雰囲気の中を突き進む衝動剥き出しのロウ・ハウスのような曲ではないだろうか。シカゴ・ハウスの荒くもタフな音響を受け継ぎビートダウン・ハウスによって混沌としたサイケデリック性を見せるSpecterは、Parrishが確立させた音楽の継承者と呼んでも差し支えないだろう。



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| HOUSE14 | 16:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Smallpeople - Afterglow (Smallville Records:SMALLVILLE CD 12)
Smallpeople - Afterglow
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それがテクノであれハウスであれ、情緒の深遠にいるようなムーディーでジャジーな音楽性を特に発揮するハンブルクのレコードショップ兼レーベルであるSmallville Records。Smallpeopleはその運営に関わる数人の内、Julius SteinhoffとDionneことJust von Ahlefeldから成るユニットで、そもそもどちらもソロで同レーベルより例えばデトロイトのエモーショナル性やシカゴ・ハウスのシンプルな作風と共鳴する作品をリリースしており、その両者が手を組めば派手ではなくともじんわりと心に染み込んでいくディープ・ハウスになるのは当然で、これこそSmallvilleの音そのものである事に異論は無いだろう。決して盛んではない活動のため2012年の1stアルバムである『Salty Days』(過去レビュー)から7年ぶりとなった本作は、しかしその長い時間が経過しても作風は大きく変化する事せずSmallpeopleらしさを貫いている。淡々とした乾いた4つ打ちのキックと退色した灰色の世界観の中から情緒的なピアノのコードが浮かび上がり、ダンスのグルーヴではあるが丁寧に聞かせるディープ・ハウスである"Magic Interference"でアルバムは始まり、すっきりとした間を残して硬めの跳ねるキックでシカゴ・ハウス風なグルーヴにうっとりするエモーショナルなシンセの上モノに心惹かれる"Hearts At Whole"、シャッフル調ながらもスムースなビート感で躍動し透明感のあるシンセで上品に彩る"All States Of Dawn"と、冒頭の3曲からして如何に無駄な音を削り落としながら洗練されたグルーヴと端正なメロディーやコードを用いて丁寧な作りをしているかは感じ取れる筈だ。アルバムの中ではやや癖がある"Beyond"はラテン風なパーカッションやベースラインが目立つが、それと共に催眠術のような幻惑的な上モノが酩酊感を生み、ダンスフロアでも上げ過ぎる事なくふらふらと揺らしてくれるであろうディープ・ハウスだ。そして力強いハウスのリズムを刻んでデトロイト・テクノ的な望郷の念が馳せる幽玄なパッドを配した"Sonic Winds"は、途中から希望に満ちた鍵盤のコードも加わって滑らかなグルーヴに乗って何処までもエモーショナル性が伸びていく。そして最後の落ち着きのある滑らかなリズムと静けささえも感じさせる静謐なシンセで包み込む"Afterglow"は、繊細さもあるダビーな音響によって深く潜っていくようだ。全体を見ても突出した真夜中を盛り上げるキラートラックらしき曲は一つもなく、ひたすら淡々と過剰になる事なくすっきりした音の構成で丁寧に聞かせるディープ・ハウスに忠実で、その洗練されたムーディーな世界観も決してスノッブではなく一歩引いた控えめな上品さこそ彼等の特徴だろう。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Yourhighness - Stratofortress (CockTail d'Amore Music:CDA021)
Yourhighness - Stratofortress

テクノやハウスだけではなくディスコやアンビエントにまで手を広げながら異形な作風を展開するCockTail d'Amore Musicは、アンダーグラウンド性を伴いながらもこれからを期待させるアーティストを送り出してきている。過去にはBorn Free RecordsやRett I Flettaといった同様にアンダーグラウンドなレーベルから、破壊的で鈍い響きのアシッディーかつロウなテクノ/ハウスをリリースしているYourhighnessが、2018年2月頃にCockTail d'Amoreからリリースしたのが本作。オリジナルは"Stratofortress"の1曲のみだが、リミキサーにBorn Free主宰のSamo DJとエクスペリメンタルなモダン・テクノを作るRroseに、今や世界規模での評価を獲得した日本からのGonnoが名を連ねているのだから、内容に不足は無いだろう。"Stratofortress"はYourhighnessの過去の作風を踏襲したアーティストに期待する内容そのもので、鈍く野暮ったいキックがどっしり4つ打ちを叩き出しつつ鈍いアシッド・ベースがマシンガンの様に連打しながら現れ、そして金属的な鳴りのパーカッションも加わわって低温な空気感で退廃して狂った世界観を展開するテクノ・トラック。じわじわと微細な変化を付ける事で途切れない陶酔感を引き出し、ツール性に特化したロウ・アシッド・テクノは完全にフロアの狂騒の中にある。対して"Samo DJ Remix"は崩れたリズムがブレイク・ビーツとなり非常にグルーヴィーに揺れ爽快なハンドクラップも相まって実に躍動感に溢れているが、朧げで酩酊感のある呟きや金属が捻れるような奇怪な電子音が不気味さを醸し、こちらもトリッピーなテクノとして良い感じにぶっ飛んでいる。"Rrose Remix"は落ち着いた感もゆったりしたドラムのビートから始まりドローンにも近い電子音を被せて、所謂ディープな響きによって深く闇の中を潜航する音響テクノだが、次第にリズムも走り始めて1曲の中でじわじわと盛り上がっていく構成が演出されている。そして最後の"Gonno Remix"、やはりというか特に個性的なリミックスはスローモーながらも金属的な厳ついリズムがずんずんと沈み込み、歪んだアシッド・ベースが止めどなく牙を剥くロウ・アシッド・テクノはどこかインダストリアルな荒廃した雰囲気があり、一寸の光も見させずに闇で支配する狂気なりミックスだ。どの曲もアーティストの個性が表現されながら、全体的にマッドな作風で良い感じにフロアを狂わせてくれるであろう。



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| TECHNO14 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Amp Fiddler - Amp Dog Knights (Mahogani Music:M.M 41 CD)
Amp Fiddler - Amp Dog Knights
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先日来日ライブを行ったばかりと近年精力的な活動を見せるデトロイトのベテランであるAmp Fiddler。2018年にはデトロイトのファンクバンドであるWill Sessionsとの共作である『The One』で、バンド演奏を中心としたライブ感溢れるソウルやファンクを披露していたが、元々はPファンク軍団でもキーボードを担当していただけありDJではなくプレイヤーとしての面からの音楽性で評価されるアーティストだ。しかしその前作でもある2017年にMoodymann率いるMahogani Musicからのリリースとなった本作は、当然クラブ・ミュージック寄りの内容とはなるがファンクだけでなくハウスにR&Bやヒップ・ホップなど、つまりはデトロイトの黒人音楽が息衝く内容で、そこには前述のWill Sessionsをはじめとしてデトロイトに根ざしたAndresや故James YanceyことJ Dillaに注目株のWaajeed、本作で多くの曲でボーカルを担当するNeco Redd、そして勿論Moodymann自身も制作に加わるなど多くのゲストを招いて、ソロ作品ながらも様々な表現を見せている。オープニングはラジオ番組を再現したようなサンプリングから始まるざっくりグルーヴィーなヒップ・ホップで、スモーキーな音像は正にデトロイトのビートダウン様式と言えよう。続く"Return Of The Ghetto Fly"は過去の作品のリメイクとなるが、ここではJ Dillaのトラックも用いてヒップ・ホップのリズムとPファンクの熱いゴージャス感があるコーラスが混じる熱量と粘性の高い曲となり、濃厚なブラック・ミュージックを展開する。"It's Alright (Waajeed Earl Flynn Mix)"は先行EPをWaajeedがリミックスした曲だが、かなりロービートでヒップ・ホップ寄りだった原曲よりも優しさに満ちたシルキーな響きのR&Bとなり、艷やかな官能に魅了される。勿論Mahogani直系な紫煙が揺らぐスモーキーで訝しくもソウルフルなハウスの"Good Vibes"もあれば、Will Sessionsも参加して舐め回すようなどぎつさがあるPファンク全開な"Put Me In Your Pocket"もありと、多くのアーティストを起用する事で多彩な音楽性に繋がっている。アルバムの後半も盛り上がり所は多く、メロウなコーラスを用いてしっとりと聞かせるざっくりと湿っぽいヒップ・ホップ"It's Alright"から、囁き声の色っぽい歌でMoodymannをフィーチャーしてアルバム中最もアダルトかつセクシーなR&Bとして聞かせる"I Get Moody Sometime"、そして何とNYハウスの大御所であるLouie Vegaが期待通りに力強くハウスの4つ打ちを刻みながらもエレピやシンセが華麗に彩るリミックスをした"So Sweet (Louie Vega Remix)"と、ダンス/リスニングといった区分けも関係なくこれぞMahoganiの熱くソウルフルなブラック・ミュージック節が全編貫いている。やはりキーボード奏者でジャズやファンクをルーツにするだけあって構成能力に長けたアーティストとしてどれも耳に残る魅力があり、ハウス・ミュージックという区分だけで聞くにはもったいない名作だ。



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| HOUSE14 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2019/7/12 ROUNDHOUSE feat. Mark Farina @ Contact
ハウス・ミュージック、その中でも特にシカゴ・ハウスにフォーカスしたコンセプトを掲げるRoundhouseは、間違いのないゲスト陣と国内から実力者を迎えて強烈にハウス・ミュージックの魅力を伝えるパーティーの一つだ。今回の開催ではパーティーの初回に登場したシカゴ出身で西海岸はサンフランシスコで活動するMark Farinaが3度めの登場となるが、メインフロアでは勿論パーティーのレジデントであり猛烈なシカゴ・ハウス愛を持つRemi、セカンドフロアであるContactではFarinaによるヒップ・ホップやアシッド・ジャズを中心としたMushroom Jazz SetやForce Of NatureによるHip Hop Set、そしてサードフロアであるFoyerではMoodmanらも出演するなど、ハウス・ミュージックの枠を越えて楽しめるスケールの大きいパーティーとして期待は高い。
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| EVENT REPORT7 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |