Martin Buttrich - Northeast / Southwest (Planet E:PLE65396-6)
Martin Buttrich - Northeast Southwest
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過去にはPoker FlatやCocoonといった人気レーベルから覚醒感あるテック・ハウスをリリースし、またLoco Diceと共に自身ではDesolatを主宰するMartin Buttrich。そんな彼が注目を集めるきっかけになったのは2006年にPlanet Eからリリースした『Full Clip / Programmer』(過去レビュー)であるのは間違いなく、妖艶でトランシーな上モノを用いたディープかつミニマルなテクノは正にPlanet Eの音楽性そのものだった。それがCarl Craigに気に入られたのだろうか同レーベルから何枚かのEPはリリースしたものの、本作では11年ぶりのPlanet Eへの帰還となる新作だ。良い意味で過去に同レーベルから出した作品と大きな変化はなく、また初めて聞かされたらC2の新作と勘違いする可能性もある位に、実にこれがPlanet Eらしいテクノで期待に応えてくれた。"Northeast"はシャッフルする切れのあるハイハットによって疾走するビート感を生み出し、トランシーなシンセのリフを執拗に繰り返しながらその下では動きの多いベースラインが躍動し、じわじわと高揚へと上り詰めていく持続感によって長い恍惚状態を誘う壮大なテック・ハウス仕様。深い闇が広がる深遠さ、または逆に広大な宇宙空間が眼前に広がる荘厳な世界観で、フロアで少しずつ盛り上がっていく機能性を磨きながらもデトロイトのエモーショナル性も兼ね備えたButtrichらしい一曲だ。対して"Southwest"はしっかり重心の低いリズムとカラコロとしたパーカッシヴなリズムが軸になっているが、隙間が多い構成の中にヒプノティックで繊細な電子音をループさせてミニマル感を持たせている。途中からやや動きの多い派手なシンセのメロディーが出てくる辺りは余計だったと思うが、こちらもじわじわとビルドアップするスタイルで、テクノだけでなくプログレッシヴ・ハウスにも合わせやすいだろう。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2019/11/2 Grassroots 22th Anniversary Party !!! - DAY II - @ Grassroots
日本の小箱を代表するであろうクラブ、もとい音楽酒場の東高円寺にあるGrassroots。現在は日本のクラブ業界が以前よりも細分化し小箱化が顕著に進んでいるが、その先駆けの一つともいえるのがこの酒場で、前身のNatural Mystic時代から含めればおおよそ28年も運営を継続している事になる。しかしクラブ業界の停滞はここGrassrootsにも及び最近は平日のオールナイト営業も停止するなど、その長い時間において決して順風満帆というわけでもないが、小さい酒場だからこそ新しい人との出会いが少なくはなく面白い音楽にも出会える場所として存在感を示している。そして22周年記念の二日目に登場するのはDJ Nobu、DJ Kuri、CMT、Keihin、Kabuto、NehanとみんなGrassrootsで育ったDJ、そして今でもレギュラーパーティーを持っている人もいるという、つまりこれぞGrassrootsファミリーな一夜だ。
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| EVENT REPORT7 | 17:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Jonny Nash - Make A Wilderness (Music From Memory:MFM037)
Jonny Nash - Make A Wilderness
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2019年もニューエイジやアンビエントの方面においてリーダーシップを発揮したMusic From Memory。過去の埋もれた作品の発掘というイメージは未だに強いものの未来への視線も向けており、例えばこのJonny Nashによるニューアルバムもその一つだ。Nashの存在感は日に日に増しており、かつてはコズミック・ディスコ・ユニットのDiscossessionのギタリストであり、またはGigi MasinやYoung Marcoとの3人ユニットであるGaussian Curveでの活躍、そして現在はLand Of Lightというユニットでも活動し、そしてニューエイジ系レーベルの中で注目を集めるMelody As Truthも主宰するなど、ソロ/コラボレーションのアーティスト活動にレーベル運営と彼の名は至る所で見受けられる。そして単独での作品は久しぶりとなる本作では、公式での案内では遠藤周作、J.G. Ballard、Cormac McCarthyらの著書の中に見られる風景や雰囲気の描写 - 静かな場所や古き土地、何処にでもあるが記憶に残らない場所や原野 - に影響を受けたとの事で、音楽的にも以前のニューエイジ色から脱却しより静謐さを増したコンテンポラリー・ミュージックといった趣きだ。アルバムは繊細な鉄琴の美しさに霊的な歌や荘厳さのあるチェロがぼんやりとした空間を生む"Root"で始まり、続く"Shell"も細い線のような電子音の響きからか弱くも叙情的なピアノのコードが浮かび上がるも音のない所の美しさが際立つ静寂な曲で、この時点で以前の作風の要素であるアンビエントやニューエイジとは異なるものが感じ取れる。朝焼けのような美しいシンセドローンから始まる"Flower"はアンビエント的だが、しかしガムランらしき打楽器や不思議な電子音響、そして霞のような聖なる声が合わさり何処か未開の深い森の中や古代の土地を想起させるミステリアスな感覚もある曲で、非常に神妙な世界観だ。9分にも及ぶ"Language Collapsed"では再びチェロが重厚感を作る中を鉄琴が繊細に装飾を施し、薄いエレクトロニクスのドローンが緊張感を持続させるが、少ない音の構成だからこそゆったりした時間の中に美しい静寂が生まれ、明確な流れの無い観念的な作風ながらもその美しさには息を呑む程だ。最後の"Apparition"ではそれまでの緊張感も幾分か和らぎ、透明感のあるドローンと臨場感を生むフィールド・レコーディングに対し朗らかで優しいピアノがしっとりメロウな叙情を演出して、最後の最後でうっとりと白昼夢に耽溺させられる。今までの分かりやすいニューエイジ/アンビエントな作風から、本作ではメランコリーはありつつも緊張感や不気味さも伴うコンテンポラリー・ミュージックへと変化しているものの、深い内面世界へとダイブさせられるような思慮深い音楽でより一層アーティスティックになった印象だ。単純には聞き流す事の出来ない濃密な音楽体験である。



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| ETC4 | 15:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Wilson Tanner - II (Efficient Space:ES013)
Wilson Tanner - II
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ジャンルの枠にとらわれずエクスペリメンタルとロマンティシズムが交錯するGrowing Bin Records、そのレーベルからのデビュー作『69』(過去レビュー)がニューエイジやアンビエントの方面で称賛を集めたWilson Tanner。メルボルンの新世代を代表するAndras Fox/A.r.t. Wilson名義でも活動するAndrew Wilson、そして同じくオーストラリアのEleventeen Eston名義でもGrowing Binからヒットを放ったJohn Tanner、両者とも幅広い音楽活動をしながらも特にニューエイジやアンビエントにおいて輝く才能を発揮している実力者が組んだこのユニットは、共鳴する両者の音楽性が完全に融合し実験的ではありながらも自然派志向の心地好いアンビエントを奏でていた。あれから3年を経たこの2ndアルバムは1950年代のリバーボートに電子機器を載せてメルボルンの湾で録音したそうで、その意味では前作同様に自然環境にインスパイアされながら音楽にそれを反映させているのだろうが、前作のフラットな快適性よりはやや捻りが加えられ抽象性が高まっている。序盤こそ"My Gull"は牧歌的なピアノコードの奥には微かに鳥の囀りなどのフィールド・レコーディングが配され素朴な世界観があり、静けさの中に神秘的なピアノと存在感のあるウッドベースが響きながら素朴な電子音のメロディーが気怠い空気を生むニューエイジ寄りの"Loch & Key"と、以前の路線に倣った何処までもナチュラル・アンビエントな曲調だ。"Perishable"では穏やかな笛の音色に有機的なギターやベースも加わり、瞑想的なソフトロックかAORといった路線はTannerの音楽性が強いだろうか。しかし12分にも及ぶ"Killcord Pts I-III"から途端にがらっと雰囲気は切り替わり、鈍い電子音によるベースの不穏な動きに不気味なメロディーが先導する緊張感のある曲は、長い構成の中で様々な現代音楽的なミニマルな電子音のループや奇抜な効果音、逆にスピリチュアルで有機的なメロディーも現れ、一切のリズムは入っていないにもかかわらずグルーヴ感と緊張感を伴いながら抽象性の高い展開が持続する。同様に"Idle"も不思議な電子音がSE的に用いられ一般的な曲の構成を成さないものの、途中から入ってくるぼんやりとしたアンビエント的なシンセが何とか牧歌的な雰囲気を保っている。そして湿っぽいウッドベースが前面に出た"Safe. Birds."もパルスのような電子音の反復が続き、そこにローファイな電子音や生っぽい音が入り混じり、瞑想感はありながらもサイケデリックなエクスペリメンタル性が支配するなど、アルバムの曲調は前作の癒やしや快適性だけではなくより前衛的に混沌したニューエイジにまで拡張されている。しかし奇怪な音響を増しながらも、エレクトロニック・アコースティックによるノスタルジーを呼び覚ます心象風景は健在だ。



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| ETC4 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Dan Curtin - The Lush Network (Dolly Dubs:DOLLYDUBS 007)
Dan Curtin - The Lush Network
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デトロイト出身ではないもののデトロイト・テクノに多大なる影響を受けて、デトロイト・テクノのソウルを継承するオハイオ州クリーブランド出身のDan Curtin。USよりは特にヨーロッパのレーベルにおいて頭角を現し、Peacefrog RecordsやMobileeを含む多くのレーベルから今も尚新作をリリースする等、ベテラン勢の中では数少ない音楽制作を続けるアーティストだ。新作はSteffiが主宰するDolly傘下のDolly Dubsからで、レーベル自体がデトロイト・テクノのエモーショナル性とブレイク・ビーツを軸にしたローファイなテクノを中心にしている事もあり、その意味ではCurtinの音楽性と共振するものがあるからこそこのレーベルに抜擢されたのだろう。"Flight Lush"は特に叙情的なテクノで、幻想的な霧の中から視界が開けていくような美しいパッドで開始し、小刻みで軽快なブロークン・ビーツ風のリズムが靭やかに波打ち、優しく温かい太陽の日が射すようなシンセのメロディーに包まれて、昼下がりは午後三時の白昼夢に溺れるテクノは底抜けに朗らかだ。一方"It's What You Wanted"は激しいパーカッションが乱れ打つ肉体性溢れるグルーヴ感のテクノで、やや拍子のずれたビート感とレイヴ調のエグいシンセ音を前面に出して、一見陽気な雰囲気ながらもどこか悪っぽく粗暴な雰囲気もあり攻撃的な曲だ。そして4つ打ちに収束する"Perfume And Cigarettes"はフラットなパッドの伸びとサックス調のシンセがファンキーさを生むデトロイト・テクノとしての要素を持っており、"The Fundamental Mind"では腰を揺さぶるしなやかなブレイク・ビーツに催眠的なシンセのループが微睡むように合わせられ、ぐっと内面へと潜っていくようなディープな性質がある。ベテランだけだって作品の安定度は常にあったものの、本作はその中では頭一つ抜けてデトロイト・テクノらしさが強くエモーショナル性とダンス性が調和した見事なEPだ。



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| TECHNO14 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |