2024.02.03 Saturday
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ダンス・ミュージック/電子音楽の世界でも多様性が萌芽し、その中でそれまで特に男性中心かつ欧米諸国がもてはやされた流れからアジア勢の台頭と女性アーティストの活躍が目まぐるしい昨今。ここ数年でそんな期待されるアーティストが続々とデビューを果たしているが、またその中に一人加わるであろう存在がCola Renだ。中国は広州で活動する女性アーティストだが、2023年6月にリリースされた本作がデビューなので詳しい経歴は分からないものの、NTS RadioやRinse FMなどヨーロッパのラジオ局では既に彼女の曲がピックアップされ注目を集めているようで、筆者もウェブショップで様々な作品を試聴する中で運良く本作に出会う事が出来たのだった。多くの作品の中で何故本作に魅了されたのか、それはおそらく伝統的な楽器とエレクトロニクスから成るアンビエントな鳴り、謎めきながらも耳に残るポップな旋律、アジアの秘境のような神秘的なニュー・エイジ性があり、現在のニュー・エイジ/アンビエント隆盛の流れに自然と合流していく作品だからかもしれない。冒頭の"Baraka"はノンビート構成ながらも電子音のシーケンスに躍動感があり、その奥では秘境的雰囲気を持ったぼんやりとしたシンセが漂い、中国奥地の閉ざされた山間部の雰囲気なのだろうか。フィールド・レコーディングや鐘の効果音も加わる事で一層謎めいた雰囲気を増し、民族楽器調のパーカッションが肉体的なビート感を刻みだしたり、短い構成ながらもこの時点で非常に惹き付けられる魅力を放っている。"Riot on the Hush"はマリンバのミニマルなフレーズが催眠的でそこに動物や自然の音も入り交じるフィールド・レコーディングを重ねて宗教的な世界を喚起させ、ジャラジャラと錫杖のような効果音もひっそりとなれば、そこは深い山の中にある寺院で瞑想する場所となる。辺境のトライバルなビート感が小気味良い"Brain Dance"は本EPの中では比較的ダンス寄りで、ミステリアスな効果音と幻想的な電子音が交差しながら異国情緒溢れる雰囲気を作り出し、現在人気を博す韓国のSalamandaを好きな人にも訴求するような音楽性だろう。そして同じくトライバル的ながらも更に躍動感や清涼感があり、コズミックな電子音を導入しながらもリズム重視で攻める"Outta Space"、最後にはピュアな響きの電子音が軽やかに弾け素朴な田園風景が広がるようなメロウなアンビエント・ポップの"Heart Shape Mole"で締め括られる。5曲ながらも色々なスタイルがあり表現力の豊かさに驚きつつ、アジア出身である背景を曲の雰囲気に自然と反映させ自らのアイデンティティも打ち出し、流行に乗るのではなくアーティストとしての個性を尖らせている点が素晴らしい。早くも次の作品が聞きたいと期待させられる新星、新作が待ち遠しい
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