Various - 環境音楽 = Kankyō Ongaku (Japanese Ambient, & New Age Music 1980 - 1990) (Light In The Attic:LITA 167)
Various - 環境音楽 = Kankyō Ongaku (Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980 - 1990)
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これ以上にない位にど直球なタイトル、そして時代のニーズに応えた内容、それこそ日本の1980〜1990年に生まれたアンビエントや環境、そしてニューエイジを編纂した『環境音楽』なるCDでは2枚組のコンピレーション・アルバム。ここ数年日本の過去のハウス・ミュージックが、日本のシティポップが、そして日本のアンビエントやニューエイジが世界的にも見直されている状況で、色々な作品のリイシューやコンピレーションが雨後のタケノコのごとく生まれていたが、その中でも最も発売前から注目を集め集大成とも呼べる作品が本作だ。編集者は現代アンビエントで頭角を現したVisible CloaksのSpencer Doranで、10年以上前に来日した際に日本の音楽に触れてはまっていったようだが、そこら辺の詳細については『日本の「環境音楽」はいかにして発見されたか/Visible CloaksとLight In The Attic』にかなり濃密に記載してあるので是非読んで頂きたい。

さて、Doranによる選択は如何なものかというと、アーティスト単体でリイシューに至っている芦川聡、尾島由郎、久石譲、深町純、小久保隆、日向敏文、イノヤマランド、吉村弘らに加え、環境音楽で名を馳せるパーカッショニストの越智義朗にニューエイジの系譜に名を連ねる伊藤詳、またはジャズ界から鈴木良雄に、そしてYellow Magic Orchestraや細野晴臣まで、特定のジャンルでカテゴライズするには一見幅が広そうでもあるが、収録された曲の雰囲気としての統一感はある。それは特に日本古来の簡素な趣を重要視する侘び寂び的なモノにも感じられ、無駄を回避するミニマリズムなシンプルさや派手さを削ぎ落とした静謐な響きが、それが意図的だったのか分からないにしてもアンビエントやニューエイジという音楽に上手く作用したのだろう。例えば土取利行の"Ishiura (Abridged)"、これが当時ニューエイジと呼ばれていたとは思えない音楽で、サヌカイトという石を用いてぽつんぽつんとした単音の連なりが、間が広がり静けさが強調されたこの曲は今ならばアンビエントになってしまうのだろうか。また芦川による"Still Space"はシンセサイザーを用いているが、極力無駄を排したミニマルな構成によってのんびりとした時間軸が感じられ、さながら色味の失せた水墨画のような風景を喚起させる。また、この手のジャンルにまさか久石の音楽が選択されるとは予想も出来なかったが、"Islander"は彼らしいアンビエントな電子音の響きに有機的で土着的な打楽器を組み合わせ、それをミニマルな現代音楽にも寄せて反復させる展開で、収録されたのも納得させられる。ニューエイジ面が強調された曲であれば、宮下富実夫の"See The Light"や深町の"Breathing New Life"に小久保の"A Dream Sails Out To Sea - Scene 3"辺りが特にそうで、美しく清らかなシンセの響きによってうっとりと甘美な夢の微睡みを誘う音楽はスピリチュアルや癒やし系とも呼ばれてしまう可能性もあるが、俗っぽくはならずにただひたすら心を洗うように静謐な空気に満たされる。アルバムのラストは細野が無印良品のBGMとして制作した温かいシンセが牧歌的で長閑な地平を何処までも広げる"Original BGM"で、今では入手困難なこの曲は店舗の空気に自然と馴染む正に環境音楽、つまりはアンビエント・ミュージックを体現している。一口にアンビエントやニューエイジと言ってもそれぞれの曲にはアーティストの個性もあり、それがCD盤では23曲(アナログでは25曲)も収録されているのだから、このジャンルに初めて手を出す人にとっても本作は非常に役に立つ素晴らしいコンピレーションだ。なお、豪華ブックレット仕様の中にはDoranによる詳細なライナーノーツも記載されており、全て英語だが解説という面からも価値を持っている。惜しむらくは、日本の音楽であるのに日本のレーベルがこういったコンピレーションを誰も手掛けない事である。



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| ETC4 | 19:00 | comments(0) | - | |
Waajeed - Detroit Love Vol.3 (Planet E:PEDL003CD)
Waajeed - Detroit Love Vol.3
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Planet Eと!K7による共同企画、デトロイト・テクノの重鎮であるCarl Craigが世界各地でデトロイトの音楽を体現すべく開催しているパーティー「Detroit Love」を、家でもその雰囲気を体験出来るようにとMIXCDとしてシリーズ化している。第一弾にはデトロイトからSilent PhaseことStacey Pullen、そして第二弾には本人Carl Craigが登場し、この最新作である第三弾は何と全く予想だにしていなかったWaajeedが担当している。元はSlum Villageのメンバーだったそうでデトロイトのヒップ・ホップの界隈で活躍していたようだが、2012年頃に自身で設立したDirt Tech Reckからの近年の作品は完全にハウス化しており、2018年にはPlanet Eからも煙たくもあるソウルフルなテック・ハウスのEPをリリースするなど、ヒップ・ホップからハウスへブラック・ミュージックを繋がりとしながらもスムースな転身を果たし成功している。なのでその意味ではこのシリーズに選抜されたのも意外でも何でもなく、現在デトロイトで特に旬なアーティストを起用したのであり、先ず話題性からして十分だろう。では果たしてDJとしての手腕はどうだろうかというところだが、これが実に手堅く癖の少ない滑らかな流れのハウス中心とした選曲で、ベテラン的というか横綱相撲というか安定感のあるミックスだ。始まりはキリッとしたハウスビートと陽気なシンセに気持ち昂ぶる"We Out Chea"からすっきりしたバウンス感はありながらもムーディーなパッドが伸びるディープ・ハウスの"Higher"、そしてデトロイト産の凛とした煌めきのある繊細なソウルフル・ハウスの"Coffee Room"から同じくデトロイト系の耽美なピアノと望郷の感情を呼び覚ますパッドが絡むディープ・ハウスな"The Detroit Upright"と、幕を開けてから暫くは心地好いハウスのグルーヴが疾走りながらも落ち着きもある非常にムーディーな展開。中盤に入っても激しく上げるような事もせずに、滑らかな4つ打ちのグルーヴ感を持続させテッキーな上モノからソウルフルな歌を活かしたりとハウスというスタイルを軸に振れ幅を展開しつつ、しかしフラットな感覚が快適だ。そこから土着的なパーカッションがエキゾチックなトライバル・ハウスの"Mermaid Blues"、ブロークン・ビーツ風な角張ったリズムがしなやかに跳ねる"Overbite"、更に鋭いリズムがヒップ・ホップ的ながらも浮遊感もある"Minimariddim"と、その辺りはリズムに変化をもたせる事で一辺倒な流れにならない工夫も見受けられる。そして再度フラットで浮遊感のあるディープ・ハウスやぐっと大地を踏みしめる力強いハウスへと戻り、陽気なファンキーさやデトロイトの叙情性といった要素を丁寧に聞かせて、全体を通して大人びた余裕のある流れがしっとりとしたミックスとなっている。クラブのパーティーの雰囲気を再現したというシリーズにしてはおとなしいのでは?と感じるが、激しく揉まれるダンスフロアではなく和やかで笑顔が溢れる賑やかなダンス・パーティーといった雰囲気があり、だからこそホームリスニングとしても空間に馴染む丁寧なミックスとなっている。大胆に揺さぶりをかける展開は少ないが、タイムレスなハウス・ミュージックの魅力が詰まっている。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Space Dimension Controller - Love Beyond The Intersect (R & S Records:RS 1916)
Space Dimension Controller - Love Beyond The Intersect
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音楽はただ音楽そのものが良ければそれでよいとも思う一方、信条やポリティカルを内包する事もあり、または音楽で物語を演出する場合もある。そしてJack HamillことSpace Dimension Controllerは音楽でサイエンス・フィクションや銀河の旅を語るアーティストであり、Hamillの分身であるMr.8040が24世紀から現代にタイムスリップし故郷へと帰還する話を題材としたのが、2013年作のデビューアルバムであった『Welcome To Mikrosector-50』(過去レビュー)だ。その後、2016年には2枚めとなるアルバムの『Orange Melamine』(過去レビュー)をリリースしたが、こちらはデビュー前に作られた未発表音源かつNinja Tuneからの作品という事もあり、SDCの本筋からはややずれた内容であった。そして2019年、遂にR&Sへと帰還してリリースされたこの最新アルバムは、デビューアルバム路線の銀河での冒険をコンセプトにしており、Mr.8040が宇宙空間で座礁し奇妙な惑星に衝突した事からその未知なる土地に降り立ち…という話を基に音楽が作られている。また、これまでにリリースされたEPでは基本的にはSFの世界観はありつつもフロアを意識したダンス・トラックが中心だったが、やはりアルバムでは完全に世界観を重視してエレクトロにシンセ・ファンクやシンセ・ポップにアンビエントといった要素をブレンドしながらじっくりと聞かせて想像力を喚起させる内容で、それによって壮大な宇宙やレトロフューチャーに遭遇する事になる。宇宙絵巻の始まりは抽象的なドローンだけによる"Burnout (Dawn)"で静謐なアンビエントがこれから待ち受ける冒険を予感させ、続く"PVLN"ではネオンライトのような光沢感を放つシンセやエレクトロのベース、そしてボコーダーを通した語りを用いてデトロイト・テクノの望郷を感じる空気にも似たエモーショナル性も携えたテクノとなり、宇宙や近未来の風景が浮かび上がってくる。続く"Voices Lost To Empty Space"では軽快で小刻みなビートによって加速しつつ、幻想的なパッドや情緒的なシンセの旋律と共にブイブイとしたベースがファンクを奏でて、シンセ・ファンクによってうっとりロマンティックな世界観を投影する。未知なる土地での孤独を表現したような淋しげで淡いシンセが広がるアンビエント・ハウス調の"Alone In An Unknown Sector"、ここでもMr.8040やロボットによる語りが入る事でSFの雰囲気を纏い、アルバム中盤にはインタールード的な"Intersect Encounter"でノンビート状態にドローンが覆いコズミックなシンセが散りばめられれファンタジーな景色が広がる。デトロイト・テクノと共鳴する望郷への思いが馳せるような感情を呼び起こすしっとりダウンテンポな"Gifted Sentience"、アシッド風なシンセベースが強調されロボットボイスが喋り近未来の風景を映し出す"Slowtime In Reflection"、そして最後は感動的なエンディングを演出する切ないゆっくりとしたシンセポップの"Love Beyond The Intersect"で、Mr.8040は不時着した惑星から遂に脱出しメランコリーな感情のままフェードアウトしながら消えていく。物語仕立てのコンセプチュアルなアルバムはとてもロマンティックで美しく、以前よりもアンビエント性が強まりリスニング志向が更に進んでいるが、これはアルバムとEPで音楽性を分ける事が上手く作用している一例だろう。音楽自体が素晴らしいのは当然として、そこに付随するストーリー性も音の響きと実にマッチしており、宇宙空間を支配するアーティスト名は伊達ではない。



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| TECHNO14 | 12:30 | comments(0) | - | |
Yutaka Hirose - Soundscape 2: Nova + 4 (We Release Whatever The Fuck We Want Records:WRWTFWW028CD)
Yutaka Hirose - Nova + 4 (Extended Version)
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現在の世界的なジャパニーズ・アンビエントやニューエイジの再評価を著者がその当時に予見していたかまでは知る由もないが、2013年発刊の『Obscure Sound : Chee Shimizu (著)』(過去レビュー)には既にここ数年でリイシューされた前述のムーブメントに関わる重要な作品が掲載されており、結果的には筆者の審美眼は正しかった事を証明している。そして本作もその本に掲載された一枚でリイシューされる事が判明してからは話題となっていた重要作、それこそ広瀬豊による1986年制作の『Nova』だ。ミサワホーム総合研究所が住宅展示場で流す音楽として、日常住む上での快適な空間演出の為にと立ち上げた「Soundscape」シリーズの2作目であり、アンビエント/ミニマル/コンテンポラリーミュージックを含むサウンド・デザイン。本作制作時に広瀬が聞いていた音楽は当時のアンビエントの指標ともなったBrian Enoよりは、Obscure RecordsのDavid ToopやGavin Bryars、またはTangerine DreamやFaustらのジャーマン・プログレ、そしてECM等だったそうで、少なからずそれらから影響を受けた本作はフィールド・レコーディングやサンプリングを駆使しながらも確かに一言で環境音楽とだけで呼ぶ事は出来ない。水滴の落ちる音から始まる"Nova"、川のせせらぎや虫の鳴き声や透明感のあるシンプルなピアノやチャイムも加わると、鍾乳洞の空間が眼前に広がるサウンド・スケープを描き出しエレクトロニクスと自然の融合を果たす。"Slow Sky"も鳥の囀りの虫の鳴き声といったフィールド・レコーディングを用い、しかし音自体はスムースに繋がっていくのではなく点描のように散らばせながら、透明感のある単音として一つ一つの音が綺麗に主張するようだ。森の中で営まれる虫の生命の音から始まり、現代音楽のミニマリズム的なシンプルなシンセやチャイムの反復を行う"In The Afternoon"は長閑な田舎風景が想起され、間を活かした音の構造によってそこにイメージの膨らみを持たせるのだろう。水の流れる音が強調された"Humming The Sea"はピュアながらも何だか可愛らしく思われる電子音の反復に懐かしい子供時代のノスタルジーが感じられ、海で波と戯れる子供の姿が浮かんでくる。そして最後の"Epilogue"はアルバムのコンセプトである「自然音を用いたサウンドスケープ」に基づいた曲で、最初に自然音のサンプリングを組み立てそこにアコースティック/電子音を重ねていくという他の曲とは逆の工程で作られているが、これは最も雰囲気としてはアンビエント的であるだろう。そして今回の再発で特筆すべきは、『Nova』と同時期に制作された未発表音源が収録されている事で、4曲で約50分の長尺なアンビエントは『Nova』の打ち込み制作から自らの演奏に変える事で、メロディーやコードの制約から解放され音を追加しては消去し、音の彫刻を行っていくように制作されたと言う。その結果、より抽象性を増して空間に溶けて馴染んでいくようなサウンド・スケープやアンビエントのとしての性質は強くなっているように思われるが、また一方で寺院や仏閣の中で鳴っているような非日常の神秘性も獲得している。オリジナル音源、そして未発表音源どちらも正に言葉通りのSoundscapeで、イメージ力を沸かせる快適なBGMとなる。



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| ETC4 | 17:00 | comments(0) | - | |
Andres - D.ATLien EP (NDATL Muzik:NDATL 021)
Andres - D.ATLien EP

ここ数年暫くは自身で立ち上げたLa VidaからのEP作が続いていたヒップ・ホップとハウスをクロスオーバーするデトロイトのAndres。2019年にも新しいEPと、そしてMahogani Musicから待望のアルバムがリリースされているが、その前に2018年暮れにリリースされた本作も素晴らしいので、随分とレビューが遅れてしまったものの漏れずに紹介したい。こちらはKai Alceが主宰するNDATL Muzikからのリリースとやや意外ではあるものの、それもあってかいつものヒップ・ホップを下地にしたハウスではなく、キューバのパーカッショニストでありラテン・ミュージシャンである父のHumberto "Nengue" Hernandezの影響を受けたのだろうか、ラテンやアフロの陽気なグルーヴが炸裂するハウスを前面に出した異色な内容だ。A面の「Latin Side」の"Ensolardo (Sunny)"は燦々とした太陽光が降り注ぐ屋外の雰囲気のブラジリアン・ハウスで、激しくも爽快で跳ねるようなラテン・パーカッションの力強いグルーヴ感と情熱的な女性の声に先導され、ジャズやファンクを思わせる管楽器やキーボードの生々しいメロディーが色彩豊かに彩り、その音楽によって大勢の人達が踊り狂い全身で喜びを表現しているような風景が浮かび上がる圧倒的に楽天的な雰囲気だ。そして細かく歯切れの良いコンガのパーカッション乱れ打ちビートから始まる"Cafe Con Leche"はそこからブロークン・ビーツ風に鋭くもしなやかなリズムを叩き出し、優美なエレピやスペーシーなキーボードの甘くも艶のある響きがフュージョン的でもあり、クラブ・ジャズとの親和性の高さを伺わせるモダン性がある。B面の「Northwest Side」へと移るとこちらはいつものAndresといった音楽性で、"D-Town Connection"はデトロイトというモーターシティーのディープ・ハウスで、生っぽいざらつきのある歯切れ良いハウスのグルーヴにムードのある管楽器や艶めかしいシンセによって落ち着きながらも燻したような湿っぽさを感じさせる。そしてざっくりラフなヒップ・ホップ感のあるリズムが切れる"I Can't Hear You"は彼らしいサンプリング重視なファンキーなハウスで、軽く跳ねるようなグルーヴとブギーな煌めきや芳醇さのあるシンセが陽気で、古典な佇まいを纏った作風だ。"Come 2 Me (Instrumental)"はMoodymannのアルバムに収録された曲のインストバージョンで、色っぽくも卑猥な歌が削除されてヒップ・ホップとディープ・ハウスが溶けあった粘り強いグルーヴ感が強調されて聞こえる。とまれA面いつものビートダウンやヒップ・ホップを元にした曲と比べると、本作では随分と陽気かつ開放的でエネルギッシュな勢いがあるが、やはりサンプリングをベースにしたファンキーかつソウルフルな作風はこれぞAndresでファンであれば当然買いな内容である。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |