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Fumiya Tanaka - You Find The Sky (Perlon:PERL107CD)
Fumiya Tanaka - You Find The Sky
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何と前作『Unknown 3』(過去レビュー)から8年ぶりとなるアルバムをPerlonからリリースした田中フミヤ。日本のダンス・ミュージックの方面でのミニマルを長らく引率してきたのは彼である事は間違いなく、テクノとハウスの中庸を保ちながらミニマルを追求したDJプレイは、今海外で正当に評価されているようだ。それは制作面でも同様だろう。ここ数年はベルリンに拠点を移して活動をしているせいか忘れがちだったが、自身のSundanceやTorema RecordsのみならずPerlonやMinibarからも作品をリリースするなど継続的にEPは制作しており、それぞれの作品でミニマルを基軸にアフロやジャズの要素を持ち込みながら艶かしくもフロアに根ざした機能的なトラックを手掛けてきた。その意味でアルバムはここ数年の成果が結実した集大成と考えるべきで、制作面から見たアーティストとしても円熟を迎えている。スタイルとしてはRicardo Villalobosの影響下にあるのは間違いないのだが、非4つ打ちのリズムと湿度を帯びた艶かしいミニマル・ハウスであった『Unknown 3』を更に推し進めた本作は、ここでおおよその完成形を成している。ギクシャクとしたリズムと多層なパーカッション、そして抽象性を打ち出すように挿入される断片的なボーカル・サンプルが引きずられる"Munique Uncertain"からして、その手の平をすり抜けていくような幻惑性は中毒的だ。"Find The Key 2012"は比較的4つ打ちに近いが微細なリズムが均一性を崩し、そしてしとやかで控え目なピアノが滴り落ちるように入ると、美しもありながら不安や不気味さが底から這い出してくる。フロアでの盛り上がりを誘う展開も考慮されており、例えば"Swallowed Memory"ではキックの無いビートレスな序盤でアンビエント感を出しつつ、そこから徐々に昂揚を積み上げるようにキックが入りながらどろどろとした闇を突き進む流れは、正にDJとしての視点で作られている。アルバムの中で最もハウスのマナーに沿った"The Mysterious Pocket Is Right"は素直に心地良く聞けるが、生々しいベースラインと虚空さを演出する上モノ、そして繊細に編まれたパーカッションが一体となり、静かに耳を傾けて聴けばその緻密な構成に魅了される事だろう。どれもこれも瞬間的な爆発力を伴うアンセム的な要素は皆無で、だからこそミックスされるべきDJツールとしての機能性を十分に含んでいるが、それは決して淡白にはならずに有機的な鳴りが地味ながらもエモーショナルに響いている。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Susumu Yokota - Acid Mt.Fuji (Special Remastered Edition) (Sublime Records:MMCD20007~8)
Susumu Yokota - Acid Mt.Fuji (Special Remastered Edition)
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享年54歳、2015年3月27日に亡くなった横田進は、日本のクラブ・ミュージックの創世記における立役者の一人でありながら、決してメインストリームを歩むのではなく世捨て人的な孤高の道を歩んだアーティストだ。2000年代に入ってからは膨大な作品をリリースするもDJやライブを行う事は稀だったのだが、当時既に体調を悪くしていた事でメディアへの露出が少なかった事が結果的に、孤高のアーティストとしての存在感を強めたのは何とも言えない気持ちだ。だがその分だけ制作を中心とした活動により、横田進を中心とした系統樹のように多岐に渡るジャンルへと手を伸ばし、それぞれの方面で確かな足跡を残す事に成功した。追悼の意味も込められて復刻された本作は彼が1994年にリリースした通算3枚目のアルバムで、90年代前半のレイヴがセルアウトした後の残り香を込めるように、TB-303やTR-808など往年の名機を使用して作り上げたアシッド・テクノだ。TB-3やTR-8など名機を生まれ変わらせたAIRAシリーズが完成し、再度アシッド・ハウスのリヴァイバルの空気を感じる現在に本作が復刻されたのは、正に絶好のタイミングだったのだろう。但しアシッドサウンドを用いたアルバムではあるが、決して底抜けに享楽的な音楽家と言うとそうでもなく、アシッドの中毒性ではなく創造力を広げるようなアンビエントな雰囲気もあり、また侘び寂び的な乾いた雰囲気は虚無感にも近い。アシッド・ハウスやレイヴの興奮が過ぎ去った後のアルバムであるならば、その空虚な世界観も意識的であったのかもしれない。だがそれ故に快楽から切り離された思慮深いアシッド・テクノは、横田進らしく俗世から距離を置いた秘密めいた音となり、それ以降の音楽性にも繋がっていく要素もある。さて、本作の初回限定盤にはCDシングルや未発表曲にライブ音源まで収録したボーナスディスクが付属しているが、初期衝動溢れる荒々しいオールド・スクールなテクノや勢いと簡素を極めた生々しいライブは、確かにその時代感は強過ぎる。しかし同時に何かが生まれようとしている胎動もあり、それが正に日本のテクノの創世記の足音に違いないのだ。

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| TECHNO12 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Doomwork - Nihil Sine Sole (Quartz Music:QRZ027)
Doomwork - Nihil Sine Sole

最近テクノには疎い中で、試聴をしていて何だかピンと来た一枚が本作。Alessandro LacavallaとClaudio Mauraから成るイタリアのデュオで、過去にはOvumや100% PureにSaw Recordingsなど多数のレーベルから作品をリリースしている。過去の作品を聞いてみると大箱系の派手な作風から機能重視のツール系まであるが、ドラッギーで快楽的なシンセのリフが軸となっており、如何にもヨーロッパ的なテック・ハウスが彼等の作風なのだろう。本作ではタイトル曲の"Nihil Sine Sole"が実に爽快で、弾むような弾力ある4つ打ちキックに少しずつ底から現れてくるようなパッドで浮遊感を生み、じわじわと低空飛行を続けながら緩やかに広大な空へと飛翔していくような展開がフロアではまるだろう。バックでは乾いたパーカッションがささやかに鳴っており、青々しいシンセのリフも相まって、8分にも及んで爽やかな空気を体感出来るだろう。一方で"Memento"は暗闇のフロアが似合うダークな作風で、ガチガチのマシンビートに膨らみのあるベースが下部を支えながら、奥行きを感じさせるダビーな上モノが快楽を生むテック・ハウスだ。どちらもテック・ハウス的な作風ではありながらもそれ以上にゴツさなり図太さがあり、ハードな音が吹き荒れるパーティーの方が似つかわしい。そしてそれらを更にハードに作り変えたのがイタリアのNessと、M_nus等でも活躍するAmbivalentだ。雷鳴轟くような奥深い電子音響とミニマルな作風で冷ややかにサイケデリックな質が侵食する"Nihil Sine Sole (Ness remix)"、原曲の上モノを残しながらも鋭利なビート感で切れ味重視になった"Nihil Sine Sole (Ambivalent remix)"と、どちらも完全に機能性重視かつ現在のテクノという主張が感じられる。オリジナルとリミックスで結構作風は異なるので、それぞれ異なる場面での使えそうという意味ではお得感もあるか。



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| TECHNO12 | 19:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Eduardo De La Calle - Collected (Mental Groove Records:MG112CD)
Eduardo De La Calle - Collected
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2012年から3年間に渡りアナログでリリースされてきた「Analog Grooves」が、遂にCDとしてアルバム化された。制作したのはスペインを代表するテクノ・アーティストの一人であるEduardo De La Calleで、今までにもCadenzaやMental GrooveにMule Musiqを含む世界各地のレーベルから作品をリリースしており、そのレーベルの多様性通りに冷淡で機能的なミニマルから温かいオーガニックなハウスに神秘性を伴うテクノまで音楽性は自由な変化を見せる独特なアーティストだ。本作も同様に様々な作風が混在しており、一筋縄では聴けない面白いアルバムになっている。甘く官能的な女性の呟きをスパイスに、アシッディーなシンセとしっとりした4つ打ちで淡々と進む"Never Summertime Again (Re-Modelled Mix)"は、激昂する事なく侵食するような湿度を帯びたディープ・ハウスだ。続く"E*E* (Rave Signal Rework)"はかの伝説的なクラシックをスピリチュアルなジャズの要素も用いたインプロビゼーション的に仕上げているが、一方では"E*E* (Deva Remake)"においてよりオリジナルに敬意を払いつつフロア・フレンドリーな4つ打ちや、闇を切り裂くような静謐なピアノのフレーズを加え、長い陶酔へと導く荘厳なミニマルと化している。アドリブのような繊細で耽美なシンセのフレーズが耳に残る奥ゆかしいディープ・ハウスの"Slowlife (Rework)"、妖艶なトランペットと奇妙な電子音響によってサイケデリックな世界を遊泳する"Blade Runner"、そして最後の正にジャズ的なグルーヴ感を伴う内向的な"Mental Jazz"と、全体として闇が広がる宇宙の果てまでも彷徨うようなコズミック・ジャーニーにも感じられる。怒号のような重圧のあるキックや突き抜ける疾走感は全く無いが、その変わりに揺るぎない持続感を生むミニマルな構成と繊細かつ丹念に組まれた生音と電子音の響きは、深い精神世界へと作用するのだ。Eduardo De La Calleの多様な表現力が見事に反映されたアルバムと言えよう。



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| TECHNO12 | 08:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
The Field - The Follower (Kompakt:Kompakt CD 130)
The Field - The Follower
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一時期はロックファンも巻き込んでブームのようにも思われたAxel WillnerによるプロジェクトであるThe Fieldも、ここ数年は過熱した人気も落ち着きながら音楽性もよりテクノへと回帰し、成熟や豊熟と呼ぶべき深化を果たしている。初期の真っ白な霧に包まれる高揚感から一転、2013年作の『Cupid's Head』(過去レビュー)ではアルバムジャケットも黒へと転換し、その音楽性もループを用いながらもどんよりとした暗雲さえ立ち込めるような出口の見えない密閉空間を彷徨うような雰囲気があった。そして2年半振りの新作も『Cupid's Head』の続きである事に間違いはなく、ジャケットも当然真っ黒である。収録曲は6曲のみ、しかしそれぞれが10分前後の対策とループを起用した音楽性を最大限まで活かした構成だ。アルバムはタイトル曲となる"The Follower"から始まり、安定感のあるスムースなキックとドラッギーなベースライン、そして何だか人の声にも聞こえるようなシンセ音の反復が何処までも続く。やはり以前のロック的なダイナミックなリズム感よりもミニマルと呼ばれるグルーヴ感を重視し、大きな揺さぶりではなくテクノ的なマシンビートが覚醒感を呼び覚ますサイケデリアには合っているだろう。続く"Pink Sun"、どんよりとした重苦しいベースや上モノからは重力が感じられ、上り詰める多幸感ではなく深く潜っていくようなドープな性質が勝っているか。ボイス・サンプルらしきループが白色光を演出するような"Monte Veritá"は過去のThe Fieldらしい牧歌的な多幸感が表現されており、リズムも活き活きと躍動的で、分かり易さを求めるならば正にこれといった曲だ。しかし本作での挑戦が新たな音楽性へと結実したのがラストに待ち受ける"Reflecting Lights"で、14分にも及ぶアンビエントは何だかBrian Enoを思わせもする。タブラの爽快な響きと神々しく穏やかなサウンドのレイヤーに包まれた序盤は、あるがままに存在する自然と同化するような快適性があり、後半に入るとギターサウンドが前面に出ながら視界も歪むような酩酊感を生み出すサイケデリアに満たされ、いつしか世界観が入れ替わるロマンティックな展開が素晴らしい。もしアルバム全体がこの路線であったならば、より瞑想系のアルバムとして面白い作品になっていた可能性がある。The Fieldの持ち味であったシューゲイザーとしての面は後退しながら、しかしループ構成を基礎にしつつ微細な変化での転調を用いた構成は円熟の極みへと達し、アーティストとして殻を打ち破ろうとする意思が伝わってくる。



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| TECHNO12 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Deep'a & Biri - Echoic Memories EP (Transmat Records:MS95)
Deepa & Biri - Echoic Memories EP
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知名度は高いもののレーベルを運営するDerrick Mayの本業がDJ故に決して活発な活動とは言えないTransmatは、眠っていた休火山が突如噴火するような復活を果たす。数年ぶりの復活となる2016年も例によって一挙に4アーティストの新作をリリースするなど、レーベル30周年としての溜まっていたエネルギーが怒涛の勢いで噴出する活動で、久しぶりに注目を集めている。そんな新作の一つに選ばれたのはイスラエルの二人組ユニットであるDeep'a & Biriで、2009年頃からデトロイト・テクノのメロディーを咀嚼しつつ西洋風に洗練されたテクノを制作しているが、2012年にはTransmatの『MS00/Beyond The Dance Transmat 4』(過去レビュー)、2013年にはDerrickが監修をした『We Love... Detroit』に曲が収録されるなど早くからDerrickに見初められていたようだ。本作はこの3年間で制作され様々なダンスフロアでその鳴りをテストされた上で完成したそうで、Transmatというその存在に恥じないキラートラックになっている。ソナー音らしい反復とアシッディーなエグいサウンドの反復で覚醒感を煽る"Echoic Memories"は、大きな展開はなくとも闇に溶け込むような機能性があり正にフロアの為のダンストラックだ。"1406 Days"は一転してグルーヴはリラックスしたハウスのそれを刻み、静粛に浮かび上がってくる綺麗目のシンセのフレーズはデトロイト・テクノに通じるものがあり、刺激的なパーカッションも組み合わさってじっくりと盛り上がりを作る展開のある曲だ。"3 Forms Of Sadness"も霧のような空気感のあるパッドが美しくデトロイトの影響を滲ませ、すっきりとタイトなリズムや揺れを生むハイハット等によって爽快に疾走するフロア向けの作風で、そして”Ritual”は音の間を活かしつつダビーな音響のおかげでややディープ・ハウス寄りな音楽性もあり、収録されたどの曲もデトロイト・テクノのファンキーな要素は無いながらも彼等なりにその音楽性を理解し、そして現在のテクノシーンへと合わせた事でDeep'a & Biriの個性が生まれている。Transmatとしてもこうやってデトロイト外から積極的に実力あるアーティストをリリースする事で、レーベルが停滞しないように常に生まれ変わりを成しているのだろう。



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| TECHNO12 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kaito - Another Stories (Music in the deep cosmos:MITDC-1003)
Kaito - Another Stories
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テクノを愛する者であれば多くの人がリリースを夢見るデトロイト・テクノのTransmatから、日本人初のアーティストとして作品をリリースしたHiroshi Watanabe。他にもKaito名義では長年の付き合いとなるKompaktから、そして他の名義でも複数のレーベルから作品をリリースするなど、世界の名立たるレーベルから認められる実力は言うまでもない。しかし、やはりレーベルとの付き合いに全くの制約が無い訳ではなく、ある程度はレーベル性を考慮した活動となるのは仕方のない事だ。だからこそ、今彼が自身のレーベルとなるMusic in the deep cosmosを立ち上げた事には意味があり、より自身の意志が尊重される事でリスナーとアーティストの距離を縮めるような役割を果たす事になる。そんな前提でリリースされたのは2013年にリリースされた『Until The End Of Time』(過去レビュー)のニューバージョンであるが、そのビートレス・バージョンである『Less Time Until The End』(過去レビュー)とも異なり、本人の説明ではオリジナルを制作していた際の初期音源を聞き直した上で現在の感覚で再構築したそうだ。発端になったのは"Star of Snow"だと言うが、より初期衝動を強くしたような"AS original mix"はフロア向けに研ぎ澄まされたオリジナルと比較すると、確かに展開の多いメロディーも加わっており素朴さと温かさが打ち出されているようだ。また柔らかいアコースティック・ギターの旋律に涙する"Smile"は、ここではそれがピアノへと差し替えられたライブで披露されている"Smile AS mix"となり、優しさで包み込む世界観は変わらないもののあどけない可愛らしさが感じられる。そして4つ打ちのリズムから揺れる変則ビートへと差し替えられた"Sky Is The Limit AS mix"は、原曲の直球テック・ハウスな雰囲気からグッと情緒的に溜めのあるダウンテンポへと変化していたり、ビートレスにしながらアコースティック・ギターの枯れた味わいを強調した侘び寂びバージョンの"Until The End of Time AS acoustic mix"など、ダンス/ビートレスに限らずレーベル性に囚われる事なく自身の感性に従うままに再構築したおかげで、Kompaktというフィルターから解放されたKaitoの音楽性が表現されているのだ。Kompaktのレーベル性に沿ったオリジナルと本作のどちらが素晴らしいとかを競うのではなく、これがHiroshi Watanabeというフィルターのみを通したKaitoの音楽である事を示す為の『Another Stories』であり、今後より一層創作活動を広げていく事を示唆するアルバムなのである。



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| TECHNO12 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Lawrence - Yoyogi Park (Mule Musiq:MULE MUSIQ CD 54)
Lawrence - Yoyogi Park
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代々木公園というタイトルが付けられた本作を手掛けたのは、Smallville Recordsを代表するアーティストであるPeter KerstenことLawrenceだ。自身でもDailを主宰する傍ら、デトロイトやシカゴに影響を受けながら透明感のある綺麗なディープ・ハウスの制作も行い、ドイツはハンブルクにてSmallvilleの地位を高める事に貢献している。本作はSmallvilleのアートワークを手掛けるStefan Marxとのコラボレーション3部作の最終作という位置付けで、09年の"Until Then, Goodbye"(過去レビュー)や14年の"A Day In The Life"(過去レビュー)のシリーズと同じく「何気ない日常」を綴った内容との事。だがしかし、一連のシリーズの中では最もダンスフロアを意識した音楽性となっており、彼らしい幽玄なディープ・ハウスを表現しつつもシリーズのベッドルームな雰囲気からは一転し、機能的なビート感が前面に出ている。透明感のある薄く繊細なシンセが美しいレイヤーを見せる"Marble Star"からして、しっかりと安定した4つ打ちのビートが軸となり、淡々とはしながらもその方向は真夜中のダンスフロアだ。前作に収録されていた"Nowhere Is A Place"や"Blue Mountain"も、そこでは眠気さえも誘うような心地良いサウンド・スケープであったが、本作では端正なリズムが被せられ非常にクールに装いつつもミニマルな展開でずぶずぶと深みにはまっていくようなアレンジが施され、元は同じ曲でも随分と異なる効果を引き出している。しかしまあダンスフロア向けだとは説明したものの、Marxによる代々木公園の10ページにも及ぶモノクロのアートからも感じる通り、音自体に無駄はなく研ぎ澄まされてある種の枯れた感を発する世界観は享楽的なダンス・ミュージックとはまた異なるものだ。"Tensui"の滴り落ちる耽美なピアノの音色や厳かで静けさを伴うシンセが広がるディープ・ハウスを聞けば、汗が飛び散り熱狂に包まれるフロアではなく、むしろ酒を嗜みながら音をじっくりと楽しむラウンジが似合うと、想像するのは容易い。表に感情を出し過ぎる事なくやや冷気を伴ってはいるものの、仄かに情緒を秘めている点でLawrenceらしさが存分に発揮されている。



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| TECHNO12 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Karim Sahraoui - Sacred Kingdom EP (Loveland Recordings:LLR103)
Karim Sahraoui - Sacred Kingdom EP
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2014年、Transmatの後押しにより復活を果たしたDjinxxことKarim Sahraoui。一時は音楽業界から遠ざかっていた彼も復活を果たしてからは順調な活動を行っており、以前よりも一層デトロイト・テクノらしい美しいメロディーを強調した音楽性を強め、つい最近もTransmatから2枚目となるEPをリリースしたばかりだ。本作はそれよりも少し前にオランダでフェスをプロモートしているLovelandからリリースされたEPで、リミキサーには同じくデトロイト・テクノを深く愛するVince Watsonが迎えられており、この手のテクノに目が無い人にとっては涎が出る事は間違いない。先ずはA面に収録された"Horns Of Glory"が何と言っても素晴らしく、大きな展開を設ける事はなく多段の幻惑的なメロディーを用いてトランシーな作用を含ませながら、キックやリフの抜き差しによってじんわりとした起伏を付けながら持続感を出した完全なるピークタイム向けのトラックになっている。10分にも及ぶ長い構成ながらもその快楽性の高さが故に終わりのない展開を求めてしまいそうになる程で、ぐるぐると螺旋階段を昇り詰めて高揚は増していく。裏面の"The Earth From Above"はゴリゴリとした硬めのキックなどのリズムで横揺れを誘発しつつ、ソナー音のような反復するシンセがじわじわと脳髄を侵食しながら嵌めていくスタイルで、デトロイトのエモーショナル性よりは欧州のテック系な雰囲気を纏っている。そしてデトロイト・フォロワー(本人は否定しているが)としての力量が発揮された"Horns Of Glory (Vince Watson Reshape)"、原曲から大きな変化はないもののシンセは透明感を増し柔らかい音になり、その上で荘厳な響きも加えてドラマティックな盛り上がっていくこの曲は、Vinceの作風として生まれ変わり新たな魅力を発している。それぞれ期待通りで外れ無し、デトロイト・テクノ好きならば納得の一枚だ。



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| TECHNO12 | 09:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hiroshi Watanabe - Multiverse (U/M/A/A Inc.:UMA1078-1079)
Hiroshi Watanabe - Multiverse
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過去にはNYハウス全盛時代にNite Groovesから、00年代にはドイツはKompaktやIbadanにKlik Recordsと、日本よりは海外で評価を高め世界の著名なレーベルから作品をリリースしているワタナベヒロシ。そんな彼にとってもテクノの聖地であるデトロイトは夢のまた夢であったに違いない。そんな折、熱き情熱を持つ彼に共感したアーティスト/DJの一人にデトロイト・テクノのイノベーターでもあり、Transmatを主宰するDerrick Mayがいた。Yellowクローズ時のパーティーでのDerrickとの共演や出会いはいつしか長い交流へと発展し、その音楽的な情熱の共感は遂にワタナベの作品をTransmatからリリースする事へと繋がった。それが久しぶりのTransmatの活動の復活第1弾作品として2月にリリースされた"Multiverse EP"(過去レビュー)であり、国内でも早々とソールドアウトし、来日した海外のDJも真っ先にその曲をプレイするなど、やはりと言うか当然の如く既に注目を集めている。但しTransmatとしては現在はアルバムをリリースしない方針のためEPに続くアルバムは出ないかと思っていたところ、喜ばしい事に日本国内のみでEPと同時に制作された音源がアルバム化されたのだ。前述のEPからも分かる通りこのアルバムは時代を象徴する最新の音楽性と言うよりは、むしろデトロイト・テクノのクラシカルな部分の純度を高めて、無駄なギミックや展開を用いる事なくどれだけエモーショナル性を追求出来るか、そんな気持ちが伝わってくる内容だ。感動的なまでの美しいメロディーの展開や叙情的な世界観を演出する事に長けているワタナベは、当然デトロイト・テクノやTransmatとの相性が悪い訳がないとは思っていたが、それでもすんなりとあるがままに馴染んでいるとは、最早この邂逅が運命だったと言われても疑いようはないだろう。前述のEPは選びぬかれた作品だけにフロアのピークタイムに適した曲が多かったが、本作にはアルバムとしての構成を活かすようなバランスの取れた選曲がなされている。TR系を思わせるタムが爽快なグルーヴを生み躍動する"Inner Planets"、優しく包み込むようなストリングスが伸びる耽美なテック・ハウスの"Heliosphere"、そしてアルバムの終盤で幻想的なシンセとストリングスが融け合っていくアンビエントの"Time Flies Like an Arrow"と、EPの音楽観を壊さずに更にドラマティックな起伏を盛り込む事に成功している。ただただ熱き情熱を基にどれだけ人の心を揺さぶれるのか、それを訴えかけるような実に真摯なテクノは、デトロイトの愚直なマシン・ソウルと共振する。またボーナスCDとしてアルバムの曲をミックスした盤も付いているが、そちらはよりクラブのパーティーらしい興奮を呼び起こす高揚感があるので、なお一層盛り上がれる事だろう。



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| TECHNO12 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |