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Satoshi & Makoto - CZ-5000 Sounds & Sequences (Safe Trip:ST 006)
Satoshi & Makoto - CZ-5000 Sounds & Sequences
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販売されていなくても素晴らしい音楽は実はひっそりと存在している、但しそれを見つけるには飽くなき探究によってのみなのだろう。イタロ・ディスコ/ハウスをこよなく愛するYoung MarcoがCZ-5000というカシオのシンセサイザーを調べているうちに、YoutubeでCZ-5000を演奏している双子のSatoshi & Makotoの動画を見て、それに感動したMarcoはリリースする為に二人とコンタクトを取り音源を送ってもらったそうだ。結論から言うとこのアルバムは本年度の電子音楽系のベスト5に入れたい程に素晴らしい作品で、CZ-5000という発売から30年以上経過している古い電子楽器を用いても、こんなに豊かな表情を持った音楽を作れるなんて驚き以外にない。二人はYMOやKraftwerkに興味を持っていたそうだが、正に電子音楽への探究心はいつしかCZ-5000を舐め回すように愛着へと変わり、その結果CZ-5000の魅力を最大限に引き出す事に成功したのだろう。ジャンル的にはビートの無いアンビエントか多幸感ふんだんなバレアリックかと言った印象だが、クラブに向けてではなくベッドルーム内での音楽はやはり内省的にも思われる。ふわふとしたサウンドの反復によって長閑な日常を彩るような明るいアンビエントの"Flour"、ノスタルジーにも近い切なさを誘発するしんみりしたメロディーと抜けの良いパーカッションを用いた"Bamboo Grove"、決して享楽的な志向ではなくイマジネイティブでもある豊かな情景が浮かび上がる。控えめにリズムも入った"Untitled"はプロト・ハウスとでも呼ぶべきか、素朴さが可愛くもある。広大な夜空に瞬く星のように電子音がきらきらと広がる"Ar"、夢の中を浮遊するドリーム・アンビエントは優しく、そして心地良い。"Lumiere"も同様に昼下がりに微睡みに落ちて行くようなアンビエントだが、"Poincare"では一転して目が覚めた如く電子音が軽快に弾けるポップさもあり、CZ-5000だけを用いた制作ながらも実に曲毎に豊かな表情を見せる。偏に二人のCZ-5000への愛情がその可能性を引き出した事実、それがSafe Tripというレーベルのバレアリック性に適合した事、そしてその音楽がMarcoの目に留まった流れは奇跡的にすら思える。シンセサイザーの魅力がたっぷりつまったドリーミーなバレアリック/アンビエント、聴き逃す事なかれ。



Check "Satoshi & Makoto"
| TECHNO13 | 11:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
GAS - Narkopop (Kompakt:KOMPAKT CD 136)
GAS - Narkopop
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2017年のテクノシーンに於いて絶対に欠かす事の出来ない話題の一つに、本作は間違いなく含まれている。それこそドイツはKompaktの創始者の一人であるWolfgang VoigtによるGas名義のニューアルバムであり、この名義では何と17年ぶりとなる新作だ。30にも及ぶ変名を用いながら様々なジャンルを展開してきたVoigtにとっても、このGas名義はかつてのMille Plateauxで成し遂げたアンビエント×ミニマルの究極的な形であり、4枚のアルバムを送り出してからはパタリと活動が停止した事で逆に伝説的なプロジェクトとして評価されていた。近年はGas以外の複数の名義を用いてテクノだけに留まらない音楽性とそこにアートとしての要素も加えて芸術家的な活動を精力的にしていたVoigtだが、やはりこのGas名義は別格と言うべきか、その音の存在感や快適性は格段にスケールが大きい。アルバムには10曲が収録されているがそれらは便宜上トラック分けされているだけであり全ては繋がっており、またイメージを排除するようにかつてのアルバム同様曲名は付けられておらず匿名性を際立たせて、ミニマルの性質と抽象的なアンビエントによって終わりの時を迎える事が無いような音楽の旅を展開している。寒々しく虚構の中にあるような森の写真がジャケットに用いられているが、鳴っている音楽も正にそのようなイメージで、フィールド・レコーディングと電子音のドローンとオーケストラのサンプルによって生まれるシンフォニーは何処までも抽象的だ。アルバムは重厚で荘厳なオーケストラによる"Narkopop 1"で始まり、寒々しい電子のドローンが重苦しくガスの様に充満しつつその中からハートビートらしきリズムが現れる"Narkopop 2"、一転して物哀しいオーケストラによって悲壮感に包まれる"Narkopop 4"と全ては繋がりながら境界を不明瞭にしながら展開を繰り広げる。そしてドローンに満たされながら潰れたような4つ打ちのリズムがエレクトロニック・ボディ・ミュージックを思い起こさせる"Narkopop 5"、歪なノイズが持続しながら華やかで美しい弦楽器が明瞭なメロディーを奏でる"Narkopop 6"、そして最後の17分にも及ぶ"Narkopop 10"で総決算の如くぼんやりとした4つ打ちのリズムと不鮮明なドローンと荘厳なオーケストラが一体となり、ミニマルな展開の中で時間軸も分からなくなるような迷宮的な流れによってなだからに終焉を迎えていく。音だけを聞いてもGasというアーティスト性が分かる完全に個性が確立されたミニマルかつアンビエントな音はここでも変わらず、前作から17年の歳月を経てもそこから途切れる事なく続いていたかのような音楽で、VoigtにとってもGasはライフワークと呼べるものに違いない。催眠的で快眠なアンビエント、意識は深い森の中に埋もれていく事だろう。



Cjheck "Wolfgang Voigt"
| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Juan Atkins & Moritz von Oswald Present Borderland - Angles (Tresor Records:resor296)
Juan Atkins & Moritz von Oswald Present Borderland - Angles
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Tresorがかつて成し遂げたデトロイト×ベルリンの交流の成果、それはレーベルの第一弾が今となっては奇跡的なX-101(Underground Resistance)である訳だが、今も尚その交流は別の形となって現れている。それこそがデトロイト・テクノのパイオニアであるJuan Atkinsとミニマル・ダブのオリジネーターのMoritz von OswaldによるBorderlandで、2013年に発足したこのプロジェクトは単発プロジェクトに留まらずに進化を続けている。2016年には2ndアルバムとなる『Transport』(過去レビュー)をリリースしたばかりだが、音楽への意欲は全く留まる事を知らずベテラン二人は更なる新作を投下した。僅か2曲のみの新作ではあるが、その内容たるや熟練者としての洗練された音響とテクノへの純粋な愛が表現されたもので、流石の貫禄を感じさせる。"Concave 1"は程よく厚みのあるベースラインや無機質なハイハットが機械的でひんやりしたビートを作りつつ、Atkinsらしい浮遊感とスペーシーな鳴りを伴う上モノのシーケンスで、無駄な音を付加する事なく微細な変化を織り交ぜながら徹底的にグルーヴ重視のフロア・トラックに仕上がっている。一方"Concave 2"はMoritz色が打ち出たのかBasic Channelを思い起こさせるリバーブを用いた上モノのモヤモヤした音響の艶めかしさ、曲尺は10分近くにまで延ばされてよりミニマルに、そして空間の奥ではアシッド的な電子の靄が渦巻いて、亜空間的なミニマル・ダブ音響を構築している。どちらのバージョンにも言える事は余計な音を削ぎ落としながら隙間を感じさせる空間的な響きがあり、またデトロイト・テクノ特有の宇宙への思いが馳せるようなシンセの使い方と、つまりは前述のデトロイト×ベルリン同盟の交流の成果の証なのだ。流行の音楽に一切左右されず、自ら開拓してきた道を更に伸ばしていくその仕事は職人的でさえある。



Check "Juan Atkins" & "Moritz Von Oswald"
| TECHNO13 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Sven Weisemann - Separate Paths EP (Delsin Records:121dsr)
Sven Weisemann - Separate Paths EP

ベルリンから美しさに秀でた音響ディープ・ハウスを追求するSven Weisemann、テクノ〜ハウス〜ダブと振り幅を持ちながらもどの作品に於いても彼らしい静謐な美的センスが現れており、ダンス・ミュージックとリスニングの間を上手く渡り歩くアーティスト。過去にはオランダに於いてデトロイトの叙情性ともシンクするDelsin RecordsからEPをリリースしていたが、同レーベルに2年ぶり復帰したのが本作だ。ともすればフロアから意識的に乖離したようなリスニング向けの作品を作る事もある彼が、ここではDelsinというレーベル性に沿ったように比較的ダンス色の強いトラックを聞く事が可能で、それでも尚繊細なダブ音響も体感出来る点で秀逸だ。特にA面の2曲が素晴らしく、うっすらと浮かび上がる叙情的で空気感のある上モノに合わせてずんずんと胎動のような4つ打ちで加速する"Dopamine Antagonist"は、朧気な呟きやリバーブの効いたサウンドを活かして奥行きを演出したディープなダブ・テクノで、勿論フロアでの機能性は前提としながらも揺らめくような官能性にうっとりとさせられる。A面のもう1曲である"Cascading Lights"はややテクノのプロトタイプのようなたどたどしさが打ち出た音質のリズムで、そこにしなやかに伸びるパッドを用いて初期デトロイト・テクノらしいエモーショナルな響きを合わせ、例えばCarl Craigの初期の作品とも共鳴するようなあどけなさが感じられる。またB面にも落ち着きを伴うダンス・トラックが収録されており、淡々とした4つ打ちで冷静さを取り戻しつつしっとりとしたダブの音響や音の強弱を用いつつ、暗闇の中で煌めくようなシンセワークも用いてBasic Channelの作風を踏襲したダブ・ハウスの"Maori Octopus"と、ビートが極端に落ちた分だけ正に空気の如く揺らぐダビーな音響が強く感じられるダブ/レゲエをテクノとして解釈したような"Separate Paths"と、これらもWeisemannの音響への拘りが如実に発揮された作品だ。僅か4曲のみ、しかしそこには個性と振り幅があり最大限にアーティストの音楽性を体験するには十分過ぎる内容だ。



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| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
kaito - Cosmic Soul Original Soundtrack (Music 4 Your Legs:COMICS-01)
kaito - Cosmic Soul Original Soundtrack
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ペインティングアーティストであり、かのFrancois K.の妻であるTomoko Kevorkian、クラブでVJも行うVJ HAJIME、そしてKompaktでのKaito等の活躍も華々しいテクノ・アーティストであるHiroshi Watanabeによるコラボレーション、それが本作『Cosmic Soul』だ。元々はTomokoがDeep Spaceとの活動を行っていた時に、Wave Musicの音源を使用してTomokoのアートワークを用いたDVDを制作する事が発端だったそうだが、それが一旦中止になった後にWatanabeの音楽をフィーチャして新たな映像プロジェクトとして再開した事で、ようやく本作の完成に至ったそうだ。近年は舞台音楽やシンクロナイズドスイミングに合わせる音楽も制作するなど活動はクラブ・ミュージック外へも及んでいたが、サウンドトラック的に映像を喚起させる音楽性があるWatanabeだからこそ、こういったコラボレーションもある種運命的な流れだったのかもしれない。当方が購入したのは映像の無いCD盤のためここでは音楽に対してのみ述べる事にはなるが、やはり作品が作品だけにいつもの作品よりはストーリー性を重視した流れが軸にある。始まりは"Birth"、正にそのタイトルが示すように宇宙の中から何かが生まれるような胎動を思わせるシンセがうねりつつ徐々にリズムが浮かび上がり、遂に殻を破ってビートが走り出す。続く"Transformation"では悲哀を伝えるピアノを軸に、途中からはオーロラーのように美しい輝きを持つシンセのメロディーが先導し、13分の中でドラマティックな変化を見せる。そしてタイトル曲のビートレスだからこそKaitoらしい壮大なメロディーが際立ち宇宙の神秘を奏でるようなアンビエントの"Cosmic Soul"、風の音や潮騒の中から原始的なパーカッションが現れ生命が湧き起こるリズムを刻む"Ancient Rhythms"、アルバムには静けさも激しさも人間の感情の如く同居している。そして祈りにも祝祭にも聞こえる霊的なボイスを用い、如何にもKaitoらしい美しいシンセのリフレインで感情の昂ぶりが最高潮に達するダンス・トラックの"Celebrate Life"はアルバムのハイライトだ。しかしCD盤にはDVD完成後に更に生まれた"Cosmic Celebration"が最後に収録されており、コズミックなシンセのリフレインを繰り返しつつ幾重にも美しい電子音に包み込まれ、その響きには霊的な力さえ宿る如く感情を激しく揺さぶれられる激情型の曲だ。例えばパーティーの最後にもはまるような盛り上がりも見せるが、しかしアルバム全体で考えるとやはり映像とのシンクロをイメージしたであろう映画的な印象はあり、Kaito流サウンドトラックとして成立している。プロジェクトとしての面白さもありつつ、勿論Watanabeの音楽を普段から好んでいる人にとって、期待に応えた作品だ。



Check "Hiroshi Watanabe"
| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Steffi - Fabric 94 (Fabric:fabric 187)
Steffi - Fabric 94
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ロンドンの名門クラブかつレーベルであるFabric、2001年に始動したMIXCDシリーズも時間にして15年、作品にして90枚を越えたが、その最新シリーズの94作目にはベルリンを拠点に活動する女性アーティストのSteffiがフィーチャーされている。Panorama Barでレジデントを務める実力派DJである事は今更説明も不要だろうが、アーティストとしての手腕も秀でており自身のアルバムではデトロイト・テクノやかつてのWarp Recordsが提唱したArtificial Intelligence等にも共振する音楽性を披露し、特に叙情性のあるメロディーを武器に現在のダンス・ミュージックを表現している。それは彼女が運営するDollyにも正しく反映されており、事実レーベルからはデトロイト・テクノからの影響を強く残した作品も少なくはない。そしてこのMIXCDだ、何と全てが新作、全てがDolly傘下のDolly Deluxeの為に用意された楽曲で、つまりはレーベル・ショーケース的な扱いである事は否定出来ないが、そういった制約を全く感じさせないレーベルの方向性とSteffiの音楽性の魅力が存分に伝わる内容になっている。彼女自身は遂に本作に対し「Artificial Intelligence」からの影響を公言している通りで、4つ打ちに終始しない多種多様なリズムの変遷とSFの世界観にも似た近未来感漂うシンセのメロディーを軸にした選曲を行っており、もしかすると彼女が普段クラブで披露するDJとは異なるのかもしれないがこれも彼女の魅力の一つになり得るだろう。アルバムの幕開けはアンビエントなトラックにボコーダーも用いてSF的な始動を予感させる"Echo 1"で控えめなスタートだが、直ぐに痺れるようなビートが脈打ち壮大な宇宙遊泳に誘われるシンセが広がる"Sound Of Distance"へと移行し、グラグラと横揺れしながらダンスのグルーヴへと突入する。緩急自在に続くSteffiとShedのコラボである"1.5"では速度感を落として幻想的なパッドとカクカクとしたエレクトロのリズムによって一息入れ、ダビーな音響の奥からデトロイト的なパッドが浮かび上がる"Freedom"や複雑なダブ・ステップ系のリズムながらも初期Carl Craigを喚起させる美しさがある"No Life On The Surface"など、深遠なる宇宙の叙情性を軸にリズムとテンポの幅を拡張しながら展開する。Answer Code Requestの"Forking Path"にしても重厚感と奥行きのあるダンス・トラックではあるものの、やはり何処か覚醒感あるフローティングするシンセが効いており、勢いに頼らずとも淡いムードで上手く世界観を作っている。中盤ではレトロ調なエレクトロ・ビートが何だか懐かしくもあるが、Duplexの"Voidfiller"によって希望に満ちた明るい道が切り開かれ、そのままArtificial Intelligenceらしいブレイク・ビーツやもやもやしたシンセの曲調中心になだらかに加工しながら眠りに就くようなクローズを迎える。レトロ・フューチャーな郷愁に浸りつつ、更にはダンス・ミュージックとして躍動的なリズムもあり、懐かしさと面白さを味わえる素晴らしいMIXCDであろう。



Check "Steffi"

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| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
The Orb - The Cow Remixes - Sin In Space Pt.3 (Kompakt:KOMPAKT 363)
The Orb - The Cow Remixes - Sin In Space Pt.3
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アンビエント・テクノの大御所であるThe Orbによるニューシングルは、アルバムからの作品をリミックスするシリーズ『Sin In Space』の3作目、今度は2016年にリリースされた目下最新アルバムである『COW / Chill Out, World!』(過去レビュー)から異なる3曲をそれぞれKompakt関連のアーティストがリミックスするという、全てにおいてKompaktカラーが打ち出されたのが本作だ。リミキサーにはテクノに於いてシューゲイザーの代表格であるThe Field、メランコリーな作風を得意とするDave DK、Kompakt古参の一人であるJorg Burgerと名実共に充実した面子が揃っているが、そのラインナップに負けない音楽的にも充実したリミックスが揃っている。いかにもなりミックスを提供しているのがThe Fieldによる"9 Elms Over River Eno (The Field Remix)"で、彼らしいループによる反復性、霞がかったようなシューゲイズな響き、そしてThe Orbに倣ったような環境音をコラージュのように配しながらスローモーなバレアリック風味に仕立てた音楽性は、原曲とは方向性を変えながら見事な開放感や多幸感を演出している。が後半は最近のThe Fieldらしい抽象的なサイケデリアの世界へと突入し、混迷を極めていく。"4Am Exhale (Dave DK Accellerator Mix)"も初っ端にThe Orbらしい牛の鳴き声のサンプルを用いているのはご愛嬌か、しかしそれ以降は原曲にはない整った4つ打ちをベースにオーロラのように極彩色なシンセを用いて幻想が広がるドリーミーな世界を構築し、Dave DKらしいメランコリーな音楽性を見事に反映させている。"5th Dimensions (Jorg Burger Dschungeloper Mix)"はノンビートな原曲から打って変わってシャッフルなリズムを導入してリズミカルに揺れだしディスコやブギーな感覚を得て、上モノは大幅には変わらないもののアンビエントな曲調が見事に肉体的なグルーヴ感を得たポップなダンス・トラックへと生まれ変わっている。面子が面子だけにどれもKompaktらしい音楽性、どれも各々のアーティスト性が打ち出されており、想定内ではあるものの期待を裏切らない良作が揃っている。



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| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Artefakt - Kinship (Delsin Records:122DSR)
Artefakt - Kinship
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オランダからの新鋭、Robin KoekとNick Lapien - 個別にも活動しており、それぞれSoul People MusicやREKIDS等からも作品をリリースしている - によるArtefaktの初のアルバムは、同じくオランダのDelsin Recordsよりリリースされている。Delsinと言えばヨーロッパに於いて屈指のデトロイト・テクノ愛を示すレーベルの一つであり、本作でもそれに共鳴するようなSF世界観やエモーショナル性を含んでいるが、Artefakt自身は過去にPrologueから作品をリリースしている事もあり、より機械的でひんやりとした質感と機能性を打ち出したグルーヴにディープな音響を活かした作風が特徴だ。例えばDonato DozzyやNeel周辺の音楽性とも親和性は良いであろうし、Delsinというレーベルの中でも特に視点がフロアへと向いている。アルバムはオーロラのように揺らめく美しいパッドと痺れるような鈍い電子音が組み合わさった"Kinship"で開始するが、ノンビートの闇の奥底で蠢く残響や渋谷駅のアナウンス等を用いてアンビエンスな空気が満ちている。続く"Tapestry"からビートが入ってくるが、冷え切って硬質なマシンビートと微かな残響が持続するトラックに、朧げでスペーシーな上モノも被さってディープ・スペースなテクノへと突入。"Entering The City"は12分超えの大作で膨張したリズムとアシッド・ベースがうねりつつ、空間の奥で奇妙なSEが微かに鳴っている完全なツール系トラックだが、次第にデトロイトを思わせる幻想的なパッドやメロディアスなフレーズも入ってきて、壮大な宇宙空間を飛行するかのようなアルバムの中でもキラートラックに当たるだろう。そしてざらついたビートがエレクトロ的で無機質な電子音がシーケンスするロウ・テクノな"Somatic Dreams"、アシッド・ハウス気味なベースラインが前面に出ながらも奥深い空間を作る残響が効果的なディープ・テクノの"Fernweh"とフロアを痺れさす強烈な曲で攻めつつ、ラストはアルバムの始まりと同様にアンビエント性の強い"Tapeloop 1"によって激しいテクノのグルーヴが過ぎ去った後に残る心地良い疲労感を癒やすようにフィナーレを迎える。僅か7曲のアルバムではあるが起承転結のある流れ、そしてどの曲もディープな音響による空間演出と脳髄がビンビンと痺れる電子音が効果的に用いられており、現在形のテクノとして大いに評価したい。



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| TECHNO13 | 19:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hiroshi Yoshimura - Pier & Loft (17853 Records:RFLP004)
Hiroshi Yoshimura - Pier & Loft
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Discossessionのメンバーの一人として、そしてOrganic Musicなる特定のジャンルに縛られない音楽のオンライショップの運営者として、そして時代に埋もれてしまった素晴らしき音源を発掘するディガーとして、類まれなる審美眼を持つ日本人ディガーChee Shimizu。過去に彼が編纂した「Obscure Sound」(過去レビュー)は正に世に知られていない、しかしダイヤの原石のような輝きを持つ過去の音楽のレビュー本として面白みと、道標としての役割を担っている。そしてそんな音楽への探求はオンラインショップからレーベルへと派生し、17853 Recordsを立ち上げる事になった。既に複数枚の作品をリリースし、その中にはdip in the poolの甲田益也子のリミックス盤も含まれるなどやはりその音楽センスに注目せずにはいられないが、そのレーベルの新作は吉村弘による1983年作のリイシューだ。吉村はサウンド・デザインやグラフィック・デザインなどを行い、また日本の環境音楽=アンビエント・ミュージックの先駆者の一人でもあるそうで、ならばこそ現在の電子音楽方面から見つめ直してみるのも自然な流れだったのだろう。本作は西武ファッション・エキシビジョンのために制作された音楽だそうで、淀みのないクリアな響きと無駄の無い洗練された音の構築が際立つサウンド・デザインで、今で言うフロア寄りのアンビエントとは異なるのかもしれないが空気に馴染む環境音楽という意味では正にアンビエント的だ。Aサイドは東京湾岸の風景をテーマにしたそうだが、静寂の間にひっそりと浮かび上がる粒子のような音の一つ一つによって更に静寂が強調される"Horizon I've Ever Seen Before"は、その遠くに広がる地平線を臨み佇んでいる静けさなのだろうか。強烈なビートが入っているわけではないがミニマルなピアノの音の継続がフラットなビート感を生む"Signal F"は動きが感じられ、"Tokyo Bay Area"は波が押し寄せるような音の響きが湾岸からの海の風景を浮かび上がらせる。B面はリズミックな波に着想したらしく、海を連想させるタイトルが並んでいる。エッジの効いた電子音が切り込んでくる間に点描らしく音が配置された幾何学的な"Wavy-Patterned Ice Cream"、音と音の隙間と青々しさが広大な青空の広がりを喚起させる"Kamome Dayori"、動きが収まり静けさの中に微睡んでいく"In The Sea Breeze"、どれもこれも限りなくピュアに精錬され無駄な装飾がなく音の一つ一つに意味を持たせたような構成だ。感情に響くと言うよりは非常にフラットでそこに元からあったような、空間の一部として存在している環境音楽で、これは部屋のBGMとして最適以外の何物でもない。古臭さは全く無い、時代を超えてこの音はあり続ける。



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| TECHNO13 | 12:00 | comments(1) | trackbacks(0) | |
The Mulholland Free Clinic - The Mulholland Free Clinic (Away Music:AWAYLP001)
The Mulholland Free Clinic - The Mulholland Free Clinic
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元々Reagenzというユニットとして繋がりがあるMove DとJonah Sharp、またMove DとJuju & JordashによるMagic Mountain Highというユニットもあり、それら3アーティストが一緒くたになった新プロジェクトがThe Mulholland Free Clinicだ。元々はハードウェア機材をベースにフェス等でジャムセッションを行った事がきっかけで本作の制作に繋がったようだが、この作品自体もベルリンで行った3時間のパフォーマンスが元になっている事からライブ盤と捉えるべきか。そのライブ自体も当然の如くアナログのハードウェア主体、完全即興のジャムだそうで、その意味では緻密に作り込まれた印象はないもののリラックスした雰囲気のライブ感が味わえるテクノ/アンビエントのセッションだ。LPでは3枚組というボリュームからも分かる通りそれぞれ長尺で、中には17分にも及ぶ曲もあり、瞑想へと誘う抽象性の高いアンビエント性が強い。その端的な例がアルバムの冒頭にある"Vital Signs"で、微かなSEを背景にアナログシンセが流動的にゆっくりと変化し続けて無重力空間のディープ・スペースを17分に渡って生むのだが、大きな展開もなくただただ音の波に揺られるようなドローン・アンビエントは、セッション性を活かした自由さによって成り立っている。続く"Boneset"でようやく弛緩したビートが刻み始めるが、やはり上モノのシンセはふらつくように虚ろで手の平をするすると擦り抜けるような掴み所のないエクスペリメンタルなハウスだ。シャッフルする比較的ダンスビートの強い"Gone Camping"は、弾けるリズム感とエモーショナルな旋律に引っ張られてSF的な世界を喚起させ、かつてのReagenzのようなAIテクノらしさが感じられる。続く"Ebb & Flow"もスムースに走るグルーヴに引っ張られるが、そこにブルージーで自由な旋律を描き出すギターと点描のようなシンセを散りばめて浮遊感とトリップ感を打ち出し、長い時間に渡って自由度の高いセッションの波に揺らされる。このアルバムに何か目新しさを感じる事はないし、また揃った面子以上のマジックを生み出しているわけでもないが、確かにそれぞれのアーティストのアンビエント感/ライブ性等の音楽性が一つになっていて、セッションを重視したプロジェクトとしては成功しているだろう。昼間の野外のフェス等で聞く事が出来たら、それは心地良い昼下がりの体験になるに違いない。



Check "The Mulholland Free Clinic"
| TECHNO13 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |