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Damon Wild - Cosmic Path (Infrastructure New York:INFCD 003)
Damon Wild - Cosmic Path
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実に13年ぶりとなるアルバムを出したニューヨークを拠点に活動するDamon Wildは、自身で運営するSynewave等から良質なミニマル・テクノを90年代から送り出しているベテランの一人。初期活動に於いてはTim Taylorとのアシッド・ユニットであるThe Rising SonsやThe Pump Panelで暴力的なアシッド・テクノを送り出し、90年代中盤以降は時代に沿いながらクールな機能性に特化したミニマル・テクノで才能を開花させ、ニューヨークのテクノシーンを代表してもおかしくはない位までの存在感を放っていた。2010年以降になると作品のリリースペースはがたっと落ちその名前を聞く事も滅多になくなってはいたものの、突如として2017年の暮れに届けられたニューアルバムは以前にも増して無駄の無いミニマル性に特化しつつ、その上Jeff Millsばりのスペーシーな感覚も伴うひんやりとした機械的テクノへと傾倒している。特に勢いで押し通すのではなくしっかりとムードも重視されており、オープニングの"1242"ではビートレスの中に無機質な鳴りのSF的な電子音を用いてイントロとしての意味合いを持たせており、サウンド・トラック的な始まり方だ。続く"Aquarius"では淡々としたキックを刻むテクノでスピード感を得るが、ソナー音のような反復音やミステリアスなシンセの響きなどによる宇宙空間らしい世界観は、Millsが歩む道を辿っている。空間の広がりを得るシーケンスが浮遊感を生むスペーシーなミニマル・テクノの"Red"、ゴリゴリと岩石が砕けるような荒いビート感に奇妙なシーケンスに惑わされる"Mars Lander"、分厚い重低音が連続しながらも微弱な発信音が飛び交う骨太なテクノの"Amber"など、どの曲も厳つく芯の強さはあるが激しいグルーヴで押し通すのではなく、効果的な音の相互作用によってスペーシーな響きを生む作風で確かに今の時代のテクノらしいと言うか。『Cosmic Path』、つまり宇宙の道というタイトルが示す通りに宇宙をコンセプトにしたアルバムはその世界観は正しく確立されており、果てのない宇宙旅行へと誘う。無駄な装飾は削ぎ落とされ多層的な電子音のシーケンスと秩序のとれたビート感によるテクノは、勿論爆音で響くフロアではミックスされる事で効果的な流れを作り出すだろうし、この冷たい温度感の音はやはりフロアで聞いてみたいものだ。



Check Damon Wild
| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Sven Weisemann - Bilateral Relations EP (Echocord:echocord 075)
Sven Weisemann - Bilateral Relations EP
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ダブ・テクノという音楽に対して一切ぶれる事なく追求を続けるドイツのEchocord、今までにもダブ・テクノに於ける探求者の作品を数多く送り出してきたが、そのカタログに新たに名を刻むのがSven Weisemannだ。ベルリンのディープ・ハウスでは随一のレーベルであるMojubaの躍進に貢献したアーティストであり、その深い残響に美しさを込めた作品は最早芸術的でさえある。中にはダンス・トラックと言うよりはサウンドトラック的な風景を描き出すようなエモーショナルな作風もあり、例えばそれは"Lunation"において顕著だ。つんのめるような、しかし遅く侵食するようなリズムに荘厳で霧のように霞んだシンセが入れ替わり立ち替わり現れて幻想の中に誘い込むようなアブストラクトな作風だが、抽象的な響きながらも火を灯したようなほっとする温度感があり、リスニング性に優れている。逆に無駄を削ぎ落としながら端正に整ったリズムと反復するディレイの電子音が浮遊感を生む"Bilateral Relations"は、ミニマルとダブの要素があるしっとり湿度感のあるダンス・トラックだが、とは言っても勢いではなく雰囲気で魅了する楽曲性がある。"Monistic"も似た雰囲気を含んでいるが、霞に消えいくような霞んだ声や繊細な電子音と残響を用いて重力を感じさせない軽やかなグルーヴ感によってより耳を引き付けるリスニング性があり、そして"Decimation (Valve Tr9 Mix)"では逆にキレのあるキックやハイハットを用いて躍動感のあるビート感を作りつつ鈍いアシッディーな音も導入し、EPの中では最もダンス・トラックとしての要素が強いすっきりしたダブ・テクノだ。結果的にはいつも通りのWeisemannらしい繊細なダブの美しい音響を聞かせる作品でもはや金太郎飴的に完成はしているが、それは高い水準にあるからしてやはり今も尚彼の作品を追い続けている自分がいる。



Check Sven Weisemann
| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
STEREOCiTI - Parabolic Motions EP (WAVEGUIDE:WAV.G001)
STEREOCiTI - Parabolic Motions EP

ここ数年、ベルリン随一のディープ・ハウスのレーベルであるMojubaと蜜月の関係を築いていたKen SumitaniことSTEREOCiTI。ベルリンを拠点に活動していた彼は今度はポルトガルに生活の場を移し音楽活動を続けているが、そんな心機一転に合わせて遂に自身のレーベルとなるWAVEGUIDEを立ち上げ、新作をリリースしている。Mojubaというレーベルが美しく深い音響を伴うディープ・ハウス性であったものの、Sumitaniもベルリンに移住後は少しずつ現場からの影響を受けたのかテクノ寄りの音楽性へと移行しつつあった中で、この自身のレーベルでそれはより明確に現れるようになった。安息の日が過ぎる日本でなく、慣れない異国での生活が彼の音楽性を逞しくするように影響したのだろうか、以前と比べると随分と骨太さが見えるようになり機能性を増している。"Motion 1"からして勢いと太さのあるグルーヴが貫いており、ダビーな上モノが空間の広がりを感じさせながらも、基本的にはミニマルな性質のあるダブ・テクノはDJ用途に特化した作風だ。そして"Motion 2"はより深く闇に潜っていくような暗い音響と芯の図太いキックが目立つ4つ打ちのダブ・テクノだが、以前からの美しさが映えるダビーな音響も控えめに効いていて浮遊感が心地良い。もう少々シンセのリフに動きがありトランス的な覚醒感のある"Motion 3"や非常にダブ・テクノらしくありながらデトロイトの叙情性にも寄り添った"Motion 4"等にしても、やはり以前に作風に比べれば随分と逞しく密度の高い筋肉的な硬さがあり、ハードという表現ではないものの方向性はテクノへと進んでいる。海外での活動が自身の音楽性に反映され今も尚深化を続けているSTEREOCiTI、DJとしては当然だがアーティストとしても成熟具合が素晴らしい。



Check STEREOCiTI
| TECHNO13 | 20:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Model 500 - No UFO's Remixes (Metroplex:M-046)
Model 500 - No UFOs
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デトロイト・テクノのオリジネーターであるJuan AtkinsによるModel 500、その名義では第一弾となる1985年にリリースされた『No UFO's』からデトロイト・テクノ、ひいてはテクノの歴史が始まったと呼んでも過言ではないだろう。勿論その前にもKraftwerkやYMOもテクノと呼んでも差し支えない音楽を作ってはいたが、黒人がそこに由来するファンクやソウルを電子音楽で表現した結果としてのテクノに未来的な響きがあり、それが今も尚デトロイト・テクノの魅力となっている。本作はリリースから30年を経てそんな名作を現在のアーティストによってリミックスされたもので、同じくデトロイトの奇才・Moodymannとチリアン・ミニマルの一時代を築き上げたLucianoが参加している。勿論オリジナルの"No UFO's (Vocal)"も収録されており、今聞けば流石に音的な古臭さは否定出来ないものの、うねるベースのエレクトロ的なビート感や本人の歌もフューチャー・ファンクといった趣きで、未来派志向のテクノ/エレクトロの胎動を感じ取る事は出来る筈だ。予想も出来ない、しかし素晴らしいリミックスを披露したのはやはりMoodymannで、"No UFO's (Vocal) (Moodymann Remix)"では彼らしい甘く官能的なピアノのメロディーも加えつつ流れるようなハウスのグルーヴに作り変え、原曲のレトロ・フューチャーな雰囲気は損なわずにMoodymannらしいブラックネス溢れる魅惑のハウスへと染め上げている。対してLucianoの"No UFO's (Vocal) (Luciano Remix)"は原曲のデトロイトらしさを残す事は意識せずに、ボーカルをぶつ切りにして使用しながらも展開を広げるのではなく収束させるミニマル・ハウスのスタイルを彼らしく披露し、14分に渡って淡々とした機能的なグルーヴを鳴らし続けている。どちらか選べと言われればやはりデトロイトらしさのあるMoodymannのリミックスの方が愛着は感じられるし、やはり曲単体としての良さが光っているか。どちらにせよオリジナルも収録されてはいるので、それを持っていない人にとっても価値ある一枚に間違いはない。



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| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
外神田deepspace - Shinjuku Lights (Clave House:clave002)
外神田deepspace - Shinjuku Lights

2016年にデビューを飾った外神田deepspace、またの名をAquarium。東京を拠点に活動する以外の経歴はよく分かっていないものの、前者はマシーナリー性を、後者はオーガニック性をとコンセプトを分けて活動しているそうで、デトロイトからの影響もありそうなテクノから色彩豊かで透明度の高いアンビエントまで名義を使い分けて展開する。まだデビューから2年も経ってはいないものの音そのものの評価で着実にその名が知られてきているように感じるが、デトロイトの新興レーベルであるClave Houseからの第二弾となる本作も彼の評価を高める事に寄与する一枚になる事は間違いないだろう。タイトルである新宿ライト、想像するのは高層ビルから見下ろされる喧騒に満ちた繁華街に煌めくネオンライト、東京というアーバンシティーの夜の雰囲気をイメージしたのだろうか。正に闇の中に豊かに煌めくネオンライトのようにキラキラとした電子音が鳴っている"Shinjuku Lights 01"は、ビートレスな事でアンビエント性の高い美しさによって作品の序章的な意味合いを感じさせる。続く"Shinjuku Blue"はディレイを強調したダビーな上モノの奥に透明感のあるシンセが微かに鳴るフローティング感溢れるダブ・テクノだが、例えこういったダンス・トラックであっても激しさよりは繊細な音響美への傾倒が強い。"Shinjuku Lights 05"ではより伝統的なダブ・テクノ、つまりはベーチャンへと接近したようなアブストラクトな電子音響を用いつつ、地に根を張ったずっしりしたキックでミニマルな機能面の特化もある。裏面へと移り変わるとロウな雰囲気が強くなり、粗雑で安っぽいリズムを用いてシカゴ・ハウスらしさも思い起こさせる"Shinjuku Lights 07"はオールド・スクールな趣があり、しかし耽美に舞う上モノはデトロイトの雰囲気そのものでレトロ・フューチャーな都会の風景へとリンクする。そして過激でロウな雰囲気がEPの中では特に異色にも思われるシカゴのアシッド・ハウスやテクノの要素がある"Shinjuku Lights 04"は、強烈なアシッド・ベースが執拗に迫りつつ暗くも情緒的なパッドに彩れて、何だか繁華街の喧騒の真っ只中に居るようだ。タイトルから察するにコンセプト前提の作品は、しかし外神田deepspaceのリスニングとダンスの要素がバランス良く存在し、アーティストのインテリジェント性の高いテクノの魅力が詰まっている。新世代の台頭を予感させる存在であり、今後も楽しみなアーティストだ。



Check 外神田deepspace
| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Palmbomen II - Memories Of Cindy (Beats In Space Records:BIS031)
Palmbomen II - Memories Of Cindy
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奇才を多く擁するBeats In Space、フロアを激しく揺らすダンス・トラックからエクスペリメンタルな要素の強いリスニングまで、それはテクノだけに限らずハウスやディスコにアシッドまで多岐に渡るが、そんなレーベルの多彩性を一人で表現してしまうアーティストがロサンゼルスで活動するKai HugoことPalmbomen IIだ。2010年頃からユニットのPalmbomenとして活動していたようだが途中で恐らくプロジェクトは単独のものとなり、それに合わせてPalmbomen IIと名義を改めて2015年にBeats In Spaceからリリースした同タイトルのアルバムが注目を集める。TBやTRにアナログ/モジュラーシンセなどヴィンテージな機材を用いて、生々しい宅録的な音質と一発録りを思わせる簡素な構成によるテクノ/ロウ・ハウス/ディスコ/アンビエントのニュアンスがある音楽は、何処の国にも所属しないようなミステリアスな世界が広がっていたのだ。そして新作も大きな路線変更はないもののCDでは2枚組のボリュームで、アメリカのSFドラマである「X-Files」のキャラクター・Cindy Savalasに焦点を当てたコンセプチュアルな作品らしく、そういった点でもユニークさがある。アルバムは水の流れる音や女性のスポークンワードを用いつつ、異国情緒でローファイ感のある旋律でエキゾチック性もある"I Feel Everything"によって、ストーリーの中へと誘われる。続く"Pure Tibet"では錆びたようなTR系のドラムマシンと憂いのあるメロディーに懐かしいロウ・ハウス、いや古き良き時代のシカゴ・ハウスへと接近し、"LOHAnet"もうねるアシッド・ベースとローリングするようなキックやスネアがシカゴの安っぽいハウスを思い起こさせるが、その粗い音質に対してメランコリーなメロディーが夢現な世界を演出している。特に甘くドリーミーな白昼夢に浸るのは"Seventeen"、カタカタとした朽ちたマシンビートと覚醒的なアシッドの反復にポップな女性ボーカルやキラキラときらめく電子音が混在する個性的な曲で、荒廃した世界観の中にも救いが感じられる。アシッドに振り切れた"pyrotechnomarco"のように歪んだアシッド・ベースや不気味な電子音などに加え、敢えて粗悪さを強調した音質も相まって頭もくらくらす毒々しいアシッド・ハウスになっており、激しくなくとも精神に侵食する効果的なダンス・トラックもある。テクノやハウスにアンビエントなどが交互にやってくる流れではあるが、アルバム全体を通して初期衝動の粗さを強調した音質による統一感はあり、そして何よりも何処とも分からない朽ち果て不気味な世界の中に甘い幻想が広がる架空のサントラ感が素晴らしい。昨今のローファイ流行の中でも特に本作は、狂気と快楽を両立させたレトロ・フューチャーな作品で素晴らしい。



Check Palmbomen II
| TECHNO13 | 15:00 | comments(1) | trackbacks(0) | |
Blend Architect - Uncloud (Groovement:GR029)
Blend Architect - Uncloud

ポルトガルで特に勢いが感じられるGroovementは基本的にはヴァイナルのみという方針にもかかわらず、エモーショナル性と機能性のバランスの取れた高品質なテクノ/ハウスをリリースしており、注目を集めているレーベルの一つだ。もしレーベルを追いかけている者ならば間違いなく気付く事は、近年はたまたまかもしれないが日本のアーティストの後押しを行っており、特に過去に2枚のEPをリリースしたSai Yoheiはその存在感を強めている。そしてBlend Architectなる聞き慣れない名義の新作、実はYoheiの別人格とも呼べるプロジェクトであり、敢えて異なる名義を用いる事で音楽性もYoheiのディープ・ハウスからテクノへと傾倒している。元々慎ましい情緒性を含みながらハウスとテクノの境目にあるような洗練された音楽性ではあったものの、ここでは更にテクノのクールさと言うか淡々としながらも力強いグルーヴ感を増しており、確かに別名義でリリースしたのも納得の内容だ。いきなり全くビートの入らない"Uncloud 1.1"で始まるが、きめ細かい電子の効果音を散りばめつつ重層的で厳寒なシンセによって壮大なスケール感を演出し、次の曲へと上手く雰囲気を接続させる。そして続く"Uncloud 1.2"では電磁波のような電子音が唸りつつ逞しく太いキックが正確な4つ打ちを刻み、ずんずんと迫りくるグルーヴ感の中でレイヤーとなった幽玄ばシンセが切り裂くように入りながら、叙情性を伴いながら圧力のある勢いに飲み込んでいくような機能的なテクノを聞かせる。"Cloud 2.1"でもツールとしての機能性に磨きは掛かっており、鋭いハイハットの高音帯と安定感を打ち出す芯のある低音のキックの狭間に朧気な電子音響をちらつかせ、大きな展開を繰り広げる事はなく一点に収束するようにミニマルな流れを作っている。ラストの"Cloud 2.2"ではやや引っかかりのあるリズムで揺らぎがあるが、パルスのような複数の無機質な電子音を反復させる事で覚醒感を打ち出し、機械的で冷えたグルーヴ感を活かしながら嵌めていくタイプの曲だ。確かにSai名義とはやや異なる音響とテクノの雰囲気を持っており、このBlend Architect名義も彼の個性となっていくであろう音楽性を含んでいる点で、リスナーの期待を越えていく素晴らしい作品だ。



Check Yohei Sai
| TECHNO13 | 14:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Steffi - World Of The Waking State (Ostgut Ton:OSTGUTCD41)
Steffi - World Of The Waking State
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Ostgut Tonという有名なレーベルの後押しを抜きにしても、DJとしてアーティストとして、そしてレーベル運営者としても素晴らしい才能を発揮しているSteffi。Panorama Barでレジデントを長年務めるその実力は言うまでもなく、近年は積極的にアルバム制作も行い制作者としても高い評価を獲得、そしてデトロイト志向のあるDollyを主宰して実力あるニューカマーを送り出すなど、総合的な面から評価出来る素晴らしいアーティストだ。ソロでは3作目となるアルバムも過去と同様にOstgut Tonとなるが、音楽性の深化は未だ尚止まっていない。当初はシカゴ・ハウスやデトロイト・テクノに影響を受けた音楽性が見受けられたものの、2016年にMartynと共同制作した『Evidence From A Good Source』(過去レビュー)ではダブ・ステップやレイヴの要素も取り込み、そしてこの新作ではかつてWarpが提唱した「Artificial Intelligence」にも接近している(Steffiが主宰するDolly Deluxeは、間違いなくその影響下にある)。冒頭の"Different Entities"では奇妙な電子音が鳴る中で情緒的なパッドが浮遊しデトロイト・テクノらしい未来感を発しつつ、リズムは複雑なブレイク・ビーツを刻みながら揺れ、90年代のAIテクノと呼ばれる何処かインテリジェンスな感覚が通底する。パルスのような不気味な反復音が続き、薄く延びるパッドが深遠さを生む"Continuum Of The Mind"も4つ打ちから外れたつんのめるようなリズムを刻み、それは生命体のように躍動するグルーヴ感に繋がっている。"All Living Things"でも複雑なリズムがエレクトロ気味に鋭利に切り込んでくるが、陰鬱で物哀しいメロディーが先導する事で激しさよりも情緒的なデトロイト・テクノらしさが感じられるだろう。ヒプノティックな電子音とゆったりと浮遊する透明感あるパッドは心地良くも、ロウなパーカッションがオールド・スクールな感覚に繋がっている"The Meaning Of Memory"も、直球ダンストラックから外れた大らかな包容力はリスニング性が強い。タイトル曲の"World Of The Waking State"ではやけに忙しなく鋭いリズムとアシッド気味のベースが蠢きつつ浮遊感のある上モノが、例えばModel 500辺りの深みのあるエレクトロを思い起こさせたりもする。アルバムはおおよそ大きな変化を付ける事なく豊かなリズム感のテクノで統一され、ラストの"Cease To Exist"でも鞭で叩かれるような力強いエレクトロ・ビートと深遠でスペーシーなメロディーによってすっきりと余韻を残さずに終了する。全体的なトーンとして決して明るくはないが控えめに情緒性のある慎ましさ、そして4つ打ちではない複雑なリズムで揺らす構成力、それは確かに激しさだけで踊らすテクノに対するカウンターカルチャーのAIテクノらしくあり、近年のDollyの音楽性と完全にシンクロしているのは明白だ(その意味ではOstgut TonよりもDollyからリリースされた方がしっくりするかもしれない)。何か新しい時代のテクノと言う訳ではないが決して古臭く懐古的な作品でもなく、「Artificial Intelligence」を今の時代に合わせて解釈し直したとも思われ、十分にリスニング性の高いアルバムとして素晴らしい。



Check Steffi
| TECHNO13 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hiroshi Watanabe / R406 - Cosmos EP (Select Kashiwa Recordings:SKR-04)
Hiroshi Watanabe / R406 - Cosmos EP

千葉から世界に向けてデトロイト・テクノへの愛から生まれた日本のテクノを送り出す、それがYonenegaによるSelect Kashiwa Recordings。現在までにChick Tack CoreaとのユニットであるR406名義で3枚のEPをリリースし、デトロイト・テクノのエモーショナル性を継承しつつ現在にテクノにフィットした作風を会得し、着実にアーティストとして成長している期待すべきユニットだ。そしてレーベルとして4作目になる本作ではR406とHiroshi Watanabeによるスプリット盤になっているのだが、Watanabeと言えばKompaktに於けるKaito名義での活動の上に近年はデトロイト・テクノの伝説的レーベルであるTransmatからも日本人初として作品をリリースするなど、つまりはYonenagaが目指す音楽性と同じ方向を向いている。実は本作に収録されたWatanabeによる"Star Seeker"は元々Transmatからリリースされたアルバム向けに制作された曲だったのだが、結果的には収録から漏れてしまい素晴らしい曲が眠ったままになってしまったものを、勿体無いと言う事でYonenagaがリリースを提案していたものだ。曲自体は近年のWatanabeが積極的に取り組んでいるアシッド・ベースを弾けるようなリズム感で用いつつ、アトモスフェリックで幻想的なパッドや美しいシンセで彩っていき、そして強靭なグルーヴでがつがつと攻め立てる内容だ。アシッドの快楽的なトリップ感と叙情性に溢れたメロディー、そして力強く刻まれるビート感から生まれる世界観は、正に激しい宇宙旅行の真っ只中に居る「星を探す者」というタイトル通りだろう。勿論R406の新曲も期待に応えるように素晴らしく、WatanabeがMIXCDの中で用いていた"Collapsar"はデトロイト宜しくな情緒的なシンセのリフを軸にそこに絡みつくようなコズミックな電子音を導入して、大きなブレイクを用いる事はなく淡々と緊張感を持続させてじわじわと高揚する機能性を重視したテクノだ。対して"Peace Of Moments"はヒプノティックな上モノを散りばめやや浮遊感もあるハウシーなグルーヴ感で壮大な空間をイメージさせるようでもあり、Innervisions辺りのディープ・ハウスを思い起こさせるトリッピーな美しさを放っている。両者とも各々の持ち味を発揮してキラートラックと呼べる素晴らしい曲を提供しており、両面フロアを沸かす事が必至な素晴らしい一枚だ。



Check R406 & Hiroshi Watanabe
| TECHNO13 | 11:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Dopplereffekt - Cellular Automata (Leisure System:LSR020)
Dopplereffekt - Cellular Automata
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アンダーグラウンド、またはミステリーという表現がこれ程適切なユニットは他にそうはいない、メンバーであるJames Stinsonの死によってユニットは消滅し伝説化したデトロイト・エレクトロのDrexciya。コンセプトであるDrexciya人の深海の冷えた世界を表現したエレクトロはダンス・ミュージックの著名人からも高く評価を受けるものの、ユニットが消滅した事でそのストーリー仕立ての音楽もおおよそ途絶えてしまい、その音楽の継承者は今も尚そう多くはない。しかしDrexciyaは一人ではない事が幸いだったのだろう、もう一人のメンバーであるGerald Donaldは多数の名義を用いて活動しており、Drexciyaを継ぐ者としての存在感を放っている。その中でも特に知名度の高いものがこのDopplereffektだろうが、アルバムとしては実に10年ぶり、3作目となる本作は蓋を開けてみれば全てノンビート作品と驚くべき内容だ。ビートレスな事でアンビエントな性質も強くはなっているが、しかしオープニングの"Cellular Automata"を聞いてみれば重厚なベースラインや電子音のシーケンスからは間違いなくエレクトロの響きが発せられており、暗く何処か謎めいたSF的世界観は正にDrexciyaのものだろう。続く"Von Neumann Probe"も鈍く蠢くベースには毒々しさが宿っているが、その一方で祈りのような女性の声やデトロイト的な神秘的なシンセからは逆境の中に希望を見出すポジティブな感覚もあり、ただ陰鬱なだけの作品ではない。エレクトロと言えばKraftwerkに強く影響を受けたジャンルであり、それが如実に感じられる"Gestalt Intelligence"ではピコピコした電子音のシーケンスが用いられているが、アンダーグラウンドを地で行くDonaldにかかれば凍てついた世界観へと変貌する。モジュラーシンセらしき音が振動するように鳴りながらデトロイト直系の情緒的なパッドが降臨する"Isotropy"は、アルバム中最も美しいアンビエントで荒廃する世界の中の救いだ。Drexciyaと言えばどうしたって不気味で暗くハードな音楽性と言うイメージがあるが、それも逆境から生まれた未来へのポジティブな思いと考えれば、こうやって音自体に安らぎが現れるのも自然な流れなのだろう。尚、幾何学模様のデザインであるジャケットからも分かる通り、本作は音自体もそれに準じたイメージが強く、エレクトロでありながら独特の内在するリズム感が面白い。そしてビートレスな事で浮かび上がったエレクトロのシンセの美しさにも気付かされたり、Drexciyaの伝説はまだ続いている。



Check Dopplereffekt
| TECHNO13 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |