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Fabrice Lig - That Blue Synth EP (R-Time Records:RTM010)
Fabrice Lig - That Blue Synth EP
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テクノの聖地とまで崇められたデトロイトが、しかし今ではハウス・ミュージックはそうではなくとも特にテクノはかつての影響力は身を潜め、やや停滞期が続いているのは否定出来ない。その一方でそこから影響を受けた外部のテクノ勢は逆に精力的な活動を行っており、例えばベルギー屈指のデトロイト信者であるFabrice Ligも90年代半ばから複数の名義を用いて活動し、VersatileやF CommunicationsにR&S等のヨーロッパの著名なレーベル、Subject DetroitやPlanet EにKMSといったデトロイトのレーベルから大量の作品をリリースしてきた、強烈なデトロイト・フォロワーなアーティストの一人だ。本作はRekids傘下のR-Time Recordsからのリリースで、レーベル自体が名作のリイシューに力を入れている事もあり、ここに収録された曲も今の時代の新作ではなく20年間保管されていた未発表曲を引っ張り出したとの事。遂に日の目を見る曲はLigに期待するエモーショナルなシンセが爆発しヨーロッパから解釈したデトロイト的なコズミック感満載のテクノで、何故に今まで世に出なかったかが不思議な程の質だ。特に突出しているのは"The Meeting"だろう、9分にも及ぶ長尺ながらもビートは走らずに徹頭徹尾溜め感が続くのだが、少しずつ変化を見せるファンクネス溢れるシンセのラインが先導しながらそこにギャラクティックなパッドが覆いかぶさりながら壮大な宇宙空間を描き出す。アシッド・サウンドも飛び出して快楽性を煽りつつ、徐々にシンセのメロディーは生命が宿ったかのように暴れだして、ゆっくりとしたスピード感ながらも壮大な宇宙空間を旅するような感動的な曲だ。2015年録音の"Nebula 101"の奇妙なシンセの音色が効いた跳ね感のあるテクノもこれぞLigといった趣きで、荒々しいハイハットやキックのリズムは跳ねながらも微妙に変化していくシンセのミニマルな構成はツール性が強く、しかし何か金属が捻れるような音使いが独特で非常にファンキーなデトロイト影響下にある事を認識させられる。そしてよりツールに特化した1995年録音の"Noise's Revolt"は流石に活動の初期の頃だけあってまだまだ荒削りで初々しさも残るが、TR-909の安っぽくも生々しいリズムも相まって初期衝動のような勢いがあり、エグくシンセのミニマルなフレーズによって攻撃的な一面を見せる。それぞれ時代が異なる事もあり方向性の異なる曲が並んでいるが、どれも未発表にしておくにはもったいない位の良質なテクノで、ファンク×ミニマル×エモーショナルな音楽を十分に体験出来るだろう。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Greg Gow - Paradigm Shift EP (Planet E:PLE65398-6)
Greg Gow - Paradigm Shift EP
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2000年初頭から活動しているカナダはトロントのGreg Gow、決して短くはないキャリアではあるがそれまでなかなか注目を集める事が無かった彼が、2009年作の『Pilgrimage EP』がDerrick Mayに見初められTransmatからリリースされた事は彼のキャリアの転機の一つである事は間違いない。それがきっかけとなりその存在は広く知れ渡りその後も100% PureやKMSといった著名レーベルからのリリースが続いているが、新作はまたしてもデトロイト・テクノの大御所中の大御所レーベルであるPlanet Eから。元々美しいシンセ・ストリングスのラインやキレのあるビート感によるテクノを得意とするGowの音楽性は、確かにデトロイトの叙情性に共鳴する点もあり、なればこそPlanet EからGowの音楽が送り出されるのも至極当然な事だろう。ざらついた生々しいハイハットが強調されたリズムを刻む"Transcendence"からして、すっと伸びるシンセ・ストリングスの上にエグいシンセのメロディーや覚醒的でテッキーなリフを重ねて、じわじわと盛り上がっていく構成はMayの好きそうなテクノという印象。"Paradigm Shift"はすっきりと贅肉を落とした4つ打ちビートに金属的でダビーな音響が鳴っているが、途中から壮大なアルペジオ風のメロディーが躍動する流れはスペーシーで如何にもデトロイト的で、SFやレトロ・フューチャーな世界観もある。そしてパーカッションが効いたリズムと低音が蠢くどんよりとした"Lantana"は、途中から繊細で綺麗なシンセコードが仄かに情緒を付け加えてしっとりとしたハウス調で、終盤に入るとグッとドラマ性を増すように壮大なシンセ・ストリングスが爆発するお約束的な展開で盛り上がる。本人曰くカナダの観点から見たデトロイト・テクノ像だそうで、コンセプトとして目新しさは無いものの、デトロイト好きの心をヒットする事間違いなしのテクノに安心を覚える。



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| TECHNO14 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
BBRB - King Kiang (Fragrant Harbour:FGHB006)
BBRB - King Kiang

全く前知識の無いEPならがも手を出してしまったのは、今世界をDJツアーで周る程に高い人気を獲得した日本の女性アーティストのPowderがリミックスを提供していたから。このBBRBなるアーティストの初作品であるが、実はMove Dらのユニット・L'Amour Fouの一員であるBenoit Bouquinと、Riles Jay Bilgoという香港在住のアーティスト二人組のユニットのようである。前述したようにPowderのリミックスがお目当てだったもののオリジナルも決してダンス・トラックとして遜色はなく、勢いに頼らずにディープ&アシッドな要素による妖艶の中に潜むメランコリーを引っ張り出した作風は快楽的だ。真夜中の艷やかで快楽的なシンセのフレーズと底辺で蠢くアシッドのライン、そしてシカゴ・ハウスのような乾いたリズム感でジワジワとなだらかに展開する"Cat Slave"は、大きく羽ばたく事もなく不気味にドラッギーさを滲ませるが、Innervisons風な持続する覚醒感がある。"Two Policemen"もスローモーな流れで鈍いベースラインにざらついたハイハットやキックが荒んだ感覚だが、途中からテッキーな上モノのループが高揚感を打ち出して、暗いミステリアスな空気の中から色めく艶やかさにしっとり。そしてやはり何と言っても素晴らしいのはPowderによる"Cat Slave (Powder Remix)"で、軽く疾走するビート感に均しつつ繊細でヒプノティックなシンセのシーケンスを組み合わせて、モダンな感覚に研ぎ上げつつ果ての見えない地平線まで永遠を走り続けるようなミニマルな持続感で、心地好い浮遊感とソフトなサイケデリック感によって睡眠を誘うようだ。そしてESP Instituteなどでも活躍するMr. Hoによる"Two Policemen (Mr. Ho Snake Cop Mix)"、こちらはより無機質で金属的なリズムマシンが淡々と冷えたビートを刻みつつ、快楽的なアシッドにダブ処理も加えてより快楽性を極めたエレクトロで、オリジナルよりも壮大な展開でフロア受けしそうである。どれも疾走するのではなく深みや持続性によってしっかりと耳を惹きつけられる作風で、それぞれのアーティストの個性も打ち出されており、デビューEPながらも今後に期待させられる。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Russ Gabriel - The Controller (FireScope:FS017)
Russ Gabriel - The Controller
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かつてWarp Recordsが90年代前半に提唱した「Artificial Intelligence」というベッドルームのアンビエントとSF的世界観を持ったテクノがあり、そのシリーズにも参戦しつつ自らはB12やRedcellといった複数の名義で秘密めいた活動を行っていたが、ある時を堺に姿を消し存在自体も忘れられつつあった。がそのB12の二人の内の一人、Steve Rutterは2016年頃に突如としてB12 Records傘下にFireScope Recordsを立ち上げ、Rutter一人でのB12名義、またはSteve Rutterソロとしても作品をリリースし今再度あの時のインテリジェンスなテクノを創造している。それだけでなくFireScopeというレーベル自体がJohn ShimaやDerek Carrといったデトロイト・フォロワー的な存在の作品もリリースしており、そんな活動を見ればレーベルがデトロイト・テクノと共鳴しているのは明白だ。となれば本作を手掛けた(やはりデトロイト・テクノから影響を受けている)Russ Gabrielが同レーベルからリリースされるのも至極納得であり、AIシリーズの延長線上にあるシリアスなテクノを披露している。微かに聞こえるミステリアスなパッドとコズミックなシンセのラインで始まる"Controller"、キックレスな構成も相まってアンビエント感覚もありつつ宇宙を浮遊する無重力感が心地好く、叙情的なシンセが壮大な風景を描き出す。"Drimmits"ではカチッとしたリズムも入り揺らめくようなベースラインとテッキーな上モノがロマンティックに響き、古典的なテック・ハウスに属すような如何にもデトロイト・フォロワー的な作風で、目新しは一切ないもののだからこそ逆に安心して聞ける印象だ。"The Way To Go"はシンセの使い方がファンキーでややFabrice Ligを思い起こさせ、すっきり切れのあるリズム感も相まって軽やかに跳ねるUKからデトロイトへの回答的な作風。そして安っぽいリズムマシンの響きがローファイなシカゴ・ハウスを匂わせる"Nova Deep"、ほぼ骨組みだけの構成にぼんやりとしたパッドやコズミックなシンセを重ねて内なる精神世界への旅へ誘うイマジネーションを膨らませる。現在のダンス・ミュージックの流れに乗る事もなく、またクラブで派手に映えるような作風でもなく、我が道を行くインテリジェンスでディープなテクノはいぶし銀的な味わいだ。



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| TECHNO14 | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Planetary Assault Systems - Straight Shooting (Mote-Evolver:MOTE055)
Planetary Assault Systems - Straight Shooting
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L.B. Dub CorpやThe 7th Plainといった変名でも活動するUKテクノの重鎮であるLuke Slater、しかしその音楽性が最も輝くのは過去から今に至るまでPlanetary Assault Systems名義であると筆者は感じており、ここで聞けるハードで機能的なフロア志向のテクノは、長い時を経て過去の洗練される前の荒々しさに現在の磨かれた機能性が融和し完成形を迎えているように思われる。そう言えばジャケットの過去のアルバムを思い起こさせるデザインでもあったりするが、実際に冒頭のざらついたノイズが吹き荒れる中に低音の冷えたキックが続く"Beam Riders"では上辺には電子音のループが覚醒的に持続し、単調に聞こえつつ上手くパンで音を散らしたりして微細な変化を付けるスタイルは、まるで往年のJeff Millsのスタイルを思わせる。決してハードな重厚感だけではなく、"Born Anchors"では弾性のあるリズムと膨らんだ電子音のシーケンスで疾走感を打ち出し、切れのあるパーカッションも抜き差ししながらミニマルでファンキーな機能性に特化したテクノとなっており、パーティーのある瞬間の爆弾的な作用としてではなく長い一夜の一部となるような曲もある。ざらついたハイハットの生々しさと硬く引き締まったキックが重圧を生む"Humans Use Concrete"はシーケンスが催眠性を帯びながらも暴力的なハードミニマルといった印象で、これが昔のアルバムに入っていたとしても全く違和感が無いように良くも悪くも昔からP.A.Sは変わらないなと思う点も。特に印象的な曲はボーカル・サンプルを用いてファンキーさを打ち出した"Give It Up"で、跳ねるパーカッシヴなリズム感に電子音が左右にパンしながらホットなシーケンスとなり、途中からは金属が擦れるようなノイズが混じってきて神経に深く刺さるような刺激的的な展開が待ち受けている。尚、配信のみで20年前の曲を編集した"Screen 2018 Re-edit"が収録されているが、鈍いキックと暗い展開のホラー的なハードテクノだった原曲が、ここではキックはかっちり硬くなり全体が引き締められながらエネルギーが溢れ出すような骨太ハードテクノへと生まれ変わり、こうして聴き比べてみるとハードテクノも時代と共に洗練や機能性に磨きを掛けて進化しているのだ。



Check Luke Slater
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Booshank - Operating With A Blown Mind (Butter Sessions:BSR023)
Booshank - Operating With A Blown Mind
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オーストラリアはメルボンを拠点として活動するPaul GrahamことBooshank、まだこの名義では本作で3作目と決してアーティストとしてベテランではなく初々しさが残るものの、過去にはFirecracker傘下のUnthankからロウな響きとアシッディーな音楽性による快楽的なテクノをリリースしていたりと、なかなかに新鮮なエネルギーと強い個性を放っている。そしてこの最新作も大きな変化があるわけではないが、曲毎にアシッド〜アンビエント〜ディープといった豊かな性質を持たせて耳を惹き付けるが、また今では世界的評価を獲得したGonnoが素晴らしいリミックスを提供している点にも注目だ。9分にも及ぶ"F.T.H."がリードトラック的だろうか、ロウで切れ味のある4つ打ちのリズムに覚醒感のあるアシッド風なシーケンスと滑らかなビート感を生んでいるが、そこにアンビエント的でもありメランコリーさもある艷やかなシンセのメロディーがうっとりとした情感に包んでいく。中盤以降には潰れたようなスネアも強くなり徐々にビルドアップしていく持続性の強い曲で、そんな流れにおいてシンセのメロディーに陶酔させられながら深みにハマっていく。そんなシンセの陶酔感を前面に出したのが"Andys"でこれはビートレスなアンビエント・スタイルで、金属的な電子音を背景にダビーな音響やぼんやりとした電子音をセッション的に構成して、ただただ意味もなく夢想空間が広がるベッドルーム・ミュージックだ。一方でハウスの弾力のある跳ねたグルーヴ感にメランコリーなピアノコードを重ねた"Come On Honey"は、ラフな音質のリズムも肉感的でライブ・フィーリング溢れるシンセの聞かせ方など、EPの中で最も熱狂的なクラブのグルーヴ感に満ちている。がそれ以上に驚かされたのはGonnoによって新たに生まれ変わった"Andys (Gonno Remix)"で、テクノからアシッドにバレアリックやブレイク・ビーツと何でも上手く用いる彼がここではそれらを一纏めに、骨太でゴリゴリとした荒々しいブレイク・ビーツを下地にしながら控えめにトリッピーなアシッド・ベースも導入しながら、叙情的な上モノを微かに被せながらエモーショナル性も打ち出した攻撃的なレイヴ・トラックへとGonnoという音楽性に塗り替えている。太く脈動するグルーヴ感による攻撃的な勢い、アシッドの快楽性と完全にフロアを狂乱へと突入させるピークタイム仕様な曲調で、原曲からこんなリミックスを想像出来ない上にダンス・トラックとしてしっかりと盛り上がれる曲になってしまうのだから、Gonnoのアイデアとフロアを掴む感覚には感嘆せずにはいられない。そのような内容なので、本EPはアンビエントからダンスまで上手く収録されているナイスな一枚。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Martin Buttrich - Northeast / Southwest (Planet E:PLE65396-6)
Martin Buttrich - Northeast Southwest
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過去にはPoker FlatやCocoonといった人気レーベルから覚醒感あるテック・ハウスをリリースし、またLoco Diceと共に自身ではDesolatを主宰するMartin Buttrich。そんな彼が注目を集めるきっかけになったのは2006年にPlanet Eからリリースした『Full Clip / Programmer』(過去レビュー)であるのは間違いなく、妖艶でトランシーな上モノを用いたディープかつミニマルなテクノは正にPlanet Eの音楽性そのものだった。それがCarl Craigに気に入られたのだろうか同レーベルから何枚かのEPはリリースしたものの、本作では11年ぶりのPlanet Eへの帰還となる新作だ。良い意味で過去に同レーベルから出した作品と大きな変化はなく、また初めて聞かされたらC2の新作と勘違いする可能性もある位に、実にこれがPlanet Eらしいテクノで期待に応えてくれた。"Northeast"はシャッフルする切れのあるハイハットによって疾走するビート感を生み出し、トランシーなシンセのリフを執拗に繰り返しながらその下では動きの多いベースラインが躍動し、じわじわと高揚へと上り詰めていく持続感によって長い恍惚状態を誘う壮大なテック・ハウス仕様。深い闇が広がる深遠さ、または逆に広大な宇宙空間が眼前に広がる荘厳な世界観で、フロアで少しずつ盛り上がっていく機能性を磨きながらもデトロイトのエモーショナル性も兼ね備えたButtrichらしい一曲だ。対して"Southwest"はしっかり重心の低いリズムとカラコロとしたパーカッシヴなリズムが軸になっているが、隙間が多い構成の中にヒプノティックで繊細な電子音をループさせてミニマル感を持たせている。途中からやや動きの多い派手なシンセのメロディーが出てくる辺りは余計だったと思うが、こちらもじわじわとビルドアップするスタイルで、テクノだけでなくプログレッシヴ・ハウスにも合わせやすいだろう。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Dan Curtin - The Lush Network (Dolly Dubs:DOLLYDUBS 007)
Dan Curtin - The Lush Network
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デトロイト出身ではないもののデトロイト・テクノに多大なる影響を受けて、デトロイト・テクノのソウルを継承するオハイオ州クリーブランド出身のDan Curtin。USよりは特にヨーロッパのレーベルにおいて頭角を現し、Peacefrog RecordsやMobileeを含む多くのレーベルから今も尚新作をリリースする等、ベテラン勢の中では数少ない音楽制作を続けるアーティストだ。新作はSteffiが主宰するDolly傘下のDolly Dubsからで、レーベル自体がデトロイト・テクノのエモーショナル性とブレイク・ビーツを軸にしたローファイなテクノを中心にしている事もあり、その意味ではCurtinの音楽性と共振するものがあるからこそこのレーベルに抜擢されたのだろう。"Flight Lush"は特に叙情的なテクノで、幻想的な霧の中から視界が開けていくような美しいパッドで開始し、小刻みで軽快なブロークン・ビーツ風のリズムが靭やかに波打ち、優しく温かい太陽の日が射すようなシンセのメロディーに包まれて、昼下がりは午後三時の白昼夢に溺れるテクノは底抜けに朗らかだ。一方"It's What You Wanted"は激しいパーカッションが乱れ打つ肉体性溢れるグルーヴ感のテクノで、やや拍子のずれたビート感とレイヴ調のエグいシンセ音を前面に出して、一見陽気な雰囲気ながらもどこか悪っぽく粗暴な雰囲気もあり攻撃的な曲だ。そして4つ打ちに収束する"Perfume And Cigarettes"はフラットなパッドの伸びとサックス調のシンセがファンキーさを生むデトロイト・テクノとしての要素を持っており、"The Fundamental Mind"では腰を揺さぶるしなやかなブレイク・ビーツに催眠的なシンセのループが微睡むように合わせられ、ぐっと内面へと潜っていくようなディープな性質がある。ベテランだけだって作品の安定度は常にあったものの、本作はその中では頭一つ抜けてデトロイト・テクノらしさが強くエモーショナル性とダンス性が調和した見事なEPだ。



Check Dan Curtin
| TECHNO14 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Klauss & Craig - DJ Deep & Traumer Remixes (Planet E:PLE65395-6)
Klauss & Craig - DJ Deep & Traumer Remixes
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2018年の中頃に久しぶりの新作を発表したCarl Craig、それはアルゼンチンの電子音楽グループであるKlaussとのセッション作『Momentum』(過去レビュー)で、近年再燃しているモジュラーシンセに興味を持ったCraigがそれを用いて重厚感溢れるサイケデリックなテクノを制作した。ここで紹介する本作はそのリミックス盤となるが、手掛けているのはかつてDeeply Rooted House、現在はそれがテクノ化したDeeply Rootedを運営するDJ Deepと、自身でGETTRAUMを主宰しつつDJ Deepとも定期的にコラボしているRoman Poncet aka Traumerの二人。3曲収録なのものの全て同じ曲を同じアーティストがリミックスしている事もありインパクトとしてはやや物足りなさは拭えないが、実際に曲を聞いてみれば現在は硬派なテクノへと傾倒している彼等の手腕が発揮されて、原曲よりもフロアでの効果や機能性に磨きを掛けた内容に一安心だ。3曲のリミックスに共通するのはどれもブレイク・ビーツである事でデトロイト・テクノらしさは特に感じられず、彼等の硬い響きを打ち出したDJツール向けとしての機能に絞られ、その意味では原曲に束縛されず自分達らしさをそのまま表現している。ざっくりと金属的な鈍い響きのブレイク・ビーツに揺さぶられる"Repeat After Me (DJ Deep & Traumer - Free Your Mind)"は、やはり硬質で冷えた響きが如何にもベルリン的で無駄をこそぎ落としながらグルーヴ重視だが、中盤から線の細いコズミックなシンセのラインが浮かび上がる瞬間もあり、冷たいだけでなくエモーショナルに転換する場面はパーティーでも盛り上がりそうな展開を設けている。より切れ味鋭く跳ねたグルーヴ感を強調した"Repeat After Me (DJ Deep & Traumer - Free Your Soul)"もやはり無駄がなくスカスカな構成だが、こちらは重いベースラインが躍動しつつ叙情的なパッドと繊細な電子音が絡み合いながら、前述のリミックスよりはディープで艷やかな情緒によって包んでいく。そしてTraumer単独による"Repeat After Me (Traumer - Reduced Mind)"、こちらはより繊細でスムースなビートや電子音を細やかに配置した先の細さが強調されたリミックスで、前の2つのリミックスが上げるダンス仕様なのに対しこちらはクールなミニマルで沼へと嵌めていくタイプだろう。どれも原曲の重厚感満ちたSF的な雰囲気を残さずに、徹底的に機能性を特化させたリミックスで、これはこれで潔いお仕事だ。



Check Carl Craig
| TECHNO14 | 14:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hoshina Anniversary - Zangai EP (Musar Recordings:MUSAR007)
Hoshina Anniversary - Zangai EP
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レコード屋でHoshina Anniversaryという奇妙なアーティスト名のEPが並んでおり、興味本位で試聴をしてみたところエクスペリメンタルな雰囲気もある独特なテクノに魅了され、購入を決断したのが本作。聞いた事のないアーティストのそのEPのスリーブには保科記念日とデカく書いてあり、どうやら2010年頃から配信をベースに制作活動をしている日本のアーティストで、突然現れた新人ではないようだ。本作前にはYoung Marco主宰のSafe Tripからも奇妙なエレクトロニック・サウンドの『Hakkenden』をリリースしており、これらの物理メディアによる作品によって注目を集めるに違いない。日本語を用いた各曲には本人の説明ではそれぞれにコンセプトがあるそうで、例えば"Zangai"は織田信長の主要な城の一つである 『安土城』に焦点を当てている。トラック自体はアシッドの毒々しいシーケンスを導入しながらもジャズ要素のあるピアノのコードが優美さを伴っているが、しかし金属的なクラッシュする打撃音や機械的なリズムが荒々しいグルーヴを生み出しており、フロアを濁流で飲み込むようなピークタイム仕様なテクノだ。"Tenjin"も鈍い金属的なパーカッションと太いキックが軽やかに、しかし骨太な4つ打ちグルーヴを刻み、そこに不思議な電子音のループとピアノらしき鍵盤のループが絡み合うようにして快楽的な効果を付け足していくが、終始暗い世界観と刺々しい音響は冷え切っており廃れたようなテクノは刺激的である。ざらついたハイハットのリズムも相まって疾走感を獲得している"Tenjou"は、慎ましいジャズ・ピアノのコードが情緒を醸す中にヒプノティックなシンセが暴れるように躍動するローファイ感ある曲で、ロウなエレクトロ・ビートとジャズの雰囲気が一つになったユニークさが特徴だ。またサイケデリックなテクノを得意とするRicardo Tobarがリミックスした"Zangai (Ricardo Tobar Remix)"は原曲の雰囲気を壊さずに退廃した荒れたグルーヴを活かし、そして鈍くうねるベース・サウンドや不気味でサイケデリックなシンセによってより闇の中を突き抜けるミニマルな機能性を増したテクノへと塗り替えており、これぞTobarらしい作風だ。今まで配信中心だった為になかなか日の目を見る事が無かったHoshina Anniversaryだが、曲自体は面白くありながらテクノとしての機能性がある事は間違いなく、本作を機に注目を集めるのではないかと期待十分な一枚。



Check Hoshina Anniversary
| TECHNO14 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |