Nightmares On Wax - Back To Nature (Ricardo Villalobos Remixes) (Warp Records:WAP432)
Nightmares On Wax - Back To Nature (Ricardo Villalobos Remixes)
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30年近くに渡りダウンテンポの探求を行うGeorge EvelynことNightmares On Wax、そして現在のミニマル・ハウスへと道を開拓してきた奇才・Ricardo Villalobos、そんな二人の邂逅が再び。2014年にも1990年作である初期の名作をVillalobosとMax Loderbauerがリミックスを施した『Aftermath (Ricardo Villalobos & Max Loderbauer Remixes)』(過去レビュー)をリリースし、滑り気を帯びた不気味な迷宮的ミニマル・ハウスへと上塗りしオリジナルからある意味ではVillalobosの新作と呼べるまでの変化を披露し、流石の手腕を発揮していたのも懐かしい。今回はVillalobos単独でのリミックスとなるが、しかしその手腕に陰りは全くなく流石のミニマル・ハウスの求道者たる才能を発揮したリミックスで、今回も殆ど新作と呼べるまでの変貌を遂げている。オリジナルの"Back To Nature"は優雅なストリングスが彩りねっとりしたレゲエ調のアフタービートとソウルフルな歌を活かした甘く切ないダウンテンポだったが、2つのリミックスは完全にフロアを深い沼に嵌めていく呪術的なミニマル・ハウスで、催眠性の強い魔力を発している。"Lobos On Wax House Mix"は比較的一般的なミニマル・ハウスのスタイルと呼んでいいだろう、湿り気を帯びながらもカチッと芯のあるキックと不気味なボイス・サンプルのループで始まるが、無駄な音を削ぎ落としてスカスカな構造が如何にも彼らしい。そんなリズムが削り出されたトラックにオリジナルにあったストリングスとエレピのコードが交互に現れるも、余り感情性を打ち出さずに淡々としたミニマルなリズムが引っ張っていく催眠的な流れで、優美さはありながらも非常に機能性に特化されたクールなミニマル・ハウスだ。そしてVillalobosnの異才が際立つのが"Ricardo Villalobos Back To Earth Mix"の方で、生っぽさを増したキックやスネアと崩れてつんのめったリズムによって生臭さを増してずぶずぶ泥沼へと沈んでいくようなビートを軸に、エレピやストリングスは抑制され代わりにくぐもって不明瞭な呟きやポコポコした民族的なパーカッションと怪しい電子音を繊細に織り交ぜた土臭い音響が生まれ、ねっとりずぶずぶと足を取られる。途中からはリズムは整った4つ打ちのミニマル・ハウスへと変化するが、A面のリミックスよりは太さよりは繊細なグルーヴ感が打ち出され、Villalobosらしい妙技が感じられる。という事でこのリミックスも完全にVillalobos節全開な、つまりはVillalobosのほぼ新作みたいなもので、ミニマル好きは必聴。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
2020/1/11 Moodymann Japan Tour 2020 @ Contact
自らを不機嫌な男を名乗りながらも近年はサービス精神旺盛に客を盛り上がらせるDJを行うデトロイトのMoodymann。少々前にも来たような印象でまた来日かと思っていたが、前回の来日が2016年7月だったので実に3年半ぶりとその人気に反比例してDJを体験出来る機会は少なく、リリースされる音源同様に彼のDJセットは貴重な音楽体験だ。今回そんな彼の出演に伴い日本からはマシン・ファンクを奏でるSauce81のライブや、またポップとアンダーグラウンドを繋ぐ若手DJのYosa、ヒップ・ホップ方面からはDJ Koco a.k.a Shimokitaらが参加と、ブラック・ミュージックで包囲するパーティーでMoodymannを迎える準備は万全だ。
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| EVENT REPORT7 | 14:30 | comments(0) | - | |
Jung Deejay - Wave Idea (Lillerne Tape Club:LL110)
Jung Deejay - Wave Idea

デジタル化が進み過ぎた反動なのか、近年ヴァイナルや更にはカセットテープといった手間の掛かる聞き方が必要なメディアが一部の若者の中で脚光を浴びているようだが、それを体験した事のない世代には新鮮さがあるだろうしレトロな雰囲気が逆に良いのだろう。対してリリースするレーベル側もテープというフォーマットにこだわって運営するのも珍しくなく、そこにBandcamp上から物理メディアを購入すればデジタル音源もダウンロード可能な販売方法を活かして、テープの再燃を後押ししている。シカゴのLillerne Tape Clubは2007年発足時からテープでのリリースにこだわっているレーベルで、その音楽性はテクノやハウスだけでなくドローンやロックにシンセ・ポップと特に制約が無いが、近年は特にアンビエントが中心となっているようだ。そんな中たまたま聞いていたら気になったのがJung Deejayによるこのデビュー作で、アーティストについては全く情報が無いのだが、ローファイ感を打ち出した音質に親近感を覚えつつバレアリックな雰囲気が清々しく耳に響いてきた。ドタドタとしたタムのリズムから始まる"Miyu Pattern"、シカゴ・ハウス風な簡素なビートがカタカタとリズムを刻み、透明感のあるパッドが浮かび上がってくると実に清らかな空気に満たされたバレアリック性が広がっていく。やはりローファイで機械的ながらもゆったりとしたダウンテンポのリズム、そして美しく壮大なパッドと牧歌的なピアノが感動的な"Nico 3.0"は、厳寒の冬を越した後にやってくる春の息吹との出会いかのようだ。ややリズムは激しくブレイク・ビーツ風ながらも攻撃的というよりは爽快感がある"Yumi Pattern"も、すっと薄く綺麗なパッドが繰り返し浮かんできて、朝方のフロアで体験したら至福に満たされるに違いない。そして殆どリズムの入らず抽象的に綺麗なシンセが揺らめき瞑想じみたアンビエンスが続く"Tourisme Montreal"から、最後は金属的な打撃のするドラムマシンや強いシンセベースがねっとりとしたマシン・ファンクとなる"Wave Idea"で幕を閉じる。曲によってダンスからリスニングまであるが、作品内にある美しいメロディーの統一感が穏やかに耳へと響いてきて、大自然の中で太陽の光を全身で浴びるような温もりに心もほっこり。



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| TECHNO14 | 16:00 | comments(0) | - | |
Jack Burton - Lake Monger (Analogue Attic:AAR015)
Jack Burton - Lake Monger
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ここ数年、ダンスミュージックにおいてオーストラリア、特にメルボルンからの新興勢力の台頭は著しいが、アンビエントとダンスを跨ぐAlbrecht La'Brooyや異端なダンス性を持つSleep D等がカタログに名を連ねるAnalogue Atticもメルボルンを拠点にしており、アンビエントやバレアリックの観点から注目しても損はしないレーベルだ。そんなレーベルから試聴したところ耳を惹かれ即座に購入したのが本作で、芸術大学作曲科に所属するJack Burtonが手掛ける初の作品だ。レーベルの音楽性に即しながらもよりアンビエントやエレクトロニカへと傾倒しており、もはやダンスフロアを意識させない瞑想じみた深い精神世界を旅する音楽はベッドルーム向けだろう。霞んだようなシューゲイザー風の電子音が浮かび上がり、ノイズ風なSEも加わりひたすら不明瞭ながらも叙情的なコード展開を繰り返す"Opus"で幕を開けるが、ゆったりとした流れながらも空間を埋め尽くす電子音によって濃厚なアンビエンスに満たされる。"Cumulus Revisited"も途切れる事のない持続音が中心だが、牧歌的かつ生音にも近い柔らかく透明感のあるシンセは浮遊感もあり、グリッチ風な旋律が軽くリズムを生んで2000年代のエレクトロニカを思い起こさせる。鳥の囀りのような長閑な電子音は牧歌的ながらも、刺激的に振動する持続音がひりつく緊張感を生む"Aquarius"は、神々しい音響や重厚な低音がスピリチュアルな宗教性を匂わせ祈りを捧げるような神聖な世界観が広がっている。圧巻は12分にも及ぶ三部作の"Lake Monger Pt. I. II & III"で、揺らめく水面から極彩色な光が乱反射するようなシンセのうねりがビート感を生む前半、徐々にエネルギーを増しうねりが強くなりながらも弾けて静謐な時間が過ぎる中盤、大空に広がるようなシンセによって壮大かつドラマティックに展開する後半と、パートを分ける事で起承転結な流れが生まれて大きなストーリーのようだ。グリッチやノイズ、シューゲイズ風な音響を用いて現在のアンビエントで表現したら…という音楽性だろうか、清々しくピュアな空気が満ちる純朴なアンビエントは一寸の闇もなく、心身が洗われる癒やしの音。まだデビューしたばかりで才能は判断するには時期早々だが、アンビエントが再燃する今という時代にぴったりとはまった一枚だ。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Indigo Aera - Terraformer EP (Indigo Aera:AERA024)
Indigo Aera - Terraformer EP

Stephen BrownやLouis Haimanといったデトロイト・フォロワー系を擁し、またはKirk DegiorgioやVince Watsonの失われたアーカイブを発掘するなど、オランダからデトロイト・テクノのエモーショナル性を咀嚼しモダンなテクノとして昇華するIndigo Aera。そのレーベルを主宰するのがMaarten MittendorffとJasper Wolffの二人で、まだ2011年に設立された比較的新興レーベルながらも確かな審美眼を持って良質なテクノを世に送り出している。当然二人もアーティストとしてレーベルからEPをリリースはしていたが、この度そのレーベル名と同じ名を冠したユニットとして初のEPが2019年5月にリリースされた。元々二人の名前で制作を行っていたからこのレーベル名を冠したユニットに変化したところで大きく何かが変わるわけでもないと思っていたのだが、蓋を開けてみれば以前のソウルを呼び覚ますメロディ重視な方向から、そういった要素は幾分か抑制されて反復を重視し機能性を磨き上げたモダン・テクノへと変化していた。レーベルインフォに依れば深夜のスタジオセッションで生まれた曲群だそうで、その意味では真夜中のダンスフロアをより強くイメージしたのだろうか。ドムドムしたキックと軽快なタムのリズムが疾走る"Aeris"からしてエモーショナルはメロディーは聞こえず、寒々しい音響にフィルター処理によって変化が付けられて、金属的なSEのクールさもあって終始無感情に疾走し続けるツールと化したテクノだ。"Terraformer"ではソウルというよりは快楽的なシンセのリフが闇の中で映えているが、疾走しつつも膨らみのあるリズムと破壊的な打撃音は攻撃的で、やはり狂騒の中にあるダンスフロアで盛り上がるであろう強迫的なエネルギーが溢れている。そんな中で"Tabula Rasa"はデトロイトよろしくなシンセパッドのリフを反復させ、アンビエントな電子音も織り交ぜながら、キレのあるグルーヴ感で軽快かつエモーショナルに展開するテクノでこれぞ彼等のトレードマークと言える音楽性を表現している。そして"Flux"、湿り気のあるタムが連打されるリズムが疾走しつつ煙たく不鮮明な音響のシンセパッドに覆われる事で深く潜っていくディープさがあり、落ち着いた様相もありながら暗い深部を進む持続感のあるテクノは機能的だ。以前のデトロイトのマシンソウルを継ぐ音楽性から多少ハードかつディープなグルーヴ感重視へと変化があるものの、スタイリッシュなシンセの響きは変わらず、レーベル名を冠したユニットとしてそのレーベルの方向性を示唆するような一枚だ。



Check Jasper Wolff & Maarten Mittendorff
| TECHNO14 | 21:00 | comments(0) | - | |