2024.01.21 Sunday
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2018年以降、毎年3〜5枚程のEPを様々なレーベルからリリースし量産体制を継続しているデトロイト・ハウスのAndresだが、それも作品の質がどれも高水準だからこそ引く手あまたなのも納得だ。デトロイトのヒップ・ホップ集団であるSlum Villageの元メンバー…という肩書きは最早不要だろうが、しかしそういった経歴は実際にハウスとヒップ・ホップをクロスオーバーした音楽性に現れており、現在のデトロイトを代表するアーティストの一人と言っても過言ではない。2023年に複数枚リリースされた中で本作はデトロイトのレーベルであるBerettamusicからリリースされたものだが、これがハウス・ミュージックを基調としている事もあるが2023年作の中では筆者の一番のお気に入りである。タイトル曲である"Back In My Space"はざっくりとしたドラムマシンがしっとり滑らかな4つ打ちを刻み生温かいベースラインと共になって心地好いミドルテンポのハウスビートを生み、そこに優美なエレピを基調としたメローな上モノも重ねて執拗にループで構成する3分半弱の曲なのだが、シンプルが故に耳に残るキャッチなメロディーが引き立つジャジーなビートダウン・ハウスだろう。"Don't Be Fooled"はもう少しテンポを上げて浮遊感も得つつスモーキーなハウスビートが爽快で、そこに流麗なストリングスやらソウルフルな歌が入ってくるディープ・ハウスなのだが、これはAndresお得意のサンプリングでSwing Out Sisterの"Twilight World"が用いられている。リズムはパーカッシヴに組み立てられているが、元の曲のストリングスを活かしてディスコ風な綺羅びやかさも引き出して、ミラーボールから光が散乱するようなパーティー感覚溢れる賑やかなハウスも素晴らしい。またレーベル繋がりでデトロイトのAirport Societyがリミックスした"Back In My Space (Airport Society Remix)"は原曲よりもアップテンポに力強いビート感へと塗り替えられてキレを増し、メロウさよりもDJツールとしての機能性に磨きを掛けており、こちらの方がパーティーのピークタイムでも映えるだろう。そして最後の"Back To Nature"で再度テンポを落としてカラッとしたリズムがブギーな感覚を打ち出して、低音がささやかに主張するベースラインを軸にしてビート中心で組み立て、淡々とした雰囲気ながらもファンキー性を発揮している。僅か4曲、しかしどれもAndresらしいサンプリングによるファンキーでメロウなハウスであり、一聴して耳を引き付ける強い魅力を持っており流石の存在感だ。
Check Andres