2014.12.21 Sunday
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移り変わる時代と共に、そしてアーティストの成熟と共に変わっていく音楽性は当たり前の事であるが、それが新たなファンを獲得する一方でかつてのファンを失う事は表裏一体だ。特にアンダーグラウンドから生まれたアーティストが、余りにも絶大な人気を獲得する事で、音楽性もメジャーなものと変化していき既にパーティーピープルの心からはかけ離れてしまっている…それはつまりUnderworldの事だ。そんな人にとって恐らく最も今でも愛すべきアルバムこそが、このDarren Emerson参加後の公式1stアルバムである「Dubnobasswithmyheadman」だろう。その当時流行っていたGuerilla RecordsやCowboy Recordsなどに代表されるプログレッシヴ・ハウス -レイヴ・シーンから生まれた欧州生まれのハウス- と呼ばれる音楽を元に、彼等自身のルーツでもあるニューウェーブ色を取り込んだこのアルバムからは、90年代前半というレイヴ・シーンの空気がはっきりと感じ取れる。その時代の空気が強過ぎるせいか確かに今聴けば多少の古臭さは否めないが、それを考慮しても余り有るプログレッシヴ・ハウスの魅力が本作には閉じ込めれている。深海にある暗いトンネルを潜行するようなダークなムード、色気さえも感じられるしっとりとしたメロディーから生まれる覚醒感、そしてクラブ由来のリズムから生まれるしなやかなグルーヴなど、現在のように妙にロック化せずに忠実にダンス・ミュージックとしての体系を守っている。そんな大名盤がリリース20周年を記念してデラックス・エディションとして復刻されたのだが、これがファンの食指を動かさずにはいられない内容となっている。オリジナル・アルバムのリマスター、初期作品のシングル集、リミックス集、初期の未発表音源、更には93年のスタジオリハーサルのライブ音源の計5枚組で、更には60Pにも及ぶ写真集も収録されており、正しく初期のUnderworldこそ全てというファンの為のような内容だ。オリジナル・アルバムの素晴らしさは言うまでもないが、特筆すべきはライブ音源だろうか。随分と妖艶なトランス感のあるシンセも導入されているのは、まだリハーサルだからだろうか、それともユニットとしても方向性が手探り状態なのかと感じられるが、インプロビゼーションも織り交ぜたライブは今のロック的ダイナミズムを取り入れたものとは異なりしっかりとクラブらしい雰囲気に染まっている。また初期の未発表音源も決してラフなデモ作品の状態ではなく、オリジナル曲として出来上がるまでの過程にある異なるバージョンとして楽しむ事が出来る水準にはなっており、決して小手先の仕事ではない。勿論昔からのファンにお薦めなのは当然として、初期の作品には余り馴染みのないリスナーも本作を聴けば、Underworldの今とは異なる魅力に出会える事だろう。
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