Trinidadian Deep - Dem Jump (Neroli:NERO 026)
Trinidadian Deep - Dem Jump

もしRon Trentに正統なる後継者がいるとしたら…それはTrinidadian Deepである事に異論を差し挟む者は少ないだろう。何と言ってもデビューは2006年にRon主宰のFuture Vision Recordsからと早くからその才能を買われ、その後もRonに負けないスピリチュアルかつソウルフルな、そして壮大なスケール感とディープな空間演出を伴うディープ・ハウスをリリースし、アーティストとしても着実な評価を獲得している。本作はイタリアのクロスーオーヴァー路線のNeroliからの新作で、同レーベルから続けてリリースされた"Deep Love EP"(過去レビュー)、"Sweetness You Bring"に続く恐らく3部作最後になると思われる。始まりの"Dem Jump"からして文句無しに素晴らしく、丸みのある柔らかなマリンバの音が軽快に響く中を爽やかなパーカッションが打ち乱れ、優雅なシンセの層が延びて行くボサノバとディープ・ハウスが邂逅したような曲で、この時点で青々とした空と草木が茂る大地が目の前に浮かび上がるようだ。"Eyes Closed"はよりディープ・ハウス的というか、大地を疾走するような土着的なビートに滴り落ちるピアノ・コードを絡めた美しくも爽快な曲で、昼間の野外パーティーにて燦々とした太陽の光を浴びながら聴いてもはまりそうだ。より特徴的なのは"Beyond Us"で、乾いたボンゴの複雑かつ躍動的なリズムから始まり、そして色彩豊かなシンセが滲み出すドリーミーなこの曲は、上品な甘さでとろけてしまいそうな程に官能的だ。ここに収録された全ての曲はディープ・ハウスとしての魅力を十分に内包し、しかし何処までも広がっていくようなような開放的な世界観は、既にRon Trentにも劣らない程に成熟している。新しい世代の到来を予感させるような、Trinidadian Deepの才能が発揮された一枚だ。



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Dazzle Drums - Rise From The Shadows (Green Parrot Recording:GPR022CD)
Dazzle Drums - Rise From The Shadows
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かつて日本にもあったハウス・ミュージック隆盛のムーブメントは、もはや時代遅れなのだろうか。否、現代においてもハウスをこよなく愛し、可能性を信じているアーティストがいる。特にNagiとKei SuganoによるDazzle Drumsは、今もなお毎月第2日曜にはサンデーアフタヌーンパーティーであるBlock Partyを継続して開催し、ハウス(だけではないが)の魅力を伝えるべく活動している。このアルバムはそんな彼等にとって活動10周年における初のアルバムとなるが、EPだけのリリースであった彼等の音楽性をより理解出来る作品だ。タイトルである"Rise From The Shadows"を勝手に解釈するのであれば、闇=ダンスフロアから生まれた根源的な音楽という事なのだろうか。実際にアルバムだからといってホームリスニング向けではなく、Dazzle Drumsがパーティーという現場で培ったDJ経験が如実に反映されたハウスが中心で、フロアで楽しむ事を前提としたダンス・ミュージックが満載だ。アルバムの冒頭はパーティーの始まりの落ち着いた雰囲気にぴったりな"If You Need Me"で始まるが、この曲からして繊細で華麗なピアノの旋律やストリングスを用いたソウルフルなハウスで、実にDazzle Drumsらしさが迫ってくる。続く"Cloud Of Dust (Demo)"では原始的なパーカッションと生々しいサウンドで真夜中へと雪崩れ込み、躍動的に舞い踊るピアノの旋律と覚醒感のあるパーカッションでドラマティックに展開する"Round Midnight (Late Night Mix Remaster)"で、いつしか気分はパーティーの真っ只中。アルバムは単にNYハウスの系譜だけでなく彼等が普段のパーティーでプログレッシヴな音楽性も持ち込むように、"Universal Rhythm (Album Version)"のようにトライバルなリズムに合わせてエグいトランシーな上モノが炸裂する曲もある。そしてアルバムの終盤は切ない感情が押し寄せるテック系の"Here Afte"、湿っぽい歌がしんみり感情に染み渡る日本語ハウスの"Silence"、そして最後を飾る"If We Could Fly (Original Mix 2)"のキックのないシネマティックな曲と、徐々に落ち着いた展開へと変遷し締めくくられる。まるでアルバムがパーティーの始まりから終わりを表現するように、やはりここにはパーティーの気分や空気が新鮮なままパッキングされているように思われる。流行とは無縁な彼等が信じるハウス・ミュージックを、信念に従い丁寧に表現したアルバムであり、パーティーの興奮や温かさが伝わってくるであろう。



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Various - Special Edition 03 (Balance Music:SE03)
Various - Special Edition 03

Ron TrentとChez Damierが立ち上げたPrescriptionとその傘下のBalanceは、ディープ・ハウスのレーベルとしては伝説と言っても過言でない存在だ。現在は二人は袂を分かちChezが新たに立ち上げたBalance Musicを運営しているが、そこから両レーベルの発足20年記念としてスペシャルエディションとなる本作がリリースされている。A面にはスイスのThe Missionなるユニットによる"Lavida (Life)"が収録されているが、これはChezとイタリアのDemetrio Gianniceがプロデュースだ。端正でパーカッシヴな4つ打ちにメロウなコード展開や郷愁を醸すホーンのソロプレイなどが伴い、丁寧に流れを展開する如何にもBalanceらしいUSディープ・ハウスになっており、Chezの甘くロマンティックな性質がさらりと表現されている。A面にはもう1曲、フランスの新鋭であるSiler & DimaとThomas Zanderによる"Inapropriate"が収録され、こちらはテックな上モノを反復させてややミニマルな機能性を打ち出したディープ・ハウスだが、スポークンワードを導入したりと仄かに黒っぽさも匂わせる。注目はB面の今尚パーティーでプレイされる事もあるクラシックである"Choice (Prescription Doctor's Dub Mix)"だろうか、Chez & Ronによる二人の才能が融け合い結実したディープ・ハウスだ。おおよそ20年前の名作がリマスターを施され復活したのだが、やはり古くとも良い作品は時間が経てども魅力を失う事はない。しっとりと弾ける4つ打ちとエレガントなシンセのリフ、ソウルフルなボーカルの組み合わせはハウス・ミュージックとして特段の個性を発揮している訳ではないが、しかし時代を越えて愛される曲と言うのは得てしてこのようなシンプルながらもエモーショナルな作品ではないだろうか、そう思わずにはいられない。スペシャルエディションという触れ込みに違えない良質なハウス・ミュージックが収録されており、文句無しの1枚だ。



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Brett Dancer - The Hybrid EP (NDATL Muzik:NDATL-011)
Brett Dancer - The Hybrid EP

デトロイトにてKai Alceが主宰するNDATL Muzikはデトロイトの才人らの秘蔵トラックなどもリリースするなど、デトロイトのカルトレーベル的な印象を受けるが、そのレーベルの新作はNYにてTrack Modeを主宰するBrett Dancerが担当している。そのTrack Modeはデトロイト〜シカゴの影響が色濃いUSハウスレーベルであり、例えばBrett自身もLarry Heard辺りにも通じるシルキーなディープ・ハウスを手掛けているので、NDATL Muzikとの相性は良いだろう。Brettはと言うと近年は作品のリリースは少なく地味な活動である事は否めないが、しかし本作に収録されている曲を聴けばその才能を感じ取れるはずだ。A面の"Hybrid"は穏やかで柔らかいキックの4つ打ちがスムースなグルーヴを生み、すっと浮かび上がる温かいパッドとコズミックなシンセのリフが落ち着いた包容力を持つディープ・ハウスで、軽快なビート感と相まって実に洗練された味わいを持っている。B面では幾分かアップテンポでエレクトロニックな質感を強調しながらも爽快なボーカルサンプルを取り入れた"Someone (Brett Dancer Dub)"、ラフな音質のリズムが攻撃的ながらもやはり薄く伸びる上モノに優雅な大人の要素を感じ取れる"Something"を収録しているが、基本的にはクラシカルな4つ打ちのディープ・ハウスの体裁を保っている。どれも今の時代を象徴する音ではなく、Track Modeを主宰するBrettという個性を表現する音であり、その意味では自身の音楽性に全くぶれがなくアーティストとして信頼出来るのだ。地味ではあるが淡白ではない、慎ましくソウルフルな感情を打ち出したディープ・ハウスは、時代に関係なく聴ける作品として素晴らしい。



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Herbert - Part Six (Accidental:AC79)
Herbert - Part Six
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近年は名義で実験的な「ONE」シリーズで注目を集めたMatthew Herbertだが、なんとHerbert名義の初期代表作である「Part」シリーズを18年ぶりに復活させた。95〜96年の間にデビューと共に「Part 1〜5」まで立て続けにリリースし、いわゆるミニマル・ハウスの先駆者的な存在として天才ぶりを発揮していたが、それ以降もジャンルにこだわる事なくジャズやポップなダウンテンポにコンセプト重視の電子音響、そして交響音楽のリミックスまで開拓の手を止める事はなかった。その一方で特に初期からのファンにとってはクラブ・ミュージックから乖離するHerbertに対し、もやもやを感じていた事は少なくないだろう。その意味ではこの「Part」シリーズの復活は、Herbertに対しクラブ・ミュージックを求める古くからのファンとポップな音を求める新しいファンの溝を埋める事を可能とする。事実"One Two Three"からして甘くも抑制のとれたボーカル、そしてエレクトロニカ的なシンセがポップな質感を感じさせるが、カチカチとした軽快な4つ打ちは正にDJが生み出すビートそのものだ。かつての「Part」シリーズと比較すれば硬質なビートやあそこまでの実験的なミニマル・ハウス性は弱まっているものの、リスニング色も伴うポップなセンスとのバランス感は窓口をより広げる事に成功している。より実験的な面が出ているのは"Manny"だろうか、ロールするようなビートと奇妙なボイスを執拗に反復させた点でミニマルな要素を披露しDJツール性が強く現れているが、それでもストイックというよりは音を遊戯のように用いている部分がHerbertのユーモアなのだ。裏面の"My DJ"や"Grab The Bottle"もかねてからのファンを満足させるであろう、特にメロディーよりも特徴的なリズムが体を揺らすであろうクラブ・トラックであり、しかもそれが単に機能的である以上に実験的で奇抜な鳴りがHerbertの音楽を特徴付けるのだ。この作品をHerbertの復活と呼ぶかどうかは人それぞれだと思うが、素直に好きだったHerbertが帰ってきたと当方は喜ぶ。



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Various - Jujiro EP (Rough House Rosie:RHR 006)
Various - Jujiro EP
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アンダーグラウンドなハウスを追いかけている人にとっては、ケルンのRough House Rosieは見逃す事は出来ない。2013年の初頭から始動したこのレーベルは、ケルンに活動の場所を置いてはいるが主宰者であるGeorge Beridzeがグルジア出身という事もあり、いわゆる近年評価を高めているロシアン・ディープ・ハウスの流れとして捉えるべきであろう。レーベル発足当初からGigi JikiaことHVLにShine Grooves、A5やGamayunなどロシア系の新興勢力を掘り起こす事に力を入れ、女優クララ・バウの顔をロゴマークにした印象的なアートワークも相まって、レーベルは注目を集めている。そんなレーベルの新作は日本人のアーティストに焦点を絞った「Jujiro」(サイレント・ムーヴィーである「十字路」を引用だそうな)で、テクノからブレイク・ビーツにビートダウンまで深く掘り下げるベテランの白石隆之(Takayuki Shiraishi)にEthereal SoundからもリリースするMiruga、そしてMitsuaki KomamuraやMahalらの作品を収録している。元々はレーベル側から白石隆之に強いオファーがあったそうで、最終的には新作ではなく2002年作の"Nightfall"を提供しているのだが、これが今聴いても全く古くない早過ぎたビートダウンかつディープ・ハウスとして素晴らしい。床を這いずり回る重心が低めのビートに、朧気に浮かび上がってくるゆらゆらしたサウンドが心地良い酩酊感を持続させ、どこか色褪せたようなぼんやりした景色を見せるのだ。決して激昂させるようなアッパーな音でもなく、多幸感に満ちた陽気な音でもなく、禅にも通じる求道的な音は和式のビートダウンだ。対してMirugaの"Meeting Of The Mind"は透明感溢れるパットが広がり、爽快なパーカッション使いや太いキックのおかげでテック・ハウスとしての印象が強く、広大な空へと飛び立つような開放感に満ちあふれている。またMitsuaki Komamuraはアシッドな音を用いながらも抑圧的にはならずに仄かな感情を込めたようなロウ・ハウス的な"Full Moon Hike"を、そしてMahalはデトロイト・テクノのエモーショナルな音をより柔軟かつしなやかなビートに乗せてモダンに仕上げた"Daydream Maze"を提供しているが、やはり派手になり過ぎずにどこか奥ゆかしいムードはレーベルの方向性に沿っているだろう。本作において日本のアーティストがフィーチャされた事は、結果的には和の侘び寂びの世界観がレーベルの音楽性と上手く適合し、レーベルの進む道をより明瞭化したのだ。

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Dark Science - Rain (Rejected:Rej032)
Dark Science - Rain
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近々7年ぶりとなるアルバムをリリースする予定であるオランダのテクノ貴公子・Joris Voornだが、その前にDark Science名義では10年ぶりとなる新作も要チェックだ。2012年の"Incident (Miyagi)"、2013年の"Ringo"とどちらもがJorisのメランコリーな音楽性へと大きく傾いた作品ではあったが、本作に於いては対照的にダンス・ミュージックとしての疾走する躍動感に重点を置いている。A面の"Rain"はシャキシャキしたざらつきのあるリズムに図太い4つ打ちのキックで始まりDJツール性を打ち出しているが、更にうっとりとする耽美なシンセのコード展開でムードを盛り上げ、そこにサックスのソロがジャジーな色気を付け足していくハウス・トラック。盛り上げ方を熟知したその上手い展開の作り方やメロディーセンスなど、トラック・メーカーとしての才能を十分に発揮したこの曲は、誰がどうプレイしようとダンス・フロアを賑わすだろう。B面の"Rust"もやはりキックに厚みがあり迫力は十分だが、アシッドにも似たレイヴ感が炸裂するベースラインの上をファンキーなボーカルサンプルが反復し、16符スネアロールのブレイクを用いて混迷にフロアを掻き混ぜるような狂ったような勢いがハイエナジーだ。ムーディーで色気のある"Rain"にしろレイヴ感溢れる"Rust"にしろ重圧感のあるハウス・グルーヴ感が常に走っており、この勢い良く突き抜けた2曲はパーティーで即戦力となる事は間違いないだろう。



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Mr Raoul K - Still Living In Slavery (Part Two) (Baobab Music:BBMLP 001CD)
Mr Raoul K - Still Living In Slavery (Part Two)
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コートジボワール出身、アフリカ系アーティストのMr Raoul KはMule MusiqやStill Musicなどからアルバムをリリースしつつも、自身のBaobab Musicには多くのEPを残している。ドイツで活動を続ける事とアフリカ出身である事の両者の影響は、幻惑的なハウス・グルーヴと原始的なパーカッションを組み合わせた有機的なディープ・ハウスとして表れており、アーティストとしてのオリジナリティーを確立させている。本作は遂に自身のレーベルからは初となるアルバムの「Still Living In Slavery」からのシングルカットであるが、"Intelligent Revolution"からしてより独創性を高めている。13分にも及ぶ楽曲の前半はキックレスな状態で尺八風な音色やパーカッションなど、アフリカの伝統的な楽器と電子音のプログラミングを用いながら宗教的な瞑想を誘いつつも、途中からキックが入りだせば原始的なパーカッションも相まって肉体的な躍動感を強めていく。俗的な夜っぽさはありながらも都会的な祝祭と言うよりは大自然の中の夜の祭りっぽい雰囲気で満たされていて、何だか土の香りさえするようだ。裏面にはリミックスが2曲収録されているが、何といってもお勧めなのはRon Trentがリミックスを行った"Sene Kela (Ron Trent Remix)"だろう。一聴して耳に残る祝祭感溢れるボーカル、爽やかに吹き抜けるパーカッション、そして滴り落ちるような美しいラインを描くシンセなど完全にRon Trent色に染め上げられており、流石に同じアフリカンな音楽性を得意とするMr Raoul Kとの相性は抜群なのだろう。土着的なパーカッションの心地良さと共に、壮大なサバンナの上に広がる空を喚起させるような残響による空間処理が正にRon Trentによるディープ・ハウスといった内容で、これは忘れる事の出来ない1曲になるであろう。そしてSimbadによる"Dounougnan Magni (Chapitre 3 - Simbad Suite Mix)"も素晴らしく、呪術的な怪しいボーカルはそのままにエレクトロニックな反復と奥深い音響を活かしたディープかつミニマルなトラックへ生まれ変わり、パーティーのピークタイムで爆発を誘発するような壮大な曲となっている。



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YOSA - Magic Hour (ANDY:ANDY001)
Yosa - Magic Hour
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2008年、19歳にしてヨーロッパのレーベルからデビューした輝かしい経歴を持つYOSA。今までにDrumpoet CommunityやDirt Crew Recordings、そしてClassic Music Companyなどから作品をリリースするなど、クラブで聴く事を前提としたフロア寄りのハウス/テクノを手掛け、日本の若手アーティストの中でも特に注目を集めていた。そして満を持してのアルバムが遂に完成したのだが、ここでは今までのフロアを意識した音楽性から一転し、オーバーグラウンドにも遡及するような音楽性を開花させている。アルバムはハウス・ミュージックをベースにした作風だが、ダンス・ミュージックとしての要素を保ちながらもアルバムとしてクラブに依存しない感情や色彩が豊かな内容で、枠を打破していくような強い意思が感じられる。ドアを開く音と共に外へ出掛けて行く風景を描くイントロから始まり、ピアノや環境音を取り入れたダウンテンポを通過すると、そこから賑やかな街中へ繰り出すようなハウスの4つ打ちへと展開する。ここでは日本語ラップや歌も取り入れて日本の歌謡曲的なポップさを表現し、心がうきうきとするような昂揚感を誘う。その後もハウス・ミュージックにとどまらずダウンテンポやR&Bにヒップホップなど多用な音楽性が聞こえてくるが、そのどれもがクラブの闇というよりは屋外の陽の光を思わせる陽気なムードが広がっており、非常にポジティブで爽やかな風景が浮かび上がる。本人曰くアンダーグラウンドの可能性は認めつつも、より多くのリスナーに訴えかける事を意識しているとの事だが、その方向性は確かに本作から伺える。それは現在のクラブシーンに対してある閉塞感を打破しようとする意思と呼ぶべきか、若きアーティストが自分達の時代を創り出そうとする気概の現れか。勿論非常にポップなハウス・アルバムであり、ドライブや散歩をしながら聴けば爽快な気分になれるだろう。



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Hardfloor - The Art Of Acid (Hardfloor:HFCD 04)
Hardfloor - The Art Of Acid
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アシッド・ハウスの伝道師かTB-303の申し子か、もはや生きる伝説級の存在であるHardfloor。3年半ぶりの彼等にとって通算9枚目のオリジナル・アルバムとなる新作は、やはり開き直りの状態で相も変わらずアシッド・ハウスを貫き通している。長い経歴の中で多少の揺らぎはありながらも基本的にはアシッド・ハウスという音楽を貫き通している故、良く言えばぶれがなく悪く言えば金太郎飴的と揶揄される事もあるのだろうが、アシッド・ハウスに対して敬意を持って身を捧げたその活動は誇って良いだろう。流石に金太郎的な状態であるのでレビューに於いても徐々に説明する事はなくなっていくのだが、それでもアルバムの冒頭を飾る"Tweakend"からして抜けの良いパーカッションが弾ける中で不吉なベースラインが蠢き、徐々にトランス感のある上モノや強烈なアシッド・ベースが牙を剥いて音が増えていく"ワイルド・ピッチ"スタイルは健在。"The Art of Acid"では闇の奥底でアシッド・ベースが呻き声をあげるような不穏なムードに包まれる中、その表層ではトランス感ばりばりのサウンドが快楽的な彩りを添える完全にアシッド・トランス状態で、ジャーマン・トランスの系譜も見えている。その一方ではブレイク・ビーツやヒップ・ホップの影響が出たBPMを落としてメランコリーさを強調した"Rwndrb"や"Swag My Glitch Up"もあり、アルバムとしての構成にも配慮しながらベテランたる表現力が感じれる。アルバムの最後には彼等の進む道を再確認するように"TB Continued"なる曲が待ち受けているが、そこでもファンキーなアシッド・サウンドと16符スネアロールなどの伝統的な技を駆使してアシッド・ハウスを披露しており、Hardfloorの行き先にはぶれがない事を暗示している。「アシッドの美学」なるタイトルも決して誇張ではなく、彼等なりの自信の現れといって良いだろう。



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