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Andras Presents... H.O.D. - House Of Dad (House Of Dad:HOD 001)
Andras Presents... H.O.D. - House Of Dad

今やオーストラリアはメルボルンを代表するアーティスト/プロデューサーと言っても過言ではないAndrew Wilson、その躍進する勢いに乗って手掛ける新作はHouse Of Dadなるレーベル兼別名義で、また彼の多彩な才能が表現されている。Andras FoxやA.r.t. Wilson、またはWilson Tannerなど多数の名義やユニットで活動する彼の音楽は素朴なニューエイジやアンビエント、時に粗さが打ち出たロウ・ハウスなど多岐に渡るが、その音楽性の豊かさの中に控え目な慎ましさや静謐な響きが通底する。この新作は「オーストラリアの歴史的・文化的事物に影響を受けた作風」との事だが、それが何を意味するのかは理解は及ばないものの、比較的エレクトロニックな響きやダンス・ミュージックの体裁に拘らないビート感が前面に出ている。不思議な叫びや不協和音的なピアノで始まる"Entrance to the Garage"は、背景に不気味なSEや歪なパーカッションが配置され規則的なビートを刻む事なく、何だか工事をしているような奇っ怪な響きを織り成すインストルメンタルだ。そしてようやく軽快なビートを刻み微睡んだ電子音が浮かび上がる"Water Diviner"でダンス色を強めるが、軽いアシッドを忍ばせながらもスカスカの構成はロウ・ハウス的な要素を感じさせつつ、耽美な上モノによって仄かにエレガントな空気を振りまく。また、すっと延びる美しいストリングスときめ細かいざっくりとしたビートが小気味良いハウスの"Hard Working Man"は、Andrasらしい控え目な美しさが映え、特に途中から挿入されるか弱いピアノの響きがより耽美なムードを強くしている。裏面にはざっくりとしたダウンテンポのリズムに生っぽさを感じつつも甘い夢に落ちていくようなアンビエント感もある"Stereo Dunnies"、ビートレスな中で夢現な電子音がうねる完全なるニューエイジの"Roof Metal Corrosion"、そして最後に4つ打ちのハウスながらも遊び心と可愛らしさを閉じ込めた"P.O.E.T.S. Day"と、リスニングからダンスまで肩の力が抜けつつさらっと自然に聞かせてしまうBGM的な感覚が素晴らしい。抑圧から開放されるように日常の中で元からあったように自然と鳴っているような存在感で、ユーモアも盛り込みながらドリーミーな空気で優しく包み込む響きが心を落ち着かせる…まるで安眠剤のように。



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| HOUSE12 | 18:31 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Tiger & Woods - On The Green Again (T&W Records:RBTWCD-1)
Tiger & Woods - On The Green Again
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センスこそ全て、イケてるディスコ・サンプリングの作風を基に一躍その手のシーンにおいてトップへと躍り出たTiger & Woodsは、当初はホワイト盤のみのリリースと正体不明の二人組というミステリアスなカルト性もあって人気に拍車をかけていた。実はその二人組というのはイタリアの古参であるMarco PassaraniとValerio Delphiである事が判明したが、その神秘的な霧が晴れてしまった後もその素晴らしい音楽性があるからこそ、全く人気が衰える事はなく今も尚絶大な信頼を集めている。その人気も相まって今ではライブも積極的に行うまでになっているが、多忙が故に新作のリリースは以前より減っているのも事実であり、そんな状況において5年ぶりのアルバムはファンの渇望を満たすには十分な内容となっている。アルバムは映画の始まりかのようなゴージャスなシンセオーケストラによる"Intro"で幕開けすると、もっさりと生っぽいキックが4つ打ちを刻み、奇妙なロボットボイスとブイブイとしたイタロ的なベースラインがファンキーな鳴りを生む"RockMeLoveMe"へと突入し、序盤からTiger & Woodsらしいディスコティックな愛くるしさが爆発する。"Ginger & Fred"のシンセベースのシーケンスは何だかGiorgio Moroderのそれを思わせる所もあり、ファンキーなボーカル・サンプルの執拗なループによって機能性を重視しつつ、キャッチなコード展開も加わる事でディスコに対する懐かしさも含んでいるのだ。"Come And Get My Lovin'"はBarbara Fowlerによる1984年作のカバー…と言うよりはカットアップ・エディットとでも呼ぶべきか、原曲の素材を使いながらも細かく散りばめた事で面影を残さずにファンキーかつ煌めきを上積みさせたディスコ・ハウスへと生まれ変わらせ、これぞTiger & Woodsのディスコ・リエディットのセンスの業だと言わんばかりだ。"RadioTiger"もカットアップのようにぶつ切りしたような目立つが、キックは80年台のシンセポップのようなアタックの強さがあり、そしてシンセ・ファンクらしい色彩感溢れる電子音や甘くキャッチなボーカル・サンプルで郷愁に満たされる、そうセンチメンタルな空気がふんだんのディスコ・ハウス。アルバムの最後の"Outro"は初まりと同じようにシンセ・オーケストラによる感動的な瞬間が待ち受けており、ポップ感が爆発しつつファンクでブギーなアルバムはあっという間に聞き終わってしまうだろう。作風は見事なまでの金太郎飴的なディスコ・ハウスで、機能的だからといってそれが単調になる訳でもなく、センスの良いサンプル使いによるメロディーも耳を強く惹き付ける魅力があり、ダンス/リスニングの両面から十分に楽しめるだろう。



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| HOUSE12 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Telephones - Vibe Telemetry (Running Back:RBCD08)
Telephones - Vibe Telemetry
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2014年にRunning Backからリリースされた「The Ocean Called EP」(過去レビュー)を契機に、その後はJose Padillaによる久しぶりのアルバムでの共同制作も行い一気に注目を集めたノルウェーのHenning SeverudことTelephonesは、バレアリックの新風の中で特にアルバムの完成が待たれていた一人だろう。その音楽性は真夏の弾けた多幸感、トロピカルかつドリーミーなリゾートの雰囲気、澄み切った青々しい爽やかさ、輝かしい程の太陽光に包まれたオーガニックな感覚などいわゆる閉鎖空間で圧迫感のあるクラブとは真逆の開放感溢れる野外でこそ映えるであろうバレアリックなもので、だからこそ本作は真夏のシーズンに間に合っていればという思いはあるが、それを差し引いても期待に答えた素晴らしいアルバムだ。幕開けはノンビートのアンビエント系である"147 Stars"で、遠くに南国の鳥の囀りも微かに聞こえつつ色彩豊かな電子音がねっとりと融けて徐々に胎動を始めるような曲は、この後の大らかなバレアリック・ジャーニーを予感させる。続く"Sierra"ではキレのあるハイハットや安定感あるキックによって軽やかにリズムが弾け、そして輝かしくピュアな響きのピアノコードが嬉々とした感情を誘発し、ややイタロ・ハウス的なゴージャスさも持ち込んで一気に視界は開けていく。奇妙な電子音のリズムに引率される"Tripping Beauty"はマリンバのミニマルな反復がエキゾチック感を生み、未知なる世界が待つ密林奥地へと足を踏み入れるトロピカル・ハウスだ。アルバムには複数のインタールも用意されており、虫の鳴き声らしきサンプルなど環境音が用いられた"Highs and Bungalows"や意識もカラフルな電子音の中に融解するドリーミー"Expanse"など、ダンスの合間にはほっと一息ついてリラックス出来る瞬間もある。アルバムの後半でも底抜けの多幸感が色褪せる事はなく、トライバルな太鼓が爽やかなグルーヴを刻み澄んだ電子音が湧清水のように溢れ出してくる"Entropikalia"や、正にイビサ・バレアリックを体現する黄昏時の切なさが滲み出るディープ・ハウスの"Dtmf"など、アルバムのラグジュアリーでリゾート感覚に統一された世界観はTelephonesに期待していた物が見事に反映されている。本の束の間の南国への旅行は心身を解放へと導き、穏やかな至福の時間を作る事は間違いなく、イビサを体験した事がない者にもバレアリックな感覚を少しでも味あわせてくれるだろう。



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| HOUSE12 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kevin Reynolds - Fembehyahget (Yoruba Records:YSD81)
Kevin Reynolds - Fembehyahget
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ここ数年のアフロかつトライバルな、そして深遠なる黒きディープ・ハウスをリードするのはOsunlade率いるYoruba Recordsである事に異論を唱える者は少ないだろう。Osunladeのみならず多数のアーティストが、中には普段はテクノ的な作風を得意とするアーティストでさえ、このレーベルに対しては漆黒のディープ・ハウスを提供し、Yorubaというレーベル性をより強固にする事に寄与している。そしてこのKevin Reynoldsの新作もその例に洩れず土臭さも漂うアフロ・トライバルな作風を披露し、レーベルを正しく認知させる事に成功している。Reynolds自身は2006年、2011年とでEP3枚程をリリースしているものの決してアーティストとして名が馳せているわけではないが、彼のFacebookによればデトロイト出身のアーティストでTransmatの運営にも携わっていたクルーかつエンジニアであり、決して全くのニューカマーではなさそうだ。この5年ぶりとなる新作においても青臭さは全くなく、寧ろ老獪ささえもある豊熟した黒いハウスはレーベルの他の作品にも全く引けをとらない。ラテン系の生っぽいパーカッションが弾けるイントロから始まり覚醒感が滲み出るエレクトロニックなシンセのメロディーに引っ張られる"Dodging A Clip"は、生音と電子音が同居しながら宗教的な祭事の怪しさを漂わせて、中盤以降はドラッギーな快楽が現れる黒々しいテック・ハウスだ。よりアフロ・パーカッシヴで手拍子も加わって弾けるリズム感を生む"Fembehyahget"は、民族的な女性ボーカルのサンプルと単純なコードの反復によって、展開は抑えながらも呪術的な不気味さによってじんわりとドープにはめていく。"Travelled"も同じく歌モノだがこちらでは男性の祈りにも似た歌が用いられ、そして美しく流麗なシンセのコード展開とビリンバウの訝しい響きがしっとりとした質感のあるディープ・ハウスへとしている。最後はその名も"Vibe Samba"というサンバを意識したハウスで、薄っすらと幻想的なパッドが漂う中を刺激的な複数のパーカッションが入り乱れ、リズム重視のツール系トラックとして効果的な構成だ。どの曲もアフロ、テック、ディープな要素が融合し電子と有機が自然と混在する作風で、Yorubaのレーベル性を主張するようでもあり、そしてReynoldsの音楽的才能を証明している。



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| HOUSE12 | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Modaji - Belle Epoque EP (Utopia Records:UTA - 002)
Modaji - Belle Epoque EP

設立されたばかりながらも寺田創一やLars Bartkuhnの作品をリリースし一際注目を集めているUKのUtopia Records、その勢いに乗ってリリースされる第3段も間違いなく注目を集めるであろうModajiの9年ぶりの新作だ。今となっても燦然と輝く2000年前後のフューチャー・ジャズやブロークン・ビーツが繁栄していた時代、特にその中で一際注目を集めていたLaws Of Motionを代表するアーティストの一人で、情熱的な響きとしなやかなブロークン・ビーツによる洗練された音楽性が特徴で、それは先進的で都会的な雰囲気を含んでいた。ここ10年程は西ロンドンのフューチャー・ジャズのシーン自体も落ち着いており、Modaji自身も一向に新作を出す事なくもはや引退していたのではと思っていたが、まさかここに来て新作を引っ提げて帰還するとは誰も予想だにしなかっただろう。そしてその新作は期待に違わず素晴らしく、タイトル曲の"Belle Epoque (Belleville)"は透明感のあるパッドのコード展開とスムースに疾走する4つ打ちを軸にしたハウスだが、柔らかいオーガニックな質感と一転の曇りもないピュアな響きの電子音によってエレガントに装飾されており、当時のフューチャー・ジャズよりフロア寄りで直線的ではあるものの開放感が心地良い。Big Chill関連のBruce Bickertonがリミックスした"Belle Epoque (Alucidnation Remix)"はビートを抑えながら豊潤でカラフルな色彩を帯びたメロディーを付け加え、穏やかに引いては寄せる波のようなリラックスしたアンビエント感で纏め上げ、そして更にコズミックなシンセが煌めく"Belle Epoque (Ambience)"はもはやバレアリック的だ。ボンゴかコンガか、爽やかさを纏ったパーカッションが刺激的に弾ける"Espiritu Santo (Dance)"はスピード感に長けており、じわじわと継続する流麗な上モノから時折暴れるように激しいパーカッションのブレイクも現れたり、うっとりする程の耽美な雰囲気の中にも力強いグルーヴが走っている。そして最後の"17"は完全なるアンビエントで、蜃気楼のように朧気な風景を描き出すサウンド・スケープは、儚い哀愁を滲ませている。往年のModajiに比べると随分とハウスとアンビエントが前面に出ているが、全くフュージャー・ジャズの要素が無いわけでもなく、時代に合わせてモダンに進化したフュージョン・ハウスと呼んでも違和感はない。何よりもその小洒落て優雅な佇まいは、今も健在なのだから。



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| HOUSE12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Sound Patrol - Sweetened No Lemon (Arts And Labour:SPRX01)
Sound Patrol - Sweetened No Lemon
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シカゴ・ハウスの重鎮、Derrick L. Carterが1994年に残したSound Patrol名義の最初で最後のアルバムである本作は、長らく廃盤となり手の届かない存在であったものの、リリースから20年を経て奇跡的な再発が行われた。それもリマスタリングに加え、未発表曲も追加となるアナログでは3枚組のボリュームで、端的に言えばこの再発の機会をみすみす逃すのは勿体ないと言うわけだ。Carterに対する一般的なイメージは恐らくシカゴ・ハウスのDJだからゴリゴリとした厳つい音楽性というものだろうが、特にこの時期のこの名義ではシカゴ・ハウスの枠に収まりきるものではなく、曲によっては昨今のミニマルのドープな感覚を軸に、デトロイト・テクノの叙情性にアシッド・ハウスの狂気やディスコの愛くるしさなどを含み、ハードな勢いではなく実に豊かな音楽性を持っている事を示している。

かつてCarterが手掛けた日本盤のMIXCDのライナーノーツで彼自身が下記のように書いていたが、本作にも同様の聴き方が適切と感じるのはあながち思い違いではない筈だ。
聴け…偏見を捨てて
楽しめ…心おきなく
吸え…もし"それ"を持っているなら…

圧巻は何と言っても18分にも及ぶ大作の"Tripping Among The Stars (A Necessary Journey)"で、ゆらゆらと揺れる幻惑的なベースラインと重心が低くねっとりしたハウスのグルーヴに意識も酩酊状態のような呟きやが挿入され、ミニマル・ハウスのようなディープ・ハウスのような幻惑的なこの曲は正にドラッグの為の音楽なのだろう。"Cruisin' With The Top Down (Lazy Sunday Edition)"も16分の大作だが、こちらは一転して弾ける切れのあるリズム感がファンキーなハウスで、ブレイクでの乾いたピアノがさり気なく小洒落たムードも生み、これは燦々とした太陽光を浴びるようなサンフランシスコは西海岸系のハウスを思わせる。と思えば今で言うならばビートダウン・ハウス的なテンポが遅く粘性の高いリズムトラックにディスコ・サンプリングを混ぜ込んだようなどす黒い咆哮が漂う"Long Ass Zitz Groove Ay"や、硬いアタックを用いた事でテクノらしさも浮き出てファンキーなツール系の"Cantina Benny's (Underground Extravaganza)"に、TR系の乾いたリズムにうねりまくるアシッドのベースラインとふざけたような上モノが乗ってくるこれぞシカゴ・アシッドな"Griff's Opus"など、現在のCarterからは信じられない程にその作風は自由で豊かだ。本作でようやく日の目を見た未発表曲も、ロウ・ハウスの原型的な安っぽさが懐かしくもあるハウスや黄昏時の郷愁を体感させるムーディーなシカゴ・ハウス等があり、ただDJが使うだけでなくアルバムとしての聴き込んで陶酔に浸る楽しみ方も十分にある。DJとして一流なのは従前の通りだが、このアルバムによって実はトラックメーカーとしても比類無き才能を持っていた事を、知る人も少なくはないだろう。本年の価値あるリイシューの一つである事を断言したい。



Check "Derrick Carter"
| HOUSE12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Sound Signature Presents These Songs That Should’ve Been Out On Wax By Now - Part One / Two (Sound Signature:SSCD 09)
Sound Signature Presents These Songs That Should’ve Been Out On Wax By Now - Part One Sound Signature Presents These Songs That Should’ve Been Out On Wax By Now - Part Two

今も尚デトロイト・ハウスを引率し続ける鬼才・Theo ParrishによるSound Signatureは、近年は自身以外の作品も積極的にリリースするようになり、そのブラックネス溢れる音楽性をより豊かに実らせている。そして本作はそんな流れを含むレーベルコンピレーションであり、タイトルが示すように本来はレコードでリリースされる事を望んでいたであろう作品集だ(CDから後にアナログカットが始まっている)。曲を提供しているのはTheoを筆頭にHanna aka Warren HarrisやAlton MillerにMarcellus PittmanやKai Alceといったハウス側のベテラン、そして新世代を代表するKyle Hall、TheoによるバンドのThe Rotating AssemblyからJohn Douglasといった演奏者、過去にSound Signatureからもリリース歴のあるDuminie DeporresやAndrew Ashong、デトロイトのソウル・シンガーであるMaurissa Rose、Theoと共演したTony Allenら、Theoと関連性のあるアーティストが集まっておりレーベルの作品集として正しくあるべき姿での内容だろう。ただし参加アーティストは公表されているものの誰がどの曲を手掛けたかは記載されていないが、それこそただ音楽を感じ楽しめばよいというような意志の現れなのだろう。アルバムは恋焦がれるような熱い女性ボーカルとピアノ演奏によるソウル・トラックの”Somewhere Inbetween"で始まり、錆び付いたロウ・ビートと黒光りする官能的なピアノによるサイケデリック・ジャズな"Whachawannado (Instrumental)"、鈍く響く歪なビートがミニマルに展開し闇の中から色気も滲み出てくるTheo作の"Faucet"など、Part Oneからして間違いなくSound Signatureのレーベル性に違わない音楽性だ。また"Pure Plastic"は透明感のある優美なコード展開と軽快でジャジーなグルーヴが心地良く、Millerによる"Bring Me Down"もスムースな4つ打ちとソウルフルなボーカルにうっとりさせられ、時代に左右されないクラシカルなハウスも収録されている。Tony Allenが参加した"Wayshimoovs Rx"はやはりというか艶かしいアフロ・ビートが息衝いており、Theoのブラックネスをより濃厚にする個性を付加している。最後は2015年にEPでリリース済みのThe Unitによる"Ain't No Need (Live - Version 2)"で、原曲の優しさで包み込むディスコ感を損なわずに、肩の力が抜けたセッションをするジャズ・ファンクへと生まれ変わらせ、ルーツへの意識も忘れない。ハウスを軸にソウルやファンク、ジャズやヒップ・ホップなど黒人音楽を咀嚼し、メランコリーからサイケデリアまで表現するSound Signatureの作品集は、当然の如くそれらにはどれもTheoの濃密な黒さが投影されており、単なるダンス・ミュージックではないレーベルの強い個性を主張している。





Tracklistは続きで。
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| HOUSE12 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Louie Vega - Louie Vega Starring...XXVIII (Vega Records:02VEG04)
Louie Vega - Louie Vega Starring...XXVIII
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Kenny Dopeと共に結成したMasters At Workに於けるハウス・ミュージックへの功績はもはや説明不要であろうが、ジャズやラテンをハウスに落とし込んだ特異性だけでなく、大勢のアーティストを起用し大規模な共同制作によってプログラミングだけに頼るのではなく生演奏の魅力も打ち出したセッションの高い音楽は、もはやハウス・ミュージックの枠に収まりきるものではなかった。Vegaは同様の手法をElements Of Lifeプロジェクトによる『Eclipse』(過去レビュー)でも用いたが、その延長線上としてソロ名義では初となる本アルバムでも多くのアーティストのとのコラボーレションを行う事で、ハウスの枠組みの拡張とソウルフルなハウスの再確認を同時に行っている。アルバムの始まりはFunkadelicとのコラボレーションと言うか、リミックスである"Ain't That Funkin' Kinda Hard On You? (Louie Vega Remix)"で、ねっとり熱量の高い原曲のP-Funkをラフな質感は残しつつも颯爽としたハウス・ビートへと生まれ変わらせ、出だしから軽快ながらもソウルフルな歌の魅力を発揮させている。続くは3 Winans Brothersの"Dance"のリミックスだが、ざっくりとしながらも軽快なラテンビートと怪しげなオルガンにリードされながらもコーラスも加わったボーカルにより、これぞNYハウスらしい温かみに溢れたクラシカルなハウスになっており、今の時代に於いても歌の重要性を説いているようだ。女性シンガーのMonique Binghamを迎えた"Elevator (Going Up)"は、舞い踊るピアノと甘くもキリッとしたボーカルが軽やかに疾走し、南アフリカのシンガーであるBucieをメインに、そして制作にBlazeのJosh Milanを迎えた"Angels Are Watching Me"はモロにBlazeらしいメロウかつ耽美なエレピや爽やかなコンゴが響き渡る歌モノハウスで、期待通り以外の何物でもないだろう。そして本作では所謂古典と呼ばれる名作のカバーも収録しており、Convertionによる”Let's Do It (Dance Ritual Mix)”やBobby Womackによる”Stop On By”、そしてStevie Wonderによる"You've Got It Bad Girl"まで、ハウスにR&Bやヒップ・ホップにファンク等の要素を自然に溶け込ませてクラシックを現在の形へと生まれ変わらせている。CD2枚組計28曲の大作が故に全てが完璧とは言えないものの、過去の作品への振り返りにより現在/未来へと良質な音楽の伝達を行い、そしてボーカリストに演奏者らアルバムの隅々まで数多くのアーティストの協力を得る事で、本作はハウス・ミュージックの一大エンターテイメントとでも作品である事に異論は無いだろう。ソウルフルで、古典的な、そして歌モノのハウスのその魅力を再度伝えようとしているのだ。



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| HOUSE12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Gerd Janson - Fabric 89 (Fabric:fabric 177)
Gerd Janson - Fabric 89
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今年9月に薬物により若者二人が亡くなった事が原因で閉鎖へと追い込まれたUKは名門Fabric(その後、再開が決定している)は、暗雲立ち込めるクラブの状況とは異なりレーベルとしては安定した軌跡を辿っている。名のあるベテランからこれからをリードする若手までMIXCDシリーズのFabric/Fabric Liveに起用し、数多くの名作と呼んで間違いの無い作品を残してきた。さて、そのFabricシリーズの89作目は今をときめくRunning Backを主宰するGerd Jansonが担当しているが、Running Back自体がニューディスコからディープ・ハウスにテック・ハウスまで手掛ける掴み所のないレーベルだけに、このMIXCDもそんなレーベル主として音楽性を主張するように実に手広くジャンルを纏めあげている。いきなりトリッピーな電子音に惑わされる"Snooze 4 Love (Luke Abbott Remix)"で始まり、"Voices (Fabric Edit)"や" Love Yeah"等の控え目に美しさを放つ平坦なハウスを通過し、じわじわと引っ張りまくる危うい雰囲気のアシッド・ハウスの"Severed Seven"から一転して"Apex"では光に満たされるコズミック・ディスコへと展開し、激しいプレイではないもののじっくりと山あり谷ありの流れだ。中盤の耽美なエレピのメロディーが反復するメロウなディープ・ハウスの"Mess Of Afros (Glenn Underground Remix)"、そこに繋がる情熱的なピアノのコードが炸裂するデトロイト・ハウス的な"MoTP"の流れは、本作の中でも特に熱量が上がる瞬間だろう。そこからも弾ける高揚感のアシッド・ハウスやダーティーながらも黒さ滲むディープ・ハウス、そしてコンガやハイハットのアフロなリズムだけで繋ぐ"Rhythm"を通過し、終盤は落ち着きを取り戻すようにScott Groovesによる穏やかでメロウなディープ・ハウスの"Finished"から摩訶不思議な電子音が飛び交うコズミック・ディスコの"Sun (Prins Thomas Diskomiks)"でドラマティックに締め括られる。確かに色々と詰め込み過ぎているようにも感じるかもしれないが、比較的近年にリリースされた曲を用いた事による時代性があり、そして短い時間でパーティーの一夜を再現したような展開の大きさは、十分に濃縮される事でJansonの音楽性が表現されたのではないだろうか。



Check "Gerd Janson"

Tracklistは続きで。
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| HOUSE12 | 16:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
The People In Fog - Higher EP (Sound Of Vast:SOV007)
The People In Fog - Higher EP
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2015年にアーティスト名非公開でSound Of Vastより限定100枚でリリースされていた謎の作品、実は先日正式リリースとなりその詳細がDJ Sodeyamaの変名であるThe People In Fogによるものである事が判明した。過去にThe People In Fogとして2014年には同レーベルより「Deep EP」がリリースされており、DJ Sodeyamaのテクノ性よりはディープかつファンキーなハウス性を打ち出していたが、新作も更にルーツを掘り起こすような内容だ。レーベルの案内によれば「彼のルーツである90年代のオールド・スクール・ハウス色が前面に押し出された」そうで、"Higher"は正しくオールド・スクール感爆発の野暮ったくも弾けるようなリズムや、気の抜けたようで怪しげで色っぽくもある歌がファンキーな効果となって迫るシカゴ・ハウスの系列にあり、剥き出しのグルーヴ感と言うべきか荒々しい質感が特徴だ。本場のシカゴ・ハウスに混ぜ込んでも全く違和感を感じさせないルーツへの接近、しかし今聞いても古ぼけないナウな時代感、これは間違いなくフロアを盛り上げるだろう。そして正規リリースとなった本作には喜ばしい事に近年リバイバルで俄然注目を集めている寺田創一が"Higher (Soichi Terada Remix) "を提供しており、90年代に欧米で評価されたベテランによるハウス・リミックスはその当時の空気を今蘇らせるようでもある。ボーカル・サンプルはそのまま引用しつつ太くも滑らかな質感のキックが力強い4つ打ちを刻み、寺田の作風である可愛らしいキャッチーなシンセによるメロディーも追加して、オリジナルのラフな曲調とは異なるポップな感覚さえ漂わせている。また"Higher (Dub Mix)"はブレイク・ビーツ気味なリズムが更に強調される事で何だかレイヴらしい悪っぽい雰囲気を纏い、ドタドタとしたビートが肉体をより振動させるバージョンとして優れている。それぞれスタイルの異なる作風だが、どれも素晴らしくフロアで是非とも聴きたい一枚だ。



Check "DJ Sodeyama"
| HOUSE12 | 19:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |