Jovonn - Timeless (Body 'N Deep:BND003)
Jovonn - Timeless

ブルックリン生まれ、ニューヨークとニュージャージーを結ぶ王道ハウス・ミュージックのベテラン、Jovonnによるなんと『Spirit』(過去レビュー)以来の16年ぶりのアルバム。1990年頃から活動するこのアーティスト、今までにもGoldtone RecordsとNext Moov Recordsというレーベルを運営し活動を続けていたが、2016年からはBody 'N Deepを設立し90年代初期のディープ・ハウス〜テック・ハウスに注力しているようで、このアルバムもこれ以上はない位に直球ハウスな内容だ。父はギター/ベース奏者、母は鍵盤奏者という環境で育った事はJovonnの音楽性にも当然影響を及ぼしており、このアルバムが昔の作風に比べるとややミニマルというかソウルフルな方向よりはツール性へと傾倒しているのだが、それでも鍵盤の手弾きを感じさせる風合いもあり、それがジャジーさや温かみにも繋がっている。それは開始の"Keep On"から端的に現れており、跳ねるような太いキックのリズムから始まると耽美なピアノのコード展開とオルガンの感情的なソロが疾走り、熱くなり過ぎる事もないがクールなソウルフル性を発揮する。キレのあるリズムとボーカル・サンプルのループでファンキーさを打ち出した"Affection"は、中盤まではあまり展開を広げないがそこから感情を吐露する歌が入ってくる辺りは、やはりハウス・アーティストらしく込み上げる思いは抑制出来ないのだろう。"Hesperia Soul"では生っぽいざらついたリズムに麗しいヴァイオリンの旋律が舞い踊り、いかにも90年代の高らかに喜びを歌い上げるような直球ハウスだ。と思えば"Party In My House"ではダークなシンセとドラッギーな呟きによって不穏な空気に支配され、"Turnin Me Out"では低音が目立つ太いキックと図太いグルーヴとマイナー調のコード展開でディープに潜っていき、真夜中のフロアの中で黒光りするようなツール寄りなハウスもある。と終盤まではずっしり腰にくるダンス・グルーヴでしっかりと躍らせる曲が中心で、しかし最後の"Timeless"ではテンポをダウンさせて、綺麗なパッドを伸ばしつつ麗しい管楽器のソロを被せて実にしっとりとした大人の余裕を感じさせるスローモー・ハウスを聞かせるのが心憎い。ベテランアーティストがハウスに正面から向き合った横綱相撲的なアルバムは、驚くべきというよりは聞いていて安心感があり、これだよこれっ!というベテランらしいクラシカルな作風なのだ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Nomadico - The Code Switcha (Yaxteq:YXTQ 004)
Nomadico - The Code Switcha
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近年テクノ/ハウスに置いて全盛期に比べると陰りを見せているデトロイトという聖地、その原因の一つは特に影響力の大きいUnderground Resistance一派の活動が停滞している事も、少なからず関係しているであろう。そんな状況ながらも逆境を跳ね返すべく奮闘している者もおり、例えばUR一派のDJ Dex改めNomadicoことDan Caballeroもその一人だ。元はDJ DexとしてURのターンテーブリストとして活躍し、TimelineやLos Hermanosに参加しつつ自らはEl Coyoteというラテンユニットも組んだりしていたが、2015年頃からはYaxteqを設立し自らの足で歩み始めている。そして2018年末にリリースされた自身初のアルバムが本作で、デトロイトのダークサイドを表現したテクノ/エレクトロがこれでもかと詰め込まれており、流行や新しさは皆無ながらもデトロイトのクラシックを地で行く作品だ。オープニングの"Introversion"はビートレスながらもアンビエント性のある壮大さがこれから待ち受ける冒険を示唆するような幕開けに相応しい曲で、続く"Still Cruisin"ではデトロイトらしい叙情的なシンセのリフと跳ね感のあるのリズムによるテック・ファンクを聞かせ、序盤は大人しめな始まり方だ。"RTD 60"でもまだアッパーな展開にはならないが、ダークで膨張するような太いベースラインと不気味な上モノが支配するダークテクノで、徐々にデトロイトのハードな側面を映し出す。そして"909 Soto Street"で遂にリズムは太くかつ跳ねて勢いを獲得し、微妙なアシッド・ベースが底辺でうねり暗黒のデトロイト・エレクトロと化す。"Radio 3031323"は一旦勢いを抑制しつつも同様に細かくアシッドが蠢き、エレクトロ調の角々したリズムで腰にくるグルーヴを刻み、"Machine Learning For Homeboy"や"Hustla"では図太いキックが強烈な4つ打ちを刻み荒廃した街を投影するような暗い上モノに支配されたダーク・テクノで、如何にもUR一派らしいハードさを体験させる。また乾いたパーカッションと横揺れリズムが溜めのあるグルーヴを生み明るいシンセのリフが反復する"Backyard Trippin"もデトロイトらしいエレクトロ・ファンクで、暗く世界観の中にも時折希望を見い出せる瞬間もある。先人達が切り開いてきたテクノ/エレクトロを忠実に受け継いで、流行なんぞ何のその。悪く言えば古臭い古典的な音楽かもしれないが、またぶれない姿勢も実にUR一派らしい。



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| TECHNO14 | 11:30 | comments(0) | - | |
Jan Schulte - Sorry For The Delay (Wolf Muller's Most Whimsical Remixes) (Safe Trip:ST010)
Jan Schulte - Sorry For The Delay (Wolf Mullers Most Whimsical Remixes)
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Young Marco主宰のバレアリック系レーベルSafe Tripから、Jan SchulteことWolf Mullerによるリミックス集が2018年末にリリースされている。SchulteといえばMuller名義でInternational FeelやGrowing Binといったバレアリックやニューエイジ方面で随一のレーベルからCass.やNiklas Wandtと共同でアルバムをリリースしたり、またはBufiman名義では不思議なハウス/ディスコを手掛けて、更に他の名義ではより民族的かつトライバルな作品も制作したりと、多角的で富んだ音楽性を持っているアーティストだ。この度そんなMuller名義で行った7年分のリミックスがコンピレーションとして纏められており、有名なところではバレアリックを先導してきたJose Padilla、他に土着ハウスユニットのAfricaine 808にエレクトロニカ系のTolouse Low Traxや自身変名のBufimanといった今では入手困難になってしまったリミックスが、一同に揃ったありがたいコンピレーションだ。バラエティーに富んだアーティストのリミックス集だが、しかしMullerがリミックスを行っただけにトロピカルやトライバルといった有機的な響きの統一感はあり、レーベルインフォの言葉を借りるとMullerの故郷であるデュッセルドルフとイビサのバレアリックな実験的な電子音楽との事だ。"Oceans Of The Moon (Wolf Muller Donkey Kong Beach Dub)"は口琴による不思議な響きや木の響きがする打楽器などを用いて深い森の中を感じさせる土着感を生み出すが、そこに朗らかで明るいシンセや弦楽器風の旋律を被せて極楽浄土へと足を踏み入れたかのようなドリーミーなバレアリック系で、甘美な世界観に脱力してしまう。"Rhythm Is All You Can Dance (Wolf Muller Remix)"も弛緩した原始的な響きのリズムが大地と共鳴するようで、そこに奇妙な電子音のメロディーやトリッピーなSEに雄叫びサンプルを盛り込んで、トライバルかつアフロなサイケデリック・ディスコを展開。金属的なベルや膨らみのあるパーカッションを用いた力強いグルーヴを生む"Jeidem Fall (Wolf Muller Remix)"はリズム重視で、奇妙なボーカル・サンプルも用いて肉体的で生々しいポリリズムを生み出している。"Ba Hu Du (Wolf Muller's Unreleased Version)"は未発表曲(この後シングルカットされた)で、Bufiman名義なので当時の自身の新作だったのだが、ディジリドゥらしきエキゾなループにチャカポコとした民族的パーカッションから粘性の高いグルーヴで始まり、次第に桃源郷まっしぐらなバレアリックな上モノが降りてきて、快楽的ながらもファンクやアフロにディスコが一体化した強烈なスローモー・ダンス曲。全体的にBPMは遅めながらも有機的なパーカッションのリズムを活かした肉感溢れるグルーヴが力強く作用し、そこに牧歌的かつバレアリックな響きも取り込んで、Wolf Mullerお得意の音楽性に纏まったリミックス集として期待通り。ちょっと変わったダンスを探している人にもお薦めだ。



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| HOUSE14 | 18:00 | comments(0) | - | |
Lowtec - Light Surfing (Avenue 66:AVE66-06)
Lowtec - Light Surfing
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なんと17年ぶりのアルバムとなる本作、手掛けているのはミステリアスなディープ・ハウスを主軸とするWorkshopを主宰するJens KuhnことLowtec。アルバム自体は随分と前作から間が空いてしまったものの、EP単位ではSmallvilleやAvenue 66含む複数のレーベルから定期的にリリースを続けていたので、決して活動を休んでいたわけではない。本アルバムはAcid Test傘下のAvenue 66からのリリースであるが、このレーベル自体がスモーキーな音像と深い音響にアンビエンスといった成分がありLowtecの音楽性と違わない。そこで元々は2018年にLowtecが手掛けたミックステープ『Sketches』の出来が良かった事から、そこに収録された曲やライブの曲をアップデートしこのアルバムへ発展したようで、偶然の産物みたいな流れでアルバムは出来上がったようだ。ダンスとリスニングが混在する本作、先ずはヒスノイズのような幻惑的なドローンに覆われながらホラー映画風の上モノと軽やかでパーカッシヴなリズムですっと浮遊する"Hotel D Europe"のディープ・ハウスで開始する。続く"Boy With The Broken Glasses"ではぐっとテンポを落とし、アブストラクトで重厚なベースと金属的なリズムによって荒廃して凍てついたアンビエンスを展開する。セットになった"Light Surfing (Part A)"と"Light Surfing (Part B)"は前述の"Hotel D Europe"の元になったライブセッションだそうで、ビートレスな事でよりホラー映画風なミステリアスなメロディーが強調され不気味さと悲壮感を増し、Part Bへ移るとスローモーなキックも入ってきてダビーなディープ・ハウスへと変わるが、通して催眠的な効果が持続する。そしてカラッと乾いたキックがシカゴ・ハウス風でアルバムを覆う霧を振り払うかのようなロウ・ハウスの"Vintage Internet"、逆に深遠で不気味な何かが蠢くようなドローンに満たされ混沌が続くダブ・アンビエントな"Mythenquai"、そして最後の"Burnt Toast"は最もハウス・グルーヴを刻んでいるが、ソウルフルなボーカル・サンプルの執拗な繰り返しとダーティーで重いベースとノイズ風なSEによってどんよりと不鮮明なアンビエンスを放出する。濃霧に覆われたようなアブストラクトなアンビエンス、重苦しくもダビなーハウスのグルーヴがあり、機能性と実験性が、ダンス性とリスニング性が一つとなった内容で、40分弱のボリュームながらも濃密な世界が待ち受けている。



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| TECHNO14 | 16:00 | comments(0) | - | |
角間温泉 角間荘
角間荘1

2019年の年末も一年分の疲れを癒やすべく温泉旅へ。今回初日は長野は湯田中渋温泉郷から更にもう少し奥まった場所にある角間温泉へ。長野県には上田市にも同じ名前の角間温泉があるが、こちらは長野県山ノ内町にある山あいの温泉で、湯田中渋温泉郷の一角である。湯田中渋温泉と言えば温泉街らしい温泉街で賑わっているが、角間温泉は商店が一軒(それも2019年末に閉店したようだ)しかなく、静かで侘しささえ感じられる田舎風景だ。しかし町には共同浴場が3つもあり、温泉好きには一見の価値ありだろう。今回泊まった角間荘は元は保養所だった所を温泉好きだった人が買い取られて、自炊をベースにした湯治宿として運営されているようで、年末にもかかわらず暖房費や温泉税も含めて6500円程度で泊まれるリーズナブルなのがありがたい。
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| FOOD,TRAVEL,HOT SPRING,ETC3 | 20:00 | comments(0) | - | |