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YS - Perfumed Garden (Music Mine:MMCD20029,30)
YS - Perfumed Garden (2019 Remaster)
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ここ数年活動が活発になっていたとは言えども、ジャパニーズ・アンビエントの再燃が無ければ恐らく本作のリイシューも無かったのは間違いない。近年は温泉好きシンセバンドとしてNaturally Gushing Electric Orchestraとして活動するサワサキヨシヒロは、1992年頃から音楽活動を開始し、Techno The GongやMeditation Y.S.等複数の名義を用いてプログレッシヴ・ロックに影響を受けたテクノ/アンビエントを展開し、そして1994年には本作をリリースするとNME誌からは「ジャンルを超えたファンキー・チル・アウト」として評価され、その頃盛り上がりつつあった日本に於ける空前のテクノブームの立役者の一人となる。つまりそんなテクノが著しく熱かった時代にリリースされた本作は、しかしそんな熱気とは対照的にダンスの狂騒とは無縁な緩く底抜けにオプティミスティックな世界観と音に何の意味も込めずにただひたすら快適性のみを追求したような響きによって、唯一無二のアンビエントを確立させていた。本作で魅了されるのは何を差し置いても"Neocrystal (On The Beach Mix)"で、繊細な光の粒子のような音のシーケンスと浮遊感をもたらす美しい鳴り、そして控え目に用いられたTB-303のアシッドは凶暴性よりもひたすら快楽へと向かい、意味も意識も込められていない純粋無垢なアンビエントは10分にも渡って覚める事のない白昼夢へと誘う。実は何気にフル・アンビエントなのはこの曲位で、他の曲はフローティングするテクノやブレイク・ビーツ寄りスタイルが多く、しかしそれでも音の響きはやはり無垢で多幸感が全開だ。"Magic Dome"なんかは当時Dave AngelがMIXCDの中で用いたりもして話題になり、軽くリズムが入りダンス寄りな作風ではあるが下辺ではアシッドが明るくうねりつつ優雅なストリングスが絢爛に彩るハッピーな世界観は、この後のユーモアに溢れ陽気な音楽を展開していく実にサワサキらしさがある。今回のリイシューに際して特筆すべきはボーナスディスクの方で、Meditation Y.S.名義でApolloからリリースしたEPやコンピレーション収録曲が纏められており、今となっては入手困難な曲が一同に聞ける事だろう。特にApolloからの14分にも及ぶ"Slumber"は"Neocrystal"級のフル・アンビエントで、眠気を誘うダウンテンポのビートにほんわかとした音の粒子が浮遊しながら、TB-303のアシッド・ベースにダブ処理を行いながら多層的な音響により意識も融解するサイケデリックなトリップ感を得て、極楽浄土への片道切符な名曲だ。アンビエントとしてはボーナスディスクの方がより純度は高く、"Aqua Gray"なんかもリズムは跳ねたブロークン・ビーツ調ながらもか細く繊細なシンセが複数のラインで陽気な旋律を奏でつつ、下部では太いアシッド・ベースがファンキーにうねる毒々しくもハッピーなアンビエントで、この何も考えていないような楽天的な世界観がやはりサワサキ節だ。そして"Neocrystal"の別バージョンで初披露となる"Selftimer"は、基本的に上モノはそのままでリズムに変化を加えて重厚感が増したダブ・バージョン的な曲で、当然天国を目指すトリップ感は最高級。CD盤では2枚で10曲の内、9曲は10分越えの大作とアンビエントしてはこの長尺な構成だからこそ夢から醒めない持続性が活きており、25年前の作品ながらも全く今でも通用する素晴らしいアンビエント・アルバムだ。ジャパニーズ・アンビエントが再度注目を集める今だからこそ、知らなかった人達にも是非とも聞いて欲しい一枚。



Check Yoshihiro Sawasaki
| TECHNO14 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Thomas Fehlmann - 1929 - Das Jahr Babylon (Kompakt:KOMPAKT CD153)
Thomas Fehlmann - 1929 - Das Jahr Babylon
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2018年には8年ぶりのアルバムとなる『Los Lagos』(過去レビュー)やTerrence Dixonとの共作アルバムもリリースし、また久しぶりの来日ライブも行うなど、 老いてなお盛んに精力的な活動を行うベルリンのThomas Fehlmann。ジャーマン・ニューウェーヴの変異体であるPalais Schaumburgの元メンバーという肩書きから始まり、ベルリンとデトロイトの橋渡しも行いつつThe Orbの片割れとして長く活動も続けるなど、ドイツに於けるダブやアンビエントさえも包括するテクノ音響職人としての才能はトップクラス。そんな精力的な活動の中で2018年3枚目となるアルバムをリリースしていたのだが、本作は1929年のベルリンをテーマにしたドキュメンタリーの為のサウンドトラックだ。1929年は世界恐慌もありドイツ経済が壊滅的な状況になる中で、アドルフ・ヒトラーが政権を握り、その後第二次世界大戦前へと続いていく暗黒の時代、そんな時代を切り取ったドキュメンタリーという事もあり、音楽自体も普段の作風に比べると幾分かどんよりとしており決してクラブでの刺激的な高揚感とはかけ離れている。特にモノクロ映像も用いたドキュメンタリーに意識したのだろうか、音の響きからは色彩感覚が失われダークかつモノトーンな雰囲気が強く表現されている。曲名には各チャプター名とその時のムードを表したであろうタイトルが付けられており、それもあってどの曲もヒスノイズ混じりのダブやドローンの音響を用いたアンビエント性の強い作風はより抽象性を高めて、中にはリズムの入る曲があっても全体的に映像の邪魔をしない高揚感を抑えた曲調になっている。勿論だからといって本作からFehlmannらしさが失われているかと言えばそうではなく、古ぼけたように霞んだ音響にもぬめりのあるダブ音響を披露しミニマルな構成やシャッフル・ビートも織り交ぜて、Fehlmannらしく繊細かつ精密な音響職人らしいこだわりのある音が活きている。シーン毎に曲が並べられているため普通のアルバムに比べると何となく断片的な流れに受け止められるが、映像と合わせて聞いてみると、不安な時代感がより強く伝わってくる音楽性だ。Fehlmannらしい美しい音響がありながら、退廃美的に感じられるダーク・アンビエント。





Check Thomas Fehlmann
| TECHNO14 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vince Watson - DnA EP1 (Everysoul:ESOL014)
Vince Watson - DnA EP1
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過去には「俺はデトロイト・テクノじゃねぇ!」と憤慨していたUK屈指のデトロイト・フォロワーであるVince Watson。確かにデトロイト・テクノではないのは確かなものの、その一方でデトロイトへの愛は人一倍の為そこからの影響も非常に大きいのはあからさまな程で、デトロイト・テクノを引き合いに出されるのも仕方のない事である。2017年にはかのRhythim Is RhythimことDerrick Mayの屈指の名曲をリミックスした『Icon / Kao-Tic Harmony (Vince Watson Reconstructions)』(過去レビュー)もリリースする等、結局はその情熱的なテクノソウルの環から抜け出せない事はもはや運命的でさえもあり、その先に最終的に辿り着いたのが本作。この『DnA』シリーズは前述のリミックスを作成した事に触発され、より直接的なルーツであるデトロイト・テクノを意識して制作を行ったそうで、そのルーツを投影すると同時にそれ自体へと捧げられた音楽であると本人は述べている。とは言いながらも本作に於いてもVinceはVince、"First Wave"を聞いても今までの作風から大きな変化は強く受ける事もなく、多層的に共鳴するエモーショナルなシンセの旋律とキレのある疾走するグルーヴを基調にしたテクノはメロディーやコード展開を重視しながらぐっと熱量を増していく。"Let Dreamer's Dream (Daydream)"はインタールード的な短い曲で後に予定されるアルバムを想定して制作されたのだろうか、黒光りするシンセストリングスと電子音のループがビートレスな状態の中にアンビエント的な静謐さを生み出している。特にデトロイトらしさが表現されているのは"Second Wave"か、遠く離れた郷里への思いが馳せるような切なさを誘う薄っすらと伸びるパットの上にコズミックな電子音がリフを重ね、すっきりとしたTR系のハイハットやキックによる軽快なグルーヴが走り、希望を求めて未来への道を指し示す生々しく感情的なこの曲は正にデトロイト・テクノだ。"Affinity"はややグルーヴは落ち着いた代わりにしっかりと大地を掴む安定感があり、脈動する太いベースラインと対照的に美しく叙情的なパッドや繊細なピアノ風な響きが闇の中にドラマティックな風景を描くようで、ゆったりとした曲調だからこそより深遠さが強調される。どの曲も心の奥底から熱き感情を湧き起こすエモーショナル性の強いテクノ/ハウスである事は当然で、音だけではこの『DnA』が今までの作品とどう異なるのかは分かりづらいのも事実だが、デトロイトの世界観を意識した事でより情熱的なテクノソウルが権化している。



Check Vince Watson
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
LSD - Second Process (LSD:LSD 001)
LSD - Second Process
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何ともいかがわしいユニット名はクラブシーンに蔓延る危うさを匂わせるが、実はLuke Slater(Planetary Assault Systems)とSteve BicknellにDavid Sumner(Function)というハードテクノやミニマルにおける重鎮が手を組んだスペシャルプロジェクトで、3人の名前の頭文字がユニット名となっている。Planetary Assault Systems名義では骨太でファンキーかつハードなテクノを展開してきたSlater、UKにおけるミニマル・テクノの先駆者であるBicknell、そしてFunction名義でディープな音響も活かしたテクノで魅了するSumnerと、それぞれがテクノというジャンルにおいて自分のポジションを確立したアーティストである。そんな彼等によって2016年にベルリンのBerghainにおけるライブからユニットは姿を現し、そして2017年にはOstgut Tonから初の作品である『Process』をリリースしていた。その後もヨーロッパの大きなフェスやクラブでライブを披露し経験を積んだ上でリリースされた本作は、アナログでは2枚組となる十分なボリュームでこれでもかとフロアでの機能性に特化したミニマルかつハードなテクノが繰り出されている。基本的には良い意味では作風は統一されているので金太郎飴的な印象にはなるのだが、ヒプノティックな上モノのループと肉体を鞭打つ刺激的なキックによる疾走感に金属的な鳴りの音響を被せた"Process 4"だけ聞いても、このユニットのダンスとしてのグルーヴ感や麻薬のようなサイケデリックな覚醒感を重視した音楽性を追求しているのは明白だろう。"Process 5"ではより鈍く唸るような低音の強いキックやベースラインのファンキーな空気はBicknellの個性を感じさせるし、"Process 6"のFunctionらしいヒプノティックなループやSlaterらしい骨太なリズムパートを打ち出して勢い良く疾走するハードテクノは全盛期のJeff Millsを思わせる程だ。"Process 7"の電子音ループは正にMillsらしいというかスペーシーな浮遊感があり、その下では地面をえぐるような怒涛のキックが大地を揺らして、その対比の面白さと共に爽快な高揚感に包まれる。得てして音楽におけるこういった特別なプロジェクトは、各々の大きな知名度とは対照的に各々の個性が上手く活かされず凡作となる事も少なくはないが、このプロジェクトに限って言えば期待を裏切る事は全くなく、それどころか甘ったるさ皆無のハードなテクノが痛快でさえある。近年はハードな音楽を聞く機会が減った筆者にとっても、この刺激的なテクノが眠ったテクノソウルの目を覚まさせる。



Check Luke Slater, Steve Bicknell & Function
| TECHNO14 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Hallo Androiden (Blue Arts Music:BAMCD005)
John Beltran - Hallo Androiden
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20年以上にも及ぶ音楽活動において、今間違いなく第二の春を迎えているJohn Beltran。デトロイト第二世代の中でも特にアンビエント性が強く美しいハーモニーによる情緒的なテクノに長けたこのアーティストも、しかし2010年前後の作品は今思うとどこか吹っ切れずに迷いが感じられ、活動初期に於けるデトロイト・テクノ×アンビエントな音楽性に魅了されたファンにとっては物足りなさが残っていただろう。がここ2〜3年の復調は目を見張るものがあり、大らかなアンビエントを展開するシリーズの「The Season Series EP」や今年3月に発売されたPlacid Angles名義の22年ぶりのアルバム『First Blue Sky』(過去レビュー)等でも初期作風である叙情性豊かなアンビエンスや躍動するブレイク・ビーツやジャングルまでの多彩なリズム感が復活し、ファンにとっては待ち望んでいたBeltranらしさを感じていた者は多いだろう。そしてこのBeltran名義の新作だ、何と日本のインデペンデント・レーベルである福岡のBlue Arts Musicから世界に先駆けてリリースとなったが、その内容もこれこそBeltranと呼ぶべき夢のような素晴らしきアンビエントな世界が広がっている。前述の『First Blue Sky』はどちらかと言えばブレイク・ビーツを多用しダンス性を強調していたが、本作はメロディーやハーモニーの甘美なまでの美しさを強調しており、その分だけ陶然と酔いしれる魅力が溢れている。オープニングの"Alle Kinder"は牧歌的なシンセのリフレインと幻想的な呟きを反復させ、詰まったリズムのキックでじっくりとこれから待ち受けるドラマの幕開けを展開するようにじわじわと盛り上げ、アルバムの雰囲気をリスナーに知らせる。続く"A Different Dream"はキックレスの完全なアンビエントだが、躍動するシンセのシーケンスと壮大なパッドによる叙情性爆発な世界観はTangerine Dreamのコズミックな電子音響を思わせるところもあり、リズム無しでも脈動する感動を呼び覚ます。軽快に連打されるリズムが爽快な"Himmelszelt"はシンセの旋律も軽い躍動感を伴い揺れ動き、やや陽気なラテンフレーバーもあるダンス・トラックだ。ヒスノイズらしきチリチリとした音響の奥からぼんやりとしたドローンや素朴なアルペジオが浮かび上がる"One Of Those Mornings"はビートレスな夢幻のアンビエントで、続く"It's Because Of Her"も同様にビートレスで天上から光が降り注ぐようなシンセと荘厳なストリングスの掛け合いは祝祭感があり、この世とは思えない美しさは桃源郷か。勿論"Perfect In Every Way"のように複雑なブレイク・ビーツで踊らせるダンス性の強い曲にも魅力があり、豊潤なシンセの響きがあり底抜けにオプティミスティックな雰囲気としなやかに刻まれるリズムで、心身を快活にさせてくれる。完全にBeltranの初期の作風が復活した本作に対し否定的な意見など出て来る筈もなく、この夢に溺れてしまう麗しい甘美なアンビエント・テクノの前には称賛以外の言葉は見つからない。ただひたすら、この世界は美しい。



Check John Beltran
| TECHNO14 | 08:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Placid Angles - First Blue Sky (Magicwire:MAGIC017)
Placid Angles - First Blue Sky
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初期デトロイト・テクノに於ける重要なレーベルであるRetroactiveのカタログに名を連ね、その後1997年に『The Cry』という叙情的なアンビエント・ブレイクビーツの名作アルバムを残したまま、その名義では活動を停止し続けてある意味伝説化したPlacid Angles。それこそデトロイト・テクノの中でも屈指のアンビエント性を誇るJohn Beltranの別名義で、彼らしい優雅で美しいメロディーに躍動感溢れるブレイク・ビーツを絡めた作風は、どこか哀傷的な気持ちさえ呼び起こす素晴らしいものだった。だがしかし2000年以降になるとBeltranはやたらラテンなりオーガニック性の強い音楽、またはポストロックやエレクトロニカ方面に手を出したりとやや行き先を見失っていたと思う。ところがこの2〜3年の活動では初期のブレイク・ビーツを含めたダンスのグルーヴをはっきりと打ち出し、多くのファンが望んでいる初期作風が見事に戻ってきている事を感じた者は多いだろう。そして2019年、John Beltran名義の素晴らしいアンビエント・アルバム『Hallo Androiden』とほぼ同時期にこのPlacid Angles名義では22年ぶりとなるアルバムがリリースされた。先ず断言しておくと期待を越えて素晴らしいアルバムであり、冒頭の"First Blue Sky"からして喜びが溢れ出して体が飛び跳ねるような力強いジャングル風なビートが走っており、そこに清涼で爽快なパッドと希望に満ちたシンセのメロディーが大胆な動きを見せ、スケール感の大きい叙情性と共に躍動感が突き抜けている。続く"Angel"は悲哀が心を浸すアンビエントなムードで始まりつつも、次第に鋭利なリズムが加わって骨太な4つ打ちを刻みながら、メランコリーに染めていく感傷的なテクノだ。"A Moment Away From You"は近年よく見受けられる作風で、キック抜きでスネアやハイハットによる荒々しいリズムが溜め感を作りつつ、動きの多いIDM系の美しいシンセも躍動感を作る事に付与する曲で、キック抜きでも十分にグルーヴを生み出している。また"Vent"も過去の作風でも印象的だった幻想的な女性ボーカルを用いており、そこにしなやかなドラムン・ベースのリズムが荒れ狂うようにリズムを叩き出し、桃源郷へと上り詰める如く美しいシンセによって上昇気流に乗る激しくも叙情的な一曲。ジャジーな感覚もあるざらついたブロークン・ビーツ寄りな"Bad Minds"は、シンセのドラマティックなコード展開と希望溢れるポジティブなリフによって、うきうきと跳ねながら喜びが溢れ出しているようだ。そして最後の"Soft Summer (Revisited)"、これは1996年のBeltran名義の作品のリメイクなのだが慎ましく静謐な弦楽器の美しさが際立つアンビエント寄りなテクノで、リズムは入っているものの実に穏やかで優しいビート感にうっとり夢心地となる。ファンとしてはもう文句無しの期待通りでリズミカルかつデトロイト的な叙情性爆発のアンビエント/テクノの応酬で、今Beltranが再度アーティストとして春を迎えている事が感じられる。8月には来日予定もあり、今から期待せずにはいられない。



Check John Beltran
| TECHNO14 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Yourhighness - Stratofortress (CockTail d'Amore Music:CDA021)
Yourhighness - Stratofortress

テクノやハウスだけではなくディスコやアンビエントにまで手を広げながら異形な作風を展開するCockTail d'Amore Musicは、アンダーグラウンド性を伴いながらもこれからを期待させるアーティストを送り出してきている。過去にはBorn Free RecordsやRett I Flettaといった同様にアンダーグラウンドなレーベルから、破壊的で鈍い響きのアシッディーかつロウなテクノ/ハウスをリリースしているYourhighnessが、2018年2月頃にCockTail d'Amoreからリリースしたのが本作。オリジナルは"Stratofortress"の1曲のみだが、リミキサーにBorn Free主宰のSamo DJとエクスペリメンタルなモダン・テクノを作るRroseに、今や世界規模での評価を獲得した日本からのGonnoが名を連ねているのだから、内容に不足は無いだろう。"Stratofortress"はYourhighnessの過去の作風を踏襲したアーティストに期待する内容そのもので、鈍く野暮ったいキックがどっしり4つ打ちを叩き出しつつ鈍いアシッド・ベースがマシンガンの様に連打しながら現れ、そして金属的な鳴りのパーカッションも加わわって低温な空気感で退廃して狂った世界観を展開するテクノ・トラック。じわじわと微細な変化を付ける事で途切れない陶酔感を引き出し、ツール性に特化したロウ・アシッド・テクノは完全にフロアの狂騒の中にある。対して"Samo DJ Remix"は崩れたリズムがブレイク・ビーツとなり非常にグルーヴィーに揺れ爽快なハンドクラップも相まって実に躍動感に溢れているが、朧げで酩酊感のある呟きや金属が捻れるような奇怪な電子音が不気味さを醸し、こちらもトリッピーなテクノとして良い感じにぶっ飛んでいる。"Rrose Remix"は落ち着いた感もゆったりしたドラムのビートから始まりドローンにも近い電子音を被せて、所謂ディープな響きによって深く闇の中を潜航する音響テクノだが、次第にリズムも走り始めて1曲の中でじわじわと盛り上がっていく構成が演出されている。そして最後の"Gonno Remix"、やはりというか特に個性的なリミックスはスローモーながらも金属的な厳ついリズムがずんずんと沈み込み、歪んだアシッド・ベースが止めどなく牙を剥くロウ・アシッド・テクノはどこかインダストリアルな荒廃した雰囲気があり、一寸の光も見させずに闇で支配する狂気なりミックスだ。どの曲もアーティストの個性が表現されながら、全体的にマッドな作風で良い感じにフロアを狂わせてくれるであろう。



Check Yourhighness
| TECHNO14 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Âme - Dream House (Innervisions:IVLP09)
Ame - Dream House
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2004年にリリースされ世の中はデビューアルバムだと思っていた『Âme』(過去レビュー)は、実は本人達の中ではコンピレーション的な意味合いだったらしく、デビューから15年を経てようやくリリースされた本作こそ本当のデビューアルバムだと言う。そのように述べるアーティストこそベルリンのディープ・ハウス市場を長らく席巻するInnervisionsを代表するアーティスト、Frank WiedemannとKristian Beyerから成るÂmeで、様々なミュージシャンとのコラボレーションも行いながら構想も含めて3年に渡る制作の結果、ダンス・ミュージックという枠を越えてホーム・リスニングに耐えうるアルバムを完成させた。兎にも角にも「Rej」というフロアを揺るがす大ヒット作が記憶に残るものの、アーティストが成熟するにしたがってありがちな展開であるダンスにこだわらないホーム・リスニングという構想に良くも悪くもはまってしまったのか…という杞憂も無いわけではないが、元々ビート感に頼らずともメロディーとコードでの魅了する才能を持っているからこそ、結果的にはリスニング仕様になったからといって彼等の魅力は大きくは変わっていないし、ダンスだけにならなかったからこそより表現豊かにもなっている。Matthew Herbertをフィーチャーした"The Line"はビートレスな構成で、魔術を唱えるような歌に合わせミニマルな電子音の反復を合わせ、何やら宗教的な荘厳ささえも感じさせるアンビエント性があり、じわじわゆっくりと艶やかに展開する様はÂmeらしい。続く"Queen Of Toys"は比較的ダンス性の強い曲だがこれも上げるのではなく、歪なキックや不気味な電子音が暗い闇を広げてずぶずぶと深い所へ潜っていくディープなニューウェーブ調。"Gerne"ではジャーマン・ニューウェーブのMalaria!のメンバーであったGudrun Gutをフィーチャーしている事もあり、レトロな時代感のあるボディーミュージック的というか、刺激的なマシンビートを刻みながら汗臭くあり肉体感を伴うグルーヴが感じられる。そして遂にはジャーマン・プログレの鬼才であるClusterからHans-Joachim Roedeliusも引っ張り出して完成した"Deadlocked"は、前のめりなダンスではない変則ビートを用いた上に、キーボード演奏らしきフリーキーなメロディーや重厚な電子音響がどんよりと立ち込めるクラウト・ロック調で、変異体であったジャーマン・プログレへの先祖返りを果たしつつÂmeらしく深遠にメランコリーを響かせている。勿論全てがリスニング向けというわけでもなく、"Helliconia"ではDavid Lemaitreによるサイケデリックなギターをフィーチャーしながら、覚醒感を煽る多層的なシンセのリフと低空飛行のじわじわと持続するグルーヴ感によって、パーティーの中で感動的な場面を作るようなダンス曲もあり従来のÂmeらしさを踏襲している。しかしやはり全体としてはじっくり耳を傾けて聞くべき作風が多く、その後も木製打楽器のような不思議なリズムに祈りを捧げるような合唱で神聖な響きを打ち出したエレクトロニカ調の"No War"や、切ない感情を吐露する歌とメランコリーなバレアリック調のトラックを合わせた"Give Me Your Ghost"と、強烈なビート感は無くとも何度も聞くうちにじんわりと肌の奥底まで染み込んでいくようだ。シングルヒットを重ねてきた過去の作風と比較すれば一見して地味なリスニング寄りのアルバムであるのは否定出来ないが、じっくりと時間を掛けて制作した事もあり何度も聞く事で魅力が深まっていく作品でもある。ダンス曲も聞きたいという思いもあるが、それはこの業界らしくEPで披露するという事なのだろう。



Check "Âme"
| TECHNO14 | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Silent Harbour aka Conforce - Noctiluca LP (Echocord:Echocord 078)
Silent Harbour aka Conforce - Noctiluca LP
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2008年頃からリリースを始め、この10年間でConforceやSevernayaにVersalifeその他含め多くの名義を用いてテクノやエレクトロにアンビエントやエクスペリメンタルと、様々な要素の音楽性を展開してきたオランダのBoris Bunnik。そしてこのSilent Harbour名義はその中でもダブ・テクノを担うプロジェクトに分類され、決して活発とは言えないこのプロジェクトは過去にダブ・テクノの名門であるEchocordとDeep Sound Channelから2枚のアルバムをリリースしており、そういった経歴からも如何にダブ・テクノへ取り組んだ名義であるからは理解出来る。様々な名義で活動するBunnikの中では休眠状態が長きキャリアの中心となるものではないだろうが、しかしその深い残響の中に潜む美しい音像は決して小手先で取り組んだものではなく、Bunnikにとって多面的な音楽性の一つとして確立されている。さてこの3枚目となるアルバムは6曲で構成されたミニアルバム的な扱いでボリュームは少なめで、今までの作風同様にダブな音響と不明瞭な響きを活かしつつ、曲によっては全くダンスフロアも意識しないアンビエント性まで取り込んでいる。実際にオープニングには全くリズムの入らない"Riparian"が配置されており、空間を切り裂くような電子音響が浮遊したドローン状態が持続して惑わされ、続く"Noctiluca"でもアブストラクトで快楽的な上モノと濃霧のようなぼやけた残響に覆われたBasic Channel直系のビートレスなアンビエントで、光の差し込まない深海の海底を潜航するようだ。序盤の2曲でダブ音響を主張したところで、それ以降はハートビートの如く安定した4つ打ちを刻むダブ・テクノが続く流れで、叙情的な上モノが心地好く伸びて時折奇妙な電子音響も混ざる"Dwelling"から、グルーヴを落ち着かせて音数を絞る事でダブの残響を目一杯強調した奥深い空間演出をした"Peridinum"、官能的な上モノのリバーブとざらついた音響がまんまBasic Channelな"Fusiformis"、そして開放的な広がりのある残響がゆったりと広がりディープかつ叙情的な風景を描く快楽的なミニマル・ダブの"Pelagia"と、決して強迫的なダンスのグルーヴを刻む事はないがリスニング性を伴いながら陶酔感たっぷりなダブの音響を活かしてふらふらと踊らせる曲を用意している。本気でダブ・テクノに取り組んだ事が明白な完全なるダブ・テクノのアルバム、意識も朦朧となるようなリバーブの残響に覆われた見事な統一感があり、Bunnikによる複数のプロジェクトの中で明確な存在感を発している。



Check Conforce
| TECHNO14 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hoavi - Phobia Airlines (Fauxpas Musik:FAUXPAS 029)
Hoavi - Phobia Airlines
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NocowやRising Sunといったレーベルを初期から支えるアーティストに、そしてSven Weisemann変名のDesolateやConforce変名のSevernayaら著名なアーティストもカタログに名を連ねるドイツはライプツィヒのFauxpas Musikは、テクノからハウスにブレイク・ビーツからリスニング系まで多少なりとも幅を持った音楽性のあるレーベルだが、おおよそどの作品にも共通する要素は包み込むような温かいアンビエント性だろう。本アルバムもそのレーベル性に沿った内容で、手掛けているのはサンクトペテルブルク出身のKirill VasinことHoaviだ。Web上にもアーティストの詳細は余り公開されておらず作品数も多くないためどういったアーティストかは不明だが、まだ20代後半と比較的若手の存在である。アルバムの出だしこそ落ち着いたノンビート構成の"Cloud9"で深い濃霧に覆われたような視界もままならないディープなアンビエントだが、人肌の温もりを感じさせる温度感は非常に情緒的。そこからは曲毎に様々な変化を見せ、湿度のあるキックに硬いパーカッションが打ち付ける"Kill The Lama"はアシッド・サウンドが飛び交いつつアンビエントなパッドに覆われ、"Can't Explain"ではぐっとテンポを抑えたダウンテンポに80年代風のローファイなパーカッションやアシッドを絡めた叙情的ながらもヒプノティックな響きがあり、そして"Phobia Roadlines"ではしなやかなドラムン・ベースかブレイク・ビーツかと言わんばかりの小刻みなリズムを刻みつつ無重力で浮遊感のある上モノを張り巡らせたアトモスフェリックな作風と、とても一人のアーティストとは思えない程にバリエーションの豊かを強調する。"Contour"辺りは安定感あるキックとディレイを用いたダビーな音響による幻惑的なディープ・ハウスで、特に幽玄なエレクトロニックの響きに陶酔させられる。時に激しく振動するリズムから大らかな波のようにゆったりとしたグルーヴまで、曲毎に動静の変化を付けてリスニングとダンスを行き交うアルバム構成だが、一環して霞がかった深い音響によるディープなアンビエント性は鎮静作用があり、睡眠薬の如く微睡みを誘発する。前述のSven Weisemannらの静謐で残響心地好い音楽性と共鳴する内容で、まだアーティストとして未知な部分は多いものの期待が寄せるには十分だ。



Check Hoavi
| TECHNO14 | 11:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |