Antoine Kogut - Remixes (Versatile Records:VER125)
Antoine Kogut - Remixes
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フレンチ・ハウスと言ったら兎にも角にもVersatile Records、ストレンジな電子トラックから耽美なディープ・ハウスに、ダンスからリスニングとバランス感覚に優れた老舗レーベルは、ダンス・ミュージックという忙しない業界に於ける流行り廃りとは距離を置いて迷い無き道を突き進む。本作はフランス人アーティストであるAntoine Kogutが2018年にリリースしたアルバム『Sphere Of Existence』からのシングルカットで、レーベル主宰のGilb'RとI:CubeによるChateau Flight、そしてI:Cube単独、3人組のDJクルー&ライブバンドであるFlegon、そしてAntinoteからレフトフィールドなダンスをリリースしたRaphael Top Secretの4組がリミックスを提供している。アルバム自体はゆったり肩の力が抜けた切ないバレアリックなモードだったものの、このリミックスではそういった雰囲気を引き継ぎながらもクラブ感覚を増したダンス性も加わり、曲によっては興奮に包まれる真夜中のバレアリック・ダンスになっている。"Sphere Of Existence (Chateau Flight Remix)"は甘く囁くような歌を活かした90年代のイタロ系バレアリック・ハウス調で、メランコリーを誘うサックスの響きから覚醒的なアシッドのシーケンスへの転調を伴い、耽美な鍵盤のコード展開と疾走するビート感の流れも含んで、実に大らかで心地好く展開する。I:Cube単独のリミックスとなる"Sphere Of Existence (I:Cube Unexpected Dub)"では、そのダブミックスという通りに派手なメロディーは抑えられてその代わりにタム等のパーカッションを活かしたビート重視の作風となり、やや内向的で陰鬱さもあるディープ・ハウス仕様。"L'oeillet Noir (Flegon Remix)"はバンドらしく生っぽさを打ち出したざっくり質感で、ドラムやオルガンに鍵盤といった楽器を生演奏しているのだろうか、しみじみと情緒深く聞かせるスローモーなディスコ・スタイル。そして"Current Density (Raphael Top Secret Remix)"は繊細なフェンダー・ローズが優美さを奏でつつ、ヒップ・ハウス的な軽く跳ねるリズムで浮遊感を伴って、色っぽさや官能といった芳香もする大人びたハウスになっている。どのリミックスにも各アーティストの音楽性が繁栄されているが、流石Versatileらしく基本はダンスな作風ながらもメロディーやハーモニーも尊重した音楽的な豊かさが活きており、メランコリーな気分に浸れる事だろう。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2019/8/12 Euphony @ Aoyama Zero
ニュー・エイジやアンビエントの再燃・再発掘が作品のリリースとしては肌に感じるものの、実際にそれをクラブ/パーティーで聞く機会は未だ少ない。どうしてもクラブ側が盛り上げようとするとメインフロアもセカンドフロアもダンス中心に向かいがちな現状において、敢えてアンビエントやニュー・エイジ、いやそれだけでなくエクスペリメンタルやワールド・ミュージックとダンスに執着する事ない音楽を軸に、オーガニックからエレクトロニクスが交差し時代や国境を超越した世界を構築するパーティー『Euphony』が立ち上がった。元来ワールド・ミュージック性が強いInoue Kaoruが発起人となり、バレアリックやアンビエントに造詣の深いmaa、そしてサイケからアンビエントまで広範囲なshunhorの3人が紡ぐバレアリックのその先へ。時代にジャストにハマるパーティー『Euphony』が始動する。
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| EVENT REPORT7 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Giovanni Damico - The Boogie Tracks LP (Star Creature:SC1215)
Giovanni Damico - The Boogie Tracks LP
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トロピカル、レトロ・フューチャー、シンセ・ファンクといった言葉が思い浮かぶポップなジャケットが印象的な本作、内容もほぼそのまんまにイタロ・ディスコやシンセ・ファンクを含んだブギーなアルバムで、正に期待通り。手掛けているのはイタリアのGiovanni Damicoというアーティストで、経歴を調べてみると過去にはRondenion率いるRagrange Recordsからのリリース歴もあったりと、ファンキーな音楽性もあるのは納得だ。しかし過去の作品以上に本作はポップなシンセ・ファンクが打ち出されており、ネオンライトの眩しい光に照らし出されるようなシンセの使い方が快楽的でさえある。キッチュなシンセのアルペジオから始まる"Spazio E Tempo"は伸びやかなシンセの旋律やアタック感の強いキックを用いた緩んだイタロ・ディスコで、甘ったるい歌やうねるシンセもあって俗物的な感覚がありながらも、ポップな色彩感覚に彩られている。"Boogie Erogeno"はタイトルにブギーという言葉も含まれている通りブギーなグルーヴ感があり、朗らかな笛の旋律とうねるシンセの弾けた感もあって、フュージョン風な爽やかな一曲。"Puma Beat"もブイブイとうねるシンセが特徴的で、そこに鋭く切り込んでくるドラムや懐かしさもあるシンセのシーケンスも交えて、古き良き時代のライブ感溢れるディスコを思い起こさせる。躍動的なマシンドラムのビート感が快活な"Rise Up"では流麗なシンセのコード展開に合わせて、甘ったるく気怠い歌とボーコーダーを通したロボット・ボイスが交互に現れ、メロウながらもダンス性の強い曲で魅力的だ。対して最後の"Stream Of Souls"はアタック感の強いキックを用いながらも淡々とリズムを刻み、アンニュイで微睡みを匂わせるシンセのフレーズを掛け合わせて、大きく展開を繰り広げる事なくミニマル性の強い流れによって平穏へと向かって終焉を迎える。基本的にはどの曲も鮮やかで派手なシンセ使い、安っぽくも刺激的なドラムマシンのリズム、そしてポップで楽天的な響きや旋律で統一されたアルバムで、シンセ・ファンクやシンセ・ポップといったジャンルを好む人にとっては文句無しの内容だ。



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| HOUSE14 | 10:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
MATstudio - MATstudio 1 (Melody As Truth:MAT-ss1)
MATstudio - MATstudio 1
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アンビエント/ニュー・エイジの再燃というムーブメントの中で台頭したMelody As Truthは、ギタリストであるJonny Nashが主宰するレーベルで、主にNashとそしてSuzanne Kraftによる作品をリリースする。音の間にある静寂やダンスの狂騒とは真逆の静謐を打ち出したその音楽は美しくも微睡みに落ちるように幻想的で、昨今のニュー・エイジ隆盛の中で現在形を提示している。そしてNashとKraftによるこの新しいプロジェクトである「MATstudio」は、彼等の説明ではMelody As Truthのスタジオにおける即興や実験に偶然の出来事のコラージュした作品との事で、Melody As Truthらしい穏やかな叙情性はあるが即興という事もあって今までの作品よりも随分とエクスペリメンタルな風合いが強い。2曲のみの収録ながらもそれぞれ17分越えの大作だからこそ、その長尺の中で明確な形を見せるのではなく即興セッション的な構成が定型の無い抽象的な音楽となり、静けさが持続しながらもある意味では刺激的な作品だ。ドローン的で不気味なギターの広がりから始まる"In Strange Company He Spoke Softly"はエレクトロニクスも加わるが断片的なパーツを切り貼りしたような展開で、意思が感じられる明確なメロディーではなく単なる音の連なりが気の赴くがままに刻まれる。暫くすると繊細なピアノが美しいメロディーを表現しウッドベースも動きを付けたりと、電子とアコースティックが一つとなりながら聞きやすいアンビエント展開を見せたりもするが、そのパートを過ぎると今度はドラムも入ってきて捻れたような電子音が躍動するエレクトロニカな構成もあったりと、一曲の中で様々な表情を見せるのはやはり即興による自由なプレイだからだろう。"The Land Through Which We Pass"はよりアンビエント的な始まりで、エレクトロニクスのドローンにディレイの効果を被せて音が放射しながら充満し、次第にミニマルな反復の展開からもやもやとしたアブストラクトな音像まで変化し、トリッピーなパーカッションを用いた異国情緒溢れるエキゾチックな終着点へと辿り着く、正にタイトルの如く複数の土地を通過してきたように様々なパートで成り立っている。確かに両曲ともアンビエント/ニュー・エイジという言葉で表現される音楽性ではあるが、単に心地好いだけのそれではなく、枠に当てはまらない偶発性やライブ感を重視した自由度の高さを目指した音楽は、単なるBGMにはならない刺激的な響きがある。こういった音楽のリバイバルが過去の名作掘り起こしに目が向けられる事が多いが、NashとKraftは未来へと視点が向いているアーティストとして好奇心を抱かせる。



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| ETC4 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Joey Negro - Distorted Dreams EP (Z Records:ZEDD12262)
Joey Negro - Distorted Dreams EP

購入してから放置しておいたらいつの間にか発売から1年経過していた本EP、ソウルやファンク、そして特にクラシカルなディスコの求道者であるJoey Negroによるものだが、これがすこぶる良いので紹介したい。2017年にリリースされたアルバムの『Produced With Love』に収録された曲を他アーティストがリミックスしたEPなのだが、Negroの音楽性が比較的熱心なディスコ信者らしいクラシカルなスタイルなのに対し、ここではCrackazatとLay-FarにFoukと現在形のハウスを提唱するアーティスト、そしてシカゴ・ハウスの巨匠であるRon Trentがリミックスを手掛けて、これぞモダン・ハウスと言わんばかりの内容でアップデートを掛けている。Trentによる"Distorting Space Time (Ron Trent Remix)"はここではレイドバックして肩の力が抜けたグルーヴとダビーな残響を活かした開放感のある生っぽいディスコ×ダブ・ハウスで、生演奏によるギターやベースの湿っぽさやオルガンやシンセのうっとり甘いメロディーに軽く陶酔させられ、大人の余裕さえ感じさせる包容力に満ちた作風だ。対して"Latican Boogie (Crackazat Remix)"は序盤からすっきりと、そして太いキックが地を固めつつ、美しいシンセのリフやピアノのコード展開をフィルターで変化させながら盛り上げていくポジティブなハウスで、若々しいエネルギーが溢れ出すピアノ・アンセム的な爆発力を伴い高揚感の中を突き抜ける。"In Search Of The Dream (Lay-Far Remix)"もフューチャー・ジャズやディスコにファンクなどの要素が混在するLay−Farらしい音楽性が発揮されたリミックスで、ざっくりとした生っぽい響きのブロークン・ビーツにエレクトロニックで豊かなシンセやベースサウンドによって色彩豊かな感覚に包み込んで、喜びや希望が溢れるブギー・ハウスは現在形のモダン・ディスコでもある。そしてJunktionとDaniel LesemanのユニットであるFoukの"Distorting Space Time (Fouk Remix)"、こちらはライブ感あるパーカッションとざっくり生っぽい荒さのあるブギーなビートを活かして、浮遊感のあるTrentのリミックスよりもどっしり重心を落としややツール性を強調したディスコ・ファンクな趣きか。参加アーティストの豪華さに惹かれながら、更に期待を越えてくる位の各アーティストの音楽性が自然と表現されたリミックスで、これはもう文句無しだろう。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |