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DJ Kensei - IS PAAR (Mary Joy Recordings:MJCD-067)
DJ Kensei - IS PAAR
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日本屈指のビートメーカーであるDJ Kenseiが2015年の秋にタイ〜ラオスを旅した際に録り貯めた音源集、それがキャリア初のビート集となる『IS PAAR』だ。過去にはFinal Drop名義で屋久島の自然音との調和を目指したアルバムもリリースしているが、今回は東南アジアだ。元々は2000年前半に仲間とタイへ行き録音を試みていたものの、トラブルにより当時は何も出来なかった事があり、今になりその当時に借りを返す事や現地の音や空気を浴びつつスケッチしたいという思いが本作の制作へと至ったようだ。やはり東南アジアでの制作という影響は音楽性にも顕著に現れており、DJ Kenseiの元来から備わっているヒップ・ホップやダンス・ミュージックのビートに、現地での日常の各場面で遭遇する音のフィールド・レコーディングや演奏者の音も乗せる事で、その雰囲気は確かに東南アジア独特の訝しさなり緩さが感じられる。現地での緩い日常生活、そして限られた機材を用いて録音・制作された事もあり、エッジの効いた硬いビートや洗練よりも初期衝動が伝わるラフさやリラックスしたビートが基本で、音に耳を集中させるよりはBGMとして聴く位がむしろ丁度良い感覚だ。実際にDJ Kensei自体もライナーノーツで「現地で自分の日常のBGMとして聴いていた」と述べており、特に38曲で64分という各曲が短い構成だからこそ風景が移り変わるように素早く展開していく様が、確かにラフな風景のスケッチらしさを喚起させる。ヒップ・ホップにブレイク・ビーツ、そしてハウスにダウンビートやファンクまでさらっと自由奔放なビートを刻みつつ、タイやラオスの弛緩した空気感をふんだんに取り込んだ本作は、ビート集とは言いながらもある種のサウンド・スケープでもあるのだ。張り詰めた日常に効果的な、ほっと一息出来るBGMになるだろう。

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| ETC4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Charles Hayward / Gigi Masin - Les Nouvelles Musiques De Chambre Volume 2 (P-Vine Records:PCD-24520)
Charles Hayward / Gigi Masin - Les Nouvelles Musiques De Chambre Volume 2
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過去の失われた名作の再発、そして現在のダンス・ミュージックのアーティストらとも接続しながら新作を制作するイタリアはヴェネチアの音響音楽家・Gigi Masin。そして言葉通りにプログレッシヴなポスト・パンクを手掛けていたThis HeatのメンバーであるCharles Hayward。そんな彼等が1989年にSub Rosaからスプリット・スタイルでリリースしたアルバムが本作で、今まで未CD化だったものの昨今のMasinの再評価を受けて目出度く世界初CD化されたのだ。音楽的な相性に疑問も残るスプリット盤は、両アーティストを気に入っていたレーベル側の意向によるものだが、しかし本作にはMasinによるサンプリング・クラシック化した名作「Clouds」が含まれている事もあり、Masinの魅力を計り知るには十分な内容だ。“新しい室内楽”というタイトル通りに少人数による演奏の如き構成は、極めて静謐で優しい程に繊細なインストメンタルで、特にMasinサイドは研ぎ澄まされた最小限のピアノと豊潤な電子音によって美しい風景を目の前に広がらせる。水の都であるヴェネチアをイメージしたであろう"Waterland"はか弱いピアノだけによって控え目にメランコリーを奏で、続く"Clouds"でピアノが滴り落ちるような美しい旋律にミニマリズムを生む電子音を被せ、自然と無駄が排された極シンプルな構成の中に純朴な美しさを生んでいる。"La Giara Di Gesturi"では弦楽器らしき音も用いながらクラシックとも宗教音楽とも取れる荘厳な空気を纏い、"Goodbye Kisses"ではギターや電子音に残響を効かせながらゆったりと優しさが広がっていく。一方でHaywardも水をテーマにした21分にも及ぶ"Thames Water Authority"を提供しているが、こちらは現代で言うドローン・アンビエントと呼ぶべきか。抽象度を極めて高くし持続音や不気味な音響を多用し、幻想的な音ではあるものの不協和音となって迫る廃墟と化したようなドローンは、Masinとは対照的に灰色の世界に染まっている。Masinの慈愛に満ちた繊細なアンビエントに対し、Haywardによる半ば強迫的な荘厳さが覆うドローン・アンビエントと、その異なる作風が同じ盤に収められているのはやや不可解ではある。それでもMasinサイドは十分に彼の魅力である美しい響きが伝わるので、この再発の機会に手を取ってみて欲しい。



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| ETC4 | 20:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Tempelhof & Gigi Masin - Tsuki (Hell Yeah Recordings:CLTCD-2054)
Tempelhof & Gigi Masin - Tsuki
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そもそも一度目の春があったかどうかはさておき、イタリアの音響音楽家であるGigi Masinにとっては、今こそが長い音楽キャリアの中で春の真っ只中という状況だろう。全ては2014年にMusic From Memoryが掘り起こしたベスト盤の『Talk To The Sea』(過去レビュー)を起点として現状までの流れが続いており、過去の殆どの作品は復刻されて慎ましく美しい音響作品はようやく多くの人に届くようになっている。だからと言ってMasinが過去の人であるわけでもなく、リイシューを契機に知名度を得た事で音楽活動が盛んになり、今ではLuciano ErmondiとPaolo Mazzacaniによるバレアリック派のTempelhofとのコラボーレーションも積極的に行うなど、現在進行形のアーティストしてシーンへとすっかり馴染んでいる。本作はそのコラボーレーション第2段となるアルバムで、2014年の『Hoshi』に続き日本語をイメージした『Tsuki』という静謐なタイトルが付けられている。制作はどちらかがベースとなる曲を作ったり、又はそこから一部を削除したりと、お互いが手を加える事でリミックスにも近い環境であったようだが、両者の音楽的な境目は全く分からない程に自然な融和を成している事でコラボレーションの結果は間違いなく成功している。アルバムの始まりはかの名曲"Clouds"のリメイクである"Tuvalu"で、天使の羽衣のようなふんわりとしたシンセのリフレインと滴り落ちる静謐なピアノのメロディーが哀愁を誘発し、引いては寄せる波のように叙情の盛り上がりを展開し、いきなりドラマチックな世界観に引き込んでいく。そこから青空が広がるように爽快なパーカッションが心地良く響く"Corner Song"では、Masinらしい柔らかく美しいストリングスが伸びて、広大な空に絵を描写するような壮大さがある。"Vampeta"も抜けの良いパーカッションが上の方で鳴っているが、ここでは情緒豊かなトランペットが効果的に用いられ、ジャズ・フィーリング溢れる躍動感を備えている。逆に"Komorebi"ではエレクトロニクスを中心にしながらドローン音を背景に、コズミックな電子音を散りばめながら途中からトライバルなリズムも加わって、何だか原始の胎動を含むアンビエント的だ。終盤の"Treasure"では残響の強い歌も配して宗教的な厳かさを演出し、非日常的な神聖な佇まいは祈りにも感じられる。多少はアルバムの中でジャズやアンビエントにサウンドトラック的なものまで幅があるものの、どの曲にもシンプルでありながらこの上ない静謐さと美しいメロディーを際立てる特徴があり、リスニング・ミュージックとしての世界観が統一された素晴らしい内容になっている。その美しさには溜息しか出ないだろう。



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| ETC4 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Wilson Tanner - 69 (Growing Bin Records:GBR005)
Wilson Tanner - 69

メルボルンの新世代、Andras FoxやA.r.t. Wilson名義でも活動するAndrew Wilsonは、ロウ・ハウスにアンビエントやニューエイジと作品毎に姿を変えつつも、そのどれもに淡い色彩感覚と素朴な響きを含みエレクトロニック・ミュージックの更なる開拓を進めている。そんな彼と同郷のJohn TannerもEleventeen EstonというユニットでAORを鳴らすアーティストで、今回はそんな新世代二人が手を組んでGrowing Bin Recordsからミニアルバムをリリースした。Growing Binからは過去にA.r.t. Wilsonとして「Overworld」というミニアルバムをリリースしている事もあって、レーベルとの良さは相性は既に確立されており、新作では更にバレアリック/アンビエントの奥へと進んだ自然派志向に寄り添った音楽性を開花させている。何でも二人はインド洋を臨むスワン川でキャンプを設営し、暖かい太陽の光や海の空気、そして青い空を体験した事に影響を受けて本作を制作したそうだが、正にそんな穏やかな自然の雰囲気が音楽へと反映されている。透明度が高く暖かいパッドの浮かび上がりから始まる"Sun Room"は、直ぐに弛緩したクラリネットのメロディーも加わり、ビートレスな展開のまま綺麗な湧清水がこんこんと溢れるように純朴な雰囲気に満たされ、アルバムの冒頭から涅槃へと辿り着いたかのようだ。続く"Long Water"も同様にオーガニックな響きがあり、シンセと哀愁も含んだ静かなピアノに爪弾きのようなアコギが叙情を誘発し、静けさに満たされた夜の浜辺を喚起させる。"Before Lotus"はTannerによる作品だが、ここでは快適なシンセのリフレインを軸に残響を効かせたギターが開放感を生み、何だかアンビエント・ハウスな趣きがある。逆にWilson作である"Pilot"は生音志向が強く広がりのあるギターを効果的に使い、そこに神秘的な電子音をさらっと持ち込んで、ややスピリチュアル性の強いニューエイジ色が強めに出ている。アルバムの中で一番長尺な"Further Than Your Headlights"は、咆哮のような咽び泣きギターやドローンのような電子音が何だか昔のジャーマン・プログレらしきサイケデリアを思わせ、座禅を組み音と向い合って瞑想すべきような重々しい世界観さえある。それでも落ち着きのある作りは聴く者の疲れを取り除き、忙しない毎日の中で一時の癒やしとなる時間を作り、元からそこにあったかのようなBGMとしての存在感が心地良い。ひたすら脱力系のナチュラル・アンビエント。



Check Andras Fox & Eleventeen Eston
| ETC4 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Suso Saiz - Odisea (Music From Memory:MFM009)
Suso Saiz - Odisea
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Gigi Masinら歴史に埋もれてしまったアーティストの発掘に勤しむMusic From Memoryは、今や新作のリリース毎にヒットを約束された重要なレーベルの一つになっている。ダンス・ミュージックからは距離を置いた環境音楽やニューエイジにジャズなど、そして単なるベスト盤としてではなく未発表音源も掘り起こしながら、そのアーティストの紹介に寄与するような運営は敬服すべきものだ。そんなレーベルが自信を持って送り出す新作は、スペインのギタリストであり電子音楽家であるSuso Saizのコンピレーションだ。1984年から現在に至るまでに大量のアルバムを制作しており、決して隠れた存在とは言えないかもしれないが、しかしMusic From Memoryの後押しは間違いなくこの機会に多くの人にSaizの魅力を伝えるだろう。収録された曲は1984年作のアルバムから2006年に制作された未発表曲まで及び、ほぼ全ての時代を網羅するようにバランス良く選曲なされている。アルバムの冒頭を飾る”Un Hombre Oscuro”は彼のアンビエント・サイドが打ち出された曲で、ぼんやりと幻想的に浮かぶシンセと空の彼方に消え入るようなポエムを配し、その静謐な響きには心が洗われる。続く"Ya Son Dos Los Cielos"はギタリストとしての手腕が発揮され、ディレイを効かせたギターを被せて夢の如く儚い音色で耳を惹き付けるインストメンタルで、シンプルな構成が故にギターの叙情が強く迫る。フェンダーローズやギターにパーカッションなどを用いた色彩感の強い"Prefiero El Naranja"にしても、一音一音が浮かび上がるように研ぎ澄まされ、耽美な響きは重力の支配から解き放たれように広がるサウンド・スケープを描き出す。かと思えば"Una Gota De Asfalto"は空間を切り裂くギターとコズミックなシンセが導くシンセ・ポップだったり、"The Ten Heads Of Someone"では重厚感あるピアノのか弱い残響が広大な空間創出を行う現代音楽的な作風が聴けたりと、アナログ楽器と電子楽器を巧みに操り実に心地良いゆったりとしたムードを作り上げている。どんなスタイルであろうと嫌味の無い清楚な響きで体の隅々まで洗うような音楽性は正にニューエイジか、そしてMusic From Memoryというレーベル性の確立にも役立ってしまっている事に驚くばかり。美しくもメランコリーな素晴らしいインストメンタルだ。



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| ETC4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
CFCF - On Vacation (International Feel Recordings:IFEEL051)
CFCF - On Vacation
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International Feelが新たに立ち上げたミニアルバム・シリーズの第二弾は、カナダはモントリオールのアーティストであるMichael SilverことCFCFによるものだ。ここ数年で1080pやPaper Bag Recordsなど複数のレーベルから作品をリリースしているが、テクノやハウスだけでなくニューエイジや現代音楽にバレアリックまで作風は多岐に渡り、なかなかアーティスト性は掴めないものの和みのある音楽性は特徴だろうか。ここでは現在のバレアリック・ミュージックを引率するInternational Feelからのリリースという事もあり、当然バレアリックな内容ではあるものの生演奏をふんだんに盛り込んだ制作のおかげか、その開放感もより広がりを増して屋外向けのリスニング系としてはまるだろう。シロフォンらしき柔らかい音色が弾け、笛やシンセも混じって色彩豊かに踊り出す"Sate Padang"は、太陽の光を浴びる中でビーチを散歩するようなトロピカル感のあるダウンテンポだ。続く"Arto"ではアコーディオンやアコギを用いた切ないイントロから、乾いたパーカッションも入って哀愁がたっぷりと溢れる夕暮れ時の時間へと移行するような展開で、ほっと安息の時間が訪れる。短いインタールードとして挿入された"In The Courtyard"はノンビートのぼんやりと瞑想するアンビエントだが、そこからファンキーなベースやギターが広がり爽快な青空を喚起させる"Pleasure Centre"はソフト・ロックかファンクのようなうねる躍動が感じられる。裏面でも穏やかな情景は変わらず、爽やかな響きのコンガとアコギに合わせてドリーミーなシンセで白昼夢に誘われる"Fleurs Laisses Dans Un Taxi"、空気に溶けて消えるようにシンセの淡い色彩が揺らぐ有機的なアンビエントの"Lighthouse On Chatham Sound"など、全く汚れのない爽やかさと胸を締め付けるメランコリーの邂逅が成功している。『On Vacation』というタイトル通りで忙しない日常から解放され、リゾート地でのんびりとした時間を優雅に過ごす為のバレアリック・ミュージックであり、疲れた毎日さえも癒してくれるBGMになるだろう。



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| ETC4 | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Gigi Masin - Talk To The Sea (Ritmo Calentito:RTMCD1193)
Gigi Masin - Talk To The Sea
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リイシュー、初CD化、日本盤のリリースなど過去のありとあらゆる作品が掘り起こされ、日本も含めた世界的な規模で再評価著しいイタリアの音響音楽家、Gigi Masin。その勢いに呼応するようにMasinは現在形のダンス・ミュージックのアーティストと手を組み共作もリリースするなど、決して狭い枠のみの評価ではなく電子音楽やダンス・ミュージック側からの人気もひとしおで、一種のムーブメントにさえも感じられる。そんなMasinを未だ知らぬ人にとって一体どの作品がお勧めなのかと問われれば、間違いなく推薦するのがMusic From Memoryから2014年にリリースされ一挙に再評価へと繋がる契機になったベスト盤である。但しそれは直ぐに廃盤となり長らく入手困難となってしまったが、嬉しい事に今年になって日本盤でのリイシューが成されており、これを聞けばGigi Masinがどんな音楽家であるかと言う事を理解するのに役立つ事だろう。選曲は1986年作の『Wind』や1991年作の『The Wind Collectors』に複数のサウンドトラック、または2000年以降に制作された未発表曲まで網羅されており、単純なベスト盤以上のアーティストの歴史を総括するような内容だ。収録された曲の年代に幅はあれど、どの曲もMasinらしい淡い色彩のような音色に存在する静謐な雰囲気で統一性はあり、シンセサイザーのみならずピアノやベースにトランペットまで演奏し、更には艶やかな歌まで披露するなど非常にパーソナル性の高さが伝わってくる。手作り感と言うべきなのか丁寧に演奏された音は素朴で、色々な楽器を用いながらも無駄な装飾の無い響きは広大な大海原に静かに広がる波の如くリラックスしており、電子音も生音も相対する事なく一つの有機的な響きとなる。淡い風景の中に消え入るようなぼんやりとした抽象性があり、しかし繊細ながらもはっきりと打ち出される耽美な旋律が空間に存在し、まるで最初からその場にあったような自然な存在感は正にBGMでもある。現代音楽かニューエイジか、またはバレアリックな空気と感じる人も居るかもしれないが、この極限までの静謐な世界観はそうは比類無きものだ。サンプリング・クラシックとなった「Clouds」が収録されていないのは敢えてだろうか、それはまたオリジナル・アルバムの中で聴くべきという意志の現れなのかもしれない。



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| ETC4 | 05:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Len Leise - Lingua Franca (International Feel Recordings:IFEEL049)
Len Leise - Lingua Franca
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現代のバレアリック・ミュージックを体現するレーベルの代表格と言えば、Mark Barrottが率いるInternational Feel Recordingsである事に異論を唱える者は少ないだろう。DJ HarveyのプロジェクトであるLocussolusやイビサを代表するJose Padilla、そして日本からはGonnoやSteve Cobbyなどそうそうたる顔ぶれが並んでおり、このレーベルから作品をリリースする事は成功する事を半ば保証されている。そして、レーベルが新たに立ち上げたミニアルバム・シリーズの第一弾に抜擢されたのは、メルボルンのレコード・コレクターであると言うLen Leiseによるものだ。何でもBarrottがLeiseのカセット作品を惚れ込みレーベルから作品をリリースする事を打診し、その結果として2014年には「Music For Forests」をリリースする事に成功したそうだが、そこでの高評価が本作へと繋がったのだろうか。本作ではどうやら曲によってはとある地名が曲名に盛り込まれているようで、それを眺めるだけでも世界各地を旅するような感覚に陥ってしまう。アルバムはモロッコを意識した"Forlorn Fields"はエキゾチックな鐘の音色とのっそりとした気怠いビートに先導され、続く"Leaving Llucmajor"ではスペインらしい爽やかで情熱的なシンセのフレーズが開放感を生む中で、笛らしき音や弦楽器風な旋律も加わって鮮やかな色彩を帯びる。”Route To Reutov”はロシアのイメージなのだろうが、情熱的なサックスにしんみりするジャジーダウンテンポなものの、全体の印象は何だかトロピカルな感覚もあってInternational Feelらしい。そして辿り着いた先はインドであろう"Mandala Maksim"で、宗教的な怪しさも発する瞑想的な電子音の反復とオーガニックな打楽器の響きは、快適なダンスビートでありながら確かにインドの風景が浮かび上がる。裏面へと移り変わるともっとダンスフロアを意識した曲が現れ、土着臭放つアフロと変異体ディスコが手を組んだ"O Caminho"や木管楽器とベルの音が麗しく躍動する"Tria Bells"と、表面の長閑なバレアリック感とは対照的なエネルギーの高い多幸感が待っている。世界各地を巡るコンセプトとして面白い事もあるが、青々しい自然と共生するオーガニックな響きと豊かな電子音の絡みや抑圧から解放された大らかな作風は正にInternational Feelの音楽性にはまっており、シリーズ第一弾として今後の期待を抱かせるには十分過ぎるだろう。



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| ETC4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Gigi Masin, Alessandro Monti, Alessandro Pizzin - The Wind Collectors / As Witness Our Hands (Diplodisc:dpl 009)
Gigi Masin, Alessandro Monti, Alessandro Pizzin - The Wind Collectors / As Witness Our Hands
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Music From Memoryからの編集盤である『Talk To The Sea』やJonny NashやYoung MarcoとのユニットであるGaussian Curveの作品により、近年はクラブ・ミュージック側からもその動向が注目されるイタリアのGigi Masin。鍵盤奏者でありエレクトロニクスも導入する実験音楽家でもあり、そして静謐なアンビエントやニューエイジのような何処か瞑想じみた要素を感じさせる音楽を制作するプロデューサーだ。クラシックからのルーツも匂わせる美しさを放つディープ・ハウスを得意とするSven WeisemannがMasinをリミキサーに起用したり、橋本徹がGood Mellowsシリーズに彼の作品を収録したりするのを知れば、Masinというアーティストについても何となく想像出来るかもしれない。『The Wind Collectors』はそんな彼が1991年にリリースしたアルバムで、同郷のマルチプレイヤーであるAlessandro Montiと鍵盤奏者であるAlessandro Pizzinとセッションを行って出来上がった物だが、ここでは当時は録音されたものの収録されなかった曲まで追加された完全版として蘇っている。シンセサイザーとピアノの音を軸にギターやベースを用いた演奏は、一切の荒波を立てる事もなく、ただただ穏やかな地平線が広がるような静かな海の景色を喚起させる。強い主張をしないシンプルで繊細なメロディー、薄っすらと淡く広がるシンセサイザーの響き、静けさの中に宿る叙情など、非常に無垢で弱々しくも飾り気のない分だけ嘘偽りなく心に響く音楽だ。クラブ・ミュージックの観点からのアンビエントとは異なるし、かと言って実験が際立つ作品でもなく、ミニマルなコンテンポラリー・ミュージックとでも呼べば適切なのだろうか。そして、この度のリイシューでは何とデモ音源や未発表のセッションも収録した『As Witness Our Hands』も追加されており、そこではMasinの永遠の名曲である「Clouds」のデモやTerry Rileyのカバーである「Medusa's Refrain」も聞ける。話題性は十分であるのは当然として、これらのセッションを含んだ盤は幾分か感情が強く出つつ実験的な面も滲み出ており、古楽やフォークにプログレッシヴ・ロックの要素等が目を出している。だが気難しく構える必要はないだろう。ただただ淡い抽象画のような美しいサウンド・スケープに耳を傾ければ、穏やかな時間が待っている。



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| ETC4 | 07:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Tonight Will Be Fine - Elephant Island (Mule Musiq:mule musiq cd52)
Tonight Will Be Fine - Elephant Island
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日本発のレーベルながらしてその知名度は世界規模なMule Musiq、新作は予てから交流のあるドイツの抒情派ディープ・ハウスのレーベルであるSmallville Records関連のJulius SteinhoffとAbdeslam Hammoudaによるプロジェクトの初の作品だ。元々この二人が2008年にSteinhoff & Hammouda名義で"Tonight Will Be Fine"というタイトルのEPをリリースしていた経緯があり、そこからの派生として本プロジェクトが生まれたようだが、かつての幽玄で穏やかなディープ・ハウスからがらっと方向性は変わっている。彼等自身が述べる「ほろ苦いアコースティックなシンガーソングライター・プロジェクト」というように、電子音楽ではなく人の手による演奏をベースにしたネオ・アコースティックのような音楽性は、何故に彼らが?Mule Musiqから?とただただ驚くばかり。アコースティックギターにピアノやバンジョー、そしてドラムなどをプレイし、その上彼等自身が歌まで披露するなど、Mule MusiqやSmallvilleが今までに手掛けていたダンス・ミュージックとはジャンルとしては全く異なる内容に、一体どんな経緯で本作を制作したのかと疑問は尽きない。しかし向いている方向としてはそんなに異なるかと言うとそうでもなく、内向的な静謐さを保ちながらそれをジャム・セッションで再構築した音楽と捉えれば、確かに彼等らしさは失われていない。冒頭の"Hello"からして爪弾きしているような優しいアコギのメロディーと囁くような甘いボーカルは、無駄を削ぎ落したシンプルな叙情があり、安静の日々が浮かぶようだ。”Mindwings”のように歯切れの良いパーカッションとアコーディオンを用いたタンゴ風な曲、"Fine Night"のように繊細に研ぎ澄まされたピアノや鉄琴のメロディーが感傷的なインストなど、ネオアコだけでなくポストロックやタンゴにフォークなどの要素も見受けられる。騒然とした現代の街から離れて、ただただ安らぎを求めて感情を吐露したような優しい音楽は、確かにSmallvilleの豪華さや派手さを取り除いてシンプルに感情表現をする音楽性と変わらない。真夜中のパーティーで踊り疲れた後の優しいBGMとして、一時の安らぎの時間を提供してくれる事だろう。



Check "Abdeslam Hammouda" & "Julius Steinhoff"
| ETC4 | 11:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |