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Roland Klinkenberg - Construct (Green:GR107LP)
Roland Klinkenberg - Construct
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オランダのテクノ貴公子・Joris Voornが主宰するGreenから、同じくオランダ出身のRoland Klinkenbergによる新作がリリースされている。Klinkenbergについて耳にするのは初めてだったが、調べてみると90年台から25年にも渡って活動しているベテランアーティストであり、膨大な名義を用いて既に100以上のテクノやトランスの作品をリリースしているようだ。しかし、もし彼の過去の音楽性を知らなくとも、例えばJorisの音楽を好きである人ならば、その音楽性を継承する本作を迷う事なく手にすればきっと気にいる筈だ。"Construct #1"からしていきなりJorisの曲かと間違える程の作風で、幻想的な分厚いシンセのサウンドが雲の様に淡い層となりエモーショナルな空気を発し、パーカッシヴで小気味良いリズムでさくさくと爽快に疾走するテクノは、壮大な音響空間もありフロアで快楽的に響くだろう。"Nuages"はJorisのメランコリーな作風が強く、甘く囁くような女性のボーカル・サンプルやプログレッシヴ・ハウス影響下のシンセの音使いがしっとりとした情感を生み出し、温かみさえもある郷愁たっぷりなテック・ハウスだ。"Neversleeps"もメランコリックなメロディーや淡く幻想的な音使い、そしてファンキーなボイス・サンプルをアクセントに用いながら、反復と音の抜き差しで気持ち良く引っ張っていく。"Yani"はよりシャープかつ揺れるリズム感があり、もこもことしたアブストラクトな音像の奥に煌めくような音が時折現れるが、突き抜ける事はなくエネルギーを溜めながらじわじわと引っ張り続ける継続感がある。どれもこれも実に初期Jorisの音楽性を踏襲し、もし近年のJorisに満足出来ていない人にとっては、これこそがそれを補完するに値するだろう。そして本アナログには何とアルバムのダウンロード・コードも付いており、EPの世界観を更に拡大してテクノやテック・ハウスにアンビエントまで、ダンスからリスニングまでを網羅する壮大な叙事詩のようなスケール感の大きさを披露している。それらはかつてのTechnasiaやJoris Voornが展開してきたデトロイト・テクノのエモーショナル性に影響を受けつつ、ヨーロッパの洗練された音で表現した音楽であり、ストーリー性のある見事な出来栄えだ。



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| TECHNO12 | 13:30 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Jeff Mills - Exhibitionist 2 (U/M/A/A Inc.:UMA-1063-65)
Jeff Mills - Exhibitionist 2
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孤高のミニマリストであるJeff Millsが2004年に発表した『Exhibitionist』は、DJが実際にプレイしているところをその指先まで映し出す事で、DJが一体何をしているかという事を全て明らかにする衝撃的な作品だった。それ以降の彼は架空のサウンドトラックの制作や、交響楽団やダンサーとの共演、又はパーティー毎にコンセプトを設ける等、単にテクノとしてのDJではなく音楽とそれ以外を包括しながら芸術作品として求道的にテクノを開拓し、正に唯一無二のアーティストとしての立ち位置を確立させていた。そしてその流れが最高潮に達したのが本作であり、前作『Exhibitionist』を継承するDJMIXから音楽制作の解説にTR-909のライブプレイまで収録した、正に音楽家の全てを披露した内容となっている。メインとなっているのは"Exhibitionist Mix 1"で、CDJ4台とTR-909とミキサーのみを使用して、スルスルといつの間にか自然と曲をミックスしてしまう芸術的な技を披露しているが、それはかつての使用したレコードを投げ飛ばしながらガツガツと暴力的なミックスするもの対極的なしなやかさを伴っている。また"Exhibitionist Mix 2 featuring Skeeto Valdez"ではドラマーとの共演という触れ込みだったが、これは両者が殆ど同時にプレイする瞬間は無いので少々期待外れであろう。やはり面白いのはTR-909を一心不乱に操作する"Exhibitionist Mix 3 TR-909 Workout"で、機器を直接床に置きながらリアルタイムで展開を作っていくリズムだけの音楽ながらも、そこにはクラブの衝動的な息遣いを感じさせるグルーヴが宿っている。他にもゆっくりと彷徨うように踊るダンサーの映像にJeffによる瞑想的なミックスを合わせた"Orion Transmission Mix featuring Pierre Lockett"や、複数のハード機材を用いて楽曲制作の解説を行った"Exhibitionist Studio Mix"など、Jeffの音楽にまつわる全てが包み隠さず紹介されたと言っても過言ではないボリュームで映像が収められている。更に更に本作に用いられた曲や制作された新曲などを収録したCDまで付いてくるのだから、もうこれ以上はありえない。コンセプト重視の傾向はより強まりややもすると初期の衝動的な音楽性は失われつつもあるのも否定は出来ないが、しかしこうやって映像化された作品を冷静に眺めてみれば、テクノの創造性を今も拡張させている事を実感出来るのもまた事実なのだ。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Conforce - Presentism (Delsin Records:111DSR)
Conforce - Presentism
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オランダといえばヨーロッパの中でも特にデトロイト・テクノへの熱心な愛を捧げる活動が見受けられ、例えばRush HourやDelsinのデトロイト・フォロワーとしての功績は顕著だ。そんなレーベルとの繋がりを持つBoris BunnikことConforceもやはり初期はデトロイト・テクノに影響を受けて、美しくエモーショナルなメロディーとダブの残響を盛り込んだコズミック感の強い『Machine Conspiracy』(過去レビュー)が高い評価を受けていた。しかしそれ以降の活動は『Escapism』や『Kinetic Image』においてディープなダブ性を強め音響やリズムに特徴を持たせた作風へとシフトし、またSilent HarbourやVersalifeなど異なる名義ではダークなダブやエレクトロへと傾倒し、デトロイト・テクノからの影響は希薄化していた。そんな流れからの新作は初期作風のエレガントな音も戻ってきた原点回帰の要素を含みつつ、近年の深い電子音響も損なわずに、Conforceとして音楽性を纏め上げた集大成的なスケールが感じられる。アルバムの始まりは空間の奥で寂れた電子音が反復しつつも、胎動のようなベースと澄んだパッドにより静かなグルーヴを生み出すアンビエントの"Glideslope"で幕を開け、続く"Realtime"では空虚で乾いたパーカッションが畳み込まれる中をデトロイト・テクノを思わせる望郷の念を誘うパッドが悲しげに伸びていき、アルバムの序盤から叙情的で近未来的なムードに満たされている。"Blue Note"では明確にリズミカルなビートが入ってくるが、物哀しくも美しい上モノに水飛沫のような淡い残響がアクセントを加え、デトロイト・テクノを更に洗練させたようでもある。一方で"Motion Sequence"は深遠な闇へと下降するダークかつディープなダブ・テクノで、豊かなダブ残響に包まれながらアンビエントのような掴み所のない快楽性を生み出している。アルバムの後半は90年代のAIテクノを思わせるアンビエントな強くなり、非4つ打ちの柔らかくダビーなリズムと浮遊感のある幻想的シンセが多層になって微睡んだ電子音響を生む"Monomorphic"や、初期Carl Craigを匂わせるぼやけた霧のようなシンセに満たされただけの抽象的な"Predictive Flow"など、近未来の都市を喚起させるSFのサウンドトラック的な音が待ち受けている。ややフロア向けの曲は減った印象も受けるが、これぞConforceに期待していた音楽というものが還ってきており、この深遠なるインテリジェンス・テクノは間違いなくデトロイト・テクノ好きな人の耳も刺激するだろう。



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| TECHNO12 | 19:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Flare - Leaps (70 Drums:SDLP-001CD)
Flare - Leaps

日本のテクノに於けるヒーロー的な存在であり続けるKen Ishiiにとって、そのテクノらしいテクノを守り続ける本人名義とは別に、音楽的な自由度を高めて電子音楽としての可能性を拡張させた - それは結果的に実験的にも聴こえる - Flare名義は、彼にとってのパーソナリティーが強い領域だろう。その音楽はダンス・ミュージックとしてではなく電子音楽を愛する者を魅了するものであり、つまりKen Ishiiの特に面白い部分でもある。しかしフロアを賑わすテクノとしての主たる面を長年に渡って守り続けてきた彼にとって、Flare名義は既に過去のものとりなつつあった…と思いきや、2013年に奇跡的な復活を遂げたのが『Dots』(過去レビュー)だった。創作意欲の拠り所とも言えるFlare名義ではありながら、その音には気負いは無くフリーフォームで、だからこそある意味では素のKen Ishiiが表現されているとも考えられる。本作はそんな前作を踏襲した上に更にはCD制作から販売方法まで作品をリリースするまでの工程を自身でマネージメントするなど、全てにおいてイニシアティブを取ってクオリティーを管理し、アーティストとしての在り方を示す作品だ。音楽はと言えば実にFlareらしくダンス・ミュージックというスタイルへの執着は微塵も感じさせず、奇妙な音の響きや予想の出来ない変則的なビートが入り乱れ、音と戯れるという表現が適切な曲が並んでいる。例えばビートは入っているがどこか捻れたようなリズムとコンピューターが壊れ気味に鳴っているような"Sympathetic Nervous System"、初期の作風を思わせるレーザーの様なシンセと点描風に細々と配置された電子音が絡む"Iapetus"など、全く普通のテクノではない曲はフロアの方向性とは真逆だ。"Downglide"にしても分かりやすいビートは入っているが、牙を剥く歪な電子音の方にどうしたって耳が惹き付けられるだろう。"Shadows and Rings"のビート感はフロアで鳴っていてもおかしくない勢いのある4つ打ちだが、その上モノは幻想的と言うよりは非現実的な電脳世界に響く音のようで、近未来のイメージが迫り来る。そしてラストの"A Year Later"はアルバムの中でも最もエモーショナルな性質が強く、鈍く光る電子音の反復の中からピュアな音像が浮かび上がってくる優美な構成で、クライマックスに相応しいだろう。つまりは踊れるだとか踊れないだとかに拘らずに、Ken Ishiiの電子音楽に対する好奇心を表現したのがFlareであり、またその音はテクノの可能性を広げるものでもある。やはりFlare名義は一癖も二癖もあって面白いのだ。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Espais (Delsin:DSR-D3-CD)
John Beltran - Espais
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デトロイト随一の抒情派アーティストであるJohn Beltranは、ここ数年はオランダ屈指のデトロイトへの造詣を持つDelsin Recordsと蜜月の関係を築き、オリジナルアルバムやコンピレーションを協力して制作するなど順風満帆に状態になりつつある。その流れの中でBeltranはまたもDelsinより新作をリリースしているが、本作は『Amazing Things』(過去レビュー)のようにニュー・エイジ的な瞑想感覚を引き継ぎながら、更にTrent ReznorやVangelisにDaniel Lanoisなど映画音楽を手掛ける作曲家に触発されて制作された事が明らかになっている。冒頭のボーカル入りの"Intro"を聴けば、既にBeltranがテクノから距離を置き始めている事は明らかで、フィードバックギターなども用いられた淡い抽象画的な音像はアコースティック・アンビエントの方がしっくりとくる。続くタイトル曲の"Espais"でもクラシックのような荘厳なオーケストラに静謐なピアノが柔らかく響き、確かにサウンドトラックらしい壮大な世界観が広がっている。続く"Many Moments To Come"もバックにはぼやけたノイズが終始鳴りつつも、研ぎ澄まされたピアノがゆっくりと情緒を流し続ける切ない曲で、Beltranらしい耽美な印象は期待通りだろう。今年にBeltranが手掛けたアンビエント・コンピレーションにも提供された"Music For Machines"はここにも収録されており、輝かしく光るストリングスがゆっくりと舞う余りにも壮大で、余りにも至福なムードに満たされたこの曲は確かに映画の感動的な一場面で使われるようにも思われる。但し映画音楽やサウンドスケープである事に拘り過ぎた影響だろうか、リズム感やグルーヴ感は希薄化し、ピアノやギターにストリングスを中心とした音からは既にテクノの面影はおおよそ失われている。確かにBeltranらしい甘く夢のような世界、または天国のような汚れのない美しき光景を臨む事は出来るものの、ファンが彼に求めているのはやはりアンビエント成分を含む躍動的かつエモーショナルなテクノであり、それはデトロイト・テクノと同じ方向を見据えていた筈だ。そう言った前提を踏まえると、本作の映画音楽らしいコンセプトは理解しつつも、物足りなさも残ってしまう。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
The Black Dog - Neither/Neither (Dust Science Recordings:DUSTCD051)
The Black Dog - Neither/Neither
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90年代のUKにて生まれ、ムーブメントにもなったベッドルーム発祥のインテリジェンス・テクノと呼ばれる音楽を、それから20年以上経った変わる事なく探求するように手掛けるアーティストがいる。それこそがThe Black Dogであり、その音楽の中でも代表格と呼んでもよいだろう。その当時のアーティストは今では名を聞かなくなった者も少なくはないが、しかしThe Black Dogは2005年以降も堅実に音楽活動を続け、この10年だけでもリリースしたアルバムは6枚と過去以上に音楽制作への意欲を高めている稀有な存在だ。本作も前作から2年と長い間をおかずにリリースされているが、移ろい変化する流行の中でも殆どぶれる事なくスタイルを守り続けてきた彼等らしく、ここでもベッドルームから生まれた電子音響によるアンビエントにフロアで機能するダンス・グルーヴを多少織り交ぜて、電子による仮想世界的なサウンドスケープを繰り広げている。幕開けとなる"Non Linear Information Life"は幻想的なサウンドと機械的なヒスノイズが轟く暗いアンビエントで、そこから続くインタールード的な"Phil 3 to 5 to 3"も荒廃した未来のSF感ある音で、想像力を掻き立てる展開だ。3曲目の"Neither/Neither"でようやくねっとりとした重心の低いリズムが入ってくるが、荘厳なオーケストラと重厚な電子音はやはり密閉された室内のイメージだ。決して開放的な瞬間に出くわす事なく終始外界とは隔絶されたような重い世界観だが、"Them (Everyone Is a Liar But)"を聴けばその閉塞感の中にも静かに盛り上がるドラマがあり、インテリジェンス・テクノらしい電子音の美しさは荘厳に響く。その一方でアルバムの後半からは"Self Organising Sealed Systems"や"Hollow Stories, Hollow Head"のように、オールド・スクールなブリープを思わせる毒々しさやダブ・ステップらしい揺さぶるリズムも持ち出して、多少は現在のテクノも意識したように暗闇が広がるフロアへと接近した躍動的なトラックも待ち受けている。アルバムの前半後半で作風はかっちりと分かれているものの、しかしムードでの統一感は損なわれておらず、正に知的で荘厳な世界観は元祖たる風格さえ漂うものだ。決して新鮮味や斬新さがあるわけでもないのは事実だが、流行り廃りが早いダンス・ミュージックの世界で確固たる個性を築いているのだ。



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| TECHNO12 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
TC80 - Phrase EP (CABARET Recordings:CABARET 007)
TC80 - Phrase EP

So Inagawaとdj masdaによって長らく開催されているCabaretは、勿論パーティーとしても個性的なアーティストを招致しぶれない音楽観によってテクノ/ミニマル/ハウスの深みを掘り下げる素晴らしい存在だが、2013年に設立された同名のレーベルは彼等の音楽性が世界的に高い評価を得る契機となった。Soによる作品に始まりやBinhやU-Moreなど決してブランド的な知名度あるわけでもないアーティストを送り出す状況で、しかし作品の音のみで判断された結果として、Cabaretの各作品はリプレスが度々されるまでに人気を博す事になっている。そんなレーベルからドイツにて活動をするTC80なるアーティストのデビュー作がリリースされているが、デビューしたばかりとあってアーティストに関する情報は全く明らかになっていない。しかしCabaretによって選ばれたアーティストなればこそ、そこに全幅の信頼を寄せるのも間違いではないだろう。Cabaretらしく無駄な音は出来る限り搾り取れてた作風を踏襲するように、"Phrase"は音の間を活かしつつブレイクビーツ気味なリズム感と湿った艶かしい音質を基底に、ぼんやりと揺らぐような酩酊感溢れるメロディーを配して千鳥足のようにゆらゆらとしたグルーヴを生み出している。決して一瞬でフロアをピークに持っていくような曲調ではないし、寧ろCabaretにそんな音楽性を求めている者はいないだろうが、アルコホリックの様に中毒的に沼にはまったような滑りに魅了されるだろう。その一方で"Dardos"は乾いている硬いリズムがシカゴ・ハウス的だが、より幻想的に揺れるメロディーはエモーショナルでもあり、直感的に体を揺さぶるようなフロアでの即戦力となるようなミニマルだ。そして溜めのあるブレイク・ビーツ調のリズムが癖のある"Final Monologue"は、波のように揺れる美しいパッドのコード展開と耽美なシンセのフレーズが交錯するドラマティックな展開を繰り広げ、途中にはボーカル・サンプルも導入してしなやかにエモーションの高みへと達する。どれもこれも一歩引いたような控えめな雰囲気ながらも、視点はやはりフロアを向いて機能的なダンス・グルーヴが通底するCabaretの現場感があり、Cabaretというパーティーの世界観がそのまま音として表現されているように思われる。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
JP Enfant - Dreaming Backwards (Les Enfants Terribles:LET001)
JP Enfant - Dreaming Backwards
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オランダはアムステルダムにて開催されているLes Enfants Terriblesというパーティーが、新たに同名のレーベルを開始して音楽制作へと乗り出す。レーベルの第一弾はそのパーティーでレジデントを務めるJP Enfantによる作品だが、このJP Enfantは2014年にはドイツのディープ・ハウスを手掛けるMojuba傘下のa.r.t.lessからデビューを飾ったばかりの期待の新人であり、90年代のインテリジェンス・テクノ〜デトロイト・テクノからの影響を滲ませる理知的な音楽性が特徴だ。本作においても基本的な路線に変更はなくクールながらも幽玄で、未来的なサイエンス・フィクションの世界観を含むテクノを展開している。"Subconscious Leverage"は少々鈍いキックによる4つ打ちからはラフな質感が発せられるが、すっと静謐に薄く伸びる上モノのパッドからはやはりインテリジェンス・テクノ系の繊細な美しさが表現され、疾走感のあるテクノではあるがその慎み深くもある深遠さは、初期のCarl Craigを思わせるところも。一方でタイトル曲の"Dreaming Backwards"はくねったようなリズムに、ビリビリと電磁波のように振動するサウンドや重厚なシンセなどが緻密に配置され、闇の中で雷鳴轟くような電子音響による宴を繰り広げる。裏面の"Subliminal Message Of Fear"は展開や音を削ぎ落としてミニマルなDJツール性へと向かった作風だが、ソナー音のように淡々と反復する電子音とオールド・スクール感のある乾いたハンドクラップやハイハットによる抜き差しだけで、全くテンションを落とさずに疾走し続けるテクノはフロアで効果的に鳴るだろう。何処か機械的で人間味に溢れた温度感を感じさせない音ではあるが、控えめに情緒を含みつつ繊細さと洗練へと向かった音楽性は、かつてのインテリジェンス・テクノをよりフロア向けにした現代版のようにも感じられる。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Moritz Von Oswald Trio - Sounding Lines (Honest Jon's Records:HJRCD72)
Moritz Von Oswald Trio - Sounding Lines
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2008年に初のライブをお披露目した特別なプロジェクトが、まさか今日に至るまで継続的に活動し作品もリリースすると思っていた人は、当時は殆どいなかったのではないだろうか。それこそがMoritz Von Oswald Trioであり、ミキシングやPCを担当するMoritzにシンセサイザーなどをプレイするMax Loderbauer、そしてお手製のメタルパーカッションやドラムを叩くVladislav DelayことSasu Ripattiのトリオによるプロジェクトだ。各々が単独でも強烈な個性を発するアーティストがそれぞれの個性を掻き消す事なく融合したインプロビゼーション・プロジェクトは、恐らく奇跡的なバランスの上に存在していたのだろう。それが顕著に感じられたのは2013年には残念ながらVladislav Delayが脱退し、そして2014年の新生プロジェクトとしてのライブを行なった時だろう。何と代わりのドラマーとしてアフロ・ビートのTony Allenを加入させたのだ。意外性とそのタレント性から一際注目を集めたのは事実だったが、しかしライブ自体はMvOTの肝であったダブ残響を伴うメタル・パーカッションの鋭角的な切れ味は損失し、代わりに生温く湿ったパーカッションがしなやかなグルーヴを生み出していたものの、結果的にはMVoTのひりつくような緊張感は消え去り期待は失望へと変わった。そしてそんなプロジェクトが作品化されたのが本作であり、やはりここでもTonyによる生々しく繊細な人力ドラムがフィーチャーされている。上モノに関しては今まで基本的な差異はなく、ダビーなエフェクトを用いて電子音に揺らぎを加えつつしっとりと落ちる水滴のように音を配置させ、相変わらず間を強調した静謐な構成はミニマルの極北だ。だがそんな電子音と土着的なドラムの相性はどうかと言えば、どうにもこうにも上手く融け合う事もなく、リズムの乾いた質感が浮いてしまっている。ドラマーが代わる事でこうも音楽性が代わる事に驚きつつ、その上でVladislav Delayのメタル・パーカッションの重要性はやはり本物だったと痛感せざるを得ない。尚、本作ではミックスをRicardo Villalobosが担当しているが、それも本作に於ける無味乾燥とした味わいを残している事の要因の一つではと思う所も。これだけのタレントが揃いつつも、それ以上の相乗効果を見い出せないのが残念だ。



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| TECHNO12 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Chris Tietjen - Zehn (Cocoon Recordings:CORMIX049)
Chris Tietjen - Zehn
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ここ数年は全盛期程の勢いは見られないものの、90年代から00年代にかけてのドイツのダンス・ミュージックと言えばSven VathによるCocoon Recordingsは中心の一つだったと思う。特にレーベルとしてだけではなく、イビサはAmnasiaにて開催していた「Cocoon Club」では世界中の著名なDJ/アーティストを巻き込んで、一大ムーブメントと呼んでも良いほどの勢いのあるパーティーに感じられた(が、それ故にどうしてもCocoonに対しては未だにミーハーな印象を拭えない)。そんなCocoon Recordingsがレーベル・ショーケース的な意味合いで2006年からMIXCDを毎年リリースしており、その初めての作品である「Eins」からミックスを今まで担当していたのがChris Tietjenだ。1985年生まれだと言うからまだその当時は齢21歳だったのだが、その若さにしてSvenに認められた才能は結局本物であった事は、現在までシリーズを担当した事で証明されたようなものだ。しかしながらそのシリーズもドイツ語で10を意味する本作「Zehn」によって10年の幕を閉じる事がアナウンスされているが、集大成らしくCocoon Recordingsのクラシックを惜しみなく使用しつつ、またレーベルの多様性を十分に体験させてくれる選曲がなされ十分に出汁が染み出たミックスである事を断言する。スタートは微かな残響が心地良いダブテクノの"Cow, Crickets And Clay"で静かなる船出だが、そのまま重心の低さと硬質感を保ちつつ闇の中から花弁がゆっくりと開くような美しさを伴う"Dead Room"をミックスし、Cocoonにもこんなシリアスな作風があるのだなと意外な展開だ。徐々に重さよりも加速度を増しながら浮かび上がり、エレクトロ気味のアクの強い曲や歌モノも織り交ぜて、そして中盤のハイライトである派手なプログレッシヴ・ハウスの"Unrelieable Virgin"でCocoonらしい快楽的な世界観に染めていく。そこからは持続感のあるミニマル寄りな選曲を中心として深みと恍惚感を継続させ、往年の跳ねた勢いのあるハード・ミニマルな曲も少々プレイしつつ、ハイエナジーな"Pump"からトライバル調の"Deep Down Inside (Reboot Rmx)"で再度のピークを迎える。そこからはなだらかにクローズに向かってテンションを落ち着かせながら、アンビエントな空気も纏うような"Seconds (Colour & Sound)"によってパーティーの終わりを告げるような物哀しい最後を迎える。レーベルの音楽性を十二分に披露したこのミックスは、70分に於ける音楽の旅と呼んでもよいだろう。そして何よりも大量のマテリアルをシームレスかつ重層的にミックスする事で、単に曲を繋ぐ以上のオリジナルからの変化を生み出したChrisの手腕が、ここでも素晴らしく光っている。



Check "Chris Tietjen"

Tracklistは続きで。
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| TECHNO12 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |