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Silvestre - Silvestre Is Boss EP (Secretsundaze:SECRET026)
Silvestre - Silvestre Is Boss EP
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およそ2年間の間リリースの無かったSecretsundazeが2019年の中頃に再始動し、複数のEPをリリースしているが、その内の一枚がリスボン生まれでロンドンを拠点に活動するSilvestreによるものだ。本作の前には東京のレーベルであるDiskotopiaから『Girar』(過去レビュー)をリリースしており、テクノ/ハウスの中に雑食性の強い幅広い要素を取り入れた音楽性を披露して、国境やジャンルの境目を乗り越えるユニークな音楽性が魅力的だ。だからこそ少なからずディープ・ハウスをコンセプトにしたSecretsundazeからリリースされたのは意外な感もあるが、実は同レーベルは2015年頃からテクノやブレイクビーツに目を向けた新たなラインであるSZEも立ち上げており、その両者の溝を埋める意味では本作はなる程と思えなくもない。EPはイントロと題された2分程の"Jumping Intro"で始まるが、気怠く緩いブレイク・ビーツとダーティーなベースライン、そして訝しい呟きを用いて不良っぽく悪びれた感がこれから盛り上がる予兆を匂わせる。続く"Lights"も揺れるブレイク・ビーツを用いているがややリズムは軽くなる事で浮遊感を会得しつつ、やや情緒的でありながらも不明瞭な旋律の上モノを用いる事でアブストラクトな雰囲気を作り、そして"Fuego"では更に太いキックやスネアが弾ける如くパワフルなリズムを刻んで、そこに効果音的にトリッピーな電子音を散りばめながらけばけばしくもエネルギッシュなレイヴ風に仕立て上げいる。小刻みながらも金属的な鳴りのリズムが退廃的に響く"Paying The Rent"は、チョップ風のアシッド・ベースと唸りのようなボイスサンプルも用いて、ハードな質感ではないものの暗く不気味な雰囲気が闇のダンスフロアに適しているだろう。またニューエイジ・ハウス方面で名を馳せるD.K.がリミックスした"Fuego (D.K. Remix)"は、完全にD.K.のその音楽性に染まっており、原曲のブレイク・ビーツから4つ打ちへと姿を変えながらも宗教的というかスピリチュアルな佇まいが、パワフルなダンストラックでありながら深い瞑想を誘う。激しい直球ダンストラックというわけではないが、本作ではどれもブレイクビーツによる揺れるリズムを活かしつつレイヴの悪っぽい雰囲気がダンスフロアのドラッギーな感覚を思い起こさせ、Silvestreが何でも咀嚼する懐の深さを持ちつつそれらを享楽的なダンスへと仕立てる才能を持っている事を証明しているのだ。



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| TECHNO14 | 19:00 | comments(0) | - | |
Haedong Seoungguk - Daegeum Dosa with D.K. Remixes (Tonal Unity:TU10)
Haedong Seoungguk - Daegeum Dosa with D.K. Remixes
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欧州やアメリカの話題が多かったクラブミュージックに於いても、ここ数年は中国や韓国のクラブの話題やアーティストもメディアで紹介される機会も増え、そんな国の台頭も肌で感じる事も少なくはない。店舗ではアジア勢のレコードも目に付く機会は確実に増えているが、本作は韓国からのEP。韓国はソウルの新興レーベルであるTonal Unityはアジア圏のオーガニックな音楽がコンセプトのようで、韓国のパーカッショニストであるHaedongを中心としたプロジェクトであるHaedong Seounggukによるものだ。EPの前には人間の初期の音楽がどんなものだったのかという探求から始まり、トッケビ(朝鮮半島に伝わる精霊)がお香を吸いながらドラムや弦楽器を演奏しているというストーリーに合わせた『Dokkaebi Play』というアルバムをリリースしていたのだが、そこから2曲がシングルカットされたのが本作。"CMU118 (Daegeum Dosa)"はその曲名通りに朝鮮の管楽器であるテグムをフィーチャーしており、Haedongによるジャンベやベルを始めとした大量の民族的なパーカッションはミニマルリズムとメロディーを刻んで、そこに即興のジャズのようにテグムが訝しいメロディーを重ねて、弛緩して気の抜けた流れながらもアフリカや東南アジアといった音楽性を越境しながらオーガニックなニューエイジを鳴らしている。"BMU442 (Keyboard Dosa)"の特徴はコントラバスの響きだろうか、血の通った温かさのある生き生きとしたベースに支えられ、快活なパーカッションによるリズムといかにもニューエイジな艶のあるシンセのメロディーが引っ張っていくその様は、エキゾチック・フュージョンと呼びたくなる。オリジナルの2曲は完全にリスニング向けの曲になっているが、このニューエイジ調な世界観にダンスフロアから召喚されたのはフランスで活動するDang-Khoa ChauことD.K.だ。バレアリック/ニューエイジ方面から注目され最近はロウ・ハウスにも接近してダンス化を強める彼が、ここでは当然ニューエイジとダンスの自然な邂逅のリミックスを披露している。"Daegeum Dosa (D.K. Senza Mix)"は原曲の世界観を守りつつ4つ打ちのリズムを加えているが、カラッとした爽快なパーカッションもあって軽い疾走感があり、最近のD.K.のダンス×ニューエイジ性がよく現れている。印象的なのは"Daegeum Dosa (D.K. Huru Mix)"で、弾けたようなダビーな音響のパーカッションを加える事により、原曲以上に野蛮なトライバル性を増して脈打つグルーヴを奏でて、何かに取り憑かれたように祭事の魔術的な雰囲気に染め上げている。何かの宗教か信仰か、我を忘れて踊り狂うような魅惑的な土着グルーヴは、ダンスフロアでも違和感の無い出来栄えだ。尚、何故かAmazonではリミックスのみの販売で、原曲が販売されていないのはあしからず。



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| HOUSE14 | 19:00 | comments(0) | - | |
D.K. - Rising EP (Antinote:atn 052)
D.K. - Rising EP
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ニュー・エイジ/アンビエント方面で注目を集めていたパリジャンのDang-Khoa ChauことD.K(45 ACP名義やSlack DJs名ではインダストリアルに接近した作風もあるが)、温かくドリーミーな世界観に包まれる牧歌的なリスニング系の作風が特徴であったものの、2019年には古巣Antinoteからダンス3部作EPのシリーズを立ち上げ、『Mystic Warrior EP』(過去レビュー)や『Riding For A Fall EP』(過去レビュー)をリリースしてきた。お得意のニュー・エイジをハウスに取り込み、更にはエスノ×トランスな拡張を見せたりと進化を遂げていたが、一端はそんな果敢な挑戦もこのシリーズ最終作となる本作で完結を迎える。前の2枚のEPでおおよそ音楽性は出来上がっていたので本作でも特に大きな変化は無いのだが、更にマッチョで肉体的なグルーヴを感じさせるEBM(エレクトロニック・ボディ・ミュージック)な雰囲気を纏っており、前述の45 ACPとの境界が埋まっていくような感さえもある。"Storm Of Steel"が特に激しく破壊的な響きをしており、金属的な打撃音と毒々しいベースラインによるインダストリアルな世界観が凶悪で、そこに鉄琴らしきミステリアスな響きと尺八風なエキゾチックな笛の音色、そしてぐしゃっとしたスネアやパーカッションも入ってきて、ニューエイジにハウスやインダストリアルと様々な要素が融合したダンス・ミュージックがユニークだ。最近の流行りでもあるレイヴも意識したようなブレイク・ビーツ調の"Code Breaker"でも、やはりシンセの謎めいたコード展開と怪しい笛のメロディー、そして生々しく土着感溢れるパーカッション使いがエキゾ性を打ち出していて、これは前作までのニューエイジ・ハウスといった趣きだ。タイトル曲である"Rising"もつんのめったリズムがダンス曲に仕上げているものの、チャカポコとした弾ける土着パーカッションや瞑想の笛の音色とアジア圏のエスノな感覚に合わせ、荘厳で神聖なコーラスが覆い尽くす事で宗教的な雰囲気を漂わせ、メランコリーな霊的ニューエイジと化している。どれも真夜中のダンスフロアに適応したダンストラックである事は前提なのだが、この土着性やエスノの感覚も交えた独特の世界観はD.K.の確立された個性と言えよう。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
D.K. - Riding For A Fall EP (Antinote:ATN048)
D.K. - Riding For A Fall EP
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Melody As TruthやAntinoteからリリースしたドリーミーなニューエイジ/アンビエント作、またはMusic From Memory傘下にあるダンス寄りな別ラインのSecond Circleといったレーベルからの桃源郷のような雰囲気のハウス、それらによって現代のニューエイジ方面では急先鋒となったパリジャンのDang-Khoa ChauことD.K.。しかし2019年のD.K.は完全にダンスの季節なのか、三部作の開始である『Mystic Warrior EP』(過去レビュー)によってニューエイジ・ハウスへと足を踏み入れると、この二番目となるEPではよりテンポを上げてニューエイジどころかトランシーな雰囲気さえ纏うハウスで勢い付いている。"Voices"は出だしからローファイな響きのマシンドラムやカチコチとしたパーカッションが密に刻まれ勢いのあるグルーヴが走り、そこにデトロイト・テクノな雰囲気もあるシンセパッドが幻想的な情景を見せ、微かに配置されたアシッドの粒もコズミックな感覚を生む。常に疾走する流れで完全にフロア対応のダンス・トラックだが、曲の中ではエスノやアジアンな雰囲気のあるメロディーも現れたりと、どこか霊的な背景が見え隠れする音楽性はD.K.が以前から持っているものだ。"Shoubuari (Battle Mix)"はゲームのサムライスピリッツに触発されて作った曲だそうで、確かにどこか和の雰囲気な笛等や剣の鍔迫り合い的な打撃のパーカッションも聞こえ、ゲームらしい緊張感が張り詰めながらストーリー性を展開するような高揚感が満ち溢れている。それらアップテンポで攻撃的な二曲に対し、最後の"Riding For A Fall"は従来のD.K.に近いスピリチュアル性の強いダウンテンポで、熱帯雨林の奥深くで原始的な儀式で踊っているような大地の香り漂うトライバル感と秘密めいて壮大な神秘性があり、その意味では正に精神世界を旅するニューエイジそのものか。初期のリスニングな音楽性から随分と反対方向へ振り切れて驚きは隠せないが、しかしニューエイジというD.K.の源流が枝分かれしたと考えれば違和感の無い作風で、上手くフロアへ適応している事にアーティストの素質の高さが伺える。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
D.K. - Mystery Dub (Second Circle:SC009)
D.K. - Mystery Dub
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アンビエント/ニューエイジの急先鋒となったMusic From Memory、そこからもう少しダンス方面へと意識を向けた別ラインがSecond Circleだ。とはいっても単純にハウスだとかテクノに収束せずにワールド・ワイドな雰囲気を持ちユニークな音楽性を残す点ではMFMの系譜である事を示しているが、本作はそんなSecond Circleからの2018年作。手掛けているのはパリジャンのDang-Khoa ChauことD.Kで、幾つか持つ名義の中でもこのD.K.の初期活動ではAntinoteからのバレアリックなアルバムやMelody As Truthからは更に穏やかなアンビエントへと向かったりと、比較的ダンスフロアからは意識的に距離を置いた作風が彼のトレードマークになっていたように思う。ところが2019年以降のAntinoteからの複数のEPはどれもニューエイジな性質もあるハウスへと舵を切ってリスナーを驚かせたが、その予兆は既に本作の時点で見受けられる。4曲の内2曲は完全にハウスのビートを刻んでおりダンスを意識しているのは明白で、そこに桃源郷の風景が浮かび上がるバレアリック/ニューエイジ性を組み込んで、現実と空想が交錯するメランコリーな音楽を聞かせる。快活なハウスのビートにエキゾチックなパーカッションを組み合わせ、残響が微睡みを誘う美しいシンセのレイヤーが広がる"Stick To The Rules"は、そしてチャイムの催眠的な反復や朗らかなピアノやシンセのコード展開も用いて、豊かな叙情性となって押し寄せて、EPの中で一押しのバレアリック・ハウスだ。タイトル曲の"Mystery Dub"は柔らかいマリンバのフレーズと土着的なビート感が印象的で、熱帯の深い密林を思わせる豊かな色彩とミステリアスでトリッピーな響きによって、南国へと旅へと誘われる。残りの2曲は従来のアンビエントやバレアリックの成分が満ちたリスニング志向で、ダビーに揺らめくシンセのレイヤーとトライバルなリズムが未開の秘密めいた森林奥地の雰囲気を有むバレアリックな"Rebound"、鳥の囀りのサンプルや原始的なパーカッションを用いて更にスピリチュアル性を増して亜熱帯の土着感を創造するニューエイジ調の"Wise Bird"と、本作ではやたらと大地と共鳴するネイチャー志向が強く伝わってくる。ダンスとリスニングに跨る辺りもSecond Circleらしく、D.K.とレーベルの親和性は抜群といった趣きで、この方向性で同レーベルよりアルバムもと期待したくなる。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
D.K. - Mystic Warrior EP (Antinote:ATN046)
D.K. - Mystic Warrior EP
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Antinoteの主軸アーティストの一人、フランスはパリのDang-Khoa ChauことD.K.は同レーベルからニュー・エイジ/アンビエント/バレアリックという要素が一つになった作品をリリースしており、また近年はMelody As TruthからはSuzanne Kraftとの共作やMusic From Memory傘下のSecond Circleからも作品をリリースしていたりと、その流れを見れば基本的にはリスニング志向の強い音楽性である事は明白だ。(しかし45 ACP名義やSlack DJs名義ではロウ・テクノやインダストリアルも披露しているが)。だからこそこのAntinoteからの新作がダンスへと向かった事にやや驚きは隠せないが、とは言っても単純にテクノやハウスという言葉で一括りにするのは難しいその音楽は、敢えて言うのであればニューエイジ・ハウスが適切だろうか。タイトル曲"Mystic Warrior"はロウでどたどたとした4つ打ちのリズムに金属的なパーカッションやジャングルを思わせるサンプリングを被せて、中盤以降になると鐘の幻惑的なフレーズやミステリアスなシンセによって更に異境の地を進んでいく訝しいハウスで、タイトル通りにミスティックな作風だ。"Elements"も同様に簡素でロウなドラムマシンの4つ打ちビートに不思議な打撃音のSEを合わせて随分とささくれだった響きだが、しかし尺八のような和テイストがある笛やエモーショナルなシンセのメロディーに引っ張られる中盤以降になると、途端にぐっと熱い感情性を増した瞑想感覚のあるハウスに成る。裏面の2曲はより奇抜な音楽性が発揮されており、詰まりのある変則的なリズムに深い森の中で鳴っているようなパーカッションが乱れ打ち、エキゾチックな笛や訝しいシンセが原始的な胎動を生み出す"Worries In The Dance"、奇妙なウォータードラムやベルに土着的なパーカッションが霊的な世界へと誘う何かの儀式のような"Earth People"と、D.K.のニュー・エイジ性が色濃く反映された作品と言えよう。フロアを意識しながらも単純なダンスでもない異形な世界観、これは非常に面白い変化だ。



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| HOUSE14 | 12:30 | comments(0) | - | |
Seb Wildblood - The One With The Remixes (Omena:OMR001)
Seb Wildblood - The One With The Remixes
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Seb Wildbloodなるアーティストについて特に存じていたわけではないが、アルバム『:~^』からのリミックス企画となる本作には注目すべきアーティストがリミックスを提供しており、十分な話題性を持っている。バレアリック・ハウスの新世代として注目を集めるTelephonesやD.K.、You're Meの一人であるYu Su、話題のStudio Barnhusを主宰するKornel Kovacsと、それぞれ異なる音楽方向を向きながらも皆が個性を持ち確かな実力を持っているのだから、当然リミックス企画としても期待しないわけにはいかない。何はともあれ11分にも及ぶ大作の"Wet Plants (Telephones Remix)"がお世辞抜きに素晴らしいバレアリック・ハウスで、ポコポコとした抜けのよいパーカッションと跳ねるようなキックの4つ打ちのハウス・グルーヴは意外にもタフだが、そこに澄んだように透明でメロウなシンセがレイヤーとなって覆い尽くしていくドリーミーな世界は南国の新緑が茂り水飛沫が弾けるエキゾチックかつトロピカルなムードで、フロア受けする事間違いなしのリミックスだ。対してブロークン・ビーツ寄りに崩れたビートとローファイな音質の"The One With The Emoticon (Yu Su Remix)"は、その無駄が無く骨が浮かび上がったリズム感に物哀しげに望郷の念が込められたような切ないメロディーでダウナーにさせる音楽性で、確かにYu Suの淡くメロウな音の鳴りをしている。"Wet Summer (Kornel Kovacs Remix)"も同様にメロウではあるが、更にローファイ寄りで音の隙間はありながらも硬いブレイク・ビーツでリズミカルに躍動しつつ、牧歌的で淡くほのぼのした音使いが昼下がりのうたた寝を誘う。そして神々しいボイスも用いて幻想的かつ神秘のニューエイジ風に仕上げた"Interlude (DK Remix)"は、オーガニックで温かい響きを活かしながらドリーミーな旋律ともやもやとした音響でぼかして、トロトロ甘い夢の世界へ誘うようだ。おおよそどのリミックスも大雑把に括ればバレアリックな方向性があり快適性は抜群だが、それでもダンスからリスニングまで明確に各々の個性を打ち出して、十分に手腕が発揮されたリミックス集で素晴らしい。



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| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
D.K. / S.K. - D.K. / S.K. (Melody As Truth:MAT9)
D.K. S.K. - D.K. S.K
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近年のバレアリック・ミュージックの隆盛は目を見張るものがあるが、そのムーブメントを作る一つのレーベルとしてMelody As Truthを欠かす事は出来ない。元Discossessionのメンバーであり近年はGaussian Curveとしても一躍名を挙げたアーティストであるJonny Nashが主宰するレーベルだが、そのレーベルのもう一人の中心人物がオランダで活動するSuzanne Kraftで、同レーベルをベースに穏やかな静けさの中で夢遊する有機的なアンビエントをリリースしている。そしてまた別に静謐なバレアリック/アンビエント方面で評価を集めているDang-Khoa ChauことD.K.というアーティストがいるが、このS.K.とD.K.がコラボレーションした本作はその両者に期待する音楽性が見事に融和しており素晴らしい。鈍いスネアや優雅なハイハットは間を作りながらゆったりとしたビートを刻み、そこに波紋が広がっていくような零れ落ちる鍵盤のメロディーや美しいパッドが抽象画のようにぼやけて彩りを行う、物憂げなニューエイジ風の"Xerox"からして音の余韻が美しい。そして神秘的な鍵盤のフレーズから始まる"Burn"はそこにリバーブのかかったピアノやギターらしき音を導入しながら、その数を絞る事で繊細に音の間が美しく映えて白昼夢に浸るかのようなアンビエントだ。そしてタブラらしきパーカッションを用いて何処か寺院のようなスピリチュアルな響きもある"No Man's Ground"は、アジアンな打楽器も取り入れる事でエキゾチックな雰囲気を携えつつも、夢の中を彷徨うようなイマジネーションを刺激するニューエイジ色が強いか。"Hammond Blue"では透明感のあるシンセの粒が舞い踊る中で優雅なパッドがアクセントを作る事で豊かな色彩を伴うビートレスながらも動きのあるアンビエントで、そして"Bricks In White"において抽象的なサウンドコラージュに合わせて静謐なピアノのフレーズを被せてミステリアスに展開していくニューエイジな作風は神々しく、最後の"Fade"では何処までも伸びる美しいドローンの上にセンチメンタルなメロディを配して消え入るように静かに、しかし感情性を高めていく。全体を覆う軽くリバーブの効いたもやもやとした音響の中に、音と音の間の余白の美しさが際立つようなシンプルな構成が、すっきりとしながらも気怠い安眠を誘うようなアンビエント/バレアリックな世界は期待以上。寝起きのBGMとしても、昼下がりのうとうとする時間帯にも、夜中寝る前の時間帯にも適したアルバムだ。



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| ETC4 | 15:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
D.K. - Distant Images (Antinote:ATN 038)
D.K. - Distant Images
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2017年はMelody As TruthのSuzanne Kraftとの共作、2018年はMusic From Memory傘下のSecond Circleからも新作をリリースするなど、ニューエイジ/アンビエント系では知名度を一躍高めているDang-Khoa ChauことD.K.。ロウ・ハウス寄りなマシンビート性が強い45 ACP名義、The Trilogy Tapesからの更に実験的でインダストリアル性もあるSlack DJs名義と、その名義毎に異なる音楽性を披露しているが、2016年にAntinoteからリリースされたD.K.名義の『Island Of Dreams』(過去レビュー)を聞けば分かる通りこの名義ではドリーミーで黄昏時のメランコリーが滲むダウンテンポな作風だ。本作は同様にAntinoteからの新作となればその路線を踏襲する事が期待されるが、冒頭の"Keyboard Study"からして"Electric Counterpoint"風なメロディーを反復させながらそれを割って入ってくる情緒的なストリングスや耽美なピアノが夕暮れ時のメランコリーを描き出す印象的な作品だ。静かに引いては寄せる波のように繰り返し感動がやってくるノンビート・バレアリック、先ずこの曲だけでも一気に耳を惹き付けられる事だろう。本作では曲毎にイメージは異なっており、"Days Of Steam"では弦楽器や木琴らしき音色がどこか異国の長閑な街並みを描写した音楽と言うか民族的な感覚もあり、そして同様にマリンバと思しきフレーズが心地良く弾みドリーミーなシンセが伸びていく清々しさ溢れる"Leaving"と、開放的な感覚に長けている。"Shaker Loops"でもやはりマリンバの連打が用いられているがここまで来ると現代音楽のミニマル的と雰囲気もあるが、胸を締め付けるような切ないメロディーが入ってくればシネマティックな作風へと変化する。そしてラストの"Distant Images"は鳴きのギターサウンドや感情的なピアノ、そしてカモメの鳴き声なども導入したいかにもD.K.らしいバレアリック/ニューエイジ風で、感動的な映画のワンシーンを見ているような余りにもメランコリーな響きが琴線に触れるラストを締め括るに相応しい曲だ。エキゾチックからトロピカルまで横断する音楽性は世界を旅するような感覚もあり、ゆったりと風景が移ろいゆく正にDistant Imagesなミニアルバムだ。



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| ETC4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
D.K. - Island Of Dreams (Antinote:ATN 026)
D.K. -  Island Of Dreams
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非現実的な空間で、しかし何だか安らぎのムードが漂うニューエイジ風なジャケットに惹かれ、自然と手を伸ばして購入された方は間違っていない。本作は45 ACP名義ではL.I.E.S.からロウ・ハウスなアルバムをリリースし、Slack DJs名義ではThe Trilogy Tapesからもリリースするなど、その名義毎に作風を分けて活動しているD.K.によるミニアルバムだ。この名義では2014年にもAntinoteよりミニアルバムをリリースしており、他の名義とは全く異なる気がのどかで可愛らしいメロディーを活かしたバレアリックな雰囲気を持つ内容で、ダンスフロアに依存度が低くもBGMとして馴染む音楽性を披露していた。それから2年、またもAntinoteからリリースしたミニアルバムはよりダンスとしてのグルーヴから距離を置き、メランコリーやノスタルジーを増したリスニング寄りの曲が中心だ。確かに淡い色彩が滲むジャケットからは懐かしさが漂ってくるが、アルバムや曲名も情緒的なムードを呼び起こす名が付けられており、忙しない現代世界から離れた安らぎの島へと辿り着いたかのようだ。幕開けとなる"Evening Shadows"ではベルや鉄琴らしき音に透き通る幻想的なシンセが切ないメロディーを鳴らし、いきなり哀愁で胸いっぱいになるダウンテンポで始まる。弛緩はしているがはっきりとしたリズムを刻む”Ivory Forest”も、淡さが滲むシンセのメロディーが複数現れ、しっとりとした有機的な質感もあって温かさが伝わってくる。少しだけ弾けるようなリズム感が心地良い"Play On"、ややアンビエントな壮大さもあるハウス寄りの”Journey To The Sun”など、それらも鍵盤弾きしているようなリラックスして大らかな音色が地平線の果てまで届くようで、誰もいない開放感のある夢の島をイメージしてもおかしくはないだろう。そして裏面へと続くとむせび泣くようなサックスとセンチメンタルな木琴系のリフに、爽快に広がるパーカッションが感動のピークへと導く”Memories”や、トロピカルな色彩を感じさせる最もダンス寄りのハウス・トラックである"Raindrops"、夕暮れ時のオレンジ色に染まりつつある海辺を喚起させるダウンテンポの"High On The Sea"と、ちょっとした盛り上がりも加えながらサウンドトラックのように曲毎に場面場面を創造させるような流れを作るのだ。ミニアルバムとは言いながらも30分もない短さではあるが、確立されたセンチメンタルな世界観がほんの束の間の休息となり、癒しの一時を提供してくれる事だろう。



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| HOUSE11 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |