Domenique Dumont - Miniatures De Auto Rhythm (Antinote:ATN044)
Domenique Dumont - Miniatures De Auto Rhythm
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ほのぼのとした牧歌的な色彩感覚ながらも何かおかしな世界観のジャケット、ポップでもあり少し捻れた感もあるその雰囲気は音楽がそのまま投影されているようだ。近年のバレアリックやシンセウェイヴのムーブメントと共振するフランスのAntinoteから2018年9月にリリースされた本作は、2015年に同レーベルより謎のフランス人プロデューサーという紹介でデビューしたDomenique Dumontによる2枚めのアルバムだ。作品数が少ない事もあり今も尚謎多きアーティストだが、実はラトビア共和国のArturs LiepinsとAnete Stuceによるプロジェクトと判明した。とは言っても両者に関してそれでも尚謎多き存在である事に変わりはないが、しかしそんな霧に隠れたような知名度ながらも音楽そのものは闇を燦々とした光で照らし出すが如く抜群に魅力的なものだ。シンセ・ポップやバレアリックにトロピカルといった要素が含まれているがしかしどれか一つに当て嵌めるのは難しい音楽、陽気で牧歌的なムードと共に爽やかなダンスでもありリラックスしたリスニングでもあるそれは、とにかく愛くるしいポップ・ミュージックなのだ。急ぎ足のように、しかし軽いドラムが走る"Le Debut De La Fin"はほのぼのとしたシンセのコードに愉快で爽快なギターが切り込んできて、そして透明感のある歌も加わって実にフレッシュな空気が弾けるシンセ・ポップだ。続く"Quasi Quasi"もチープなリズムマシンのような素朴なビート感が辿々しくも新鮮で、そこに朗らかで愉快なシンセやキュートな歌が目まぐるしく展開して、一点の曇りも無いピュアな世界観はバレアリックとも共振する。この後の"Faux Savage"はちょっとした小休止のダウンテンポ調で、奇妙な弦楽器や打楽器がごちゃごちゃと鳴って異国情緒もありながら、哀愁あるフォーキーなギターが切なくもある。そんなカントリーなりフォークなりの雰囲気がより強く現れたビートレスの"Ono Mambo Haiku"、それは素朴なギターによるものだけでなく淡い色彩感覚のシンセによるほのぼのとしたメロディーが枯れた味わいも生み出していて、肌にしんみりと染みていく感覚のあるインストルメンタルに安静を覚える。"Sans Cesse, Mon Cheri"では再び軽くレゲエ寄りなアフタービート調のリズムに開放感を生むパーカッションも入ってきて、そこにまろやかでドリーミーなシンセに哀愁爆発なギターが加わって、南国の極楽ムードなトロピカル・シンセ・ポップを聞かせている。その南国ムードをはっきりと感じさせる"Message Of The Diving Bird"では、鳥のさえずりをバックにどこどことした土着的な打楽器と訝しいフルートの響きによって、深い亜熱帯の森林の中に誘い込まれていく。一体何処の国だろうかと思う程に、エキゾチックの原始な風景であったり長閑な田園風景だったりと曲によって異なる雰囲気があるが、しかしそのリラックスして開放感のある響きに共通するのはバレアリックという感覚だろう。それも大らかで陽気なポップ・ミュージックなのだから、愛らしく聞こえるのも当然だ。



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La Torre Volumen Uno (Hostel La Torre Recordings:HLTR001)
La Torre Volumen Uno
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バリアリックと言えばイビサ、そして現在のバレアリック・シーンを引率するレーベルはInternational Feel。本作はそんな場所やレーベルに縁のあるコンピレーションで、イビサ島にあるホテル「Hostel La Torre」で夏の間にInternational FeelのボスであるMark BarrottがBGMを担当した事から、そこでの選曲をベースにLa Torreにもたらそうとしていた「エッセンスとスピリット」を盛り込んだそうだ。筆者はイビサに行った事がないのでそこでの雰囲気をリアルに体験する事は不可能だが、しかし本作を聴けば少なからずイビサの空気感とバレアリックがある特定のジャンルではなくある雰囲気を持つ音楽の集合体である事を理解する事は可能だ。本作はジャンルや時代に壁を作る事なく選曲がなされており、実験的なアフリカン音楽にエキゾチック、無国籍に中東レゲエ、シンセポップに最新のバレアリックまで収録し、それらが一体となりバレアリックという雰囲気を作り出しているのだ。アルバムの前半は一般的なダンス・ミュージックではなく異国情緒もあるワールド・ミュージックとしての性質が強く、アフリカンながらもミニマルな展開で持続感を有む"Forest Nativity"で始まり、可愛らしさを発するボーカルとトロピカル感が控えめに甘さを匂わす"Comme Ca"、メロウなフォークの中に東洋的な雰囲気もある"Air A Danser"など、有機的な響きと肩の力が抜けたリラックスした流れが爽やかな開放感を生んでいる。中盤のSpookyによる"Orange Coloured Liquid"は90年代前半のアンビエント・ブームの系譜にある浮遊感の中に意識も溶け込んでしまうバレアリックで、そこから現行バレアリックのCantomaによるアコースティック・ギターが夕暮れ時の切なさを誘う"Tabarin"への流れは、得も言われぬ恍惚感が溢れ出す。そしてバレアリック急先鋒に属するAndrasの"Gold Coast (Surfer's Paradise Mix)"も、ドラムン・ベースのビートを刻みつつも何処までも澄み切った清涼感のあるピアノやストリングスが穏やかな情景を浮かび上がらせる。後半にはBarrott自身による正にタイトル通りな"Deep Water"が待ち受けており、土着的なパーカッションや笛の中から清き水が溢れてくるようなエキゾチック・アンビエントには、もはや身も心も溶けてしまう。そして最後の"White Diamond"、ゆったりとしたスローモー・ディスコだがキラキラ感よりは輝きを抑えつつも長閑な田園風景を垣間見せる穏やかなバレアリックで、感動のラストを迎える。本作には瞬間的な刺激や真夜中のざわめきは一切なく、確かにホテルの落ち着いた空間演出を作るのを助けるような役割を持った音楽性で、底抜けの開放感やリラックスした微睡みが途切れる事なく続く。それぞれのジャンルは違えども各曲はバレアリックという言葉で繋がれており、流石のInternational Feelの率いるだけの説得力を感じさせる。



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| ETC4 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |