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Vangelis Katsoulis - If Not Now When (Utopia Records:UTA004CD)
Vangelis Katsoulis  - If Not Now When
Amazonで詳しく見る(US盤)

古典になっているハウス・ミュージックの掘り起こしから、現代的なジャズや電子音楽にまで影響を受けたダンス・ミュージックまで手掛けるUKの新興レーベルであるUtopia Recordsは、確かにカタログにLars BartkuhnやModajiが並んでおり、まだ作品数は少ないもののレーベルの方向性は窺い知れるだろう。そのレーベルにとって初のアルバム作品を提供したのがギリシャのシンセサイザー奏者であるVangelis Katsoulisで、1980年代前半からジャズを基調にニューエイジやフュージョンも融和させながら活動を続ける大ベテランだ。2015年には彼の曲を現在のダンス・ミュージックのアーティストにリミックスさせた『The Sleeping Beauties Remixed』(過去レビュー)も送り出し、ジャズや現代音楽からよりダンスへと接近するような方向性も示唆していたが、その結果としてこのニューアルバムは確かにジャズが軸にありながらも現代的なバレアリックやアンビエントの感覚も含んだモダンな作風になっている。始まりの"All The Blue Skies"から自由なビートを叩き出すジャズ色強めだが、オーガニックとエレクトロニックの調和や美しいサウンドスケープが広がっており、やはりジャズを提示すると言うよりは結果的にベースにジャズがあるもののコンテンポラリー・ミュージックと呼んだ方がしっくりくるか。続く"Zarrin"ではビートは排除しつつ女性の優しいボーカルを導入し、静謐で研ぎ澄まれたピアノの旋律を基に白昼夢を誘うかのようなアンビエント的な面も。そしてテクノの要素を取り入れた"Grand Delusions"では硬いビートがリズミカルに弾けるが、やはり温かくドリーミーな上モノはバレアリックの開放感があり、リスニングとダンスの程良い中庸を保っている。トランペットを導入した"Midsummer Tobago"もややジャズの匂いはあるものの、情緒的な雰囲気を生むシンセサイザーのな導入によってニューエイジ的な曲調になったり、深みのある音色を聞かせるフリューゲルホルンを用いた"It Not Now, When"もジャズに加えてダブの音響や透明感を作る電子音のヴェールが効果的に作用しており、単にジャズと呼ぶには難しい現代的な感覚が通底している。音楽的にはECMや昨今再評価の高いGigi Masinと近いだろうか、単に古典に留まらずに現代音楽ともコミットする拡張性があり、それでも尚クラシカルな響きもある実にリスニングとして心地良い現代音楽だ。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2017/4/18 Gigi Maisn - balearic state - @ WWW
先日のpiano concertでピアノを強調したクラシック的な音楽性を披露したGigi Masin。東京ではbalearic stateなる異なるコンセプトのプレイもあると言う事で、その両者の差に興味津々で体験せずにはいられず、筆者は当然balearic stateの日にも参加する事にした。パーティーの趣旨をより明確にするようにこの日はDJにCOMPUMAやChee Shimizu、ライブではComatonseから素晴らしいアンビエント・ハウスをリリースしたWill Longや4人組アンビエント・ユニットのUNKNOWN MEらが参加するなど、方向性としてはクラブ寄りを明確に打ち出している。
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| EVENT REPORT6 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2017/4/12 Gigi Maisn - piano concert - @ WWW
待望の初来日、イタリアから御年61になるGigi Masinの日本ツアーが遂に開始する。1986年にデビューを果たしたピアノ演奏者であり作曲家でもあるMasinは、その当時には気が付かれる事のなかった名作『Wind』等をリリースするも、プレス数も少なかった事から不幸にも世に知られる事はなく知る人ぞ知る的なマイナーな時代を過ごす。しかし近年のMusic From Memoryによるコンピレーション『Talk To The Sea』を発端とした再発見により、特にダンス・ミュージック側からのバレアリックやアンビエントとしての再評価により一躍時の人となった。その結果、世界的にMasinのコンサートが開催されるまでになったが、その流れはようやく日本も辿り着いた。喜ばしい事に日本においては、piano concertとbalearic stateの異なる2セットが予定されており、この日はその前者のコンサートとなる。
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| EVENT REPORT6 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Gigi Masin - Wind (Suburbia Records:SUCD-3002)
Gigi Masin - Wind
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来週には念願の初来日を果たすイタリアのアンビエント/音響音楽家であるGigi Masin。2014年にMusic From Memoryがレア&未発表曲を取り纏めた『Talk To The Sea』によって、それまで気が付かれる事なく埋もれていたMasinの存在は途端に世界に知れ渡る事になり、ようやくその耽美な響きやメロウな心象風景を喚起させるイマジネイティブな音楽性が正当な評価受けた。2015年には失われていた1986年作の『Wind』(過去レビュー)がアナログのみでリイシューされ更なる再評価を得るに至ったが、日本ではメロウな音楽を探求する橋本徹による"Good Mellos"シリーズの一環として、『Wind』が2016年に世界初CD化としてリリースされた。オリジナルの内容についてはアナログ盤の過去レビューを参照して頂きたいが、CD化に際しては1985〜88年に制作された未発表レコーディングやサンプリング・クラシックとなった「Clouds」のライブ・バージョンも収録されており、単なるリイシューの粋を越えたアルバムになっている。未発表曲についてもオリジナルと同年代に制作された楽曲なので世界観としては共通し、透明感のある電子音にピアノやギターにベースから管楽器まで用いたあるがままのアンビエントな室内楽で、その言葉通りに元々環境音として存在していたかの如く自然な鳴りをしている。決してリスナーに対し意識的に親しみやすく接するような音楽と言う印象よりは、よりプリミティブと言うかあるがままの私的な感情を表現したようにも思われ、お洒落や安っぽいムードを意図したニューエイジやアンビエントとは一線を画している。感情の起伏を刺激しないように何処までも穏やかで、しかし豊かな情緒性を持った世界観はシネマティックで、聴く者にとっては一時的な安楽の時間をもたらす事になり、行き着く先は桃源郷だろう。近年の再評価によって今では積極的にライブを行うようにもなったMasinだが、その成果はラストに収録された"Clouds (Live Version)"で体験する事が出来る。言葉にする事も出来ない美しさ、琴線を震わす哀愁はライブによって更に増しており、来日ライブの期待は高まるばかりだ。



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| ETC4 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Good Mellows For Stardust Memory (Suburbia Records:SUCD1009)
Good Mellows For Stardust Memory
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2015年春に開始し本作にて通算7枚目となる『Good Mellows』シリーズ最新作は、その名も「星屑の記憶」と先ずタイトルからして素晴らしい。橋本徹が正にそのタイトル通りにメロウな曲をジャンルに拘る事なく選曲し、それぞれの時間帯やシーン毎に風景を喚起させるようなコンセプトを用意し、ダンス・ミュージック側の視点からリスニング志向となる音を聞かせるシリーズ。バレアリック、アンビエント、又はハウスでもありテクノでもありジャジーでもあり、橋本によるメロウへの確かな審美眼がジャンルを超越して纏まった世界観を作り上げるシリーズは、埋もれた古典やレア曲に現在の時流まで網羅する事でも非常に音楽的な価値を持っている。アルバムの始まりはサンプリングを用いてチルなヒップ・ホップ風な"By And By"、優しく心に染みるピアノのフレーズが印象的な曲。そこからこのシリーズではお馴染みのGigi Masinによる新曲"My Red Rose"、彼らしく開放感溢れるシンセに耽美なピアノが滴り落ちる静謐なインストで、平穏な情景が伸びていく。続くも常連のInternational Feel主宰のMark Barrottによる"Over At Dieter's Place (Luis Delgado Mix)"では、青々しい木々が生い茂るエキゾチックな密林を思わせるバレアリックな世界を広げ、そしてそこに繋がるのは井上薫によるChari Chari復活作"Luna de Lobos"。ネオアコを思わせる枯れ感漂う哀愁のアコギから徐々にハウスへと変化するチルアウト・ハウスは旅情にも似た侘びしさがあり、そこから中盤は"Waiting"や"Love Story"等淡い色彩感覚のハウス色でスムースな流れに乗って、後半には"Miles Away"によって夜の帳が落ちたようにしっとりとした闇に染めてくディープ・ハウスへと入っていく。そこから鳥の囀りも交えて微睡みを誘発するダウンテンポ・バレアリックな"Tropic Of Capricorn"で真夜中を迎え、その闇の先には朝の光が優しく射し込むような正しくタイトル通りの"Sunday Morning"によって暗闇が明けていく。何処を切り取ってもメロウでバレアリックな、そして星屑が飛び交う夜空のようなドラマティックな世界観は、ゆったりと大らかで包容力に満ちている。疲労の溜まった夜や心に余裕がない忙しない日常に、そんな時でもほっと心身をリラックスさせてくれる音楽がここにある。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Charles Hayward / Gigi Masin - Les Nouvelles Musiques De Chambre Volume 2 (P-Vine Records:PCD-24520)
Charles Hayward / Gigi Masin - Les Nouvelles Musiques De Chambre Volume 2
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過去の失われた名作の再発、そして現在のダンス・ミュージックのアーティストらとも接続しながら新作を制作するイタリアはヴェネチアの音響音楽家・Gigi Masin。そして言葉通りにプログレッシヴなポスト・パンクを手掛けていたThis HeatのメンバーであるCharles Hayward。そんな彼等が1989年にSub Rosaからスプリット・スタイルでリリースしたアルバムが本作で、今まで未CD化だったものの昨今のMasinの再評価を受けて目出度く世界初CD化されたのだ。音楽的な相性に疑問も残るスプリット盤は、両アーティストを気に入っていたレーベル側の意向によるものだが、しかし本作にはMasinによるサンプリング・クラシック化した名作「Clouds」が含まれている事もあり、Masinの魅力を計り知るには十分な内容だ。“新しい室内楽”というタイトル通りに少人数による演奏の如き構成は、極めて静謐で優しい程に繊細なインストメンタルで、特にMasinサイドは研ぎ澄まされた最小限のピアノと豊潤な電子音によって美しい風景を目の前に広がらせる。水の都であるヴェネチアをイメージしたであろう"Waterland"はか弱いピアノだけによって控え目にメランコリーを奏で、続く"Clouds"でピアノが滴り落ちるような美しい旋律にミニマリズムを生む電子音を被せ、自然と無駄が排された極シンプルな構成の中に純朴な美しさを生んでいる。"La Giara Di Gesturi"では弦楽器らしき音も用いながらクラシックとも宗教音楽とも取れる荘厳な空気を纏い、"Goodbye Kisses"ではギターや電子音に残響を効かせながらゆったりと優しさが広がっていく。一方でHaywardも水をテーマにした21分にも及ぶ"Thames Water Authority"を提供しているが、こちらは現代で言うドローン・アンビエントと呼ぶべきか。抽象度を極めて高くし持続音や不気味な音響を多用し、幻想的な音ではあるものの不協和音となって迫る廃墟と化したようなドローンは、Masinとは対照的に灰色の世界に染まっている。Masinの慈愛に満ちた繊細なアンビエントに対し、Haywardによる半ば強迫的な荘厳さが覆うドローン・アンビエントと、その異なる作風が同じ盤に収められているのはやや不可解ではある。それでもMasinサイドは十分に彼の魅力である美しい響きが伝わるので、この再発の機会に手を取ってみて欲しい。



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| ETC4 | 20:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Tempelhof & Gigi Masin - Tsuki (Hell Yeah Recordings:CLTCD-2054)
Tempelhof & Gigi Masin - Tsuki
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そもそも一度目の春があったかどうかはさておき、イタリアの音響音楽家であるGigi Masinにとっては、今こそが長い音楽キャリアの中で春の真っ只中という状況だろう。全ては2014年にMusic From Memoryが掘り起こしたベスト盤の『Talk To The Sea』(過去レビュー)を起点として現状までの流れが続いており、過去の殆どの作品は復刻されて慎ましく美しい音響作品はようやく多くの人に届くようになっている。だからと言ってMasinが過去の人であるわけでもなく、リイシューを契機に知名度を得た事で音楽活動が盛んになり、今ではLuciano ErmondiとPaolo Mazzacaniによるバレアリック派のTempelhofとのコラボーレーションも積極的に行うなど、現在進行形のアーティストしてシーンへとすっかり馴染んでいる。本作はそのコラボーレーション第2段となるアルバムで、2014年の『Hoshi』に続き日本語をイメージした『Tsuki』という静謐なタイトルが付けられている。制作はどちらかがベースとなる曲を作ったり、又はそこから一部を削除したりと、お互いが手を加える事でリミックスにも近い環境であったようだが、両者の音楽的な境目は全く分からない程に自然な融和を成している事でコラボレーションの結果は間違いなく成功している。アルバムの始まりはかの名曲"Clouds"のリメイクである"Tuvalu"で、天使の羽衣のようなふんわりとしたシンセのリフレインと滴り落ちる静謐なピアノのメロディーが哀愁を誘発し、引いては寄せる波のように叙情の盛り上がりを展開し、いきなりドラマチックな世界観に引き込んでいく。そこから青空が広がるように爽快なパーカッションが心地良く響く"Corner Song"では、Masinらしい柔らかく美しいストリングスが伸びて、広大な空に絵を描写するような壮大さがある。"Vampeta"も抜けの良いパーカッションが上の方で鳴っているが、ここでは情緒豊かなトランペットが効果的に用いられ、ジャズ・フィーリング溢れる躍動感を備えている。逆に"Komorebi"ではエレクトロニクスを中心にしながらドローン音を背景に、コズミックな電子音を散りばめながら途中からトライバルなリズムも加わって、何だか原始の胎動を含むアンビエント的だ。終盤の"Treasure"では残響の強い歌も配して宗教的な厳かさを演出し、非日常的な神聖な佇まいは祈りにも感じられる。多少はアルバムの中でジャズやアンビエントにサウンドトラック的なものまで幅があるものの、どの曲にもシンプルでありながらこの上ない静謐さと美しいメロディーを際立てる特徴があり、リスニング・ミュージックとしての世界観が統一された素晴らしい内容になっている。その美しさには溜息しか出ないだろう。



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| ETC4 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Suso Saiz - Odisea (Music From Memory:MFM009)
Suso Saiz - Odisea
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Gigi Masinら歴史に埋もれてしまったアーティストの発掘に勤しむMusic From Memoryは、今や新作のリリース毎にヒットを約束された重要なレーベルの一つになっている。ダンス・ミュージックからは距離を置いた環境音楽やニューエイジにジャズなど、そして単なるベスト盤としてではなく未発表音源も掘り起こしながら、そのアーティストの紹介に寄与するような運営は敬服すべきものだ。そんなレーベルが自信を持って送り出す新作は、スペインのギタリストであり電子音楽家であるSuso Saizのコンピレーションだ。1984年から現在に至るまでに大量のアルバムを制作しており、決して隠れた存在とは言えないかもしれないが、しかしMusic From Memoryの後押しは間違いなくこの機会に多くの人にSaizの魅力を伝えるだろう。収録された曲は1984年作のアルバムから2006年に制作された未発表曲まで及び、ほぼ全ての時代を網羅するようにバランス良く選曲なされている。アルバムの冒頭を飾る”Un Hombre Oscuro”は彼のアンビエント・サイドが打ち出された曲で、ぼんやりと幻想的に浮かぶシンセと空の彼方に消え入るようなポエムを配し、その静謐な響きには心が洗われる。続く"Ya Son Dos Los Cielos"はギタリストとしての手腕が発揮され、ディレイを効かせたギターを被せて夢の如く儚い音色で耳を惹き付けるインストメンタルで、シンプルな構成が故にギターの叙情が強く迫る。フェンダーローズやギターにパーカッションなどを用いた色彩感の強い"Prefiero El Naranja"にしても、一音一音が浮かび上がるように研ぎ澄まされ、耽美な響きは重力の支配から解き放たれように広がるサウンド・スケープを描き出す。かと思えば"Una Gota De Asfalto"は空間を切り裂くギターとコズミックなシンセが導くシンセ・ポップだったり、"The Ten Heads Of Someone"では重厚感あるピアノのか弱い残響が広大な空間創出を行う現代音楽的な作風が聴けたりと、アナログ楽器と電子楽器を巧みに操り実に心地良いゆったりとしたムードを作り上げている。どんなスタイルであろうと嫌味の無い清楚な響きで体の隅々まで洗うような音楽性は正にニューエイジか、そしてMusic From Memoryというレーベル性の確立にも役立ってしまっている事に驚くばかり。美しくもメランコリーな素晴らしいインストメンタルだ。



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| ETC4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Gigi Masin - Talk To The Sea (Ritmo Calentito:RTMCD1193)
Gigi Masin - Talk To The Sea
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リイシュー、初CD化、日本盤のリリースなど過去のありとあらゆる作品が掘り起こされ、日本も含めた世界的な規模で再評価著しいイタリアの音響音楽家、Gigi Masin。その勢いに呼応するようにMasinは現在形のダンス・ミュージックのアーティストと手を組み共作もリリースするなど、決して狭い枠のみの評価ではなく電子音楽やダンス・ミュージック側からの人気もひとしおで、一種のムーブメントにさえも感じられる。そんなMasinを未だ知らぬ人にとって一体どの作品がお勧めなのかと問われれば、間違いなく推薦するのがMusic From Memoryから2014年にリリースされ一挙に再評価へと繋がる契機になったベスト盤である。但しそれは直ぐに廃盤となり長らく入手困難となってしまったが、嬉しい事に今年になって日本盤でのリイシューが成されており、これを聞けばGigi Masinがどんな音楽家であるかと言う事を理解するのに役立つ事だろう。選曲は1986年作の『Wind』や1991年作の『The Wind Collectors』に複数のサウンドトラック、または2000年以降に制作された未発表曲まで網羅されており、単純なベスト盤以上のアーティストの歴史を総括するような内容だ。収録された曲の年代に幅はあれど、どの曲もMasinらしい淡い色彩のような音色に存在する静謐な雰囲気で統一性はあり、シンセサイザーのみならずピアノやベースにトランペットまで演奏し、更には艶やかな歌まで披露するなど非常にパーソナル性の高さが伝わってくる。手作り感と言うべきなのか丁寧に演奏された音は素朴で、色々な楽器を用いながらも無駄な装飾の無い響きは広大な大海原に静かに広がる波の如くリラックスしており、電子音も生音も相対する事なく一つの有機的な響きとなる。淡い風景の中に消え入るようなぼんやりとした抽象性があり、しかし繊細ながらもはっきりと打ち出される耽美な旋律が空間に存在し、まるで最初からその場にあったような自然な存在感は正にBGMでもある。現代音楽かニューエイジか、またはバレアリックな空気と感じる人も居るかもしれないが、この極限までの静謐な世界観はそうは比類無きものだ。サンプリング・クラシックとなった「Clouds」が収録されていないのは敢えてだろうか、それはまたオリジナル・アルバムの中で聴くべきという意志の現れなのかもしれない。



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| ETC4 | 05:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Elia Perrone / Gigi Masin - Stella (Unclear Records:UNCLEAR 013)
Elia Perrone Gigi Masin - Stella
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Music From Memoryからの再発が契機となり埋もれた名作の復刻が続くイタリアの音響音楽家・Gigi Masinであるが、決して過去の作品だけに頼る訳でもなく現在のダンス・ミュージックのアーティストとも交流しながら新作を出すなど、チャンスを物にして再度シーンへと返り咲いたのは本質的な実力があるからこそ。そして今度はイタリアでUnclear Recordsを主宰するElia Perroneと手を組み、彼のレーベルから更なる新作を世に放っている。Perrone自身はハウス・ミュージックを手掛け、レーベルとしてもモダンなハウス中心だったりするところにMasinの名が出てくるのは意外かもしれないが、それもダンス・ミュージック側からMasinへと寄り添っている状況を理解すれば不思議な事ではないのだろう。"Stella"はビートレスな作風がアンビエントを思わせる点もあるが、荘厳なストリングスや耽美なピアノの旋律を用いて生の質感を打ち出しているのは、Masinによる影響だろう。そこにおどろおどろしいエレクトロニクスの音響が胎動を加えているが、荒立たない静けさが広がる音響は静謐でさえある。"Garden Blues"ではトリップ・ホップのような粘性の高いビートが入り、捻れるような電子音やぼやけたエフェクトが施されたシンセが霞の奥に消え入るような音を鳴らし、物哀しさが胸に込み上げるダウンテンポな曲となっている。そして注目すべきは本作でもやはりと言うか、Juju & JordashとNiro Love Mumによるダンスシーンからのリミキサーが起用されており、原曲の面影を残しながらもフロアに即したリミックスが成されているのは特筆すべき事だろう。元々のピアノやストリングスの旋律に加え幻惑的なシンセのフレーズも追加し、更に軽快なハウスのキックが加わった"Stella (Juju & Jordash Remix)"は、ロウな質感も目立つが奥ゆかしさを残している。そしてダウンテンポから規則性のある4つ打ちへと生まれ変わった”Garden Blue (Niro Love Mum Remix)”は、原曲のイメージを損なわずに機能的なディープ・ハウスの体をなしている。違和感のないダンス系のリミックスを収録する事は、よりMasinに対する間口を広げる事へと繋がり更なる再評価を得るのは間違いなく、今からでもMasinの追うのは全く遅くないのだ。



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| HOUSE11 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Gigi Masin, Alessandro Monti, Alessandro Pizzin - The Wind Collectors / As Witness Our Hands (Diplodisc:dpl 009)
Gigi Masin, Alessandro Monti, Alessandro Pizzin - The Wind Collectors / As Witness Our Hands
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Music From Memoryからの編集盤である『Talk To The Sea』やJonny NashやYoung MarcoとのユニットであるGaussian Curveの作品により、近年はクラブ・ミュージック側からもその動向が注目されるイタリアのGigi Masin。鍵盤奏者でありエレクトロニクスも導入する実験音楽家でもあり、そして静謐なアンビエントやニューエイジのような何処か瞑想じみた要素を感じさせる音楽を制作するプロデューサーだ。クラシックからのルーツも匂わせる美しさを放つディープ・ハウスを得意とするSven WeisemannがMasinをリミキサーに起用したり、橋本徹がGood Mellowsシリーズに彼の作品を収録したりするのを知れば、Masinというアーティストについても何となく想像出来るかもしれない。『The Wind Collectors』はそんな彼が1991年にリリースしたアルバムで、同郷のマルチプレイヤーであるAlessandro Montiと鍵盤奏者であるAlessandro Pizzinとセッションを行って出来上がった物だが、ここでは当時は録音されたものの収録されなかった曲まで追加された完全版として蘇っている。シンセサイザーとピアノの音を軸にギターやベースを用いた演奏は、一切の荒波を立てる事もなく、ただただ穏やかな地平線が広がるような静かな海の景色を喚起させる。強い主張をしないシンプルで繊細なメロディー、薄っすらと淡く広がるシンセサイザーの響き、静けさの中に宿る叙情など、非常に無垢で弱々しくも飾り気のない分だけ嘘偽りなく心に響く音楽だ。クラブ・ミュージックの観点からのアンビエントとは異なるし、かと言って実験が際立つ作品でもなく、ミニマルなコンテンポラリー・ミュージックとでも呼べば適切なのだろうか。そして、この度のリイシューでは何とデモ音源や未発表のセッションも収録した『As Witness Our Hands』も追加されており、そこではMasinの永遠の名曲である「Clouds」のデモやTerry Rileyのカバーである「Medusa's Refrain」も聞ける。話題性は十分であるのは当然として、これらのセッションを含んだ盤は幾分か感情が強く出つつ実験的な面も滲み出ており、古楽やフォークにプログレッシヴ・ロックの要素等が目を出している。だが気難しく構える必要はないだろう。ただただ淡い抽象画のような美しいサウンド・スケープに耳を傾ければ、穏やかな時間が待っている。



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| ETC4 | 07:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
BEST OF 2015
今年も一年間当ブログを御覧頂いた読者の皆様、どうもありがとうございました。何やかんやで今年も大小51ものパーティーへと足を運び、また価格高騰にも拘わらず素晴らしいヴァイナルに出会うとついつい購入し、大量のCDを購入しながらも未開封のまま放置したりと、例年と変わらず素敵な音楽に囲まれた続けた一年でした。その一方で仕事やプライベートにも時間が取られる事が多くなった影響もあって、大量にリリースされる音源に追いつかず、ブログの更新頻度も例年に比べるとやや落ち気味になったのも事実。でも音楽は好きなので細々とでも素晴らしい作品を、来年以降も紹介し続けられたならと思います。歳をとったせいかは分かりませんが、ベストに選んでいる作品は何だかリスニング寄りの物が増えてきている印象ですが、部屋の中で聴く音楽とクラブで聴く音楽は別物であり、そういった点も何となく反映されているかもしれませんが、少しでも皆様が素敵な音楽に出会えるきっかけになれば嬉しいです。それでは、来年も良いお年を!
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Gigi Masin - Wind (The Bear On The Moon Records:BAR003)
Gigi Masin - Wind

2015年の音楽的な出来事の中で、Gigi Masinの再評価を抜きにして語る事は出来ないだろう。Masinは70年代から活動するイタリアの実験音楽のアーティストで、どういう訳か最近ではSven Weisemannのリミックスを行い、またニュー・ディスコ系のTempelhofとの共同でアルバムを制作、そしてJonny NashやYoung MarcoとのGaussian Curveを結成したりと、クラブ・ミュージックの方面から注目を集めている。2014年にはオランダのMusic From Memoryから編集盤である『Talk To The Sea』がリリースされるなど、確実にMasinの再評価の動きは強くなっていた。そんな状況の中、今年になって遂にMasinが主宰するThe Bear On The Moon Recordsから1986年作である本作が遂にリイシューされたのだ。この作品は当時は500枚程プレスは終わったものの、その大半が洪水被害に遭い殆ど販売されないまま、少々のみが出回ったとされる非常にレアな物だ。ただそんな稀少性のみが特別扱いされる理由ではなく、勿論その音楽性は今も尚古びれる事もなくその当時のまま輝いているのだから、現在も評価される所以なのだろう。本作でMagin自身はシンセやピアノにギターを演奏し、そして歌まで披露しているが、他にもサックスやトランペットにベースやストリングの奏者まで率いて、限りなく静謐なアンビエントを形成している。"Call Me"ではMasinによる消え行くような物哀しいボーカルと共に朧気なストリングスや静かに浮かび上がるピアノのメロディーが、一体となり儚くシネマティックな風景を見せる。"Tears Of Clown"もやはりピアノのメロディーがとても美しいが、それは瑞々しく昼下がりの夢現な快活さがあり、アナログの柔らかいシンセとの合間から気高いトランペットが目覚めを引き起こすようだ。逆にぼんやりとしたシンセが抽象的にゆっくりとうねる"Tharros"は鬱蒼とした空気が満ちたドローン風で、室内楽を通過したアンビエント的だ。また"The Wind Song"では穏やかなシンセのコードに割って入ってくる牧歌的で和んだトランペットに涙しそうになり、"Celebration Of Eleven"では羽毛のような柔らかいシンセが反復する中に哀愁のギターやベースが零れ落ちる展開が琴線に触れ、全く汚れのない清らかな音が心身共に洗い流すような日常生活の中に存在するアンビエントとして受け止める事が出来る。その極限まで静謐で美しい世界観はBGMとして聞き流すのではなく、しっかりと相対し面と向かって耳を傾けたくなる程に真摯な内容で、部屋の空気を一変させるリスニング作品として素晴らしい。



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| ETC4 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Good Mellows For Sunset Feeling (Suburbia Records:SUCD1002)
Good Mellows For Sunset Feeling
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「週末の海辺」から「夕暮れ時の感情」へ、橋本徹による『Good Mellows』シリーズの第二弾は少しずつ時間の経過を現すようだ。メロウというテーマを軸としたシリーズではあるが、この企画に為に新たに立ち上げられたSuburbia Recordは、入手困難な作品やアナログのみの曲を積極的に紹介する方針があり、本作では収録された曲の半分は初CD化とその意味でも大変意義のあるコンピレーションだろう。ただしそれが単にレアな作品を紹介するというだけには留まらず、『Free Soul』の切なく心に染みる音楽をクラブ・ミュージックの方面から解釈したならばとも仮定出来る音楽性は、ダンス・ミュージックが単に踊りの為の快楽的なものだけでなく感情的な面で訴えかける要素がある事も示している。オープニングを飾るのはポーランドの新星であるDas Komplexによる"Like A Fish"で、正にタイトルが示すように船が大海原をゆっくりと航海するような長閑なバレアリックで、旅の始まりとしては適切だろう。続くは近年クラブ・ミュージック側にも影響を及ぼしているイタリアのアンビエント・アーティストであるGigi Masinによる"Clouds"で、寂しげなシンセのリフレインと滴り落ちる切ないピアノのメロディーが、何処までも穏やかな地平が続く世界を喚起させる。中盤のSeahawksによる"No More Raindrops (Steel Pan Dub)"は爽やかなスティール・パンや残響揺らめくギターが空間の広がりを感じさせ、有機的で生暖かいダブ・ハウスといった趣きだ。そこから続くJose Padillaの"Adios Ayer"からMark Barrottの"Deep Water"の流れは、現在のバレアリックを先導するInternational Feel関連の音としての纏まりがあり、また大自然の営みを感じさせる優しいアンビエンスが素晴らしい。アルバムの後半には、頭角を現し始めているAndras Foxによる初期シカゴ・ハウス的な簡素な味わいのメロウさが特徴な"Running Late"、そして最後にByron Stingilyによる軽快なパーカッションと囁くような甘美なファルセットボイスで魅了するボッサ・ハウスの"Flying High (MAW Brazilian Vocal)"と、ハウスのグルーヴで憂いと高揚を伴いながらすっきりと余韻を残す事なく終了する。アンビエントからバレアリック、ハウスからジャズやダブまで景色が移ろうか如くジャンルの変遷も見せながら、全てをメロウで抱擁する夕暮れ時の切ない音楽観には誰しもうっとりと溺れるに違いない。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 13:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Sven Weisemann - Falling Leaves (Fauxpas Musik:FAUXPAS RSD014)
Sven Weisemann - Falling Leaves
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ベルリンのディープ・ハウス一派の中でも一際芸術的な美しさにこだわった作風を得意とするSven Weisemann。現在は古巣であるMojuba Recordsからは本人名義でのリリースはしなくなり、その代わりにJouem名義での8部作シリーズのリリースを継続している。一方Svenのもう一つの古巣と言えば同じくベルリンのFauxpas Musikで、こちらではDesolate名義でEPやアナログを複数手掛けていた。が何故かレコード・ストア・デイ限定盤としてFauxpas Musikからは初となる本人名義の本作がリリースされたのだが、Desolate名義との明確な違いは見られない程の実に静謐なアンビエンスを発している。特に本作ではクラシックにも教養のある彼らしく切なく湿っぽいピアノの旋律が常に鳴っており、そこに消え入るような神秘的なボーカルや霧の向こうから浮かび上がるような幻想的なストリングスが加わって、夢の世界にでも迷い込んだような現実ではない何処かの世界へと連れて行ってくれる。キックは入らずにジャズを意識したハイハットがビートを刻み、ただただ安息の日を迎えるが如く静かな音の波が広がるオリジナルは、最早オーガニックなアンビエントだ。裏面にはイタリアのアンビエント系アーティストであるGigi Masinが手掛けた"Falling Leaves (Gigi Masin Remix)"が収録されているが、オリジナルの静謐で神秘的な雰囲気はそのままにビートは完全に抜いて、その代わりに上モノに穏やかなギターノイズらしき音も加わって更に自由な動きを見せながら桃源郷の果てを演出する。両面ともいわゆるクラブで盛り上がるようなダンス・ミュージックではないが、例えば朝方のパーティー最後などで聴ける事があれば安堵に包まれながら現実へと戻る事が出来るかもしれない。



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| TECHNO11 | 18:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |