2023.01.21 Saturday
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日本が誇る世界的評価を得ているレーベル・Mule Musiqから、またまた気になるニューカマーが登場。イタリアのSimone de Kunovichなるアーティストは2019年にはSuperconscious Recordsから『Mondo Nuovo vol.1』でデビューを果たしたのだが、その作品をえらく気に入ったMule Musiqが今回内容は全く別ながらも同名のタイトルでEPをリリースしている。ジャンルは大雑把にいえばディープ・ハウスになるのだろうが、そこにはトロピカルやエキゾにトライバルやレフトフィールドといった要素が混在しており、雰囲気としては訝しいサイケデリックに満たされている。"Cerchio Magico"は民族的な打楽器を用いたエキゾチック/トライバルなリズム感が印象的で、そこに鳥の囀りや森の中の環境音を模した効果音を盛り込み、上げるでもなく下げるでもなく終始揺蕩う浮遊感で揺らぐようなアンビエンス感も生み、深い神秘の森の奥へと誘われるような奇妙なディープ・ハウス。"Serpiente Cosmica"では淡々としたビートは控えめで、代わりにディジリドゥ風なアシッドが不気味なうねりを見せて強烈なビートを鳴らし、人の雄叫びのような効果音も用いつつもミニマル的に忍耐強くグルーヴを引き伸ばすDJツールは、真っ暗闇のダンスフロアが特に似合う。"Paradiso Delle Sabbie Mobili"も同様にアシッドを用いたハウスではあるが、こちらはトロピカルな雰囲気のパーカッション使いと力強いキックのリズムの効果もあって陽気な南国ムードとなっており、ヒプノティックなシンセも加えて太陽光の下で快活に踊りたくなるような外向的な雰囲気だろう。最後の"As I Was Moving Ahead Occasionally I Saw Brief Glimpses of Beauty"はトライバルなパーカッション連打を用いつつ朧気でメランコリーなシンセが浮遊するテック・ハウス調、夕暮れの大草原を地平の果てまでも爽快に疾走するような郷愁が溢れている。僅か4曲ながらも十分な個性によって強い印象を残したSimone de Kunovich、単なるツール以上の魅力的な音楽でこれはアルバムに期待をしたくなる。
Check Simone de Kunovich